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ただ一人の酔っ払い
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肉、肉、肉、机を埋め尽くす肉料理の数々。野菜は付け合わせと口直し程度。俺も肉は好きだし、どれも美味しいけれど、太りやすい体質なのでカロリーが気になる。
「ん~! 超美味しい~!」
彼氏の中で最も体型を気にしているはずのハルは鶏の足にかぶりついている。ナイフとフォークで肉だけを取って食べるのではなく、足首と呼ぶべき部分を掴んで口周りが汚れるのも気にせず直接歯を立てるとは、美少女のような見た目に反していてとてもイイ。イイけど、仲間が一人減った気分だ。何仲間だって? カロリー気にする仲間だよ。
「タレの味がいいよね~、いくらでも食べれる~」
「自分ちょっと前は昼飯サラダのみとかやっとったくせに」
「アレはライブ近かったからだも~ん。次のライブは地方だし~、しばらくは食べたいもん食べたいだけ食べる~」
「ほーん……」
女装していようと、無茶なダイエットをした過去があろうと、男子高校生だということだろうか。
「ナナくん、ステーキ切り分けて」
「はい」
「自分で切れないんすか?」
「めんどくさい。料理なら手間かけられるけど、いざ食べるってなったら口に運ぶ以外の動作したくない」
歌見の手が止まる。サンはそれに音で気付き、歌見の肩に顎を乗せた。
「……? ナナくん? ナナくんは優しいから、盲たボクのお世話してくれるよね?」
「…………自分で出来るんですよね?」
「出来る。でもめんどくさい」
「……別にいいですよ、このくらい。目を盾にしなくたって、面倒なこと押し付けてくれて構いません。歳上は、敬わないと、ですからね」
歳上であることを強調されたサンは僅かに不愉快そうに顔を顰めた。
「鳴雷、やべぇ。片手でステーキ切れないことが判明した」
「あ、あぁ……いや前から分かってただろ、今まで何回か食ったよなステーキ」
「やべぇには続きがある。俺がステーキを切れずに困っていることに秋風が気付いたらまず間違いなく切ってくれる。それはよくない、今日は誕生日なのにそんな雑用させられない」
「俺が切ってやるから寄越せよ」
「秋風の皿を跨ぐのはなんか、行儀が悪い気がする」
「いいから渡せって」
細かいことを気にするヤツだと微笑ましく思いつつ手を伸ばそうとしたその時、ぶどうジュースを飲んで一息ついたアキがセイカの皿を見た。
《スェカーチカ、ステーキ切れねぇのか?》
「あっ」
《直接こうやってフォークで刺して持ち上げて食っても……んむ、いいぜ。肉汁逃げねぇし、この肉柔らかいから楽に噛み切れるし》
《そ、そっか……真似させてもらうよ》
「……セイカ?」
「セーフ。そのまま齧り付くからいいよ、ありがとな鳴雷」
どんな会話だったのかは、ステーキを丸齧りしているアキと、アキの元に置かれた綺麗なままのナイフを見れば何となく分かった。
(アキきゅんもセイカ様も、当然シュカどのもまさかのハルどのもナイフ不使用。うーむ、美しい所作でナイフとフォークを使っているネザメちゃまとミフユどのを見ると、なんつーか……ウチのって下品だなって感じしますな)
まぁ、格式高いレストランだとかで食事をしている訳ではないからいいけれど、格式高いレストランで出てきても違和感のないレベルの料理ではあるからなぁと一人心の中でため息をつく。
(わたくしはちゃんと切り分けてまそ)
一切れ食べた後、ローストポークに浮気していたけれど、二切れ目をそろそろ食べようとフォークを刺す。
「ん……?」
味が薄い。味付けはもちろん、肉の味や香りそのものが薄い。とはいえこれがグラム百円くらいの肉ならば十分なくらいの薄さだが、問題は美味さではなく突然薄くなったことだ。
「んー……?」
一口齧った二切れ目を皿に置き、塩コショウをかけて食べてみる。塩コショウの味と香りは普通に感じた、俺の舌と鼻の不具合ではないようだ。不思議に思いつつぶどうジュースを飲んでみると、こちらも薄くなっていた。まるで水を少し混ぜたかのような味わいだ。
「…………」
まぁ不味くはない。俺は一気にジュースを飲み切り、ミフユに二杯目を頼んで飲んだ。
「普通に戻ってる……」
元通りの味だ。不思議だが、元に戻ったならいいかと気にしないことにした。
生ハムとレタスを重ねて口に運ぶ。アキはおかわりのステーキにご満悦だ。
「美味しい……秋風さん様様ですね」
シュカもステーキのおかわりをもらっている、何枚用意しているんだろう?
