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百万とバリカンの相談
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旅行から帰った次の日の朝早く、俺は百万円の当選について母に報告した。
「あらすごいわねぇ。あ、葉子には悟られちゃダメよそれ。アンタ口座持ってたわよね? 銀行受け取りだっけ、何かいんの? 印鑑とか。私宝くじ買ったことないから分かんないのよね」
「本人確認書類と印鑑が必要とのことですが、本人確認書類とは一体」
「学生証でいいんじゃないの?」
「免許証とかってサイトに書いてて……」
「顔と名前載ってんだから似たようなもんでしょ。まぁ後で見てあげるから待ってなさい。ってか受け取り方調べてるなら私にわざわざ言いに来なくてもいいのよ? 警戒心足りないわねぇ、宝くじ当てた時に一番警戒すべきは身内なのよ」
宝くじを買ったこともないくせに、高額当選者みたいなこと言ってくる。
「違いますぞママ上。警戒心が足りないのではなく、ママ上への信頼度が高いのですよ」
「もう百万あげるわ」
「むぐっ……ぷはっ、ハグか投げ銭どっちかでいいんですよ喜びの表現は! ポンと百万とか言わないでくだされわたくしの金銭感覚が破壊されてしまいまそ! この家出たら破滅しまっそぉ!」
「冗談よ」
「……真面目な相談なのですが、百万……どうしましょう」
「労せず手に入った金はパッと使うに限るわ。泡銭は夢、思い出にするのよ」
親なら貯金しろとか堅実にとか説教するべきじゃないか?
「そうねぇ、リムジン借りて彼氏全員呼んでシャンパンパーティーとかしたら?」
「金の使い方がバブリーでそ。未成年ばっかりなのにそういうパーティーしてもあんまり楽しめなさそうですし……借りたリムジンってカーセックスしちゃダメですよな?」
「じゃあ遊園地のプレミアムパスでも買ったらいいじゃない」
「あっ学生に寄り添ってくれた」
「好きに使いなさいな。アンタならバカなことしないでしょう? 私もアンタへの信頼度は高……くは、ないわね。アンタ虐められてたこと隠してたし、セイカこっそり居候させようとしてたし、彼氏の元カレと喧嘩して大怪我してたし……アンタかなりバカよね」
真面目な顔で「バカ」とか言わないで欲しい、バカたる所以を事前に箇条書きのように並べ立てるのもやめて欲しい。
「うぇえん……セイカ様ぁ」
キッチンからダイニングへと移り、寝ぼけ眼なセイカに泣きつく。
「何だよ、疲れてんだよ……お前らが一晩中愛の言葉囁きながらちゅっちゅちゅっちゅさわさわさわさわとよぉ……してきたからよぉ……全然寝れてないんだよなぁ! 俺!」
「ついテンションが……後悔はしていませんぞ」
「反省はしといてくれよ。今日はどっか行くのか? 俺は飯食ったら二度寝するからな」
「銀行に当選金の受け取りに行こうかと。まぁ振り込まれるまでに一週間くらいかかるそうですが」
「あぁ……お前店で受け取れなかったんだっけ」
「セイカくんもスクラッチ削ったの?」
朝食を二プレート運びながら母がそう尋ねた。俺は席を立ち、残りのプレートを取りに行った。
「あ、はい……俺と、鳴雷と秋風と霞染と……あと、分野っていう京都で会った人と、十枚セットの宝くじ五等分したんです」
「なるほど」
「俺と秋風は二千円、霞染は五万、鳴雷は百万当たりました」
「えぐいわね何そのセット。んなもん当てたら逆に怖いわ。ん? 分野って子は?」
「スカでした」
「あら~……って言うか、当選金の山分けとかしないのね、アンタら。普通揉めない? お金出し合って買ったんなら等分じゃないとさ」
