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許しの懇願 (水月+カサネ・ミタマ・シュカ・セイカ・ハル・リュウ・カンナ・ネザメ・ミフユ)
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シュカがこれほどまでに俺の死に怯えていたとは……死に遠い環境で育った他の彼氏達はこれほどまでの熱量を持って俺の生を願うことは出来ないだろう。親友を喪ったトラウマ由来の強い感情だ。
「シュカ」
「…………」
「おいで」
「………………はい」
俯いたまま席を立ち、俺の膝の上に座った。何も言わず俺の肩に頭を預け、手を俺の首に添えた。脈を確認しているようだ。
「生きてるよ」
「…………はい」
「大丈夫……生きてるから、な?」
小さく頷き、鼻を啜る。
「…………お、俺も、俺もお祈りする……みっつん死ぬのヤダっ。ね、リュウもするよねっ、しぐも、先輩達もっ」
「そらするけど……コンちゃんだけ崇めるとか無理やで俺、実家に神さんちゃんと居んねんから」
「ぼく……も、毎日、起き……時と……寝、前……お祈りする」
「……当然祈るよ。水月くんの健やかな人生を。ねぇ、ミフユ」
「え、えぇ……分野殿の存在もよく分かっていないのに、追い付けないと言いますか……実感が湧かないと言いますか…………しかし、鳴雷一年生に健やかに生きていて欲しいのは我々の総意かと」
「…………あっ、俺も? うんそりゃ俺も新人だけど死んで欲しくないとは思ってるけど死ぬとこだったとか言われても実感がなぁ……毎日お祈りも、俺寝る時間めちゃくちゃだし出来るか分かんないけど、うん……水月くん、死んじゃやだよ、せっかく仲良くなれそうなのに」
まだ仲良くなったと判断していないのか? ちょっとショック。
「ありがとうみんな、みんなで祈ってくれれば俺すごく安全だよ。逆にみんなの方が心配になってきちゃう、俺の愛情は掛け算だって自称してはいるけどさ、俺一人だからなぁ……一日何時間お祈りしなきゃなんだろ、ふふ」
「…………あなた何も言ってませんよね」
シュカが顔を上げ、レンズ越しの鋭い瞳でセイカを睨む。
「え、ゃ……い、言ってないけど、別にそんな、意見違うとかじゃないぞ……? みんな言ってるから、俺はそんなわざわざ言わなくてもいいかなって」
「せっちゃんは昨日感謝たっぷりのあぶらげ食わせてくれたもんなぁ~」
少し怯えて俯いたセイカにミタマが擦り寄る。
「やめろよ分野ぉ……」
「……セイカも俺に生きてて欲しい?」
「あ、当たり前だろっ! 生きてて、欲しいよ……鳴雷生きてなきゃ、俺生きる理由ないし……」
「そんなになの!? 早苗ちゃん!」
俺達の関係を知らないカサネが驚いている。他の彼氏達の気持ちも嬉しいけれど、セイカに生を願われるのは格別だ。だって、約三年間ずっと、死ねって言ってきてたから。心底憎らしそうに、本気で。
「そんなになんだぁ……早苗ちゃん……」
「…………」
「……あっ、セイカ、もうカサネ先輩と話していいぞ」
「そんなに、です」
「あっ、うん。今ので分かったわ……」
「…………あっ、ねぇみっつん話の続き~! 誰がなんでどうしてみっつん殺そうとしたのって話~!」
そうだった、話の途中だった。
「……フタさんって分かるか? サンちゃんのお兄さん」
「話だけ~……」
「私を殴った人でしょう」
「そうそう、あの人な、幽霊めっちゃ見えるんだよ。生きてる人間と区別付かないレベルで。今までに死んだ飼い猫とかとも一緒に居る、で、フタさん的には……ぐったりして弱って死んでった猫が死んだら元気になってずっと傍に居るようになった、逃げる心配もなく外にも連れ歩ける…………だからフタさん的には多分、死んでる方が、イイ」