「アキく~ん、そういえばいくつになったんすか? せんぱいと一歳差っしたよね、同い歳になったんじゃないすか?」
「ゃ、俺のが誕生日先にあるから結局一歳差だぞ」
「俺らは同い歳になっちゃうよね~、しぐしぐ」
「ぅ、ん……十、五歳」
「ってことはカミアもだよね~、やば~い!」
「俺も俺も」
「あっそ」
カンナとカミアと自分が同い歳であることにははしゃいでいたのに、リュウには塩対応だ。
「あっはっはっ! そーなんすかぁ! 残念っしたねアキくん!」
「……なんかテンションおかしいな」
「こいつのだけ中身ワインだからな」
酔っているのか。よくよく見れば顔がほんのりと赤い。
「歌見せんぱいもワイン飲みましょ~っす! サンさんも!」
「サンかサンちゃんって呼んで」
「サ~ンちゃんっ! おっ酒~飲もっ!」
「い~や!」
テンションだけを揃えたサンはジュースを飲み終えるとミフユにおかわりを頼んだ。
「サン殿はワインはいらないのか?」
「今はアルコールの風味欲しくないかな」
「お肉にはワインが合うのに~」
残念そうにボヤいたレイはごくごくと喉を鳴らしてワインを飲み、ぷはっと口を離し、おかわりと叫んだ。
「……ビールの飲み方じゃん」
最初の頃は静かにそれらしく飲んでいたのにな、と呆れてため息をついた。
「ん~! 超美味しい~!」
彼氏の中で最も体型を気にしているはずのハルは鶏の足にかぶりついている。ナイフとフォークで肉だけを取って食べるのではなく、足首と呼ぶべき部分を掴んで口周りが汚れるのも気にせず直接歯を立てるとは、美少女のような見た目に反していてとてもイイ。イイけど、仲間が一人減った気分だ。何仲間だって? カロリー気にする仲間だよ。
「タレの味がいいよね~、いくらでも食べれる~」
「自分ちょっと前は昼飯サラダのみとかやっとったくせに」
「アレはライブ近かったからだも~ん。次のライブは地方だし~、しばらくは食べたいもん食べたいだけ食べる~」
「ほーん……」
女装していようと、無茶なダイエットをした過去があろうと、男子高校生だということだろうか。
「ナナくん、ステーキ切り分けて」
「はい」
「自分で切れないんすか?」
「めんどくさい。料理なら手間かけられるけど、いざ食べるってなったら口に運ぶ以外の動作したくない」
歌見の手が止まる。サンはそれに音で気付き、歌見の肩に顎を乗せた。
「……? ナナくん? ナナくんは優しいから、盲たボクのお世話してくれるよね?」
「…………自分で出来るんですよね?」
「出来る。でもめんどくさい」
「……別にいいですよ、このくらい。目を盾にしなくたって、面倒なこと押し付けてくれて構いません。歳上は、敬わないと、ですからね」
歳上であることを強調されたサンは僅かに不愉快そうに顔を顰めた。
「鳴雷、やべぇ。片手でステーキ切れないことが判明した」
「あ、あぁ……いや前から分かってただろ、今まで何回か食ったよなステーキ」
「やべぇには続きがある。俺がステーキを切れずに困っていることに秋風が気付いたらまず間違いなく切ってくれる。それはよくない、今日は誕生日なのにそんな雑用させられない」
「俺が切ってやるから寄越せよ」
「秋風の皿を跨ぐのはなんか、行儀が悪い気がする」
「いいから渡せって」
細かいことを気にするヤツだと微笑ましく思いつつ手を伸ばそうとしたその時、ぶどうジュースを飲んで一息ついたアキがセイカの皿を見た。
