冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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タトゥーについて

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金曜日の朝、目覚ましが鳴るよりも早く目が覚めてしまい、時間に余裕が出来た。暇をしていたのが伝わったのか、レイに相談に乗って欲しいと真っ黒な目で見つめられた。

「いいけど、そんな長くは話せないぞ。大事なことなら夜のがいいと思うけど」

「大した相談じゃないんすよ。その~……俺、タトゥー入れようと思ってて」

紫色の髪に眉、大量のピアス、光のない真っ黒な目に、不健康そうな顔色、更にタトゥーか……地雷系っぽさが加速していくなぁ。

「へぇ……まぁ、いいんじゃないか?」

陰キャオタクの俺としてはタトゥーを入れている人には河川敷でバーベキューをしている人と同じくらいの恐怖心があるが、レイなら平気だ。ピアスと同じように愛でられるだろう。

「店も良さそうなとこ調べてて……」

「そうなのか。じゃあもう俺に相談することなんかないじゃないか」

「……せんぱい、タトゥー嫌いじゃないっすよね?」

「レイの身体にあるならきっと好きになるよ。まぁ……なんか、蓮の実みたいなのとかは、やだけど」

タトゥーとしてなら蜂や蜘蛛など苦手なものでも美しく見えるだろう。だが、密集した穴は何だろうとダメだ。

「そんなの入れないっすよ、綺麗で可愛いのにしようと思ってて……こういうのっす」

レイに渡されたペンタブには美しく可愛らしい模様が入った三日月と、三日月から滴る雫が描かれていた。

「へー……オシャレじゃん」

以前、俺の名前を彫りたいとか言っていたから不安があったが、思い直したようだ。こんな綺麗なマークなら何も問題はないだろう。

「雷のマークとかもいいかなーと思ってるんす」

「……温泉旅行行けなくなっちゃうんじゃないか?」

「それも調べたっす。この近辺ではダメなとこのが少ないっすよ。和彫りだけ禁止ってとこもあるっすけど、これトライバル系なんで大丈夫っす」

「和彫りって、あー……自営業の方感があるからかな。絵柄自体はカッコイイんだけどなぁ……ま、レイは和風の似合わないからいいんじゃないか?」

「似合わないんすか?」

「……目が大きくて日本人顔じゃないからかな? レイは目くりっくりしてて可愛いぞ」

髪と眉が紫色だからとは言わず、顔立ちの話にすり替えた。事実レイの童顔は和彫りや和服が似合うものではないと思う。

「そうなんすかねぇ……せんぱい、和風と洋風どっちが好きなんすか?」

「レイ~、俺を分かってないなぁ」

「……どっちも同じくらいっすよね」

「分かってるんじゃないか。誤魔化してる訳じゃなく、ホントにみんな差なく大好きだから、な?」

他の彼氏達に比べると若干ハリが少ない頬をふにふにと揉む。

「分かってるっすよ。和風の顔立ちって居るんすか? みんな目おっきめだと思うんすけど」

「まぁ目が大きいのは分かりやすい美形だからなぁ……シュカは和風だと思うぞ。切れ長で一重、綺麗な目だ。後は~……んー、歌見先輩も和風寄りかな。ミフユさんとか目大きいけどあの猫目と太短い眉には和を感じる」

「シュカせんぱいは間違いなく和風っすね。あっ」

レイの視線の先にはアキが居る。

「…………ちなみにアキくんはどっちっすかね?」

「答えるまでもないだろ」

首を傾げているアキは俺に似た顔立ちだが、鼻筋などにほんの少しだけ海外の血を感じる。目元は完全に母と同じだ、俺もそう。

「あ、せんぱい、そろそろ出なきゃっすよ」

「おー……じゃ、行ってくるよ。アキ、レイ、愛してる」

二人にキスをして駅へ向かう途中、俺はレイの身体のどこにタトゥーが刻まれるのかを考え、内腿などの際どいところだったらそこを彫り師に見られる訳だよな……と仮定に仮定を重ねた妄想の中で嫉妬心を膨らませた。

(しかし三日月から水が滴っているデザインとは、現実にはありえないことですのに違和感はあまりなく美しいですな。流石イラストレーターと言うべきか)

どうしてそんな発想に至ったのかとレイの思考を探っていると、不意に自分の名前が水月であることを思い出した。

(結局わたくしの名前なのですねレイどの)

漢字やローマ字を彫るよりはマシだが、俺の名前……うーん、止めるべきだろうか。でもあんなにウキウキしていたのにやめさせるのも忍びないし──




「──って訳なんだけど、お前らどう思う?」

悩んだ末に俺は彼氏達に相談した。ちなみに現在一時間目と二時間目の隙間の休み時間だ。

「俺も水月の名前めっちゃ目立つとこに書いて欲しいわぁ」

「マジックで額に書いてやるよ」

きゅっぽんとマジックペンの蓋を外しながら言うと、リュウは前髪をかき上げて目を閉じた。冗談のつもりだったのになと思いつつ、せっかくなのでリュウの額に漢字を書いた。

「……書けた?」

「あぁ、書けたよ」

人の肌に文字を書くのは初めてだったが、上手く『肉』と書けたぞ。

「おおきになぁ水月ぃ、へへへ」

「で、どう思う?」

「一昔前までは反社の象徴でしたが、今となってはオシャレの一種。公共の場でも禁止しているところは随分少なくなりました、本人の自由では?」

「俺の名前モチーフじゃなきゃな」

オシャレと言えばハルだ、ハルの意見が聞きたい。

「タトゥーね~、アレ可愛いけどさぁ、彫っちゃったら模様変えらんないじゃん? 俺一生同じのでいいってほど好きな絵ないから~、タトゥーシール派かな~」

「うーん……俺もそっち派かも。カンナは?」

「い……と、思う。三日月……ふつ、に……かわい」

デザインは悪くない、むしろいい。俺の名前を知らなければ恋人の名前を彫っているとは分からない秘匿性もイイ。あれ、反対する理由照れくさい以外になくなったぞ?

「せやけどアレやなぁ、親からもらった大事な身体を傷付けるんはよぉない……」

「喧嘩売ってんですか?」

「その大事な身体虐めて欲しがるドMが言うなよ」

「……っちゅう意見出んもんやなぁって言いたかってん! 最後まで聞いてぇな、いらちやなほんま。うちのおとんとかはタトゥーとかピアス見たらよぉ言うねんそういうこと。俺は傷付けたい派やから逆意見や」

「髪染めてよく反対されなかったな」

「おとんは親からもらった髪の毛なくしとるやんけ! 言うたらすっごい落ち込んだ後なんも言わへんよぉなったわ」

「酷いこと言うなぁ」

リュウの父親はハ……あえて言う必要はないかな。

「そっかぁ、まぁいいかぁ。俺の名前モチーフなのはちょっと恥ずかしいけど、まぁそれはそれで嬉しいし……あ、みんなも入れるか?」

四人の彼氏達は互いに顔を見合合わせるばかりで誰も何も言わない。

「い、嫌なら嫌でいいけどさ」

「こわ、い……もん。痛そ……で」

「俺シール派だから~」

「水月が彫ってくれるんやったらええけど、いくら水月の名前でも水月以外に身体に傷残されんのは嫌やわぁ」

「昇り龍とかなら背中に入れたいですけど、月とかは……あんまり惹かれないです」

何故だろう、別に入れて欲しいと思っていた訳でもないのに、こうも揃って断られると傷付くというか落ち込むというか……奇妙な感覚だ。
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