「…………は?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、まさか……?」
「……俺を殺せば、俺は学校行ったり他の彼氏とデートしたりせず、視える自分の傍に居るしかない。独り占め出来る……そういう理由で俺を殺そうとしてた」
「量産型ヤンデレの、殺せば私のモノはぁと、的な理論意味分かんなかったけど……! そ、その人のは分かる! 分かりやすい……!」
「納得してる場合ですか!」
「ひぃいんごめんなさいぃっ! ぅうぅ……メ、メガネで副会長とか真面目で大人しめかと思ってたけど、なんかガタイいいし刃物傷あるよこの人……怖……」
シュカに怒鳴られたカサネは怯え、ソファの上で小さく丸まった。可愛い。
「フタって人って、サンちゃんのお兄さんなんだよね~? 兄弟で仲良く共有しようみたいなのはないの~?」
「……っちゅうかいくら水月でも、いくらそいつしか視えへんでも、自分殺した相手んとこ居ったりせぇへんやろ……せぇへんよな? 水月ならしかねんけど、せぇへんと思うから思い付いても殺せへんやろ普通」
「…………フタさん多分、その辺のこと考えてないと思う。説明したら分かってくれると思うけど」
「短絡的で行動力のあるバカって最悪ですね。どうするんです? 私、殺してきましょうか」
「やめてよ……大丈夫、対処法はもう思い付いてるんだ。フタさんに考え直させる……だからさ、みんな……フタさんのこと怒ったりしないで欲しいんだ。許してあげて欲しい……子供の頃から幽霊と人間の区別が付かなくて、ちょっと価値観おかしいんだよ。だから仕方ないっていうか……俺は、許してあげたいから、みんなも……」
話しながら、無茶なお願いをしているなと気付いて言葉が思い付かなくなっていく。声が上手く出なくなってきた。
「………………お願い。フタさんのことも好きなんだ、みんなと一緒で……大好き。平等に、愛してる……だから、これまで通り過ごしたい。みんな仲良くしてて欲しい……お願い、俺のワガママ……聞いてください」
説得なんて偉そうな真似は出来ない。今俺がしていいのは懇願だけだ。
「シュカ」
「…………」
「おいで」
「………………はい」
俯いたまま席を立ち、俺の膝の上に座った。何も言わず俺の肩に頭を預け、手を俺の首に添えた。脈を確認しているようだ。
「生きてるよ」
「…………はい」
「大丈夫……生きてるから、な?」
小さく頷き、鼻を啜る。
「…………お、俺も、俺もお祈りする……みっつん死ぬのヤダっ。ね、リュウもするよねっ、しぐも、先輩達もっ」
「そらするけど……コンちゃんだけ崇めるとか無理やで俺、実家に神さんちゃんと居んねんから」
「ぼく……も、毎日、起き……時と……寝、前……お祈りする」
「……当然祈るよ。水月くんの健やかな人生を。ねぇ、ミフユ」
「え、えぇ……分野殿の存在もよく分かっていないのに、追い付けないと言いますか……実感が湧かないと言いますか…………しかし、鳴雷一年生に健やかに生きていて欲しいのは我々の総意かと」
「…………あっ、俺も? うんそりゃ俺も新人だけど死んで欲しくないとは思ってるけど死ぬとこだったとか言われても実感がなぁ……毎日お祈りも、俺寝る時間めちゃくちゃだし出来るか分かんないけど、うん……水月くん、死んじゃやだよ、せっかく仲良くなれそうなのに」
まだ仲良くなったと判断していないのか? ちょっとショック。
「ありがとうみんな、みんなで祈ってくれれば俺すごく安全だよ。逆にみんなの方が心配になってきちゃう、俺の愛情は掛け算だって自称してはいるけどさ、俺一人だからなぁ……一日何時間お祈りしなきゃなんだろ、ふふ」
「…………あなた何も言ってませんよね」
シュカが顔を上げ、レンズ越しの鋭い瞳でセイカを睨む。