《スェカーチカ、ステーキ切れねぇのか?》
「あっ」
《直接こうやってフォークで刺して持ち上げて食っても……んむ、いいぜ。肉汁逃げねぇし、この肉柔らかいから楽に噛み切れるし》
《そ、そっか……真似させてもらうよ》
「……セイカ?」
「セーフ。そのまま齧り付くからいいよ、ありがとな鳴雷」
どんな会話だったのかは、ステーキを丸齧りしているアキと、アキの元に置かれた綺麗なままのナイフを見れば何となく分かった。
(アキきゅんもセイカ様も、当然シュカどのもまさかのハルどのもナイフ不使用。うーむ、美しい所作でナイフとフォークを使っているネザメちゃまとミフユどのを見ると、なんつーか……ウチのって下品だなって感じしますな)
まぁ、格式高いレストランだとかで食事をしている訳ではないからいいけれど、格式高いレストランで出てきても違和感のないレベルの料理ではあるからなぁと一人心の中でため息をつく。
(わたくしはちゃんと切り分けてまそ)
一切れ食べた後、ローストポークに浮気していたけれど、二切れ目をそろそろ食べようとフォークを刺す。
「ん……?」
味が薄い。味付けはもちろん、肉の味や香りそのものが薄い。とはいえこれがグラム百円くらいの肉ならば十分なくらいの薄さだが、問題は美味さではなく突然薄くなったことだ。
「んー……?」
一口齧った二切れ目を皿に置き、塩コショウをかけて食べてみる。塩コショウの味と香りは普通に感じた、俺の舌と鼻の不具合ではないようだ。不思議に思いつつぶどうジュースを飲んでみると、こちらも薄くなっていた。まるで水を少し混ぜたかのような味わいだ。
「…………」
まぁ不味くはない。俺は一気にジュースを飲み切り、ミフユに二杯目を頼んで飲んだ。
「普通に戻ってる……」
元通りの味だ。不思議だが、元に戻ったならいいかと気にしないことにした。
生ハムとレタスを重ねて口に運ぶ。アキはおかわりのステーキにご満悦だ。
「美味しい……秋風さん様様ですね」
シュカもステーキのおかわりをもらっている、何枚用意しているんだろう?
「アキく~ん、そういえばいくつになったんすか? せんぱいと一歳差っしたよね、同い歳になったんじゃないすか?」
「ゃ、俺のが誕生日先にあるから結局一歳差だぞ」
「俺らは同い歳になっちゃうよね~、しぐしぐ」
「ぅ、ん……十、五歳」
「ってことはカミアもだよね~、やば~い!」
「俺も俺も」
「あっそ」
カンナとカミアと自分が同い歳であることにははしゃいでいたのに、リュウには塩対応だ。
「あっはっはっ! そーなんすかぁ! 残念っしたねアキくん!」
「……なんかテンションおかしいな」
「こいつのだけ中身ワインだからな」
酔っているのか。よくよく見れば顔がほんのりと赤い。
「歌見せんぱいもワイン飲みましょ~っす! サンさんも!」
「サンかサンちゃんって呼んで」
「サ~ンちゃんっ! おっ酒~飲もっ!」
「い~や!」
テンションだけを揃えたサンはジュースを飲み終えるとミフユにおかわりを頼んだ。
「サン殿はワインはいらないのか?」
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残念そうにボヤいたレイはごくごくと喉を鳴らしてワインを飲み、ぷはっと口を離し、おかわりと叫んだ。
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