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若頭認定 (水月+シュカ・ハル・カンナ・リュウ)
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醤油焼きそば、たこ焼きにイカ焼き、焼き鳥、まずは夕飯足り得る物を買い回った。たこ焼きと焼き鳥の店では「お嬢を他と同じ扱いは出来ねぇ」とか言われ、数個おまけしてもらった。
「どれもこれも味が濃くて美味いのぅ……む、みっちゃん! フランクフルトじゃフランクフルト!」
「はいはい行こうね。待っててね」
フランクフルトの店に並ぶ。あまり大勢で並んでは迷惑なので、三人ずつかわりばんこで並ぶことにしている。今回は俺とシュカと歌見が並ぶ番だった。
「ふふ……しかし、お嬢と呼ばれるあなたを見るのは何だかおかしいですねぇ。突っ込む側のくせに」
「え」
「ちょっシュカ外でそんなこと言うな!」
フランクフルトを作る男の手が止まっている。このままでは焦げてしまう。
「あ、あの……」
恐る恐る声をかけるとエプロンの肩紐についているピンマイクを持ち上げ、おそらくフタの他の部下達に伝えた──
「至急全員に伝達せよ、お嬢は若だった。繰り返す、お嬢は若だった!」
──と。いやどういう意味の無線だよそれ。
「なるほど。組長の弟を娶ったあなたは若頭も同意……ということですね」
「まだ娶ってないよ! シュカ、そういうプライベートなことホイホイ他人に漏らすな! 俺はまだいいけどフタさんの気持ちになって考えろよ!」
「すぐ忘れますよあの人なら」
「さ、さてはシュカ、お前フタさんのことちょっと嫌いだな……?」
吐き捨てるような言い方にシュカの気持ちを察する。校門前での喧嘩が尾を引いているのか、フタが俺を殺そうとしたのを根に持っているのか……
「失礼しました若、どうぞ」
「……ありがとうございます」
そりゃ「お嬢」と呼ばれるより「若」と呼ばれる方がマシだが、性事情を晒されるのは耐え難い苦痛……いや、今まで俺が抱かれてると思われてたのも嫌だな……っていうか抱かれる側かどうかで呼び名変えるのどうなの?
「にーにぃ、おかえりです」
「ただいま。ほいフランクフルト」
「棒付きは持ちやすくていいですね。しかしこのフランクフルト……水月のを見慣れていると少し物足りませんね」
男として喜ぶべきか、下ネタを注意するべきか、悩むな。
「みー、くんの……ぁご、疲れ……から、フラン……フル……は、これくら……が、いーよ……食べ、やす……」
「違いない。しかし時雨さん、あなたがノってくださるとは」
「もぉ~……しゅーなんかにノらないでよ~、しぐってなんか注意しにくいんだから~」
同意見だ、カンナは叱りにくい。
(……このメンバーの戯れを見ていると、リュウどのが恋しくなりますな)
お喋りで明るいリュウが居ないと寂しい。夜店を巡るついでに探しているのにちっとも見つからない。
(電話かけてみますかな)
彼氏達が彼氏同士での会話に夢中になり、俺が高校デビューまでの人生で身に付けたぼっち力により会話から外れた自然な隙を狙い、俺はリュウに電話をかけた。
『もしもし……』
「リュウ? 今どこに居るんだよ」
『…………もしもし』
「……? リュウ? なんだよ、電波悪いのか? もしもし、もしもーし? 聞こえてるのか?」
『ん……聞こえとる。もしもし言うてぇな……怖いわぁ。なんやの、水月』
「なんやのじゃねぇよ、お前どこに居るんだ? もうみんな祭り楽しんでるぞ」
『…………賽銭箱の横』
「はぁ……? 神社のか? さっき俺達神社行ったぞ、その時から居たのか?」
『ぉん……なんや、酒引っ掛けられたや言うとったなぁ』
「その時に合流しろよ。なんなんだ……今から迎えに行くからな」
