冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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会いたくない身内とは

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母は俺達を襲った男に関して何も話さず、ただ「もう遅いから早く寝なさい」と寝支度を勧めた。俺達は仕方なくその通りにし、四人でアキの部屋で眠ることにした。

「わたくしとパイセンは同衾でそ」

ベッドの隣に布団を敷き、そこに腰を下ろす。歌見はシャワーの際に外したアキの目元の包帯を巻き直してくれている。

「包帯巻く意味あるんですかね? もう縫っちゃって、出血はないんでしょう?」

「傷はあるから、そこにバイ菌入ったり……枕とか毛布に引っかかって傷口開いたりするかもしれないし、覆っておく必要はあると思うぞ」

「包帯巻いてれば瞬きの回数も相当減って、治りが早くなるかもな。起きてる間は巻いてちゃ前が見えないから外しておくしかないが……瞬きをして瞼を使ってたら治りが悪くなりそうじゃないか?」

「肘とかのカサブタ、曲げたり伸ばしたりしてたら破れたりするもんな……」

歌見もセイカもアキを心配している。もちろん俺もしているけれど、ミタマに祈っておいたので跡も残らず完治することはほぼ確約されたようなものだ、彼らよりは安心出来ている。

「しっかしあの大男なんなんだ? 縦には木芽の元カレより少しだけ小さかったが……ガタイがすごかった、クマみたいだった……洋画で見る脳筋系のキャラってあんな感じだよな。アイツも外国人っぽかったし……アキくんの名前呼んでたよな、酔っ払いとかじゃ……ない、のか?」

「……アキのお父さんじゃないかって思ってるんですけど」

「あぁやっぱり……しっかし似てないなぁ、アキくん唯乃さんの血しか引いてないんじゃないか、水月もだけど……遺伝子まで強過ぎるんだなあの人」

「あっ、わたくしが勝手に思ってるだけで……どうなんでしょう?」

アキの心の傷を掘り返すかもしれない内容の翻訳を頼む勇気がなかなか出なくて、俺は卑怯にもセイカをただ見つめてしまった。
 
「あぁ、俺は何回か秋風がビデオ通話してるの見たから……分かる、あの人だ。秋風のお父さん」

「……なんで急に蹴ったり殴ったりしてきたんだ? かなり無茶な鍛え方をされたとは聞いたが……電話したり、ほら……アキくん、俺のプレゼント……酒をお父さんに選んでもらってたり……しただろ? 仲はいいのかと思ってたよ」

「それは、俺にも……よく分かんない。秋風、電話とかしてる時は普通だし、よく笑うし……俺や鳴雷の話したりもする。でも、思い出させるようなこと話したりすると……すごく落ち込んだり、して……よく分かんない」

うぅんと唸る俺に対し、歌見はあぁー……と納得するような声を漏らした。俺とセイカの視線は自然と歌見に向き、彼はすぐにその意図を察した。

「いやな、俺には妹が居るの知ってるだろ? 八昼って言うんだが……メッセージで話す分には何ともないんだ、バカだけどだからこそ面白いし、地元の知り合いのちょっとした近況なんかも話してくれるしな」

一度会ったことがあるな、彼女は赤ん坊を抱いていた。あの時に俺は生では初めて赤ん坊を見た。いい思い出だ。ミルクの匂いがして、ふやふやぽわぽわで……

「でも絶対に会いたくない、二度と俺のところを訪ねてこないで欲しい。こうやって思い出すのも気が滅入る」

「え、なんで? 話したりするの面白いんだろ?」

「……ものすっごいキンキン声出すんだ、ガキみたいな。インスタントラーメンもろくに作れないから俺が全部世話してやらないといけないし、そのくせ短気だし、暴力的だし……アイツの金切り声のせいで一回アパート追い出されかけた上に未だに隣近所と折り合いが悪いんだ……! あのクソ妹っ……!」

「話すだけならいいけど会うのは絶対嫌な身内、かぁ……わたくし身内、ママ上しか居ませんでしたからなぁ。最近アキきゅんが増えましたが、やっぱりそういう理解度は浅いままでそ」

