冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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恋人の兄

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彼氏が十二人居ることを何とかフタに納得してもらえた、しかし俺が彼氏達とキスをするまで気付かないとは鈍い人だな。

「くー……形州が俺に十二人のうちの一人でいいのかとか言ってたじゃないすか」

「そうだっけ……?」

「んもぉー、せんぱいはすごくいい人なんすからね! 乱暴なことしちゃダメっすよ!」

「ふーん……」

フタにじーっと顔を見つめられ、引き攣らないよう気を付けながら愛想笑いを返した。

「お邪魔します」

「お邪魔しますっす」

サンの家に上がってすぐ、サンは俺の顔を撫で回した。

「わ……サ、サン? 何? 腫れはまだ引いてないと思うけど……」

「今回のアンタのめちゃくちゃな行動は愛情と勇気に溢れてたからね、描いてみたいと思って。うん……今度はじっとモデルしてなくていいよ、イメージ完成した。二階で描いてるから何かあったら呼んで、一階で好きに過ごしてていいよ」

言い終わるとサンは俺の返事を待たずエレベーターに乗って二階へ行ってしまった。

「……あ、言ってたっけ。サンさんは画家なんだよ。レイはイラストレーターだし、なんか絵の話とか出来るんじゃないか?」

「絵は絵っすけど、ジャンル違う気がするっすねぇ……盲目の音楽家ってちょくちょく聞くっすけど、画家もありなんすね。目が大事な気がするんすけど」

「目瞑っても自分の名前くらい書けるだろって言われたよ」

「あー……えー? いやぁ…………あっ! そういえば俺、お仕事の電話とメール溜まってるんすよ。くーちゃんの件でゴタゴタしちゃって……ヤバいっす、電話するっす、イチャつくのはまた後でにして欲しいっす」

「あ、あぁ……じゃあ、先にリビング行っとくよ」

レイは雑音が入らないようにと廊下に残り、俺はフタと共にリビングに移った。気まずくてソファへの腰掛け方が浅くなってしまう。

「…………」

フタはソファの右端に腰掛けた俺に対し、左端に腰掛けている。ただ肘掛けが欲しかっただけなのか、俺と距離を取りたいのか──って、恋人でなきゃ隙間は出来るだけ空けるか。

「あの……」

何か話すべきかと声を出すも、何も浮かばない。

「何?」

「えっと……ぁ、サンさんって昔から絵の才能あったんですか? 幼稚園の頃からずっと描いてたーとか」

いい感じの話題を思い付いたぞ。

「……知らねぇ」

「え、ぁ……そうなんですか。小さい頃は一緒に過ごしてないんですか?」

母親が違うと話していたし、無神経な質問だったかな。

「覚えてねぇの。いつからとか、何があったとか、どこ行ったとか……サンちゃんの手引いて歩いたり、泣いてるサンちゃん抱っこした覚えはあるけど、なんでとか、いつとか、その前後とか、分かんねぇ」

「あー……昔のことですもんねっ、高校生の俺でも幼稚園小学生の頃のことってよく覚えてないですもん。大人のフタさんは余計そうですよね、すいません」

「……覚えてねぇの普通?」

「ええ、まぁ、普通だと思います」

「そっか」

フタは安堵したようにため息をついた後、ソファの座面に踵を乗せて自らの膝を抱き締めた。

「母親の顔覚えてねぇのは?」

「小さい頃に離れちゃったんですか? まぁ、それなら……俺も父親の顔知りませんし」

「親父殺した男に懐いてんのは?」

「えっ? えっと……すいません、人殺しと接する機会のある方ってあんまり居ないでしょうし、普通かどうか判断出来るだけの具体例持ってません」

「……何言ってんの? 普通かって聞いてんだけど」

「分からない、です……すいません」

「そっか」

蹲っている彼が妙に気になって、俺は距離を詰めて彼の腕に触れた。刺青が彫られているが肌の触り心地は他の者となんら変わりない。

「……何?」

「落ち込んでるみたいに見えるので……よければ俺に相談してください、弟の恋人は義理の弟ですよ」

「落ち込んでる……そうかな、分かんねぇ。なんか寂しい。あとお前ムカつく」

サンに俺という恋人が出来て、兄として弟の交際は喜ぶべきだが自分と関わる時間が減るのは寂しいし、ぽっと出の人間に弟の関心が奪われた気がして嫉妬している、的なことかな?

「サンさんはフタさんのこと大好きだと思いますよ、見てて分かりますもん。妬いちゃいます」

「……お前弟居るんだっけ」

「はい、アキです」

「好かれてんの?」

「そうですね、好かれてると思います」

お、兄トークするか? 弟可愛い自慢大会を開こうじゃないか。

「……弟って兄貴好きなもんなのかな」

「優しいお兄ちゃんなら好きになってくれると思ってます」

「…………俺実はヒト兄ぃ嫌いなんだよな、なんでだろ、兄貴なのに……俺、変かな」

「あんな扱いされてて好きだったらそっちのが変ですよ。可愛い弟ボコボコ殴るヒトさんが変なんです」

サンに似た幼い笑顔で笑ってくれた。彼は兄であり弟でもあり、どちらの顔も見られる。一粒で二度美味しいというヤツだ。

「その指折ったのもヒトさんなんですよね」

「多分」

「……本当、酷過ぎますよ」

指はおそらく、サンの恩人として探していた俺の周囲の人物を──アキとシュカを──傷付けたことに対するものだ。俺への謝罪であり、失態を演じたフタへの粛清だ。

「この間だってそうです、少し間違えただけであんなに殴って……俺ならアキが何やったって、殴って叱ったりなんて絶対しないのに」

「……みつき優しーなぁ。サンちゃん安心して預けられそーでよかったぜ」

「はい、任せてください」

「へへ……いいなぁサン、優しい恋人……俺も欲しい」

兄らしく振る舞っていた笑顔が曇る。血が染みたガーゼだらけの顔に触れようとしたその時、リビングの扉が開いた。

「お待たせしましたっすせんぱい! 電話終わったっすよ」

「レイ、お疲れ様。待ってたよ、大丈夫そうか? 仕事切られたりしてないか?」

「何とかなったっす、言うて数日っすから。せんぱいが早く動いてくれたおかげっすよ。俺あんな勝手に別れるなんて言ったのに……せんぱい、せんぱいぃ……」

にこにこと笑っていたのに次第に目に涙が浮かび、声が震え、言葉が紡げなくなって俺の胸に顔を押し付ける。

「……そうだな、随分心配したし傷付いたし頑張らさせられた。レイにはたっぷりお仕置きを受けてもらおうかな? 俺へのご褒美も兼ねてな」

「それ、は……なんか、えっちなことっすかね」

「もちろん、いいか?」

「はい……せんぱいの身体が大丈夫なら、早く俺がせんぱいのものってお腹の奥に刻み込んで欲しいっす」

既に下腹が疼き始めているのだろう、腰をくねらせながら俺を見上げたレイは発情した雌の顔をしていた。
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