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穗張興業とは
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完食、そして皿洗いも完了、ヘロヘロになって帰宅した義母が遅めの夕飯を取っているのを横目に見つつ、母の肩をつつく。
「……部屋行きましょっか」
義母には聞かせたくないらしく、母は俺の部屋にやってきた。
「ママ上が部屋に居るのなんか不思議な感じですな」
「……セイカ、今日抱くの?」
「へっ? ゃ、今日はまだ……やめとこうかと」
「あぁそう……セックスレスが離婚の原因になることもあるくらいだから、気を付けなさいね」
「……それ外で浮気してるとかそういう話でわ?」
「それもあるけどね、男から求められないと女として死んだ気分になっちゃうとか……女に受け入れられないと男として死んだ気になるとか……セックス重要視してる人間はちょくちょく居るのよ。存在意義をそこに置いちゃうタイプ。アイツは居候の身だし、対価払ってる気にさせてやった方が安定するんじゃない? ってことよ」
「なんか健全じゃありませんなぁそれ……」
「元々健全じゃないんだから健全な安定法試しても合わないわよ。とにかく、彼氏なら責任果たしなさいってこと。ちゃんと抱いてあげなさいね」
親にそれ言われるのめちゃくちゃ嫌だなぁ。
「言われなくてもしますよ。体調見て、大丈夫そうならお誘いします。ってそんな話じゃねぇでしょうよ今からするのは! なんでお泊まりが急にダメになったんですかっつー話です!」
「……穗張だからよ」
「はぁーん? 先祖の怨敵とかそういう話ですかなぁ?」
「ヤクザなのよ。穗張は」
「ぇ」
「今の組長はヒトってヤツね。前の組長は信長推しだったのかしら」
ヤクザっぽい車だと思ってたしヤクザっぽい刺青だと思ってたしヤクザっぽいお詫びの仕方してくるじゃんとも思ったけど、ガチヤクザかよ! じゃあもうヤクザっぽいとか言って笑えないじゃん!
「うそーん……まじぃ? うそぉん……」
「アンタが付き合ってるの誰?」
「三男のサンさん……ヒトさんの弟さんでそ。ゃ、まだ付き合ってはないんです、向こうもわたくしのこと結構好きそうなんですが、なんか……どういう人間か分かったらどうせ好きじゃなくなるんだろみたいな…………あれまさかヤクザ屋さんだからってことですかぁ!?」
「いやそれは知らないわよ、布団圧縮袋で圧縮されないと勃たないとか、レインコート着たままじゃないとセックスしたくないとかかもしれないじゃない」
絶妙な性癖だ。
「向こうも付き合うのに乗り気じゃないならちょうどいいわ、その子は諦めなさい」
「そんなぁ! ママ上わたくしの自由恋愛をお認めになると血判致したじゃあありゃせんかぁ!」
「してないわよそんなこと! 私だってこんなこと言うのは嫌だけどね……あんまり関わらない方がいいでしょ、そういうのとは」
「…………仕事頼んだくせに」
「アレは……! その、安く済むから」
ヤクザに仕事を安く依頼出来るなんて、母は一体……と疑念の目を向けたのに気付いたのか、母は慌てて弁明を始めた。
「違うわよ、私じゃない、会社の知り合いのコネよ。子供が増えたから増築したいって世間話くらいの気分で相談したら、知り合いに建築業やってるヤツが居て細かく注文付けられるし安くさせるしって言われて紹介してもらって……まさかヤクザのフロントとは思わないじゃないのよ!」
「美味い話には裏があるってヤツですな。つーかママ上……ママ上が直接ヤクザに関わりがなくてもヤクザと関わりのある人間と仕事してるの普通に嫌なんですが」
「会社は至ってクリーンよ。えっと、確か……そいつが昔穗張組を潰したのよね、親戚の家の近所にヤクザが居ると不安だからって。でもヤクザが居なくなったら今度は半グレが暴れて治安悪化しちゃってねぇ……穗張組はあった方がマシってなって、再編させて監視下に置いてるのよ、確か」
「その話、色々とツッコミどころが多いのですが」
母は深いため息をつき、頷いた。