「俺もよく分かんない……母さんとは会いたくないし、話したくないけど……ほむらとは会いたいし話したい。どっちかならいいって気持ちはないなぁ……」

歌見は「理解者が居ない」と少し寂しそうに呟いた。

「……そろそろ寝ないと明日が辛いな」

「わたくしはまだ夏休みですが、パイセンは……ん? 大学って夏休みないんですか?」

「いや、あるぞ? 真っ只中だ。お前らと違って九月まである」

「朝から講義あるとか言ってませんでしたっけ」

「先輩に頼み込んで勉強見てもらってるんだ、それを俺が勝手に講義って言ってるだけ。学内の図書館とか自習室とか……設備がいいし、涼しいから夏休み中も行ってるんだよ。水月も大学入ったら図書館とかちゃんと利用しろよ? 高い金払って行ってるんだから、教授の話聞くだけじゃもったいないぞ、設備全部利用する気でしゃぶりつくせ」

「肝に銘じておきまそ」

先輩、というのはセイカの件で俺もお世話になった弁護士の知り合いが居るキラキラネームのあの方だろうか。

「ほらもう寝るぞ、あの人五分でも遅刻するとその日一日はことあるごとに掘り返してネチネチ言ってくるからな」

「はは……おやすみなさい。セイカ、アキも、おやすみ」

《……秋風、もう寝ようって。目痛いか?》

頷いたセイカがアキにも声をかけた。目元に包帯を巻かれた彼の表情は分かりにくい。

《……………………ごめんなさい》

《秋風……? 何が……?》

《俺が……親父に、話したから……スェカーチカが、可愛いって……兄貴が、大好きって…………だからアイツ、お前ら狙ったんだ……俺の、せいで……ごめんなさい……》

「セイカ、アキなんて? なんかすごい弱々しい声じゃないか?」

「……自分が電話で俺や鳴雷の話をしたから、親父さんが俺達殴ったりしたんだって……自分のせいだって、ごめんなさいって……めっちゃ謝ってる」

セイカを楽々と抱え、日々を楽しげに生きているアキの姿はそこにはなかった。悲しさや悔しさに押し潰されそうになった、身を縮めた幼子が居るだけだ。俺の弟は普段はもっと強くて明るくて優しくて……許さない、あの男、血反吐を吐いて死ねばい──

「みっちゃん。やめとくれ。そんなに強く願われたら……叶えてしまう。それを叶えたら、ワシもみっちゃんも穢れて堕ちてしまう。みっちゃん、どうか……考え直しとくれ」

──ぎゅ、と背後から抱き締められるような感覚に、殺意が引いてアキを想う心が膨らんだ。

「アキ! お前が後悔することなんか何一つない! 謝るべきことなんか何一つないんだ! アキはお父さんに楽しかったこと話しただけだろ? 聞いて欲しかったんだよな、アキのそんな純粋な気持ちを利用したアイツが悪いんだよ! あんなヤツっ……!」

あぁ、ダメだ、落ち着け、また殺意が溢れる。深呼吸をしろ、アキだけを想え、今はアキだけを。

「……っ、はぁ……すぅーっ…………はぁ……アキ、アキ……とにかく、アキは悪くないから……謝らないで、お兄ちゃんもセイカも何ともないから気にすることなんか本当に何一つないんだよ。怪我なんかしてないよ。なぁセイカ」

「う、うん、俺は失神させられただけだし……でも、鳴雷は」

「ほらアキ! セイカ無事だってさ。な? セイカ、俺が今話したこと翻訳してくれよ」

「ぁ、うん……秋風、秋風……」

セイカはアキの肩を揺すり、柔らかい口調で俺には理解出来ない言語を話し始めた。

《……痛い》

「鳴雷っ、秋風が痛いって」

話し終えた後、秋風は悲痛な声を上げた。

《痛いっ、痛い痛い痛いっ、んっだよこれ痛ぇよ! 染みる……いってぇええ!》

「ど、どうしたんだアキ! 落ち着け!」

「染みるって言ってる……多分、泣いちゃったから涙が傷に染みてるんだと思う。血は止まったけど塞がってはないから……」

「ちょっと考えりゃ分かることだったァ! パイセンパイセンほどくの手伝ってくだされ一回ほどいて涙拭いたげないとぉ!」

「無理に引っ張るなくい込むだろバカ! えっと、先端、先端どこだっけ……あぁあアキくん頭振らないでくれ!」

大騒ぎの中、夜は更けていった。
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