冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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タコ殴り

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シュカと共に眠った翌日、ぴょんっと俺の上に飛び乗った何かに顔をベロベロと舐め回された。

「んぅ、んっ、んん……な、に、何っ? 臭っ、犬臭っ!?」

起きると大きな口が見えた。ハッハッとぬるい息を吐きかけられている。起き上がると俺の胸と腹に足を置いていた犬はベッドから飛び降り、尻尾を振って俺を見上げた。

「メープルちゃん?」

ワン! と返事があった。窓から陽光が射し込んでいる、もう朝か。起こしに来てくれたのかな?

「な、何だ?」

ワン、ワンと続けざまに吠えている。俺の視線を自分に向けた犬は開いた扉に近付き、また鳴いた。

「呼んでるのかな……ちょっと待ってくれよ」

寝間着から着替えてシュカの肩を揺すり、メガネを手渡し、一足先に階段を降りた。俺を導いていた犬は俺がダイニングの扉を開くとキッチンに居るミフユの元へ走った。

「む、メープル。鳴雷一年生を起こしてきたか、よくやった」

ミフユはそう言うと切っていた野菜を一欠片足元に落とした。犬はそれを食べ、ちぎれんばかりに尻尾を振る。

「ミフユさん。メープルちゃんに顔めちゃくちゃ舐められたんですけど」

「起こせと頼んだのだ、人手が欲しい。朝食と昼食の準備を手伝って欲しいのだが……その前に顔と手を洗ってこい」

犬臭さを洗い流し、料理を手伝う。そうしていると起きてきたシュカとカンナも手を貸してくれた。作り終えた朝食を机に並べ、昼食は保冷バッグに詰め、俺達も席に着く。

「今日のご飯も美味し~い! もう最高!」

「分かる……! 家に帰ってからのことはもう想像したくないな」

「同棲しましょ。せ、ん、ぱ、い」

「お前が卒業したらな」

「ウヒャッホイ!」

奇声を上げながら拳を握った俺に対し、彼氏達の冷たい視線が突き刺さる。

「でもお前単体じゃここまで美味くなさそうだな」

「そりゃ確かにミフユさんの手腕あってこそですけども! 二、三年あれば先輩を満足させるレベルまでには持ってけますよ」

「今の段階でも多分満足はするが……」

「大満足させます!」

歌見は「期待して待ってる」と楽しそうに笑った。

「卒業したら同棲、ね……ボクん家住む? 無駄に広いしイケると思うよ」

「俺もみっつんと同棲した~い」

「俺も」

「私もいいですか?」

「無理かもしんない」

サンの家に居候するにしろ、新たな家を見つけるにしろ、まだまだ先の話だ。今は楽しいばかりの旅行を堪能しよう。



今日も砂浜にテントを広げ、海で遊ぶ。ひたすら泳ぎ回るシュカ、ボール遊びに興じる犬やカンナ、各々が各々の楽しみ方を見つけている。

「ふぅ……」

「鳴雷、泳がないのか?」

テントの下で彼氏達を眺めているとセイカに話しかけられた。

「昨日も夜更かししたからちょっと疲れててな。休んでから行くよ」

料理も疲れの原因であることは話さないでおこう。

「……セイカ、飯中は静かだったけど」

「あぁ……まぁ、食べてたから」

「セイカは将来俺と同棲してくれる気あるのか?」

もちろん「ある」以外の返事は受け付けない。もし「ない」と言ったら撤回するまで俺の愛を注ぐ。

「鳴雷が言うなら……俺他に行くとこないし、鳴雷が飼っててくれないならその辺で野垂れ死にするだけだし」

「飼うって言うな! 野垂れ死になんかさせないぞ、セイカは一生俺の傍に居るんだ! ところでアキはどこ行ったんだ?」

「あぁ、なんか潜るって言い出して……俺はここで待ってる。秋風にくくり付けられたまま潜られたら俺は死ぬからな……楽しく遊んでる最中に俺が死体になってたらトラウマになりそうだ、全力で嫌がったぜ。何とか離れさせてもらえた」

一度他人を経由しないと自分の命や身体を大切に出来ないセイカの特性はいつか修正出来るのだろうか。これはこれで可愛いけれど、不健康に思えるのでやめさせたい気持ちもある。

「何とか、か。アキは本当にセイカに懐いてるなぁ。ま、一緒に過ごした総合の時間は既に俺より長いもんな、順当か」

「そう……なのか?」

「あぁ、アキと暮らし始めたのは割と最近なんだ。他の彼氏も居るし、学校もあったし……そんなに長い時間を過ごしてる訳じゃないんだよ。だからこそ兄弟じゃなく、恋人になれたってのもあるけど……言葉も通じないし、セイカが来るまでは本当コミュニケーション取るの大変でさぁ。セイカが家に住んでくれて本当によかったよ」