「そういやそうですな。しげちー達もそうしてましたぞ」
何故あの時そんな話にならなかったのだろう。十枚組の半分以上の券が当たるという異常事態や金額で混乱していたのだろうか。
「後からも別に言ってきてないし……」
スマホを取り出しハルからの連絡を確認する。先日のデートが楽しかったこと、家族の愚痴やアキとセイカの体調の心配……宝くじへの言及はない。
「連絡来てるのか?」
「あぁ、アキ目大丈夫かって」
「別に大丈夫そうだぞ」
「それと、結構歩かせちゃったからセイカの足も心配だってさ」
「え」
セイカはハルが自分の心配をしていることが信じられなかったようで、俺の手首を掴んでスマホを覗いてきた。
「本当に霞染が俺の心配してる……」
「ハルは優しい子なんだよ。ただちょっと感情激しめなだけで」
「…………うん。鳴雷の彼氏はみんな良いヤツだよな、俺以外は」
何故かヒトの顔が浮かんだ。
「何言ってるんだ、セイカもとってもいい子だよ。ぁ、でもなセイカ、今回はいいけどヤバいの見てる時あるから急にスマホ覗くのはダメだぞ」
「ごめん……ヤバいのって?」
「ケモ、クリーチャー、リョナ系……この辺はよく見てるけど馴染みないとキツいかもって感じ? いや、ケモは普通の人が見たら普通に可愛い動物の絵なのかな……?」
「よく分かんないけど分かった」
ぽんぽんとセイカの頭を撫でているとスマホが通知音を鳴らした。歌見からのメッセージだ。
「旅行から帰ってきたんだって?」
「今日大学午前までなんだ、会えないか?」
俺はすぐさま愛を叫ぶメッセージを返し、歌見から困惑と照れの感情を引き出すことに成功した。
「セイカ、今日は午後から先輩ん家に行こう」
「歌見? 午後からか……うん、分かった。午前は寝るぞ」
「先輩バリカン持ってるって言ってたなぁ。刈ってもらおっか。ちょっと髪伸びてきたからなぁ、またジョリジョリにしような~」
「……鳴雷、刈り上げ気に入った?」
「新鮮な触り心地だからな、刈り上げしてるのセイカだけだし……ぁ、そういえばまだティンティン擦り付けてませんでしたな」
「そっか、俺だけ……ふふ、うん。この髪型保つ……」
陰茎を擦り付けるという普段なら絶対何かしらのツッコミが返ってくる台詞を無視された。それとも、擦り付けてもいいよという意思表示だろうか。確かめるのは今日、セイカの刈りたてホヤホヤの姿を前にしてからにしよう。
「あらすごいわねぇ。あ、葉子には悟られちゃダメよそれ。アンタ口座持ってたわよね? 銀行受け取りだっけ、何かいんの? 印鑑とか。私宝くじ買ったことないから分かんないのよね」
「本人確認書類と印鑑が必要とのことですが、本人確認書類とは一体」
「学生証でいいんじゃないの?」
「免許証とかってサイトに書いてて……」
「顔と名前載ってんだから似たようなもんでしょ。まぁ後で見てあげるから待ってなさい。ってか受け取り方調べてるなら私にわざわざ言いに来なくてもいいのよ? 警戒心足りないわねぇ、宝くじ当てた時に一番警戒すべきは身内なのよ」
宝くじを買ったこともないくせに、高額当選者みたいなこと言ってくる。
「違いますぞママ上。警戒心が足りないのではなく、ママ上への信頼度が高いのですよ」
「もう百万あげるわ」
「むぐっ……ぷはっ、ハグか投げ銭どっちかでいいんですよ喜びの表現は! ポンと百万とか言わないでくだされわたくしの金銭感覚が破壊されてしまいまそ! この家出たら破滅しまっそぉ!」
「冗談よ」
「……真面目な相談なのですが、百万……どうしましょう」
「労せず手に入った金はパッと使うに限るわ。泡銭は夢、思い出にするのよ」
親なら貯金しろとか堅実にとか説教するべきじゃないか?
