冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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褒めるべきなんです

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団欒の食事を終え、食器を片付けながら彼氏達の様子を心の中で整理する。
今日のアキはセイカへのスキンシップが控えめだ。いや、今日の……と言うより、父親に会ってからと言った方が正しいな。ぴったり隣に座っていたり、手慰みに髪を弄っていたり、十二分に仲良くしているのだが、いつもなら彼らはもっとイチャついている。ただ隣に座っているだけの今が異常に感じるほど。

レイは今日はヒトに俺を譲る気なのか、それとも今日は勃たないと分かったからなのか、いつものように俺にひっついてこない。馬鹿な真似をして怪我をした俺に呆れているのかもしれない、思えば彼には随分心配をかけた。いや、彼は優しいからアキを気にかけてくれているのかもしれない、今だってアキの頭を撫でている。きっと最後に思い付いたのが俺に構わない理由だ。

ヒトは隣に居る。皿洗いを手伝ってくれている。手つきからして彼が皿を洗うことはあまりないのだろうと推測出来る。そういえば事務所にある彼の部屋にキッチンなどはなかった。冷蔵庫やレンジはあったけれど。自炊はせず、出来合いの物を買ったり出前や外食で済ませているのだろう。

「カレイの煮付け、どうでした?」

一人暮らしで自炊があまり得意ではない歌見は俺や母の手料理を非常に喜ぶ。ヒトもそうであることを祈って尋ねた。

「煮魚ですか? 美味しかったですよ。身が柔らかくて、味がよく染みていて……甘い味付けなのにご飯が進んで、とても美味しかったです」

「よかった。話盛り上がっちゃってご飯の話全然出来なかったから……少し不安だったんです」

「……そうなんですか」

洗い終えた皿の最後の一枚を乾燥棚に置く。

「鳴雷さん、私の方も終わりました」

「ありがとうございます。じゃ、戻りましょうか」

濡れた手を拭き、みんなの待つリビングへ行こうかとヒトの後ろを通り過ぎようとすると、冷たく湿った手に腕を掴まれた。

「ヒトさん……?」

ヒトは注意深く辺りを見回し、恥ずかしそうに口を開いた。

「私……あなたのお手伝いをしましたよね? 料理も、その後片付けも……何かすることがあるのでは?」

「えっ? あ、ありがとうございます……? えっと、おやつとか……食べます?」

「…………」

ヒトはどこか不満げに見える。

「……す、すいません。その……分かりません。俺、何をすれば……?」

「…………私は、あなたのお手伝いをしたんです。ちゃんと出来た、失敗していません」

「は、はい。すごくありがたいです……けど」

「………………褒めてくださいよ」

「えっ」

褒める……? 一回り以上歳上の彼を? どうやって?

「……褒めてくれないんですか? 失敗はしていませんよ、手際も悪かったとは思えません。なのに……あなたは、私を褒めないんですか?」

「す、すいません……ヒトさん歳上なので、そういうの失礼かなって……褒めってなんか、違うかなって……感謝の方だけにしておくべきかなって、思ってたんですけど」

ヒトの考えは俺とは違ったようだ。

「…………ボスのお気に入りはフタで、私はあまり褒めてもらえないんです。でも、ごく稀に褒めてもらえて……父も、子供が出来た時には。だから、父やボスとは違い私を評価し認め求めてくれるあなたは、父やボスとは違い頻繁に私を褒めるべきです。私があなたの手伝いや頼みをこなせたら私を褒めなければならない。分かりますか?」

「えっと、はい。すいません……」

その理論はよく分からない。俺に自分を認めなかった父やボスの代わりになって欲しいということだろうか、一回り以上歳下なのに……いいのか?

「じゃあ……」

ありがとうございます、の一言じゃダメなんだよな? 褒めたことにならない。褒めるとなればもっと上から目線でないと。

「…………ぉ、お手伝いありがとうね、ヒト。とっても早くて助かっちゃったなぁ」

よしよし、と頭を撫でる。ワックスで固められた髪の流れに沿って慎重に。ヒトは満足気に口角を上げ「当然です」と胸を張った。

「……いいんですか? 流石にちょっと失礼じゃないかって思ったんですけど」

人を褒めた経験があまりないので、子供扱いでしか褒められなかった。呼び捨てにまでしてしまった。怒ってはいないようだが、やっぱり何だか怖い。

「そうですか? 私は今ので結構満足ですよ」

「ならいいんですけど……」

怒らせないように、機嫌を損ねないように、そんなことばっかり気にしていた俺はヒトを喜ばせることにまだ慣れていない。ペットを褒めたり、話を合わせたり、それ以外がよく分からない。

「えっと、じゃあ……リビングの方へ」

「……はい」

何故か不満そうな顔をしながらもヒトは素直に着いてきた。

「せんぱいっ、お疲れ様っす」

「あぁ、ありがとう」

「腕お揉みするっすよ」

「えぇ? いいよぉ……ふふ、ありがとう」

レイに手首を掴まれ、腕を伸ばさせられる。筋に沿って腕を揉まれる。元カレだのボスだのヒトだのフタだのばかり今日は見たから自信が萎んでいたが、こうして改めて見ると俺の腕もなかなか男らしくて格好いいじゃないか。

(流石ママ上、見事なメイキングでそ)

太くたくましい腕を眺め、的確な筋トレ指示を行った母を尊敬する。

(しかしレイどののおててかわゆいですなぁ)

外出をほとんどしないと見て分かる肌の白さ、長時間ペンを握るからか少し歪んだ細い指、俺の腕を押す力の弱さ。可愛いにも程がある。

「……私も皿洗いをしたので腕が疲れています。揉んでくれませんか?」

「俺……?」

「と、弟さん……秋風さんに言ってください」

「分かった。秋風」

セイカに通訳を受けたアキは特に何を言うでもなく、表情を変えず、セイカの刈り上げ部分を撫でていた手でヒトの腕を揉み始めた。

「わ、効く……」

「秋風マッサージ上手いんだよ。人体の構造を分かってるって言うのかな」

「へぇ……優秀な弟ですね。よしよし、褒めてあげますよ」

アキの頭を撫でる慣れた手つきを見て、そんなふうにフタやサンを愛でていた時期もあったのだろうかと今は良いとは言えない三兄弟の仲に思いを馳せた。
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