冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,397 / 2,312

空間把握はお手の物

しおりを挟む
ヒトとサンと共にエレベーターに乗ると、ヒトはスマホを弄り始めた。間もなくして俺のスマホが鳴る。

「水月の?」

「あ、うん……彼氏から」

「ふーん? 予定の子かな」

正解だ。ヒトからのメッセージ通知を見てサンの勘のよさを笑う。

『サンはご存知の通り盲目ですので、あなたの家に着いたかどうかなど分からないと思います』
『少し回り道をして予定の店にあなたを下ろします。サンを送ってから合流しますので、店で少し待っていてください』

なるほど……

「絵の具の匂いがキツいですね。窓開けます」

車の発進前にヒトは全ての窓を開けた。しかしそれでも、後部座席でサンの隣に座っている俺が感じる油絵の具の匂いはあまり薄れない。

「久しぶりだね、サン。近畿旅行ぶりだっけ……メッセ送ったり電話かけたりしたのに、全然返事ないんだもん。寂しかったよ」

「旅行の後は描く気がもりもり湧いてきてね~。昨日今日あたりでようやく尽きてきてさ、水月からのメッセも気付いたんだけど……多過ぎて、なんか、面倒臭くなっちゃって。大した内容じゃなかったしいいかな~って」

「もぉ……元気かどうかくらい教えてね」

「は~い」

高級ホテルの前で車が停まる。まさかヒトが予約したレストランとは、ホテル内にあるレストランのことなのか? 大人の財力を感じる。

「着きましたよ、鳴雷さん」

「ありがとうございます。さようなら、ヒトさん。またね、サン」

「あー待って待って水月、せーくんとアキくんに挨拶しておきたいんだ」

「あ、ごめんねサン……セイカは今日新しい義足の、なんて言うんだろ、測定? とかやっててさ、居ないんだ。アキはほら、セイカにベッタリだろ? だから一緒に行ってて……」

「そう……じゃあ適当によろしく言っといて~。ばいば~い」

車の窓から伸びたサンの手を掴み、手を振る。サンを騙している罪悪感に胸を痛めながらも、俺はホテルの前でヒトを待った。



ヒトは恐らく俺の家からサンの家まで走ったと演出するため、遠回りをして距離を稼いでくるのだろう。数十分待つことも覚悟したが、ヒトの車は数分で俺の前に帰ってきた。

「あれ……」

酷く落ち込んだ様子のヒトと、いつも通りの無気力に見える表情のサンが降りてきた。

「…………失敗しました」

「水月~、一緒にご飯食べよ~」

「えっ、え……ど、どういうこと……」

「……バレたんです。いえ、バレていたと言った方がいいでしょうか。何があったかお話します──」

暗く小さな声でヒトは語り始めた。



鳴雷さんを降ろしてすぐ、数メートルほど進んだ頃、運転席が後ろから激しく蹴り付けられました。

「兄貴、どういうつもり?」

「……っ、こっちのセリフです! 何ですかいきなり!」

「匂いが違う、曲がる回数がおかしい。ここ、どこ? 水月をどこに降ろしたの」

「何を言って……鳴雷さんのご自宅にお送りしたんですよ」

「……ねぇ、ここどこ?」

サンのスマホが現在地の詳細な住所を答えて、私は青ざめました。

 「ボスもよく言ってるけどさ~……バカだよねぇ兄貴って。彼氏との待ち合わせ場所に水月を送ったって言えばいいだけなのに……この辺ならレイちゃんとかさ。体感でどれくらい走ったか測るしかないボクに、遠回りの道を使って距離を誤魔化すアイディア自体はまぁいいとして…………盲の空間把握能力ナメてんじゃねぇぞ」

「………………嘘をついたのは、謝ります。待ち合わせ場所に送ったと正直に言えば……鳴雷さんの彼氏との約束を、あなたが邪魔しないかと……だから」

「まだ嘘をつくようなら、小指だけじゃ済まさないけど」

私は観念しました。サンは昔から妙に勘がよく、それ以上に疑り深く、何よりも私を嫌い信用せず……話す他なくなりました。

「………………旅行の時より、鳴雷さんと……お付き合いをさせていただいております」

「へぇ? 兄貴ってもう離婚したんだっけ」

「いえ……」

「だよねぇ、親父に唯一褒められたんだもんね。ガキ作ったこと。ボクが作れなかったガキ作れて褒められたのが人生で唯一褒められたことだもんね。まぁオスじゃなくてメスだったから反応微妙だったけど、次はオス産ませろって頼まれもしたんだもんね。それまで親父にはどーでもよさそうに扱われてたのにさぁ? そんな思い入れのあるメスブタとメスガキ、そうそう簡単には捨てられないよね~……水月知ってんの、それ。あの子泣かせたら沈めるぞ?」

「…………はい、不倫であることは最初に伝えました。だから……誰にも、特に組関係者にはバレないようにと」

「ふーん……」

「……誰にも言わないでください」

私にはもう、サンに秘匿を懇願する道しか残されていませんでした。

「どうして?」

「分かるでしょう、不倫の上高校生に手を出していたなんてなったら大問題です。あのクソ女に自分の浮気は棚に上げて慰謝料踏んだくられますし、水月の親御さんにもきっと……警察の厄介になるかもしれないし、何より二度と鳴雷さんに会えなくなるかもしれない」

「……兄貴、水月のことそんなに好きなんだ?」

「…………はい。お願いします……サン、私から水月を奪わないでください。今度こそ、水月だけは」

「何その言い方、まるでボクが今まで兄貴から何か盗ってきたみたいな言い方だね」

「奪ってきたでしょう……父の愛情も、弟の信頼も、古株の忠誠も、部下の尊敬も、何もかも」

「ガキをこさえただけでボクから組長の座を奪って、ボクの絵の売り上げもかなりピンハネしてるくせして何言ってんの」

「組長の座はあなたいらないって言ってたでしょう! 金だって……あなたがあまり使わないから、あなたが好きにしていいって言った分を会社の運営に回しているだけです」

「私服肥やしてるくせに~……ま、金はいいよ、どうでも。水月はね、ボクが先に好きになったんだよ。兄貴達より前にボクが。なのに抜け駆けしようだなんて……それはダメだろ? ねぇ……」

「……抜け駆け、なんて」

「不倫、誰にも言わないし、水月と別れろとも言わない。兄貴の大好きな現状維持をさせてあげる。だからね兄貴、今日は一緒にご飯食べよ」

それを拒否することなど私には許されません。



語り終えたヒトは酷い乱暴を受けた少女のような表情になっていた。

「──と、いうような流れで……バレてしまい、サンもここに来ることに……ごめんなさい。初めてのまともなデートなのに……こんなことになって」

被害者面のままそう語るヒトの隣にサンは居ない。ヒトが長々と話している間に、サンは「シャワー借りてくるね」と先にホテルに入っていったのだ。こんな高級ホテルにあんな格好で入っていって、追い返されないのだろうか。ホテルのシャワーで絵の具を洗い流すなんて許されるのだろうか、色々心配でヒトの話に身が入らなかった。
しおりを挟む
感想 532

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...