冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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一人暮らしには眩しい団欒

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母の帰宅を出迎えて、夕飯の準備を少し手伝った。俺以外の者にはトンカツが、俺には塩コショウで味付けされた豚のステーキが出された。

「あれ、水月くんだけ焼き? パン粉なくなった?」

「水月は旅行で贅沢したからダイエット。アキくんくらい運動するんなら脂っ濃いのいっぱい食べさせてあげてもいいんだけどね~」

まぁトンカツもトンテキも同じくらい好きだからいいけどさ。

「……私のだけ脂身外しました? それとも脂身除去済みお肉だったり?」

「焼いた後に私がつまみ食いしたわ」

脂身も結構好きなのになぁ、と少し落ち込みつつ美味しい豚肉を食べる。

「にしても歌見くん久しぶりね」

「あー、そうですね。お久しぶりです」

「……誰だっけ?」

「水月のバイト先の先輩。本の貸し借りとかしてるんだっけ、今日もそんな用事?」

「あ、はい、そんな感じで」

義母には俺のハーレムは伝えられないので、レイ以外は友人やバイト仲間程度の仲として紹介してある。なので彼女の前での会話や接触には少々気遣いが必要だ、面倒臭い。

「歌見くん今日はバイクとかで来たの?」

「いえ、俺バイク持ってませんし……」

「じゃあ晩酌付き合ってくれない? 二十歳になったわよね」

「あー……お誘いは嬉しいんですが、明日も講義があるので早めに帰ろうかと」

「あらそう、残念。じゃあまた今度ね」

俺の彼氏をあんまり飲みに誘わないで欲しいな……娘と結婚した義理の息子と晩酌を楽しむ父親みたいな感覚なのか? それならいいけど。

「豚肉ええのぅ……あぶらげは神じゃが、肉もええ。そこらのネズミ狩ってこようかの」

「近辺にネズミが居るのですか?」

「繁華街の方とか結構居るぞぃ。電車乗ってけばすぐじゃし。一緒に行くか?」

「私はネズミは食べませんので……」

ミタマとサキヒコの雑談が聞こえる。うっかり話に入ったり返事をしたりしてしまいそうだから、他人の前では俺に聞こえないように会話してくれないかな。

(……え、コンちゃんネズミ食うの? えぇ……めっちゃ狐。ネズミ食った口なの…………今度キスする機会が巡ってきたら、先に歯磨き頼みましょう)

石像の付喪神のくせに狐らしさが強いミタマに衝撃を受けつつ、ミニトマトを口に運ぶ。

「……水月、お前トマト好きか?」

「え? まぁ……キャベツよりは」

「やる」

ころんっ、とミニトマトが皿に一つ増える。好きという訳ではないのであまり嬉しくはないな。

「そういえば先輩、トマトとナスがダメでしたね……」

「そうだが、言ったことあったか?」

「最初に、ほら、先輩が手怪我してぇ……俺が家までお見舞い行って、ご飯作ってあげた時……買い物の前に何食べたいか聞いたら、トマトとナス以外って言ってませんでしたっけ。あの時じゃなかったかなぁ……でもどっかで聞いたんだよなぁ」

「よく覚えてるな、俺は一切覚えてない。覚えてて偉いで賞、もう一つのミニトマトを授与する」

一皿につき二つのミニトマトがあったのだが、二つ目も歌見は俺の皿に転がし入れてきた。

「先輩、嫌いな物食べて欲しい時に頼るべきなのは俺じゃないんですよ」

俺は歌見から贈られた二つのミニトマトをアキの皿に移す。

「にーに? 食べるするしないです?」

「アキにあげる」

「ありがとう、です。にーにぃ」

アキは満面の笑みを浮かべて俺に礼を言い、ミニトマトを一つ頬張るともう一つをセイカの口に放り込んだ。

「アキは嫌いな物ないみたいですし、運動をよくするのでカロリーを気にする必要もない……セイカは好き嫌いっていう概念がまだ発展途上なので今なら何でも食べさせられますし、まだ不健康な痩せ方なのでむしろ多めに食べさせたい……どうです先輩、この二人以上に頼れる者は居ませんよ」

「……ははっ、確かに」

「半分こしたがるので偶数か、割りやすいものあげてくださいね」

「ホント仲良いなぁ……」

歌見は楽しげな笑みを浮かべたまま食事を再開する。少ししてから彼はぽつりぽつりと語り始めた。

「一人暮らしだからな、こんなふうに話しながら食べることがなくて……凝った飯作らないし、金もかけたくないから粗末なもんでな、食事は栄養補給だけが目的じゃないって改めて思い知らされた感じだ。今すごく楽しいよ」

「先輩……」

「あらぁ……母性本能刺激されちゃう。毎日来てもいいのよ歌見くん」

「えっラッキ……あっいや、そんな、悪いですよ。食事代もバカにならないし……」

「子供が遠慮してんじゃないわよ。気になるんなら身体で返してくれればいいわ、ウチは男手がないからね、水月じゃイマイチ頼りなくって……力仕事が出来た時には呼んじゃっていい?」

「あ、はい。それはもちろん!」

「ならその前払いと思って遠慮せずご飯食べに来なさい」

「……ありがとうございます!」

頭を下げる歌見を尻目に俺は机の下で拳を握り締めて幸運を堪能していた。これで気兼ねなく歌見を家に誘える。歳上の包容力に甘えること、太陽のような笑顔を眺めること、オタク談義を楽しむこと、豊満な肉体に触れること、何もかもの頻度が増える。

「ぅへへ…………んっ? え、俺頼りないの? 男手として……」

「頼りないわよ」

「ハッキリ言う~……」

ため息をついて落ち込む俺を歌見は慰めず微笑ましそうな目で眺め、母も義母も俺にフォローの言葉などかけず食事を楽しんでいる。アキはそもそも俺の落ち込みなど気付いてすら居ない。

「……ぁ、俺は、頼りにしてるよ」

ジーッとセイカを見つめると、彼は俺の想いを察したらしくぎこちない笑顔で慰めてくれた。喜んでいると歌見にコツンと頭を叩かれた。

「今お前無言で要求しただろ。ったく……セイカも言ってやれ、水月よりアキくんの方が頼りになるってな」

「せんぱぁい!」

「まぁ、確かに……秋風の方が安定感あるし、スピードも出るし、燃費もいいけど」

車の評価か?

「でも……でも、俺は……お腹すいて、色んなところ痛くて……このまま死ぬのかなって思ってた時に来てくれた鳴雷が……一番、だいっ……た、よりに、なり、ます」

今大好きって言おうとしたよな! と問い詰めたいところだし、抱き締めたいし撫で回したいしキスもしまくりたいけれど、まだ義母が居るから我慢だ。彼女が部屋に帰るか、俺達がアキの部屋に戻るかしたら、しよう。

「……セイカくんてそんな酷いことなってたの? 私あの子周りのこと全然知らないんだけど」

「ろくな生活してこなかったのは見りゃ分かるでしょ。具体的な話は気分悪くなるから興味持つのやめときなさい。水月が助けてあげてって私に泣きついたのよ、あの子優しいから」

「ふぅん……? 遠縁の親戚とか聞いたけど、唯乃みたいな完璧な子の親戚でもダメな親って居るのね」

「私の親からしてそうだし……私も割と、最初はね」

カシュッ、と缶を開ける音が響く。ビールの空き缶は既に机の上に二つ並んでいる、晩酌ではなく夕飯中にここまで飲むのは珍しい。余程機嫌がいいか悪いかのどちらかだが……今のところ、分からないな。
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