「まず! ヤクザをパッと潰せるってどういうことですかな!?」
「穗張組は元々小さい地域密着型の組だし、最近のヤクザは昔ほど強くないのよ」
「近所にあると不安ってだけで潰します!? 潰した方が恨み買ってヤバくないですか!?」
「それは私も思うわ。バカなのよそいつ。まぁ今はそいつの管理下にあるから……」
「ヤクザ管理下に置いてる知り合いが居る母親嫌ぁあああ!」
「傷付く!」
「アッごめんなさい……ママ上大好きでそ」
その一言だけで母は満足気に微笑んだ。意外とちょろい。
「ヤクザって言ってもアレよ? 今は真面目に建築業やってるだけだし……ドロップアウトしちゃった子達の受け皿になってるみたいでいい感じなのよ」
「うぅん……?」
「だからそんなに拒否反応示さないでね?」
「…………じゃあサンさんと付き合ってもいいのでは?」
「それは違うじゃない」
「ダブスタはよくないでそ!」
「私は知り合いの知り合いの距離感だし、まぁそんなに悪いことしてないみたいだし見なかったことにするかぁなのよ! ヤクザと付き合うのはまた別でしょ!」
「悪いことしてないならヤクザじゃないでしょ!? ちょっと刺青彫る習慣のあるお家なだけでそ!」
「薬も女も売ってないけどその代わり私の知り合いが色々とやらせてんのよ!」
「もうそれその人が怖いだけじゃないですか! サンさんは真面目な画家でそ! わたくしがサンさんと付き合うよりママ上がその人と付き合いある方が問題でわ!?」
「それはっ……そうよ! それはそうなのよ! 問題あるわよ! でも非合法な手段を平気で選べる知り合いが一人居ると色々便利なのよ! でもアンタには普通にしてて欲しい、私の交友関係がどうだろうとアンタには関係ないでしょ!? アンタは真面目に生きなさいよ!」
「ダブスタクソ野郎ぉおー!」
「誰が野郎よダブスタじゃないわよ息子思いのいい母親よ! とにかく穗張との交際は認めません! いい!? 分かった!? もう会っちゃダメよ!」
バン! と勢いよく扉を閉めて母は部屋を出ていった、現在時刻は午後九時……母が毎週欠かさず見ているドラマが始まる時間だ。
「…………電話出てくれますかな」
俺はいい息子だったと思う、この歳まで反抗期もなく素直に育ってきたと思う。だから一度くらい、少々理不尽な言いつけを破るくらい──
「……あっ、もしもしサン? もうご飯食べた?」
──そんな言い訳に意味はない。俺はただサンを諦めたくないだけだ。
「……部屋行きましょっか」
義母には聞かせたくないらしく、母は俺の部屋にやってきた。
「ママ上が部屋に居るのなんか不思議な感じですな」
「……セイカ、今日抱くの?」
「へっ? ゃ、今日はまだ……やめとこうかと」
「あぁそう……セックスレスが離婚の原因になることもあるくらいだから、気を付けなさいね」
「……それ外で浮気してるとかそういう話でわ?」
「それもあるけどね、男から求められないと女として死んだ気分になっちゃうとか……女に受け入れられないと男として死んだ気になるとか……セックス重要視してる人間はちょくちょく居るのよ。存在意義をそこに置いちゃうタイプ。アイツは居候の身だし、対価払ってる気にさせてやった方が安定するんじゃない? ってことよ」
「なんか健全じゃありませんなぁそれ……」
「元々健全じゃないんだから健全な安定法試しても合わないわよ。とにかく、彼氏なら責任果たしなさいってこと。ちゃんと抱いてあげなさいね」
親にそれ言われるのめちゃくちゃ嫌だなぁ。
「言われなくてもしますよ。体調見て、大丈夫そうならお誘いします。ってそんな話じゃねぇでしょうよ今からするのは! なんでお泊まりが急にダメになったんですかっつー話です!」
「……穗張だからよ」
「はぁーん? 先祖の怨敵とかそういう話ですかなぁ?」
「ヤクザなのよ。穗張は」
「ぇ」
「今の組長はヒトってヤツね。前の組長は信長推しだったのかしら」
ヤクザっぽい車だと思ってたしヤクザっぽい刺青だと思ってたしヤクザっぽいお詫びの仕方してくるじゃんとも思ったけど、ガチヤクザかよ! じゃあもうヤクザっぽいとか言って笑えないじゃん!