「……俺が居て、よかった?」

「あぁ、もちろん! 当然翻訳面だけじゃなくて、俺の恋人としてもな。可愛い彼氏がずっと家に居るなんて最高だよ、一足先の同棲たまんないね」

セイカは口角をゆっくりと持ち上げ、嬉しそうに微笑んだかと思えばポロポロと涙を流し始めた。

「セ、セイカっ? どうした?」

「ぁ……ご、ごめんなさいっ、俺、事故……遭ってから、俺ホントにおかしくてっ、涙が、そのっ、感情昂ると抑えられなくなって……!」

「あ、あぁ、いや、いいんだ、いいんだよ泣いても……謝らなくていい。ただどうしたのかなって」

「……うれ、しくて。鳴雷の……役に立ててて、鳴雷に、必要としてもらえてて……嬉しい。鳴雷、鳴雷っ……俺がんばる、頑張って、頑張って……鳴雷の役に立つから、傍に居させて」

「セイカ…………いいんだよ、何もしなくても、出来なくても……傍に居てくれたら俺はそれだけでいいんだ」

いい加減に俺の愛を分かって欲しい。まだ足りないのだろうか、伝え方が悪いのだろうか。

「ぅ、ん……鳴雷は、そう言ってくれるって分かってた……でも、ダメ、ダメなんだ、役に立たなきゃ……俺が、許せない」

分かってはいてくれているのか。俺の愛はちゃんと伝わっているようで一安心だが、自罰的な考え方は問題だ、幸福の邪魔になる。どうにか変えてやりたい。

《スェカーチカ~! 捕れたぜ何か気持ち悪ぃの……お、兄貴も居んのか。邪魔したか?》

アキが戻ってきた。その手にはタコらしき生き物が握られている。うねうねと足をアキの手に絡みつけている、抵抗しているのだろうか。

「何だよそのタコ! 潜るって海底を眺めて楽しむとかじゃなくて漁かよ!」

《このキメぇの毒あんのかなー……ぁん? スェカーチカ泣いてんじゃねぇか! またかてめぇこのクソ兄貴いい加減にしろよ!》

「ぅあぁ!? タコぉ!」

何故か突然怒り出したアキにタコで殴られた。

「これがホントのタコ殴り……」

「ぐすっ……おい、秋風……タコが可哀想だろ」

「俺はぁ!?」

アキは暴れるタコの足の先端を口に含んだ。その他の足が頬や手に張り付いているが気にしている様子はない。

《これで舌がピリピリしてきたらアウトだ》

「アキ!? お、おいセイカ!?」

「毒がないか確認してるみたいだな、舌が痺れたらダメだって言ってる」

「サバイバル漫画で見たことあるぞその知識! 食う気!? そのタコ食う気なのアキきゅん!」

「タコは密漁になるかもしれない海産物だぞ」

「密漁!? 犯罪!?」

「紅葉……には聞いても無駄そうだな。年積にこの辺の漁業権どうなってるか聞いてきてくれ。共同漁業権持ってるならあのタコ食っても問題ないし、ここが漁業権が設定されてない場所ならそれも問題ないんだけど」

「……タコ逃がせばよくない?」

足を噛み切ってはいないようだし、タコも元気そうなので、セイカに頼んでアキを説得してもらい、タコを逃がさせた。

《自分で取ったもん食っちゃダメとか面倒臭ぇなぁ日本は》

ぶつぶつと言っている文句の内容もセイカが翻訳して俺に教えてくれる。アキの考え方や性格が知れるのは嬉しい。

「やっぱり国によってその辺の法律違うのかな?」

「俺は言語しか勉強してないから詳しくは分からないけど、秋風が法律に則った生活してたと思わない方がいいぞ。コイツ小学校にすらまともに通ってない上に、話聞いてる限り秋風の親父……あんまり言いたくないけどマジで頭おかしいからな」

「セイカがそう言うってよっぽどだな」

「どういう意味だよ」

「セイカの親御さんも頭おかしいじゃん、こんっっな可愛い子に飯やらねぇとか叩くとかホントふざけんなよあのクソアマ」

「……人の母親あんまりめちゃくちゃ言わないでくれよ」

セイカを落ち込ませるつもりはなかった、怒りに任せて悪口を言うなんて気が緩んでいたな。

「ごめんな、気を付けるよ」

「…………うん」

《スェカーチカ、ひょっとして鳥とかもダメなのか? 公園の水鳥くらいなら銃なしでも捕れそうだと思ってたんだけど》

「……お前の弟は倫理観と遵法精神が欠如してるな」

「人の弟めちゃくちゃ言うじゃん」

アキが今何を言ったのかは翻訳してくれなかったけれど、それにしても随分な言いようだ。仕返しのつもりだったのだろうか。
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