冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
824 / 2,313

やっぱり関連店舗

しおりを挟む
あまり目立たない見た目をした焼肉屋の扉をくぐり、にこにこと笑っている店員に出迎えられる。いや、店長だ、名札にそう書いてある。

「いらっしゃいませ!」

「久しぶり~。最近家で食べてばっかりだったからなぁ……あ、この子達ボクの友達。えっとね……水月どれ?」

サンは足音などで俺達の大体の場所は把握しているようだが、どれが誰かは分からないようで振り返って首を傾げた。

「ここだよ、サン」

レイと手を繋いだままもう片方の手を軽く上げる。

「あれが水月、ボクの恋人」

「へぇ! 恋人さん! へぇー……男の方なんですね」

店長はジロジロと俺を眺める、値踏みされているような気分だ。

「……男前ですねぇ」

ニヤリと笑い、自身の頬をつつく。男前というのは顔の造形の話ではなさそうだ、喧嘩の傷は男の勲章だとでも?

「昔女の子相手になっかなか勃たなかった訳が分かったよ、ボクはインポじゃなかった」

「人間に興味ないのかと思ってやした。ささ、どうぞ奥に」

四人用のテーブル席ではなく奥の宴会場のような席へ通された。段差を越えて畳に乗り、座布団の上に腰を下ろすと、テーブルの下が深く掘られていることに気付いた。掘りごたつのような構造だ。胡座をかいてもよし、椅子に座るように座ってもよし、なかなか快適だ。

「座敷は久しぶりだね、だいたいフタ兄貴としか来ないから二人席だもん」

「こちらの方がよろしければお二人でもこちらに通させていただきますが……」

「スカスカで寂しいじゃん、風の流れとか温度で人の密度は見えるんだよボク」

「へぇ、これは失礼」

サンは店長と相当仲がいいようだ、常連なのだろう。

「お肉じゃんじゃん持ってきて。みんないっぱい食べたいよね?」

「はい!」

元気よく返事をしたのはシュカだ。

「へい。お前ぇらぁ! じゃんじゃか切って持ってこい!」

店長が厨房に向かって叫ぶと大勢の雄々しい返事が聞こえてきた。あぁ……やっぱりここもヤクザ関連店舗……

「タンが最初とかなんか色々オススメの順番あるんだよね? 何から持ってくるかは任せるよ。でもみんな欲しいのそれぞれ違うだろうし、それはメニューで……メニューは?」

「こちらでごぜぇやす。どうぞ。こちらは皆様用……」

サンには漫画本サイズの小さなメニューを、俺達にはA4サイズの大きなメニューが渡された。机の真ん中に置いたそれを全員で眺める様子を尻目にサンのメニュー表をチラッと覗くと、写真も文字もなく点が大量に並んでいるのが分かった。

(点字ですかな? 対応しているとは……よきお店ですな)

今まで盲目の者と共に過ごした経験がないから実際のところは分からないが、点字のメニュー表が用意してある店なんてそうそうないのではないだろうか。

「……自分はあなたこそがオヤジの跡を継ぐべきだと今でも思ってます」

「アンタ毎回それ言うねぇ、鬱陶しいよ?」

「すいやせん。しかし……姐さんの子はあなたなのに、昔ちょっと遊んだだけの女の子が組長なんて……あの薄汚ぇ女、手切れ金貰っといて堕ろしもしねぇでウチに押しかけて……」

「なぁにまた昼間からお酒飲んだの?」

「ヒトの野郎が大人になれたのは姐さんの寛大さあってこそ! だってのにアイツは……っ!?」

店長とボソボソ喋っていたサンは突然彼の胸ぐらを掴んで引っ張り、机の角に彼の顔を叩き付けた。

「へっ……? サっ、サン? なな、な、何して……」

「不平不満はあって当然、昔のよしみで愚痴も聞いてあげる。でもねぇ、それはダメだよ。その呼び方はダメだ、分かるね?」

「すっ、すいやせん……」

「ボクしか聞いてなくてよかったねぇ、罰はこれで終わりだ」

「……やはり姐さんに似てお優しい」

結構な量の鼻血が出ているのに? いや、フタがヒトから受けた仕打ちを考えれば、サンは優しい方なのか?

「ヒト兄貴が継ぐのは仕方ないだろ? 三兄弟唯一の健常者なんだからさぁ。アンタらだって報告書とか読み上げたり点字に打ち直したりすんの大変そうだったじゃん」

「しかし……百歩譲って組長があの方なのはいいとしても、あなたが組に一切関わらないというのは……」

「絵描いてる方が儲かるし楽しいもーん。ボクは現状に満足してる。アンタらも生活は一応成り立ってるんだし、ボクを思って不満溜めるのはやめなよ」

「お待たせしました~」

誰も雑談なんて出来ずサンと店長のやり取りを見守る中、何も知らない店員が肉を盛った大きな皿を持ってやってきた。

「ごゆっくり……どうしたんですオヤジぃ!?」

「うるせぇ、仕事に戻れ。あぁ……てめぇが火ぃ入れろ、俺ぁ血で汚しちまう。洗ってくる……」

血まみれの手で鼻をつまみ、店長は店の奥へと引っ込んで行った。残された店員は俺達の顔を見回し、気まずそうにしながらテーブルの下側にあるツマミを弄った。

「火ぃ入れさせていただきます……」

ボッ、と音がしてテーブルの中心にある網の下で火がゆらゆらと揺らめき始める。

「焼きを店の者に任せるか、ご自分達で……えー、セルフサービス……がありますが、どちらにいたしましょう」

「どうする? 水月。ボクはフタ兄貴と来た時は頼んでるんだけど、自分で焼く? 肉のプロが一番いいタイミング分かってるとしても、焼き加減の好みはあるもんねぇ」

「そ、う……だね。自分で焼きます……」

普通の店員でも嫌なのに、ヤクザに席に居座られるなんて絶対に嫌だ。焼き加減の質が多少下がったとしても、過ごしやすさの方が一番だ。

「ぁい、ではごゆっくり」

「待ってください、注文していいですか? その盛りに鳥ありませんよね、この鶏もも塩ダレ四人前ください」

「へい! 他にご注文は……」

「キャベツ欲しいっす」

「白飯もください」

「あ、俺も飯欲しいわ。水月は?」

「米食うと肉食う胃の隙間が減るから……」

「えー、焼肉は米と一緒に食うてこそやろ」

みんな普通に振る舞っている。サンと店長のやり取りが気にならなかったのだろうか、それとも抑えているだけだろうか。

《スェカーチカ、俺牛の赤身が食いてぇ》

「鳴雷、牛の赤身ってどれかな」

十中八九みんな気にしていつつも態度に出さないようにしているだけだと思うが、アキだけは本当に気にしていなさそうだ。
しおりを挟む
感想 532

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

どうしてもお金が必要で高額バイトに飛びついたらとんでもないことになった話

ぽいぽい
BL
配信者×お金のない大学生。授業料を支払うために飛びついた高額バイトは配信のアシスタント。なんでそんなに高いのか違和感を感じつつも、稼げる配信者なんだろうと足を運んだ先で待っていたのは。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

処理中です...