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歳下の男の子
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アキとノヴェムはリビングの絨毯の上でうつ伏せに寝転がり、肘をついて上体を少しだけ起こし、手を使って何やら遊んでいた。
「セイカ、あれ何?」
「左手で筒作って、相手の右手人差し指を入れさせる。隙を伺って人差し指を抜きつつ、左手は相手の人差し指を握って捕まえる。ってゲーム。反射神経が試されそうだな、あと左右の手をバラバラに動かすのが大事」
「…………エロい意図は?」
「は? ないと思うけど、なんで?」
「穴に指突っ込むのはもうアレの比喩じゃん」
「……んなの思ってんのお前だけだよ」
少なくともアキとノヴェムはそう思っていないだろうけど、セイカもそうなんだろうけど、俺だけということはないはずだ!
「コンちゃん、サキヒコくん」
背後の姿が見えない二人に意見を求める。
「微笑ましい子供達の遊びの光景じゃ、愛おしいのぅ……と感じるだけじゃ」
「いつもいつもいかがわしいことばかり考えているから何でもそんなふうに見えてしまうんだ」
「どうだった?」
「…………セイカはいつも正しい」
「いつもってことはないけど今回はそうだな。しかし……分野は何で消えてるんだ?」
ミタマは昼食を作っている間に姿を消した。居なくなったという意味ではない、サキヒコと同じように見えなくなっているのだ。透明化、いや、霊体化と言うべきなのか?
「さっちゃん一人でじーっと黙っとるんが見てられんくてのぅ。二人で話したり遊んだりしとったんじゃ」
「え、そうなの? 何も聞こえなかったけど……」
「ミタマ殿と話していたからな。ミツキが霊の声を聞けるのではなく、私が生者に声を届けられるように成長したのだ。ミタマ殿との会話が聞こえないのは当然だ、だがいつも話しているぞ」
「ワシも霊体化している間はそんな感じで話をしとる」
じゃあ、時折聞こえてくる二人の失礼な会話は、俺に聞かせようと思って話しているということなのか?
「秋風、ノヴェム」
《お、スェカーチカ》
《セイカお兄ちゃんっ、ミツキお兄ちゃんは……お兄ちゃん! お皿洗い終わったの?》
ノヴェムが駆け寄ってくる。俺はその場に膝をついて彼を受け止め、抱き締めた。膝をついてようやく目線が合う小ささが、幼さが、たまらなく愛おしい。これが父性か。
《お兄ちゃんお兄ちゃん、ぼくね、お兄ちゃんのおとーとと遊んでたんだよ》
《よぉ兄貴、ガキの面倒見といてやったぜ》
《おとーとのおせわ、してたんだ! すごい?》
《よく出来た弟に言うことあんだろ? なぁ?》
ロシア語と英語が交互に襲い来る。俺にはどちらもよく分からない、助けを求めてセイカに視線を送る。アキとノヴェムも翻訳をして欲しいのかセイカを見つめている。
「皿洗いの邪魔だったアイツの世話をしてやったんだから、褒めろって言ってる」
「アキ?」
「二人とも」
「へぇー……それめちゃくちゃ可愛いな。互いに互いのお世話したって思ってるんだ?」
「秋風は歳下だからそう扱ってるだけ、ノヴェムの方は……お前の弟だから弟として扱ってる、のかな?」
「ノヴェムくん的にはお兄ちゃん二人じゃないのか。なんで俺基準なんだよ、可愛いなぁもぅ」
お兄ちゃんぶっているらしい二人の頭をまとめて撫でくりまわし、彼らの嬉しそうな反応を見てから抱き締めた。
ノヴェムとアキと共にゲームで遊んだ。夕暮れ時になるとノヴェムは目を擦り始め、俺の太腿を枕にしてソファで横になった。
「眠い? ノヴェムくん」
《んー……お兄ちゃん……》
「俺はここに居るよ、安心しておやすみ」
背をぽんぽんと叩いてやるとすぐに寝息を立て始めたので、前髪を結んだヘアゴムを外した。
「ふぅ……これでやっと」
《俺と遊べるな、兄貴っ》
「本が読める」
《バカ兄貴!》
肩を思いっきり叩かれた。
「なんで!?」
「やっと構ってもらえるって思ってたとこでお前が本読み始めたから怒ってんだろ」
「えぇ……今まで遊んでたじゃないか、ゲームで……ノーカンなの? なんで?」
拗ねている様子のアキはぷいっと俺から顔を背けると、セイカを抱き上げて部屋へと帰っていった。弟付き合いは難しい。
(アキきゅん的にはさっきまでのゲームは「遊んであげてる」であって「遊んでる」じゃなかったんでしょうか? 全く……いつもわたくしにはそんなに構わず、セイカ様とイチャコラしてらっしゃるくせに、俺がノヴェムくんに構ってたら来るとか、全くもう……全く……可愛過ぎますぞ!)