「そうねぇ、リムジン借りて彼氏全員呼んでシャンパンパーティーとかしたら?」
「金の使い方がバブリーでそ。未成年ばっかりなのにそういうパーティーしてもあんまり楽しめなさそうですし……借りたリムジンってカーセックスしちゃダメですよな?」
「じゃあ遊園地のプレミアムパスでも買ったらいいじゃない」
「あっ学生に寄り添ってくれた」
「好きに使いなさいな。アンタならバカなことしないでしょう? 私もアンタへの信頼度は高……くは、ないわね。アンタ虐められてたこと隠してたし、セイカこっそり居候させようとしてたし、彼氏の元カレと喧嘩して大怪我してたし……アンタかなりバカよね」
真面目な顔で「バカ」とか言わないで欲しい、バカたる所以を事前に箇条書きのように並べ立てるのもやめて欲しい。
「うぇえん……セイカ様ぁ」
キッチンからダイニングへと移り、寝ぼけ眼なセイカに泣きつく。
「何だよ、疲れてんだよ……お前らが一晩中愛の言葉囁きながらちゅっちゅちゅっちゅさわさわさわさわとよぉ……してきたからよぉ……全然寝れてないんだよなぁ! 俺!」
「ついテンションが……後悔はしていませんぞ」
「反省はしといてくれよ。今日はどっか行くのか? 俺は飯食ったら二度寝するからな」
「銀行に当選金の受け取りに行こうかと。まぁ振り込まれるまでに一週間くらいかかるそうですが」
「あぁ……お前店で受け取れなかったんだっけ」
「セイカくんもスクラッチ削ったの?」
朝食を二プレート運びながら母がそう尋ねた。俺は席を立ち、残りのプレートを取りに行った。
「あ、はい……俺と、鳴雷と秋風と霞染と……あと、分野っていう京都で会った人と、十枚セットの宝くじ五等分したんです」
「なるほど」
「俺と秋風は二千円、霞染は五万、鳴雷は百万当たりました」
「えぐいわね何そのセット。んなもん当てたら逆に怖いわ。ん? 分野って子は?」
「スカでした」
「あら~……って言うか、当選金の山分けとかしないのね、アンタら。普通揉めない? お金出し合って買ったんなら等分じゃないとさ」
「そういやそうですな。しげちー達もそうしてましたぞ」
何故あの時そんな話にならなかったのだろう。十枚組の半分以上の券が当たるという異常事態や金額で混乱していたのだろうか。
「後からも別に言ってきてないし……」
スマホを取り出しハルからの連絡を確認する。先日のデートが楽しかったこと、家族の愚痴やアキとセイカの体調の心配……宝くじへの言及はない。
「連絡来てるのか?」
「あぁ、アキ目大丈夫かって」
「別に大丈夫そうだぞ」
「それと、結構歩かせちゃったからセイカの足も心配だってさ」
「え」
セイカはハルが自分の心配をしていることが信じられなかったようで、俺の手首を掴んでスマホを覗いてきた。
「本当に霞染が俺の心配してる……」
「ハルは優しい子なんだよ。ただちょっと感情激しめなだけで」
「…………うん。鳴雷の彼氏はみんな良いヤツだよな、俺以外は」
何故かヒトの顔が浮かんだ。
「何言ってるんだ、セイカもとってもいい子だよ。ぁ、でもなセイカ、今回はいいけどヤバいの見てる時あるから急にスマホ覗くのはダメだぞ」
「ごめん……ヤバいのって?」
「ケモ、クリーチャー、リョナ系……この辺はよく見てるけど馴染みないとキツいかもって感じ? いや、ケモは普通の人が見たら普通に可愛い動物の絵なのかな……?」
「よく分かんないけど分かった」
ぽんぽんとセイカの頭を撫でているとスマホが通知音を鳴らした。歌見からのメッセージだ。
「旅行から帰ってきたんだって?」
「今日大学午前までなんだ、会えないか?」
俺はすぐさま愛を叫ぶメッセージを返し、歌見から困惑と照れの感情を引き出すことに成功した。
「セイカ、今日は午後から先輩ん家に行こう」
「歌見? 午後からか……うん、分かった。午前は寝るぞ」
「先輩バリカン持ってるって言ってたなぁ。刈ってもらおっか。ちょっと髪伸びてきたからなぁ、またジョリジョリにしような~」
「……鳴雷、刈り上げ気に入った?」
「新鮮な触り心地だからな、刈り上げしてるのセイカだけだし……ぁ、そういえばまだティンティン擦り付けてませんでしたな」
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