「え、ゃ……い、言ってないけど、別にそんな、意見違うとかじゃないぞ……? みんな言ってるから、俺はそんなわざわざ言わなくてもいいかなって」
「せっちゃんは昨日感謝たっぷりのあぶらげ食わせてくれたもんなぁ~」
少し怯えて俯いたセイカにミタマが擦り寄る。
「やめろよ分野ぉ……」
「……セイカも俺に生きてて欲しい?」
「あ、当たり前だろっ! 生きてて、欲しいよ……鳴雷生きてなきゃ、俺生きる理由ないし……」
「そんなになの!? 早苗ちゃん!」
俺達の関係を知らないカサネが驚いている。他の彼氏達の気持ちも嬉しいけれど、セイカに生を願われるのは格別だ。だって、約三年間ずっと、死ねって言ってきてたから。心底憎らしそうに、本気で。
「そんなになんだぁ……早苗ちゃん……」
「…………」
「……あっ、セイカ、もうカサネ先輩と話していいぞ」
「そんなに、です」
「あっ、うん。今ので分かったわ……」
「…………あっ、ねぇみっつん話の続き~! 誰がなんでどうしてみっつん殺そうとしたのって話~!」
そうだった、話の途中だった。
「……フタさんって分かるか? サンちゃんのお兄さん」
「話だけ~……」
「私を殴った人でしょう」
「そうそう、あの人な、幽霊めっちゃ見えるんだよ。生きてる人間と区別付かないレベルで。今までに死んだ飼い猫とかとも一緒に居る、で、フタさん的には……ぐったりして弱って死んでった猫が死んだら元気になってずっと傍に居るようになった、逃げる心配もなく外にも連れ歩ける…………だからフタさん的には多分、死んでる方が、イイ」
「…………は?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、まさか……?」
「……俺を殺せば、俺は学校行ったり他の彼氏とデートしたりせず、視える自分の傍に居るしかない。独り占め出来る……そういう理由で俺を殺そうとしてた」
「量産型ヤンデレの、殺せば私のモノはぁと、的な理論意味分かんなかったけど……! そ、その人のは分かる! 分かりやすい……!」
「納得してる場合ですか!」
「ひぃいんごめんなさいぃっ! ぅうぅ……メ、メガネで副会長とか真面目で大人しめかと思ってたけど、なんかガタイいいし刃物傷あるよこの人……怖……」
シュカに怒鳴られたカサネは怯え、ソファの上で小さく丸まった。可愛い。
「フタって人って、サンちゃんのお兄さんなんだよね~? 兄弟で仲良く共有しようみたいなのはないの~?」
「……っちゅうかいくら水月でも、いくらそいつしか視えへんでも、自分殺した相手んとこ居ったりせぇへんやろ……せぇへんよな? 水月ならしかねんけど、せぇへんと思うから思い付いても殺せへんやろ普通」
「…………フタさん多分、その辺のこと考えてないと思う。説明したら分かってくれると思うけど」
「短絡的で行動力のあるバカって最悪ですね。どうするんです? 私、殺してきましょうか」
「やめてよ……大丈夫、対処法はもう思い付いてるんだ。フタさんに考え直させる……だからさ、みんな……フタさんのこと怒ったりしないで欲しいんだ。許してあげて欲しい……子供の頃から幽霊と人間の区別が付かなくて、ちょっと価値観おかしいんだよ。だから仕方ないっていうか……俺は、許してあげたいから、みんなも……」
話しながら、無茶なお願いをしているなと気付いて言葉が思い付かなくなっていく。声が上手く出なくなってきた。
「………………お願い。フタさんのことも好きなんだ、みんなと一緒で……大好き。平等に、愛してる……だから、これまで通り過ごしたい。みんな仲良くしてて欲しい……お願い、俺のワガママ……聞いてください」
説得なんて偉そうな真似は出来ない。今俺がしていいのは懇願だけだ。
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