冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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泣いてばかりの

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昼食を終え、皿を集めて流し台に持っていく。ノヴェムが着いてきて手伝いたがったが、彼の身長では流し台に届かないし我が家には踏み台などはない。

「あいる、へるぷゆー」

「そう言われてもなぁ……じゃあお兄ちゃんの応援しててくれるか?」

ノヴェムは首を傾げる。

「……セイカ~、へるぷみー」

そんなやり取りをしているうちに皿を洗い終わった。大皿五枚だけなのですぐに済むのだ、ノヴェムは手伝えなかったことが不満なのか頬をぷくっと膨らませている。

「…………えい」

膨れたほっぺを両側から指で押さえると、ぷぅっという音を立てて空気が漏れる。

「んふふふふ」

「……ぶぅー」

可愛くて面白くて笑ってしまうと、今度は更に大きく頬を膨らませた。これはもうフリだろうともう一度頬を押さえ、空気を吐かせようとするとノヴェムは俺が頬を押さえる寸前に頬を引っ込ませた。

「……ふふふっ」

「……えへへへ」

なんだ、子供って結構可愛いんだな。騒がしくて話が通じない生き物なんて苦手に思っていた俺はバカだったらしい。

「すっかり仲良くなっちゃってぇ……いいなー。ノヴェムちゃん、おいで?」

義母が緩く手を広げるとノヴェムはさっと俺の背後に隠れた。

「……なんで?」

「はは……どうしてでしょうね。シングルファーザーとか言ってたから、あんまり女の人に慣れてないとか?」

「あー……えー?」

一度納得しかけたくせに、すぐに疑問を声にする。

「もぉー、せっかく可愛くてもこんなに懐きにくいんじゃつまんない。はぁ……水月くん、ノヴェムちゃんがもう少しこの場に慣れて心開いてきたら呼んでー?」

子育てはもちろんペットを飼うことも向いてなさそうだなあの人……と思いつつ、義母が離れてようやく俺のに隠れるのをやめたノヴェムと共にダイニングへ。

《よぉぺド兄貴。随分可愛がってるみてぇだな、てめぇの弟はこの俺だけだっつーのにさぁ? あー面白くねぇ》

アキが何やら不機嫌そうに話しかけてきた。セイカに翻訳を……セイカどこだ? あぁ居た居た、リビングのソファの上だ。テディベアの毛並みを整えている。

「セイカ、ちょっと翻訳頼みたいんだけど今アキが言ってたこと聞いた?」

「え? いや……」

「そっかじゃあもう一回言ってもら──」

《テディ!》

「──わなきゃ、ん? どうしたノヴェムくん」

俺にぴったり引っ付いていたノヴェムが両手を広げてセイカの元へ。セイカも懐かれて……いや違う、彼が狙っているのはテディベアだ。

「な、何だよっ、やらないぞ!」

セイカは大きなテディベアを庇うように身体をひねる。

《見せてよぉ、触りたいよぉ》

《嫌だ!》

《よごさないからぁ。ノヴェムもおっきいテディだっこしたい……》

《これは俺の大事なぬいぐるみだ、ガキに触らせてたまるか!》

《……じゃあ、テディのおなまえおしえて?》

《んなもんねぇよ、向こう行け》

ロシア語と違って聞き覚えのある単語だとかは登場しているが、どんな会話なのか理解出来る程の英語力は俺にはない。しかし、二人の仕草や表情で何となく分かる。ノヴェムがテディベアを触りたがっていて、セイカがそれを嫌がっているのだろう。

「……ぅええぇええん!」

「あ、泣いた。おいでノヴェムくん」

手を広げて屈むとノヴェムは素直に俺の方へぽてぽて歩き、俺の首に腕を回した。俺は小さな身体を抱き上げて軽く揺らしながら背をトントンと叩いてやった。

「よしよし……ごめんなぁ? アレはセイカの大事な物なんだよ」

《おなまえないなんて、テディかわいそう。いじわる》

「なかなか泣き止まないなぁ、そんなにぬいぐるみ好きなのか? どうしよう……」

「お前いっぱい持ってるだろ、貸してやれよ」

「…………推しぬいは子供に触らせたくない。セイカ、ちょっとだけ貸してやってくれないかな? その間は俺がテディベア代わりに隣居るからさ」

セイカは数秒考えて、俺にテディベアを乱暴に投げつけた。俺はノヴェムを下ろし、テディベアを拾って渡してやった。

「はい、貸してあげるって。セイカにお礼言っとけよ?」

「……涙つけんなよ」

ノヴェムの顔を軽く拭ってから俺は約束通りセイカの隣に座った。ノヴェムは床にペタンと腰を下ろし、機嫌良さげにテディベアを愛でている。

《テディ、痛くなかった? おっきいねぇ、ノヴェムのテディよりずっとおっきい。かわいいね》

「ぬいぐるみと話してるよ、可愛いなぁ」

「……ふん」

「もちろん四六時中ぬいぐるみ抱いてるセイカもめちゃくちゃ可愛いぞ!」

「う、うるさい!」

俺が隣に座るという条件でテディベアをノヴェムに貸すことを了承したくせに、抱きつこうとすると猫のように両手で突っ張る。そんな気まぐれなところが大好きだ。



セイカにじゃれつき始めてから数分後、ノヴェムがテディベアを持って立ち上がった。

《貸してくれてありがとう》

《……あぁ、どういたしまして》

セイカにテディベアを返しに来たようだ。差し出されたテディベアを受け取ったセイカは上書きするように抱き締めて撫で回す。

《おなまえ、つけてあげてね》

《……嫌だ》

《いじわる。ダメだよ、また腕とられちゃったらどうするの》

《は……? あぁ、ははっ……妥当だろ》

セイカが笑っている。仲良くなれたのかな? いいことだ。

《またね、せーかお兄ちゃん。みつきお兄ちゃん、お膝すわってもいい?》

「……膝乗りたいってさ」

「お膝乗りたいのか? いいぞ、おいで」

脇の下に手を入れて抱き上げ、膝に乗せてやるとノヴェムは嬉しそうに俺の顔を見上げた。しかし、その目は相変わらず前髪によって隠れたままだ。

「ちっちゃいうちから目隠してたら目悪くなっちゃうぞ」

前髪をどかそうとするとノヴェムは俺の胸に顔を押し付けた。偶然ではない、明らかに顔を見られるのを嫌がっている。

「……ノヴェムくん? どうしたの?」

頬をつつくと彼はあっさり顔を上げた。頬をぷにぷにと弄ぶフリをして前髪の下に親指を押し込んでみたが、カンナのような傷跡の感触はない。

《どけ兄泥棒》

前髪をどかしてしまうべきか迷っていると、アキがひょいっとノヴェムを抱き上げて床に下ろし、代わりに俺の膝の上にどっかりと座った。

《……? お兄ちゃ……ふぇ、ぅ、えっ……》

「こ、こらアキ! なんてことを……!」

「うえぇええええんっ!」

「あぁほら泣いたぁ! うるさっ、もぉ……一旦下りろアキ、下りっ……下りろ!」

泣き叫ぶノヴェムを慰めるため、抱き上げるため、立ち上がりたいのにアキがどいてくれない。俺の膝に乗った上にソファの背もたれを掴んで離そうとしない、押してもビクともしない。

「くっ……強い! あぁもうっ、アキどきなさい!」

預かった子供の目を腫らしたり喉を痛めたりしてしまっては親御さんとの関係が悪化する、近所の人間関係は良好に保っていたいのだ。だから俺はどうにかしてアキを引き剥がし、ノヴェムを早急に慰めなければならない。
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