冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ラーメン実食

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十二杯のラーメンが完成した。海鮮醤油のアッサリとしたいい匂いが鼻腔をくすぐり、腹を鳴らす。俺は深夜に食べるラーメンが一番美味いという俗説を支持しているのだが、適度な運動と風呂を越えた今なら時間帯的には深夜ではないがそれに匹敵する味わいになるのではないだろうかと思っている。

「ただいま、です。美味しい、する、だろうです……匂いー、です」

「美味しそうな匂いと言いたいのかな? ちゃんと秋風くんの分もあるよ、メープルと遊んでくれてありがとうね」

すっかり乾いた白髪はいつも以上にふんわりと広がっている。ネザメが今しているように俺もアキの髪の手触りを楽しみたい。

「狭雲くんもね。メープルと遊んでくれてありがとう」

「ぁ……いや、俺は……あんまり、何も……」

俺はセイカが投げたボールを犬とアキが取り合っているのを見た、トッピングに海苔を増やしながら俺はその時の様子を語った。

「そうなのかい、ただボールを拾うのではなく競争となればメープルはより楽しめただろうね。他の犬と遊ばせることもほぼないからねぇ……ふふ、よかったね、メープル」

「ネザメ様……食事直前にメープルを触るのはおやめください」

「メープルは汚くないよ」

「汚いです。手をもう一度洗ってください」

「汚くないったら」

「汚いんです」

「いただきまーす」

押し問答が始まる気配を察知した俺は手を合わせて挨拶を済ませた。他の彼氏達も俺にならう、少し遅れてネザメとミフユも手を合わせた。

「いただきます」

まずはスープを一口。煮干しや昆布の旨味が舌を温め、鰹節の風味が鼻を癒す。醤油の味が食欲を膨らませる。

「ん~! 美味し~! フユさんてんさ~い!」

「自分だけの力ではない。美味いのは貴様らが手伝ってくれたからこそだ」

膨らんだ食欲は感想を言う余裕を消した。麺をすすり、そのもちもちとした食感に唸る。スープを吸ってしなっとし始めた海苔を麺に巻き、また一口。

「ごっつ美味いわ。とりりんラーメン嫌いや言うとったけどどない……ぉわっ、メガネ外しとるんか」

「メガネが曇るから嫌いなだけで、味や食感の話ではありませんよ。美味しいです」

「美味ぁ食っとるんやったらええけど……風呂入る時も外しとらんかったくせに」

「一回お湯に浸ければ曇りませんからね。ラーメンを食べている時はそうもいかないでしょう」

ほうれん草も一口。スープをたっぷり吸っている。噛めばほうれん草の苦味とスープの旨味が口の中にじゅわっと広がり、箸を持つ手に力を入れさせる。

《スェカーチカ、みんな食う時にズゾズゾ言ってるけどアレ何、どうやってんの?》

《悪い……俺も麺すすれないからよく分からん》

卵をひと齧り。煮卵と呼べるほどスープを吸ってはいないが、レンゲでスープを追加すれば口の中でいい具合に混じる。特に水分を失っている黄身にはよく馴染んで美味い。白身の弾力ある食感もいい。

「……美味しいです、ミフユさん」

「あぁ、黙々と食ってたな」

「すいません、一通り食べるまで口が食べる以外のことするの拒否してて。目も耳もラーメン以外に向かないし……あれ、シュカ、メガネは?」

「曇るので外しました」

メガネをかけていないから分からないけれど、メガネが曇るのはそんなに嫌なことなのか? 冬場などはマスクのせいでメガネが曇っている人をよく見かけるが、みんな割と平気そうに歩いているけどな。

「曇るのってそんなに嫌なもんなのか?」

「…………ゲラッゲラ笑われるから、嫌です」

「可愛い理由……! 笑わないよぉ。シュカはズルいぞ、クール優等生で元ヤンってだけでズルいギャップなのに、その上色々と可愛いところが多くて!」

「知りませんよ……」

「うどんとか鍋も嫌いなのか?」

「うどんは冷たいものもあるので……鍋は小さい皿に取って食べるので、曇りませんから」

そうか、シュカは大食いだから一人で食べる時でも一人用の鍋じゃなくて土鍋で作るのか。

「なるほどなぁー…………カンナ、エロいな」

シュカとの会話が一段落ついたので彼氏達を見回し、カンナがちゅるちゅると麺をすすっている姿を見て、口が勝手に動いた。

「…………ぇ?」

「どういうことだい? 水月くん」

「あっ、いや、その……ラーメン食べてる口元が、エロっ……セ、セクシーだなーって」

「ふぅん……?」

ネザメがカンナを見つめる。他の彼氏達の視線もカンナの口元に向いている。カンナは箸とレンゲを持ったままぷるぷると震え、食べる手を止めてしまった。半分しか見えていない顔はあっという間に赤くなった。

「見ちゃダメ見ちゃダメ! もぉ~みっつんのバカぁ! 変態! セクハラ!」

「ご、ごめん……」

「みんなみっつん見なよ! しぐしぐがどんなにセクシーでもみっつんのが好きでしょ!」

それはそうだ、とでも言うように彼氏達の視線が全て俺に向く。これが因果応報か。だが、俺は超絶美形となってから日々視線に晒され、それに耐えうる所作を身に付けた。身に付けさせられた、ハリセンを片手に持った母によって。

「……やはり美しいねぇ、惚れ惚れしてしまうよ」

「鳴雷一年生の箸使いは素晴らしいな。箸を綺麗に使える者、ミフユは好きだぞ」

「そういえばシュカせんぱいって箸の持ち方変っすよね」

レイの一言でシュカが硬直する。

「そうなん? 普通やと……あ、ほんまや、よう見たら薬指変や」

「……まぁこれくらいならそんなに気にしなくてもいいんじゃないか?」

「それはそうっすね。それよりアキくんがちゃんとお箸使えてるのすごいと思うっす! 左利きなのもあって、見てると「器用だな~」って思うんすよね」

「分かる~、右利きから見ると左利きってマジ器用だよね~」

「その分右手不器用なんだろうけどな」

彼氏達の話題は一瞬で移ったが、シュカはメガネをかけ直して自分の右手と隣に座っているリュウの手を見比べている。指をうにうに動かして、持ち方を変えようと頑張っている。

「……シュカ? いいんだぞ、ちょっとくらい違ってても。それくらいならほとんどの人気付かないし」

シュカは弱々しく首を横に振った。微かにだが確かに、鼻をすする音が聞こえた。レンズの奥の瞳は潤んでいる。

「…………シュカ、ちょっといいか?」

俺は席を立ってシュカに背後から覆いかぶさり、彼の右手に右手を重ねた。

「薬指は、ここ……あんまり変わらないだろ?」

箸を軽く乗せるだけのはずの薬指が、箸に対して突っ張っていただけの差異だ。微かな差だからすぐに矯正出来るだろう、そう思って席に戻ったが、シュカはしょっちゅう箸を滑らせるようになった。
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