冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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二人で料理を

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どうして俺はあの時、元カレと共にあの場に残ったのだろう。レイと一緒に彼のマンションへ逃げていれば、陰茎が二日も封じられるなんて苦痛を味わうことはなかった。これまで何度もあの時の選択を正当化し、自分は間違っていないのだと思い込もうとしてきたけれど、今結論が出た。
間違ってたわ俺。

「また明後日以降、暇が出来ましたらお教えしますから……その時にちゃんとお相手しますから、ほら……立ってください」

「はい……」

彼シャツ。それはおそらく異性愛者が生み出した言葉。多くの場合男性に体格の劣る女性が男性の服を借りることで、ぶかぶかの服を着ている可愛らしさを表現した言葉。男にとっては女が自分の服を着ていることで、所有欲を満たすことにもなるのだろう。

「行きましょう」

「はい……」

今の目の前に居るヒトは俺よりも背が高く、俺の少しゆったりとした部屋着も普通に着ている。丈は足りなくも余ってもいない。至って普通、ヒトは自分の部屋着を着ているのだと言っても誰も疑わない。

(なのに何故エロスを感じるのか!)

彼シャツはぶかぶかだからいいのでは? か弱さを演出するからグッとくるのでは? 女性を守り支配し手元に置きたい男の心理を突いたものなのでは? 俺よりデカいヤクザがやっててもエロ可愛いのナンデ!?

「ん……動くと少しキツさを感じますね」

「えっ」

「胸が少し……あと、腰周りも」

よく見ると生地は胸と尻の辺りだけ少し突っ張っているように見えた。

「まぁ動くのに支障はないので大丈夫ですよ」

俺に支障があるんだが。



と、悶々としたまま俺は廊下に出た。シャツ以外の先程まで着ていた物を全て洗濯機に入れ、ダイニングへ。

「セイカ。ほら」

「……! ありがとう」

汗臭いシャツを渡すとセイカは嬉しそうにはにかみ、それをアキに渡し、テディベアに着せてもらった。

「アレは一体……」

「セイカはちょっと精神的に不安定なところがありまして、お気に入りのぬいぐるみに俺の服着せて抱かせてると落ち着くんですよ。まぁ、そんなのしなくても最近はかなり落ち着いてるんですけど」

「なるほど」

愛おしそうにテディベアを抱き締めているセイカを見ていると嫉妬心が湧いてきた。俺が贈ったテディベアと俺が着ていたシャツに、俺は今嫉妬しているのだ。何だかおかしな話だな。

「ヒトさん、俺煮魚やるのでサラダをお願い出来ます?」

「はい。お味噌汁はどうしましょう」

「煮魚と並行してやりますよ。どうせ隣のコンロですし」

「分かりました。ところで、サラダを作るとは……一体どうすれば? 野菜そのままでしょう?」

「材料を切ったりして、五等分にして欲しいです。スイートコーンは冷凍なのでまずチンしないとですき」

「……分かりました。材料は買ってきたものですね」

五つの皿を用意し、まな板の上にレタスを置く。ヒトは真上からレタスを見下ろし、包丁を当てるが、なかなか切らない。レタスの切り方が分からないのだろうか。

「ヒトさん? どうされました?」

煮魚の調理を進めながら尋ねると、ヒトは困った顔でこう言った。

「五等分って難しいですね……」

まさか、レタスを放射状に五等分するよう包丁を入れようと思っていたのか?

「適当でいいですけど……っていうか、レタスは手で剥いて手で裂いていく方がいいと思いますよ。サラダですし……」

「……分かりました」

ベリベリとレタスを剥き始めたので俺は安堵し、煮魚と味噌汁の調理を進めた。

「あっ、レタスはそれくらいでいいですよ。残った分はまた明日にでも使うので、ラップ巻いて野菜室に入れておいてください」

「はい」

一段落付いたのでヒトの方を見ると、ちょうどレタスは適量に見えたので指示を飛ばした。一回り以上歳上の彼に指示をするのは少し躊躇われたけれど、彼が素直なのもあって緊張はすぐに和らいだ。

「レイはトマト嫌いみたいなので、トマト入れない皿一つ作ってくださいね」

「四等分ですね」

ヒトは二つのトマトをそれぞれ真っ二つにすると、半分ずつ順番に薄く切って皿に盛った。完璧な四等分だ。

「とうもろこしは全員にですか?」

「はい、お願いします」

レンジで解凍したとうもろこしを取り出したヒトは、トランプを配るように一粒ずつ皿に入れ始めた。

(なるほど……ヒトさんはこういう人なんですな)

こういう一面は数学の特待生のリュウにこそ見せて欲しかった。



夕飯の準備が出来た。余談だが、ヒトはクルトンも一粒ずつ皿に分けていた。そのおかげで煮魚と味噌汁を仕上げるのとサラダの完成はほぼ同時だった。

「お疲れ様っすせんぱい、ヒトさん」

「ありがとう。いただきます」

「ありがとー、です! にーに! ぁー……」

「……ヒト」

「ひとー?」

「ヒトさん」

「ひとーさん! ありがとー、です! いただきます、です」

手を合わせ、満面の笑顔。これに落ちない人間は居ない。ヒトはどうだろうとニヤニヤしながら彼の様子を伺う、レイも俺と同じ表情だ。

「……昔のフタを思い出しますね。子供の頃はあの頭の悪さも可愛げだった……秋風くんは成長出来るといいですね」

予想とは違った返事に俺とレイは反応を失う。

「秋風は日本語拙いから子供っぽいだけで、割としっかりしてるよ」

静寂を回避したのはセイカだった。

「あぁ、そういえば母語が違いましたね。よかった、フタと似たような弟かと……サンのように聡明で、フタのように従順な弟が欲しかったんです、私。秋風くん……ふふ、仲良くしましょうね」

結局ヒトもアキを気に入ったようだ。

《ヒトはフタやサンの兄貴なんだ。昔の弟を思い出す、的なこと言ってるぜ。可愛こぶってりゃ小遣いくれるかもな》

《イイね。んじゃ媚びるぜ》

「相変わらず聞き取れませんねぇ……」

同感だ。

「鳴雷さんも分かっていないんですか? 少しも?」

「美味しいとありがとうくらいは分かりますよ」

「俺も分かるっすよそれくらい」

「学校でやってる英語でいっぱいいっぱいなんです、アキに日本語話せるようになって欲しいですね」

セイカが来てアキとのコミュニケーションを取りやすくなったのは大変素晴らしいことだが、アキが日本語の勉強をサボりやすくなったのはよくないことだ。二学期が始まって俺とセイカが勉強を始めたらアキも釣られてやってくれたらいいのだが。
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