冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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創作意欲はまた別

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大皿に綺麗に盛り付けられた生肉を網の上に乗せ、良きところで回収。

(ふぉお! お口の中で蕩けるっ、柔らか~い。いいお肉ですなぁたまりませんぞ! きっとお高いんでしょうな……)

外観からはこんないい肉が出てくるなんて想像も付かなかった。

「はぁ、美味しい……なぁサン、ここの飯代ってかなり高いんじゃ……それもこの人数分となると、相当」

「この肉には値段付いてないよ」

「えっ?」

「いい肉入ったらボクとフタ兄貴に連絡が来るの。今回もそう、近いうちに来てって言われてたから水月達誘ったんだ。だからこの肉には値段が付いてない。仕入れ値はそりゃあるけどね。ぁ、そういう肉はこの盛ってくれたヤツくらいで、注文して出てくるのには値段付いてるよ。ま、ボクは払わなくていいけど。だから気にしないで」

高い食事を奢らせてしまう罪悪感よりも、ヤクザ関係の店でタダ飯を食う方が怖い。

「家みたいなものだからね。お母さんに飯代取られたりしないでしょ? それと一緒。バイト代とかを水月が家に入れてるなら、そこから勝手に払われてる。そういう感じ」

一切入れていないけれど、なるほど。こういった飲食店の売り上げもサンの絵の売り上げも建設興業の売り上げも、最終的にはひとまとめになるのか。つまり結果的にはサンに奢られているということに……なる、のか?

「よく分かんなくなってきた……」

「水月は何も気にせず遠慮せずいっぱい食べていいってこと」

「……うん、ありがとう」

何を言われても遠慮はしてしまう、けれどどんどん焼いてどんどん食べているシュカを見ているとその気が失せてくる。

「レイちゃんのことも気になるけど、今は楽しくお肉食べよ。ね、レイちゃん。レイちゃん今どんな顔してる?」

「えっと……」

隣に座らせたレイの方を向く。肉をサンチュに包んで食べている彼は自らの頬に手を当て、幸せそうに緩んだ笑顔を浮かべていた。彼の頭の中に今は元カレは居ないのだろう。

「……めちゃくちゃ美味しそうに食べてて可愛いです」

「そっか、よかった。気にしてないんだね」

微笑むサンの代わりにレイの頭を撫でる。紫色の染髪の滑らかな触り心地と頭の丸みを堪能する。

「せんぱい……?」

「……可愛いよ、レイ。一生離さない……結婚しような」

「せんぱい……! はいっ、ぁ……で、でも、くー……形州が……」

「大丈夫だよ、何とかする。結婚しよっ? なっ? 嫌だなんて言わないよな、レイは俺が好きなんだもんな?」

「はい……好きっす、大好きっすよ、せんぱい」

美少年に愛を囁かれることほど嬉しいことはない。俺は上等な肉を食べた時以上に頬を緩ませた。

「ビビンバは小学校の給食で食べたことありますけど、クッパって食べたことないですね……食べてみたいんですけど、ちょっと不安。天正さん、どんな料理か知ってますか?」

「ん? ぁー……なんやったっけ、よぉ知らんねんけど……なんか姫さん攫うねん」

「焼肉屋にある飯系の料理って辛いイメージあるんですよね。薬味や香辛料系なら好きなんですが唐辛子系の刺すようなシンプルな痛みは、あんまり……」

「俺ぁ唐辛子大好きやで、水月に無理矢理食わされたいわぁ」

シュカとリュウは肉を食いながらも二人で話しているが、会話になってるか? アレ。

《うめぇ、こっちもうめぇ、やっぱ焼いた肉が優勝だわ》

《腹痛くて食えないとか言ってたくせに、めっちゃ食ってるじゃん》

《うめぇんだよ、スェカーチカも草ばっか食ってねぇで肉食え》

「んむっ……! んっ……んんっ!? んっ…………おいひい……しゅご、ぁ、やば、よだれ止まんな……てぃっふぅ……」

アキに無理矢理肉を食わされたセイカにティッシュを渡し、遠慮してキャベツを齧ってばかりの彼の傍から野菜を遠ざけた。

「……アンタの彼氏達はみんな可愛いし性格もいいけど、創作意欲は湧かないな~。やっぱり水月は唯一無二だね」

「そう? ありがとう」

二次創作は自分では行わないタイプのオタクなので、創作意欲が湧く湧かないの差がよく分からない。

「ん……?」

足音に反応してサンが通路の方を向く。店長が歩いてきている、追加の肉かと思ったが彼は手ぶらだ。後ろに誰か居る。

「こちらです」

「あんがと~。あれっ、サンちゃん? 来てたの?」

フタだ。

「兄貴? 兄貴も今日来たんだ」

「あれっ、待ち合わせじゃなかったんですかい」

「うん、でもいいよ。一緒に食べよ。いいよね水月。えっと……りゅーくんが近いかな? 座布団取って」

積まれた座布団の位置も彼氏達の座った位置も把握しているのかと改めてサンのすごさを認識しつつ、フタの座るスペースはあるか確認する。

「二枚だね、足音三人分あった。後ろに居るの誰?」

サンの言葉に驚いて再びフタの方を見る、店長の陰に隠れて見えなかった人物がフタの隣に並ぶ。ヒトだろうかという予想は外れ、俺は驚愕と恐怖で冷や汗が吹き出るのを感じた。

「こーんちゃ。お元気でした?」

「アンタか……」

黒い着流しに身を包んだその人物は、レイの元カレだ。褐色の肌、何よりあの異常なまでの三白眼、間違いない。レイを守らなければ。

「なんかいっぱい居る、若いの増えたんですか? ならちゃんと報告して欲しいんですけど……っと、こういう苦情はヒトさんの方ですかね」

スマホを操作した後、俺を指差して「みつき!」と自信ありげな顔で叫んでいるフタへの萌えも今はない。

《このめ連れて下がれ兄貴!》

大きな肉を切り分けるのならと用意された分厚い鋏が宙を行く。アキが投げたらしいそれは真っ直ぐに眉間を目差し、人差し指と中指の二本だけで止められた。

「随分ヤンチャな子が……可愛っ!? って言うか……アキきゅん!? アキきゅんじゃねぇか! うわぁ実物めっちゃ可愛い……」

鋏をフタに渡した彼は何故かアキの名を呼んだ、その疑問について考えるよりも先にアキが跳んだ、抱き合っていたレイと俺を飛び越えて側頭部への蹴りを放ち、先程よりもあっさりと止められ、足を掴まれ、宙吊りになり──

「聞いてたより凶暴~」

──ぐるんっと回転させられたかと思えばお姫様抱っこをされていた。いや、お姫様抱っことは少し違う。片腕で両足をしっかり抱かれ、両腕を背中で重ねられて掴まれ、手足を使えなくなっている。戦闘モードに入ったアキの困惑した顔なんて初めて見た、アキにも何が起こったのか分からなかったのだろう。多分、誰も目も思考も追い付いていない。一つだけ分かるのはたとえ全員で飛びかかったとしても彼には絶対に勝てないということだけだ。
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