「うそーん……まじぃ? うそぉん……」
「アンタが付き合ってるの誰?」
「三男のサンさん……ヒトさんの弟さんでそ。ゃ、まだ付き合ってはないんです、向こうもわたくしのこと結構好きそうなんですが、なんか……どういう人間か分かったらどうせ好きじゃなくなるんだろみたいな…………あれまさかヤクザ屋さんだからってことですかぁ!?」
「いやそれは知らないわよ、布団圧縮袋で圧縮されないと勃たないとか、レインコート着たままじゃないとセックスしたくないとかかもしれないじゃない」
絶妙な性癖だ。
「向こうも付き合うのに乗り気じゃないならちょうどいいわ、その子は諦めなさい」
「そんなぁ! ママ上わたくしの自由恋愛をお認めになると血判致したじゃあありゃせんかぁ!」
「してないわよそんなこと! 私だってこんなこと言うのは嫌だけどね……あんまり関わらない方がいいでしょ、そういうのとは」
「…………仕事頼んだくせに」
「アレは……! その、安く済むから」
ヤクザに仕事を安く依頼出来るなんて、母は一体……と疑念の目を向けたのに気付いたのか、母は慌てて弁明を始めた。
「違うわよ、私じゃない、会社の知り合いのコネよ。子供が増えたから増築したいって世間話くらいの気分で相談したら、知り合いに建築業やってるヤツが居て細かく注文付けられるし安くさせるしって言われて紹介してもらって……まさかヤクザのフロントとは思わないじゃないのよ!」
「美味い話には裏があるってヤツですな。つーかママ上……ママ上が直接ヤクザに関わりがなくてもヤクザと関わりのある人間と仕事してるの普通に嫌なんですが」
「会社は至ってクリーンよ。えっと、確か……そいつが昔穗張組を潰したのよね、親戚の家の近所にヤクザが居ると不安だからって。でもヤクザが居なくなったら今度は半グレが暴れて治安悪化しちゃってねぇ……穗張組はあった方がマシってなって、再編させて監視下に置いてるのよ、確か」
「その話、色々とツッコミどころが多いのですが」
母は深いため息をつき、頷いた。
「まず! ヤクザをパッと潰せるってどういうことですかな!?」
「穗張組は元々小さい地域密着型の組だし、最近のヤクザは昔ほど強くないのよ」
「近所にあると不安ってだけで潰します!? 潰した方が恨み買ってヤバくないですか!?」
「それは私も思うわ。バカなのよそいつ。まぁ今はそいつの管理下にあるから……」
「ヤクザ管理下に置いてる知り合いが居る母親嫌ぁあああ!」
「傷付く!」
「アッごめんなさい……ママ上大好きでそ」
その一言だけで母は満足気に微笑んだ。意外とちょろい。
「ヤクザって言ってもアレよ? 今は真面目に建築業やってるだけだし……ドロップアウトしちゃった子達の受け皿になってるみたいでいい感じなのよ」
「うぅん……?」
「だからそんなに拒否反応示さないでね?」
「…………じゃあサンさんと付き合ってもいいのでは?」
「それは違うじゃない」
「ダブスタはよくないでそ!」
「私は知り合いの知り合いの距離感だし、まぁそんなに悪いことしてないみたいだし見なかったことにするかぁなのよ! ヤクザと付き合うのはまた別でしょ!」
「悪いことしてないならヤクザじゃないでしょ!? ちょっと刺青彫る習慣のあるお家なだけでそ!」
「薬も女も売ってないけどその代わり私の知り合いが色々とやらせてんのよ!」
「もうそれその人が怖いだけじゃないですか! サンさんは真面目な画家でそ! わたくしがサンさんと付き合うよりママ上がその人と付き合いある方が問題でわ!?」
「それはっ……そうよ! それはそうなのよ! 問題あるわよ! でも非合法な手段を平気で選べる知り合いが一人居ると色々便利なのよ! でもアンタには普通にしてて欲しい、私の交友関係がどうだろうとアンタには関係ないでしょ!? アンタは真面目に生きなさいよ!」
「ダブスタクソ野郎ぉおー!」
「誰が野郎よダブスタじゃないわよ息子思いのいい母親よ! とにかく穗張との交際は認めません! いい!? 分かった!? もう会っちゃダメよ!」
バン! と勢いよく扉を閉めて母は部屋を出ていった、現在時刻は午後九時……母が毎週欠かさず見ているドラマが始まる時間だ。
「…………電話出てくれますかな」
俺はいい息子だったと思う、この歳まで反抗期もなく素直に育ってきたと思う。だから一度くらい、少々理不尽な言いつけを破るくらい──
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