冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
608 / 2,316

恋人の弟

しおりを挟む
サウナとはただ暑いだけの部屋ではなかった。いい香りのする水を蒸気に変えて更に温度を上げ、葉っぱの塊で全身を叩かれる苦行じみた行為をサウナと呼ぶ……らしい、少なくともアキは。

「にーに、ばーにゃ好きです?」

「バーニャ……サウナのことだよな? うーん……今のとこ嫌い……」

「……残念です。にーに、いつも、一緒入るする、する欲しいでした」

「今のところ、だからな」

巷ではサウナに入ると「ととのう」と噂されている。アレはサウナに入っている最中のことではない、身体を冷やして「ととのう」を体験してから次回以降を考えよう。

「出るするです?」

「うん……」

こんな命の危機を感じるような行為が身体にいいとは思えないな、と疑いつつサウナを出た。アキはすぐにプールに飛び込んで俺に手招きをした。

「……っ、冷たぁっ……!」

火照った身体が急速に冷えていく。心臓が騒ぐ。何度でも言おう、本当にこれが身体にいいのか?

「はぁ……」

心臓に悪い気はするけれど、熱い身体を冷やすのは気持ちいい。

「にーに、出るするです」

「んー? もう出るのか? お兄ちゃんこっちならもっと入ってられるんだけどなぁ」

身体が冷え切る前にアキにプールを出るように言われ、促されるままにプールサイドに置かれたベッドに横たわった。しばらくすると鼓動が落ち着いてくる。

「ぁー……なんか、気持ちいい……なんだろこれ」

アキも俺と同じように俺の隣に寝転がっている。赤い瞳は瞼の下に隠されており、俺も裸のアキという素晴らしいものを眺めるのをやめてリラックスのため目を閉じた。

「これが……ととのう……?」

睡眠と覚醒の狭間、筆舌に尽くし難い心地良さを味わった。



ととのいタイムを終えてシャワーを浴びてアキの部屋に戻った。トレーニング後とは思えないスッキリとした気分だ、サウナすごい。

「質のいい温泉入った後みたいな……ちょっと違うかな。疲れてるんだけどなんかサッパリスッキリしてて……いやーいいなぁサウナ、好きだよ。えーっと……アキ、俺、バーニャ? 好き」

「にーに好きです? 嬉しいです! にーに、一緒入るする、いつもです」

「……あぁ、また一緒に入ろう」

「にーに、ばーにゃ好きする、よかったです。ぼく、寂しいするしないです」

昨日セイカの見舞いに行った時に話していても思ったが、アキは本当に寂しがりな性格のようだ。色素欠乏症のせいでろくに外で遊べず、学校はイジメが原因で辞めてしまって、両親との関係も手放しに良いとは言えず……出来たばかりの兄に依存するのも納得だ。

「…………アキ、おいで」

その新雪のような髪や肌と同じ、彩られなかった今までのアキの人生を憐れみ、腕を広げた。アキはすぐに俺の腕の中に飛び込んで満面の笑みで俺を見上げた。

「にーにぃ! えへへ……にーに、ぼく、にーに、好きです」

「オゥフ……俺もアキが大好きだよ」

こんなにも可愛らしい子が俺の弟だなんて、やはり俺は前世で銀河を救った英雄だったに違いない、今世の幸福はそのご褒美だ。



昼過ぎまでアキと楽しく過ごした俺は私服に着替えて家を出た。昨日セイカに聞いておいたホムラが通う中学校へと向かい、校門近くで待った。

(……反社風の方の気持ちが分かりますなぁ)

まだホームルーム中なのだろう中学校はとても静かで、今日は休校ではないかなんて不安が湧いた。俺を執拗につけ回すあの刺青男も似た気持ちだったのだろうか、なんて大した意味のないことを考えていると校門の脇の小さな扉が開いた。

「君、そこで何してるの」

この学校の用務員のようだ、怪しまれているのだろうか。落ち着け、俺は超絶美形、爽やかな微笑みを忘れなければ信用を勝ち取れるアドバンテージを持っている。中学時代のキモオタデブスはもう居ないのだ。

「鳴雷と申します。この学校の狭雲という生徒の兄の友人です。この度その兄が入院しまして、その関係で彼の家に人が居ない状態になりまして……私達は家族ぐるみの付き合いでして、こういった場合は互いの家で預かるようになっていまして、彼はスマホを持っておらず連絡手段がないので迎えに来たんです」

「…………この暑いのに外で待ってちゃ倒れちゃうよ、中においで」

用務員の待機所のような小さな小屋に招かれた。空調はないようだが扇風機はある、直射日光の下よりはマシだろう。

「その狭雲くんは何年何組?」

「えーっと……確か──」

念の為に昨日セイカから聞いておいてよかった。学年と組を伝えると用務員は内線を掛け、それから数分後チャイムが鳴り響き、更に数分後教師に連れられてホムラが用務員室に現れた。

「あ……鳴雷さん」

「……知ってる人?」

隣に居るおそらく担任教師だろう男は訝しげな目で俺を見ている。

「はい、兄の恋人です」

「えっ……あ、あぁ……そうなんだ」

「どうされたんですか? 鳴雷さん」

「……お兄さんに頼まれて迎えに来たんだよ」

セイカに似たジトッとした目付き、上品な和風の顔立ち、それらは俺の庇護欲を掻き立てる。セイカよりも幼い顔をした彼が目を丸くする様子は微笑ましい。

「ありがとうございます、鳴雷さん」

聞き分けが良くて助かる、俺を怪しんでいた教師達の前に長居はしたくない。

「じゃ、おいで」

「はい。先生、用務員さん、さようなら」

「あぁ、また明日」

ホムラを連れて校門を抜けた瞬間、俺は深いため息をついた。

「はぁ……ミッションコンプリート」

「鳴雷さん、兄様はどうしていますか?」

「断薬の影響が酷かったから入院中。ホムラくんはどうしてたの? いつの間にか居なくなってたからびっくりしたよ、まさかあの状態でも学校に行くほどいい子だとは思ってなくて……舐めてたよ正直」

「驚かせてしまい申し訳ありません。七夕の次の日、鳴雷さんの家から直接学校に行きました。制服や荷物はありませんでしたが家に戻るのは嫌だったので、保健室で体操服を借りて教科書類も他クラスの知人に借りて……少し大変でした」

「お疲れ様。その後は? なんで帰ってこなかったの?」

「……僕が家から居なくなったと母は学校に連絡をしていたようで、学校まで迎えに来られてしまって……それからは普通に、いつも通りに……鳴雷さん、ありがとうございます。帰りたくなかったんです、僕……痛いの、もう…………前は、何ともなかったのに」

次第に声を小さくし、俯いていくホムラを見下げ、俺は昨日セイカに言われるまで彼のことを忘れていた自分を恥じた。

(はぁー……ほんっと、ホントわたくしダメ人間……セイカ様で頭がいっぱいだったからってぁああー! ごめんなさいほむほむぅ……)

帰宅して一番にやるべきは虐待の傷跡の手当てだな、救急箱の中身は万全だっただろうか。薬局に寄るべきかな。

「……ホムラくん、アイスとかお菓子とか欲しくない? 今から薬局寄りたいんだけど、ついでにおやつも買っていこうと思っててさ。ホムラくんのも買ったげるから好きなの考えておきな」

自分の罪悪感を軽くする為のお詫びもしておこう。
しおりを挟む
感想 535

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...