『…………誰と?』
「え……? 一人で行くよ、みんな付き合わせてらんないからな」
安心したような吐息が電話の向こうから聞こえた。電話を切り、彼氏達に宣言する。
「みんな、リュウと連絡取れた。ちょっと迎えに行ってくるから、しばらく俺抜きで回っててくれ。先輩、財布預けるんでアキ達の分はここから払ってあげてください」
「あ、あぁ……分かった」
戸惑いながらも俺の財布を受け取った歌見の頬にキスをし、神社へと走る。ヒトに声をかけられないよう裏手から中に入り、スマホで神社を照らし賽銭箱を探す。
「水月……?」
リュウはすぐに見つかった、賽銭箱の隣に蹲っていた。
「リュウ……! 心配してたんだぞお前、急に走ってっちゃうし、連絡つかないし……まぁ、事件とか事故に巻き込まれた訳じゃなくてよかったよ」
いつもと変わらない金髪が見えて安心し、安堵の言葉を吐きながら近付き、リュウの顔が真っ青なことに後から気付いて歩幅を狭める。
「リュウ……? 隣、座るぞ?」
「……ぁ、ピッタリは、こんといて」
蹲るリュウを囲う小さな円を描く白い粉は、多分塩だ。俺はそれを崩さないよう、リュウから拳一つ分空けて腰を下ろした。
「…………アキが、さ、綿菓子のこと雲って言ってたんだ。今まで見たことなかったのかな? 祭りのヤツってデカいからああ言っただけかな。しかし最近の綿菓子ってすごいのな、色付きでさ、なんかキャラもののもあって……SNS映えしそ~って感じ?」
「そーなん……」
「うん……えっと…………あっ、シュカがな、可愛かったんだよ。ほら、俺達全員浴衣とか着てきたのにシュカだけ洋服でさ、気にしちゃって俺達との合流ちょっと躊躇ってたんだ。可愛くないか? 意外とそういうこと気にするの」
「……うん、かわええなぁ」
心ここに在らず、と言った具合の反応だ。リュウの緊張をほぐそうと──いや、違うな、リュウのせいにするのはよそう、俺が怖かっただけだ、核心に迫るのが怖くて無意味な時間稼ぎをした。
「………………リュウ、何を……感じたんだ?」
リュウの視点から荒凪の危険性を説いてもらおう。それは全員のために必要なことだ。
「どれもこれも味が濃くて美味いのぅ……む、みっちゃん! フランクフルトじゃフランクフルト!」
「はいはい行こうね。待っててね」
フランクフルトの店に並ぶ。あまり大勢で並んでは迷惑なので、三人ずつかわりばんこで並ぶことにしている。今回は俺とシュカと歌見が並ぶ番だった。
「ふふ……しかし、お嬢と呼ばれるあなたを見るのは何だかおかしいですねぇ。突っ込む側のくせに」
「え」
「ちょっシュカ外でそんなこと言うな!」
フランクフルトを作る男の手が止まっている。このままでは焦げてしまう。
「あ、あの……」
恐る恐る声をかけるとエプロンの肩紐についているピンマイクを持ち上げ、おそらくフタの他の部下達に伝えた──
「至急全員に伝達せよ、お嬢は若だった。繰り返す、お嬢は若だった!」
──と。いやどういう意味の無線だよそれ。
「なるほど。組長の弟を娶ったあなたは若頭も同意……ということですね」
「まだ娶ってないよ! シュカ、そういうプライベートなことホイホイ他人に漏らすな! 俺はまだいいけどフタさんの気持ちになって考えろよ!」
「すぐ忘れますよあの人なら」
「さ、さてはシュカ、お前フタさんのことちょっと嫌いだな……?」
吐き捨てるような言い方にシュカの気持ちを察する。校門前での喧嘩が尾を引いているのか、フタが俺を殺そうとしたのを根に持っているのか……
「失礼しました若、どうぞ」
「……ありがとうございます」
そりゃ「お嬢」と呼ばれるより「若」と呼ばれる方がマシだが、性事情を晒されるのは耐え難い苦痛……いや、今まで俺が抱かれてると思われてたのも嫌だな……っていうか抱かれる側かどうかで呼び名変えるのどうなの?
