冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
659 / 2,315

デザートの後に食べるのは

しおりを挟む
ちらりと俺に視線を戻し、目を合わせ、また目を逸らし、口を手で押さえてため息をつく。好きな本の新刊を読んだ後の俺にそっくりな仕草だ。

(ネザメちゃまにとってわたくしって……)

「鳴雷一年生、どうした? 嫌いな物でもあったか?」

「あ、いえ、すみません。ネザメさんとちょっと話してて」

「む……ネザメ様、食事中の会話は多少なら構いませんが、手を止めるほどはおやめください」

「…………あっ、あぁ、うん、すまないね」

俺もネザメもスプーンを持つ手がぎこちない、まるでついさっき食器の使い方を教わったようだ。

「美味い……めっちゃ美味いわ……うま……うまぁ……」

俺とネザメが会話をやめると食器が擦れる音とリュウの呟きだけが部屋に響くようになる。

「ソーダとフロートの隙間のシャリシャリしたバニラ好きやわ」

「あ、分かる」

「デザートの用意があるが、食べるか?」

全員で頷くとミフユは席を立った。俺は残っていたコーンスープを飲み干し、空になった食器を軽く押してデザートを置くスペースを作った。

「わ……!」

透明の美しい器の中心に鎮座するプリン、脇に添えられたチョコソースがかかったバニラアイス、周囲を飾るキウイやサクランボなどの色とりどりのフルーツ達。

「プリン・ア・ラ・モードだ」

「めっさ美味そ~……アラモードってどういう意味なんです?」

「当世風、だな」

当世風という言い方が今や当世風ではない。

「とう……何?」

「流行、現代風、今風、そういう意味だ」

「あー……せやけど何やプリンアラモードって昭和感ありません? レトロな純喫茶とかで出てきそうやないですか」

「流行が変わってもいちいちデザートの名前を変えないだろう、外国語の意味など気にしない者が大半だ。それに、プリン・ア・ラ・モードがもはや古いものだとして、今風のプリンの飾り方があるか?」

まずはプリンを一口……固めに焼かれたプリンだ、喫茶店でプリンなんて食べたことがないはずなのに、何故かノスタルジックな美味しさ。

「……虹色に光るとか?」

「ゲーミングプリンか……派手な輝きでSNSガチ勢を引き付けつつ、ゲーミング要素でオタクも拾う。意外と流行るかも」

「虹色の物など食べたくないわ気色悪い! いいか天正一年生、食欲減退色というものがあってだな! たとえ合成着色料不使用だとしても奇妙な色の食べ物を人間は避けたがるものなのだ、それも虹色なだけならまだしも光るなど気味が悪過ぎる!」

「まぁまぁまぁ商品開発部でもないんだしそんなに怒らないでくださいミフユさん」

「貴様は何か意見があるか?」

何気ない雑談だと思っていたが、ミフユは商品開発部部長の目をしている。次の機会に作ってくれようとしているのだろうか。

「そうですね、最近の流行り……最近の流行り? え~……」

ただでさえアニメ漫画以外の流行りに疎いのに、デザートの流行りなんて全く分からない。

「あっ、の……ほら、えっと……昆虫食が、今かなり……ホットなので、トッピング……する、とか…………虹色のプリンの方がまだ食べたい……すいません思い付きません」

「いや、いい意見だ。昆虫食か……なるほどな、アリだな」

「ナシですナシですナシよりのナシです」

「粉末にすれば見た目の問題は解決するぞ」

「嫌です虫は嫌です。モニっとして皮が意外としっかりしてて足がカサカサして噛んだら一気に汁がぶしゃあぁあああ嫌ぁあ!」

「……す、すまない。嫌なんだな……やらない、やらないから……次回もフルーツや乳製品だけでデザートを作るから、落ち着け、な?」

自分で虫の話題を出しておいて勝手にトラウマを掘り起こした面倒臭い俺にミフユは優しく接してくれる。背を撫でてくれた。

「うぅう……虫は、虫だけは……許してくださいセイカ様……勘弁して……」

「鳴雷一年生、ほら、ホイップクリームだ。乳製品だぞ。美味いぞ」

「んむっ……?」

ホイップクリームをすくったスプーンが口に押し付けられ、それを食べると甘さが強制的に幸せを引きずり出した。

「甘い……美味しい。ミフユさんのアーンたまんねぇ、もっかいしてください」

「……調子が戻ったようだな」

ミフユはそれから四度ほど俺にプリンアラモードを食べさせ、残りは自分で食えとスプーンを置いて席に戻った。面倒見のいい人だ。

「ごちそうさまでした!」

「ごっそさん」

「ごちそうさま」

「お粗末様でした」

食器を乗せたワゴンを押していくミフユを気にしつつも三人で先にネザメの私室に戻った。

「ふぅ……おなかいっぱい。デザートまであんなにたくさん作るなんて珍しい、君が来てくれて嬉しいのかな?」

「へへっ……」

二人がけのソファにネザメと共に腰を下ろす。リュウは背の低い机を挟んだ対面のソファに一人で座り、肘掛けと背もたれに身体を預けてウトウトしている。

「まだ帰るには早過ぎますけど、リュウは疲れてるみたいですし、きっとミフユさんもそうですよね。ねぇ、ネザメさん……恋人らしいこと、しませんか?」

ネザメの太腿にそっと手を置く。ネザメの手が俺の手に重なり、きゅっと握り返す。

「ふふ……構わないよ、恋人だものね」

余裕綽々な微笑みを返され、少し気圧される。しかし昼食の際に知ったネザメの余裕のなさを思い出し、気合を入れ直した。

(ネザメちゃまが照れるのはアキきゅんだけではなく、わたくしもなのでそ! 頑張ってわたくしに慣れてくださっただけで、今もギリギリ! もうちょい押せばイケまそ)

真っ直ぐに見つめると細められていた亜麻色の瞳が開き、微かに震えた。

「……それじゃあ何がしたいか言ってごらん? 具体的にね。その美しい唇をどんな風に歪めるのか僕に見せて」

恥ずかしいことを言わせて主導権を握ろうとしているのか? ネザメは攻め役を狙っている、主導権を渡したが最後、抱かれてしまう。絶対に主導権を渡す訳にはいかない。

「今ネザメさんが褒めてくださった唇で、ネザメさんの全身を愛でて、ネザメさんの可愛い声を聞いたり、悩ましい表情を見たりしたいです」

「……! 大胆だね、ふふ……」

羞恥心を感じている素振りを見せなければ何を言おうと主導権を放棄したことにはならない。キリッとしたまま目を逸らさずに欲望を伝えるとネザメは少し動揺したようだったが、それでも胡散臭い微笑みは崩さなかった。

(手強いですな……)

主導権という目に見えないが確かに存在するものを静かに奪い合う俺達の滑稽さを笑うように、眠ってしまったリュウがくしゃみをした。
しおりを挟む
感想 535

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...