冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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来襲

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夕飯を終え、皿洗いを終え、俺達はリビングに集った。ちなみに義母は風呂、母はリビングで真面目な顔をしてノートパソコンを弄っている。仕事でも持ち帰ってきたのかと先程画面を覗いてみたら、以前俺が勧めたホラーゲームをやっていたので、後で感想を聞いてみようと思う。

「パーイセンっ、ゲームしません?」

「そろそろ帰ろうと思ってたんだが……まぁ、少しくらいならいいぞ。何する?」

「友情破壊リアル乱闘ゲーム、九十九年」

「二日はかかるだろ。レースゲーム1コースだ」

テレビ台の下のゲームソフト置き場を漁り、歌見はやるゲームを決めてしまった。

「あー……パイセン、それはナシで」

「なんでだ?」

「片手で操作出来ないんで」

「……あっ」

「ゆっくり出来るすごろくゲーか、振るだけ押すだけの片手ゲーお願いしまっそ。四人でやりたいんで」

「…………ごめんなさい」

「わ、悪い……あぁ気にするなセイカ、謝るな……忘れてたんだ、ほら、お前が……あまりにも自然に、こう、過ごしてるからなっ? いやもうホント、隻腕なの忘れてたよ~……はは、は……」

「……気ぃ遣わせてごめんなさい」

《食った直後のスェカーチカ腹パンパンで可愛いよな、仔猫みてぇ。ほっせぇから胃袋の膨らみを感じやすいぜ》

落ち込んで俯いていたセイカの口角が僅かに上がる。

「ふふ……」

微笑んで顔を上げ、アキの首に腕を絡めて頬にキスをした。歌見が「説明しろ」という顔でこちらを見つめているが、俺だって何が起こったのか分からない。

《どうしたスェカーチカ、ご機嫌だな》

《うん》

《返事になってねぇなぁ。別にいいけど》

「……ゲーム、しましょっか。友情破壊三年コースでどうです?」

「二時間はかかるだろ……テニスゲームとかにしよう」

コントローラーを握り締めて振るだけで出来るテニスゲーム。四人でそれらを楽しみ、歌見が帰る時間がやってきた。

「パイセンそろそろお帰りですか。お送りしまっそ」

「え、いや、いいよいいよ」

「……駅まで!」

譲歩案を出すと歌見は悩むフリをした後、笑顔で了承した。俺も歌見も自宅近くの本屋でのアルバイトを選択しているため、歌見は家へ帰るのに電車を使わなくていい。俺と歌見の家を直線で結んだちょうど真ん中辺りに駅があるのだ、見送りの目印としてはちょうどいいだろう。

「ありがとうな。こんな大男まで丁寧に扱ってくれて」

「パイセンはえっちですからな、夜道は気を付けねば」

「ったく……」

母に歌見の見送りをする旨を伝え、四人で家を出る。

「アキくん達も来てくれたのか」

「夜中は日傘なしで出られるから……なんか、はしゃいでるのかも」

思い返せばアキは来日したばかりで右も左も分からない頃から夜に一人で出歩いて公園で遊んでいたような子だった、もっと外に出たいのかもしれない。だとしたら付き合ってやらねば……いや、今は暑い。秋になったらたくさん出かけよう。

「話してたら駅まであっという間だったな……今日はありがとうな、楽しかったよ」

「パイセン腰大丈夫ですか?」

「本調子には程遠いけど、立って歩くくらいは出来るようになったぞ」

「よかったでそ、今日はゆっくり休んでくだされ」

《秋風、下ろして。一人で立てる……立ちたいんだ。うん、ありがとう》

歌見と別れを惜しむ俺の斜め後ろで抱えられていたセイカが自らの足で地面を踏み締めた。よろよろと俺の隣に立ち、握手を交わしていた俺達の手に手を重ねた。

「ありがとう、歌見。楽しかったし……名前呼んでくれたの嬉しかった」

「セイカ……ふふっ、俺も楽しかったよ」

「パイセンとセイカ様、より仲良くなれたみたいで微笑ましいですなぁ。アキも──」

──おいで、その言葉は声にならなかった。声を飲み込んでしまった、ヒュッと情けない音が鳴った。アキのすぐ後ろに大男が立っていたのだ、レイの元カレより身長は低いかもしれないけれど、たっぷりの筋肉と程々の脂肪が彼を大きく見せていた。金髪碧眼のその大男の存在にアキは気付いていないようだった。

(えっ何デカ怖っ! なんでコイツこんなアキきゅんに近付いて……へ、変質者?)

駅の電灯はアキ側から当たっているから影にならないのだろう。しかし、アキが全く気付かないなんて、俺も見るまで分からないなんて、足音や気配を消すのが上手過ぎる。

「……っ! えっ……?」

男と俺の目が合った瞬間、アキが真横に吹っ飛んで切符売り場に叩き付けられた。周囲のまばらな人々から悲鳴が上がる。

「…………っ、な、何やってんだお前っ! 水月っ、警察呼べ警察!」

「は、はい!」

呆然とする俺達三人の中で一番始めにハッと正気に戻った歌見は、俺の肩を掴んで力任せに下がらせながら男の前に出た。

《お前じゃない》

「え……?」

男は心底興味なさそうな目で歌見を見て、すぐに視線を外して、セイカの胸ぐらを掴んだ。

《てめぇだなお姫様は》

「おっ、おい! やめっ……うわっ!?」

セイカを掴んだ男の腕を歌見が掴んだが、歌見は何故かぐるんっと回転させられて転んだ。足払いか? 柔道の技のようなものをかけられたのか? 分からない、男の動きは何も見えなかった。俺は警察に繋がったスマホを離し、セイカを助けるため足と手を素早く動かした──つもりだった。


間に合わなかった。男の拳の方が早かった。顔を殴られたセイカの腕がだらりと垂れた。

《おーい秋風、秋風~、ア~キぃ~!》

男がアキの名を呼ぶ。いつの間にかこちらを向いていたアキの手と顔は血にまみれていた。

「アキっ……!?」

《お……? 瞼でも切ったか? 悪い悪い、見えるか? ほら、お姫様。お前の可愛いお姫様だ、分かるか?》

俺には理解は出来ないけれど、聞き覚えのある発音の言語で話しながら、男は失神したセイカをぶらぶらと揺らす。

《見えねぇ……クソ、痛ぇ……眩しい…………ぁ? スェカーチカ……?》

無理に目元の血を拭ったアキの瞳がようやくセイカを捉えた瞬間、絶叫が響いた。悲鳴とも雄叫びともつかないその大声は、俺にはとても痛々しく聞こえた。
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