冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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これだから弟は

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昼食の素麺を完成させるとちょうどアキとセイカが帰ってきた。彼らが買ってきたコロッケを受け取り、皿に並べる。

「ホムラ、あの子くらいの時コロッケ好きだったんだ。だからあの子も好きかと思って、ちょっと多めに買ってきた」

「ありがとうな。後でお金渡すよ」

二人の頭をまとめて撫でてやると、セイカは照れた様子ながらに頬を緩め、アキは抱きついてきた。

「よしよし、いい子だなぁアキ。しかしセイカ、ホムラくんって好物とかあったんだな。なんか……セイカが退院してしばらくするまで自我なかった感じだったけど」

「だからあの子くらいの時だって。まだ狭雲家での生き方を学べてない頃。まぁ好物って言っても、揚げ物なんてダメだって滅多に食わせてもらえなかったんだけどな」

「ぁー……」

「ホムラの親父さんが仕事帰りに買ってきて、大喧嘩になってたな……食べたホムラもめちゃくちゃ叩かれてさ、吐けとか言われて、でもホムラ吐くの下手くそでさ。あっ俺は吐くの上手いんだぞ、吐けって言われたらすぐ吐ける」

そんなことでドヤ顔をされても心が苦しくなるばかりだ。表情を整えるのを忘れて苦々しい顔になってしまっていると、セイカはハッとした。

「あぁごめん飯の前に吐くとか吐かないとか……」

「いいよ。ほら、もう座りな。アキも。食べよう」

みんなで手を合わせ、食事を始める。ノヴェムにはプラスチック製のフォークを渡した、パスタのように素麺を食べている。

「にーにぃ、卵欲しいするです」

「遠かったか。ごめんごめん」

薬味は素麺の入ったボウルの周りに並べてある。アキの席からは届かない位置に置いてしまった錦糸卵を寄せてやった。

「カニカマも開けてあるぞ、面倒臭いからもう割いてないけど」

「そりゃ一人で準備したらな……お疲れ様」

「今日はノヴェムくんも手伝ったんだよな。このネギ、ノヴェムくんがみじん切りにしてくれたんだぞ」

「え……? 包丁使えんの?」

困惑した様子のセイカにフードチョッパーによるものだと種明かししてやった。

《えらいな、ノヴェム》

感心したらしいセイカに何かを伝えられ、ノヴェムはフフンと鼻を鳴らして得意気だ。しかし前髪が上げられたままだと気付き、慌ててヘアゴムを外して目元を隠した。

「どうしたんだ?」

「あぁ、なんかオッドアイ気にしてるみたいなんだよ。からかわれたりしたのかなぁ……」

「ふぅん……」

妙な形に歪んでしまっている前髪を手櫛で修正してやると、ノヴェムは俺の指をきゅっと握った。

《おい、こっちのお兄ちゃんなんて両目赤いんだぞ。目ぇ真っ白で見えてねぇヤツも知ってるし、今更互い違いくらいで驚かねぇよ俺達は。目悪くなるから前髪上げときな》

《…………変じゃない?》

《手足ないのに比べりゃずっと目立たねぇ左右非対称だよ》

《セイカお兄ちゃん、ミツキお兄ちゃんに……髪、もっかいしてって……外してごめんなさいって、言って欲しい》

《分かった》

鳴雷、と呼ばれて、ノヴェムに指を握られたままの前髪修正作業を中断する。

「鳴雷、その子……また髪結んで欲しいってさ」

「あっ説得出来た? ありがとうセイカ! ノヴェムくん、ちょっと目閉じててね~」

ノヴェムの髪は細く柔らかく素直だから、手櫛だけで十分に結べる。

「ちょんまげみたいね、可愛い」

珍しく義母と気が合った。

《スェカーチカぁ~、スェカーチカまでそっちに靡いてんのかよ。俺よりそいつが可愛いか?》

《まぁ単純に小さいから可愛いよな》

《それは同意なんだけどよ。俺だって「アキお兄ちゃ~ん」ってこっち来てくれる時は可愛いし嬉しい。でもよぉ……兄貴もスェカーチカも、ソイツばっかり》

《……歳下は優先されるもんだ。我慢しろよ》

《分かってるけどよぉ》

《…………そうやって可愛く拗ねて構えっておねだりするだけなら、俺も鳴雷もすぐにお前のとこに戻るよ。前みたいにノヴェム力づくでどかすとかはよくねぇけどな》

なんだか不機嫌そうなアキがセイカと話している。内容が気になる。俺が努力すべきはテストや受験に使う英語なのだが、ロシア語の方が興味が出てしまう。



食事を終えて後片付けのためキッチンに皿を運ぶと、やはり着いてきたノヴェムは手伝いを申し出た。

「あいるへるぷゆー」

「うーん……」

ノヴェムの背丈では流し台に手が届かないし、皿洗い以外にやることはない。

《秋風、鳴雷が困ってる。今ノヴェムを上手く引き付けられたら鳴雷が後で褒めてくれるはずだぜ》

《……マジ? ナイスだスェカーチカ。よし……英語か》

手伝いをさせなければノヴェムは落ち込んでしまう。何か簡単なことをさせたいのだが……思い付かないな。

「のーゔぇーむ」

《アキお兄ちゃん。あっちがう、ぼくのおよめさんの、おとーとだから……ぼくのおとーと、アキくんだ。なぁにアキくん》

「れっつ、ぷれい」

《……? なに?》

アキの英語力は俺以下のようだ。

《ノヴェム、アキお兄ちゃんと遊ばないか?》

《ぼく、ミツキお兄ちゃんのお手伝いするの。遊ぶひま、ないの! 向こう行って!》

「思ったよりしっかりしてるな……あぁ、鳴雷。ノヴェムにさせることなくて困ってるだろ? 秋風が助けたいって思ったみたいでさ。今ノヴェムの気ぃ引こうとしてんだけど……手伝うって聞かねぇわ、どうしようかな」

「んー……あ、そうだ。あのさ、セイカ……」

俺はセイカに耳打ちをした。セイカは「二人とも日本語分からないんだからそのまま話せばいいのに」なんて笑った。

「分かった、やってみる。ノヴェム!」

《なぁに、セイカお兄ちゃん》

《鳴雷……水月お兄ちゃんから伝言だ、弟が遊んでって来て、お皿洗い出来なくて困ってるから、弟と遊んでやってくれないかって》

《……分かった! おとーとのアキくん、お兄ちゃん困らせちゃダメ。向こうで遊ぶよ》

《秋風、遊ぼってさ》

《やっとその気になったか》

アキはノヴェムに手を引かれてリビングへ。残ったセイカはくすくすと笑っている。

「アイツら、二人ともお前の邪魔しねぇように面倒見てやろうってお兄ちゃんぶってやがんの。可愛いよなぁ、弟ってのは…………ホムラ、元気かなぁ」

ホムラはセイカと父親違いの兄弟。セイカとは血の繋がっていない父親の方へ引き取られ、離れた地で暮らしている。

「一応俺と母さんの電話番号は渡したんだけどなぁ」

「連絡ない?」

「あぁ……スマホ買ってもらえてないにしても、家電くらいあると思うんだけど……貸してもらえないのかなぁ」

「……自由のない環境なのかな」

「うーん……母さんに聞いてみようか、ホムラくんのお父さんの連絡先知ってると思うから」

「うん……」

と話している間に皿を洗い終えた。俺はしんみりとしてしまっているセイカを連れ、二人仲良く過ごしているだろう可愛い天使達の元へ向かった。
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