今すぐ部屋に行って構い倒したい。でもこの本を今日中に読んで感想文を仕上げてしまわなければもう俺には後がない。
(はぁ……頭入ってこねぇでそ)
後数ページというところで玄関から物音が聞こえてきた。母が帰ってきたようだ。
《ユノー、今日の飯何?》
アキとセイカも部屋からリビングへ帰ってきた。後数ページなんだ、読ませてくれ……!
《ノヴェム、飯だぞ》
セイカがノヴェムの肩を揺らし、起こす。
《ん……セイカお兄ちゃん、なぁに? ごはん……ごはん? もう? ノヴェム、寝ちゃってた……》
独特な足音を鳴らしてセイカは去っていく。起き上がって目を擦ったノヴェムは俺の手首を優しく引く。
《お兄ちゃん、お兄ちゃん、ごはんだよ》
「も、もうちょっと待って……えー、うぇいと、うぇいと、りとるうぇいと」
《……? 待つの?》
ノヴェムは俺の顔を覗き込んでいる。ふわふわ金髪メカクレショタの首傾げ、最高。目が縫い付けられた、本に視線が戻せない。
《お兄ちゃん?》
首が反対側に傾げられる。可愛い、あまりにも可愛い。
《もぉ……ごはん、行くんだよ》
ノヴェムの手が頬にぺたりと触れる。その小ささを愛でる暇もなく、ノヴェムの唇が唇に触れた。
《……ちゅーしないと動かないなんて、困ったおよめさん。ほら、行くよ》
慌てて顔を離すとノヴェムはソファを降り、俺の手を引っ張った。俺は今のキスが誰にも見られていないことを祈って周囲を見回し、にんまりと笑うミタマと目が合って息を飲んだ。
「セイカ、あれ何?」
「左手で筒作って、相手の右手人差し指を入れさせる。隙を伺って人差し指を抜きつつ、左手は相手の人差し指を握って捕まえる。ってゲーム。反射神経が試されそうだな、あと左右の手をバラバラに動かすのが大事」
「…………エロい意図は?」
「は? ないと思うけど、なんで?」
「穴に指突っ込むのはもうアレの比喩じゃん」
「……んなの思ってんのお前だけだよ」
少なくともアキとノヴェムはそう思っていないだろうけど、セイカもそうなんだろうけど、俺だけということはないはずだ!
「コンちゃん、サキヒコくん」
背後の姿が見えない二人に意見を求める。
「微笑ましい子供達の遊びの光景じゃ、愛おしいのぅ……と感じるだけじゃ」
「いつもいつもいかがわしいことばかり考えているから何でもそんなふうに見えてしまうんだ」
「どうだった?」
「…………セイカはいつも正しい」
「いつもってことはないけど今回はそうだな。しかし……分野は何で消えてるんだ?」
ミタマは昼食を作っている間に姿を消した。居なくなったという意味ではない、サキヒコと同じように見えなくなっているのだ。透明化、いや、霊体化と言うべきなのか?
