冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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嘘を吐く

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寝転がって目を閉じているアキの頭を撫でると赤い瞳が微かに開いた。しかし、すぐに閉じてしまう。

「……ありがとうな、アキ」

礼を囁き、身体を起こす。セイカを抱き締める腕に力が入ったように見えた。

「今日は逃げ切れたっぽいけど、今後どないするん? このめん家帰れる? 鍵かけとったら入ってはこやんやろぉけど」

「居ない隙を狙って買い物するとか宅配受け取るとか、言っちゃえばこれまで通りっすけど……嫌っすねぇ。だってもし、また似たような失敗しちゃったら、せんぱい……また俺を取り返しに来るんすよね?」

「もちろん」

「くーちゃん、まだ諦めてないと思うっす……せんぱいまたボロボロになっちゃう、やだ……」

「ボスに言い付けてウチを使う可能性もあるよねぇ」

サンがヤクザの親類だったり、そのヤクザの上に立つ人物がレイの元カレの親戚だったりという話は、俺とサンだけが知っていることだ。みんなサンの発言の意味が分からなかったようだが、あえて聞くほどの好奇心はないのか不思議そうな顔を一瞬しただけだった。

「俺の家はまだバレてないはずだし、俺の家来るか?」

「今回顔が割れた天正さんもしばらく出歩くのは控えた方がいいかもしれませんね。私は見られたんでしょうか……最後一瞬外出たんですよね」

「……ごめんなさい。本当に……ゃ、やっぱり、僕がくーちゃんのところに戻るのが、一番なんじゃ……ぁ、もっ、もちろん、今回みんながめちゃくちゃ頑張ってくれたのは分かってるんだけど、それを無駄にしちゃうようなこと言って本当に申し訳ないんだけど……この先のこと考えたら、僕を……捨ててくれた方が、いいと……思うんだけど」

口調を取り繕う余裕も失くしたレイが、泣きそうな瞳に俺を映す。

「く、くーちゃんねっ、僕のことは殴らなかったし……腕とか頭掴まれてちょっと痛かったりしたこともあったけど、アザも残ってないレベルだし……前と違って、僕が行きたいんなら遊園地付き合ってくれたりもするつもりみたいでっ、だから、そんな……くーちゃんのとこ戻っても、僕……そんな酷い扱いは受けないから、せんぱい……ぼ、僕、僕……大丈夫、せんぱいが愛してくれた今日までの思い出だけで生きていける。僕は大丈夫だから……やっぱり、やっぱりっ……わ、別れて、ください」

ボロボロと涙を流しながら、震える声で言い切った。

「このめ……」

何かを言おうとしたリュウをシュカが止め、黙って首を横に振った。

「…………渡す訳ないだろ」

「で、でもっ、昨日今日でこんなにボコボコにされてっ、せんぱいそのうち死んじゃう!」

「だったら何だよ。レイ……レイは俺が好きなんだろ? さっき大好きだって言ってくれたよな、彼氏にした時めちゃくちゃ喜んでくれた、ちょっと物あげたり家に入れただけで泣いてたよな、俺が好きだろ?」