「にーにぃ、おかえりです」
「ただいま。ほいフランクフルト」
「棒付きは持ちやすくていいですね。しかしこのフランクフルト……水月のを見慣れていると少し物足りませんね」
男として喜ぶべきか、下ネタを注意するべきか、悩むな。
「みー、くんの……ぁご、疲れ……から、フラン……フル……は、これくら……が、いーよ……食べ、やす……」
「違いない。しかし時雨さん、あなたがノってくださるとは」
「もぉ~……しゅーなんかにノらないでよ~、しぐってなんか注意しにくいんだから~」
同意見だ、カンナは叱りにくい。
(……このメンバーの戯れを見ていると、リュウどのが恋しくなりますな)
お喋りで明るいリュウが居ないと寂しい。夜店を巡るついでに探しているのにちっとも見つからない。
(電話かけてみますかな)
彼氏達が彼氏同士での会話に夢中になり、俺が高校デビューまでの人生で身に付けたぼっち力により会話から外れた自然な隙を狙い、俺はリュウに電話をかけた。
『もしもし……』
「リュウ? 今どこに居るんだよ」
『…………もしもし』
「……? リュウ? なんだよ、電波悪いのか? もしもし、もしもーし? 聞こえてるのか?」
『ん……聞こえとる。もしもし言うてぇな……怖いわぁ。なんやの、水月』
「なんやのじゃねぇよ、お前どこに居るんだ? もうみんな祭り楽しんでるぞ」
『…………賽銭箱の横』
「はぁ……? 神社のか? さっき俺達神社行ったぞ、その時から居たのか?」
『ぉん……なんや、酒引っ掛けられたや言うとったなぁ』
「その時に合流しろよ。なんなんだ……今から迎えに行くからな」
『…………誰と?』
「え……? 一人で行くよ、みんな付き合わせてらんないからな」
安心したような吐息が電話の向こうから聞こえた。電話を切り、彼氏達に宣言する。
「みんな、リュウと連絡取れた。ちょっと迎えに行ってくるから、しばらく俺抜きで回っててくれ。先輩、財布預けるんでアキ達の分はここから払ってあげてください」
「あ、あぁ……分かった」
戸惑いながらも俺の財布を受け取った歌見の頬にキスをし、神社へと走る。ヒトに声をかけられないよう裏手から中に入り、スマホで神社を照らし賽銭箱を探す。
「水月……?」
リュウはすぐに見つかった、賽銭箱の隣に蹲っていた。
「リュウ……! 心配してたんだぞお前、急に走ってっちゃうし、連絡つかないし……まぁ、事件とか事故に巻き込まれた訳じゃなくてよかったよ」
いつもと変わらない金髪が見えて安心し、安堵の言葉を吐きながら近付き、リュウの顔が真っ青なことに後から気付いて歩幅を狭める。
「リュウ……? 隣、座るぞ?」
「……ぁ、ピッタリは、こんといて」
蹲るリュウを囲う小さな円を描く白い粉は、多分塩だ。俺はそれを崩さないよう、リュウから拳一つ分空けて腰を下ろした。
「…………アキが、さ、綿菓子のこと雲って言ってたんだ。今まで見たことなかったのかな? 祭りのヤツってデカいからああ言っただけかな。しかし最近の綿菓子ってすごいのな、色付きでさ、なんかキャラもののもあって……SNS映えしそ~って感じ?」
「そーなん……」
「うん……えっと…………あっ、シュカがな、可愛かったんだよ。ほら、俺達全員浴衣とか着てきたのにシュカだけ洋服でさ、気にしちゃって俺達との合流ちょっと躊躇ってたんだ。可愛くないか? 意外とそういうこと気にするの」
「……うん、かわええなぁ」
心ここに在らず、と言った具合の反応だ。リュウの緊張をほぐそうと──いや、違うな、リュウのせいにするのはよそう、俺が怖かっただけだ、核心に迫るのが怖くて無意味な時間稼ぎをした。
「………………リュウ、何を……感じたんだ?」
リュウの視点から荒凪の危険性を説いてもらおう。それは全員のために必要なことだ。
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