「さっちゃん一人でじーっと黙っとるんが見てられんくてのぅ。二人で話したり遊んだりしとったんじゃ」
「え、そうなの? 何も聞こえなかったけど……」
「ミタマ殿と話していたからな。ミツキが霊の声を聞けるのではなく、私が生者に声を届けられるように成長したのだ。ミタマ殿との会話が聞こえないのは当然だ、だがいつも話しているぞ」
「ワシも霊体化している間はそんな感じで話をしとる」
じゃあ、時折聞こえてくる二人の失礼な会話は、俺に聞かせようと思って話しているということなのか?
「秋風、ノヴェム」
《お、スェカーチカ》
《セイカお兄ちゃんっ、ミツキお兄ちゃんは……お兄ちゃん! お皿洗い終わったの?》
ノヴェムが駆け寄ってくる。俺はその場に膝をついて彼を受け止め、抱き締めた。膝をついてようやく目線が合う小ささが、幼さが、たまらなく愛おしい。これが父性か。
《お兄ちゃんお兄ちゃん、ぼくね、お兄ちゃんのおとーとと遊んでたんだよ》
《よぉ兄貴、ガキの面倒見といてやったぜ》
《おとーとのおせわ、してたんだ! すごい?》
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ロシア語と英語が交互に襲い来る。俺にはどちらもよく分からない、助けを求めてセイカに視線を送る。アキとノヴェムも翻訳をして欲しいのかセイカを見つめている。
「皿洗いの邪魔だったアイツの世話をしてやったんだから、褒めろって言ってる」
「アキ?」
「二人とも」
「へぇー……それめちゃくちゃ可愛いな。互いに互いのお世話したって思ってるんだ?」
「秋風は歳下だからそう扱ってるだけ、ノヴェムの方は……お前の弟だから弟として扱ってる、のかな?」
「ノヴェムくん的にはお兄ちゃん二人じゃないのか。なんで俺基準なんだよ、可愛いなぁもぅ」
お兄ちゃんぶっているらしい二人の頭をまとめて撫でくりまわし、彼らの嬉しそうな反応を見てから抱き締めた。
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《んー……お兄ちゃん……》
「俺はここに居るよ、安心しておやすみ」
背をぽんぽんと叩いてやるとすぐに寝息を立て始めたので、前髪を結んだヘアゴムを外した。
「ふぅ……これでやっと」
《俺と遊べるな、兄貴っ》
「本が読める」
《バカ兄貴!》
肩を思いっきり叩かれた。
「なんで!?」
「やっと構ってもらえるって思ってたとこでお前が本読み始めたから怒ってんだろ」
「えぇ……今まで遊んでたじゃないか、ゲームで……ノーカンなの? なんで?」
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(アキきゅん的にはさっきまでのゲームは「遊んであげてる」であって「遊んでる」じゃなかったんでしょうか? 全く……いつもわたくしにはそんなに構わず、セイカ様とイチャコラしてらっしゃるくせに、俺がノヴェムくんに構ってたら来るとか、全くもう……全く……可愛過ぎますぞ!)
今すぐ部屋に行って構い倒したい。でもこの本を今日中に読んで感想文を仕上げてしまわなければもう俺には後がない。
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セイカがノヴェムの肩を揺らし、起こす。
《ん……セイカお兄ちゃん、なぁに? ごはん……ごはん? もう? ノヴェム、寝ちゃってた……》
独特な足音を鳴らしてセイカは去っていく。起き上がって目を擦ったノヴェムは俺の手首を優しく引く。
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ノヴェムは俺の顔を覗き込んでいる。ふわふわ金髪メカクレショタの首傾げ、最高。目が縫い付けられた、本に視線が戻せない。
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首が反対側に傾げられる。可愛い、あまりにも可愛い。
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ノヴェムの手が頬にぺたりと触れる。その小ささを愛でる暇もなく、ノヴェムの唇が唇に触れた。
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