「好き……好きだから、これ以上は……」

「……嬉しい。レイ、俺も好きだよ、大好きだ、愛してるよ……レイが俺を好きで、俺もレイを好きなんだから、別れる理由なんてないだろ?」

「だ、だからっ、くーちゃんが……!」

「くーちゃんくーちゃんうるっせぇんだよ! 誰が別れるか、俺がお前を手放すわけねぇだろ!」

「……っ、せ、せんぱい……?」

「水月! このめんに怒鳴ったってしゃあないやろ、落ち着き!」

「そうですよ。一旦落ち着いてください、別れてって言われて頭いっぱいいっぱいなんですか? 会話になってませんでしたよ」

シュカに肩を軽く掴まれ、リュウがレイの腕を掴んで俺の膝から下ろそうとする。俺はシュカを振り切ってレイを強く抱き締めた。

「嫌だ渡さない! レイは渡さない、レイは俺のだ!」

「せ、せんぱい……」

「水月! このめん怯えてまうから!」

「……木芽さんだらしねぇ顔晒してますけど」

「ほんまや嬉しそう。そやったらええわ」

紅潮し、緩んだ笑顔を見られるのは恥ずかしかったのかレイは慌てて俯いた。

「…………俺らもこのめん差し出すんは嫌やで」

「ですね、この先の人生ずっと太めの魚の骨が喉に刺さったまんま飯食ってるような感じになります」

「俺はトラバサミで足挟まれたまんま歩く感じやね」

「私よりも木芽さんと仲がよろしいということですね。監禁の事実や水月、秋風さんへの暴力……警察沙汰に出来ませんかね?」

「水月ボクの包丁振り回してるからなぁ、ヤバくない?」

「アキくん一人の腕折ってもうたし」

「こっちにもまずい要素がある、と……ですが、警察だの何だのと大事にすれば向こうが諦めるのでは? あの人は木芽さんとセフレなんでしょう? 水月ほどごねる理由ないと思うんですけど」

「……くーちゃんは一度自分の物になった物を盗られると大事にしてる物じゃなくてもキレて全力で取り返すんすよ」

「秋風がクマ野郎って言ってたのはデカいからってだけだと思ってたけど、性格までクマっぽいのな」

俺の肩に顔を押し付けるのをやめたレイの頭を掴み、他の彼氏達の方へ振り向いていた彼にこちらを向かせた。

「……せんぱい?」

「…………形州だ。アイツは、形州。レイのストーカー野郎。そんなヤツのこと親しげに呼ぶことないだろ?」

「せんぱい……ヤキモチ妬いてくれたんすか? すいませんっす、クセになっちゃってて……えへへ、せんぱいが嫌なら気を付けるっす」

「…………………………嘘だ」

「へっ?」

セイカとは雰囲気が違うが、同じように光のない死んだ魚のような目をじっと見つめる。

「……まだ気があるんだろ」

「な、何言ってんすか! 俺はせんぱいだけっす!」

「前から思ってたんだよ、形州のこと話す時のレイの顔は可愛いんだよ。何が遊園地行くーだよ……何でだよ、酷いヤツだったんだろ、俺が好きなんだろ、なのになんで……」

「そんなの……せんぱいの気のせいっす。くーちゃ……か、形州のことなんか、大っ嫌いっすよ!」

「…………」

「ぅ……瞬きしてくださいっす。せんぱい……俺せんぱいが好きっすよ? 疑わないで………………だって、くーちゃん、カッコよかったんすもん、俺のこと守ってくれて……強くて、なのに……俺に甘えることもあって、可愛くて……大嫌いっす、大嫌いなんすよ、あんなに必死で取り戻そうとしてくれるのに俺のこと好きじゃないんすくーちゃんは! だから嫌いっ……昨日も結局僕のこと抱かなかった、やっぱり金髪じゃなきゃ勃たないって、くーちゃんが欲しいのは僕じゃない……だから嫌い! だから、だから……僕のこと真っ直ぐ愛してくれるせんぱいが好きなの……嘘なんて、言わないで。疑わないで……僕にはせんぱいだけなの」

両想いになれなかったから拗ねているだけにしか聞こえない、自分に惚れてくれるヤツが現れたから乗り換えたようにしか感じない、俺の性格が悪いからか? それとも人間そんなものなのか?

「…………ごめん」

俺のことだけを好きでいて欲しいだけなのに、他の彼氏はそうしてくれているのに、それはそんなに難しいことなのだろうか。でも、十二人も彼氏が居る俺が元カレにまだ気持ちが少し残っているだけのレイを責めるなんてやっぱりおかしいから、謝って、考え直したように振る舞おう。ずっと嘘をついていればそのうち自分の心も騙されてくれるはずだ。
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