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変更されるルール (水月+サン・ノヴェム・ネイ・ハル)
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お菓子やオモチャ、ぬいぐるみなどなどが並んだ射的の夜店。
「百円で五発。腕伸ばしていいのはこの線まで、当たっても倒れなきゃっ……!?」
店員、多分フタの弟分。交流はないけれど見覚えはある彼の説明を聞いていると、肩に重いものが乗った。
「水月ぃ、今何してるの?」
サンの頭だ。
「射的だよ、説明聞いてるの」
「射的? やりたいやりたい」
「あ、ゃ…………あっ、当たったらOK! 景品あげます!」
今、ルールが変更されたな。サンを見て変えたのか? コルク弾を飛ばすありがちな射的、この軽い弾では相当上手いところに当てるか同じく軽い物だけを狙うかしなければ、景品を得ることは出来ない。大きなぬいぐるみなんて絶対に落ちない。それが射的の稼ぎ方だからだ、それが当たればいいとルールが変更されれば大損になりそうなものだ、流石に罪悪感が……ないな! 当たったのに景品をくれない射的に苛立った経験くらい祭りにあまり馴染みのない俺にだってある、幼い日の鬱憤をここで晴らさせてもらおう。
「当たったらいいの? ふーん……赤字出したら兄貴に怒られない?」
「いやぁ……はは……でも、あなたのお友達に下手なことは出来ませんから」
「へぇ? ボク友達たくさん居るんだよね~。この子達みんなそう。いい?」
「…………は、い。あっ、でも、この辺の大きいのはっ、大きいので……ぁー、この丸に当てたらにします!」
男は台の下からB5サイズのノートを取り出し、ページを数枚破ってそれぞれにボールペンで小さな円を描き、セロハンテープで景品に貼り付けた。
「ふぅーん……何したのか知らないけど、つまり今なんかした景品はそもそも渡す気がないヤツってことだ」
「…………は、はは、まぁまぁ……そ、その辺にしてくださいよ、頼みますから」
「サン、虐めちゃダメだよ。もはやパワハラだよ」
「でも多分なんらかの法律に反してるよ~?」
「サンだって反したことあるでしょ」
「いっぱい」
辺りがパッと明るくなるような、いい笑顔だ。
「目を瞑ろうよ、こういうとこに法律持ち出しちゃお祭りの夜店なくなっちゃうよ」
「ふふ、目閉じても開いても同じ景色~」
反応に困るなぁ。でもサンの盲目ジョークは多分困らせたくて言っていることだから、困っていいんだよな? それがサンが見たい俺なんだよな?
「ノヴェムくんからやる?」
百円を支払い、ノヴェムに銃を渡そうとするとノヴェムは英語で何か言った。
「みっつんにお手本見せて欲しいってさ~」
上手く聞き取れず困惑しているとハルが翻訳してくれた。ありがたい。
「じゃあ俺からだな。よーし……」
大きい景品を当ててカッコイイところを見せたい。しかし大きな景品に貼られた紙に描かれた円は小さい、コルク弾より一回りか二回り大きいかなと言ったところだ。当てられるとは思えない、難易度の高いものは避けた方が無難か?
「……これ、あの円に当たったかどうか分かるんですか?」
ネイが店の男に尋ねた。
「コルク弾には水性インクつけてあるんで、跡つくはずですよ。渡す時に拭きます」
「なるほど……水月くん、頑張ってくださいね」
五発あるんだ、一発くらいいいだろう。俺は大きな徳用お菓子を狙って引き金を引いた。弾は紙の端を掠り、青いインクを僅かに残した。
「全然違うとこ当たった……クソ」
ちょっと大きめのお菓子くらいにしておこうかな。アレなら多分当たるだろう。当たんねぇわ。
「……俺下手なのかな」
「後三発! 後三発! 大丈夫だよみっつん!」
「だ、だよな。よし……」
三発目は棚に弾かれた。下を狙い過ぎたようだ、もう少し上か? さっきは左に逸れたから、もう少し右に……ここだ!
「当たったぁ!」
しかも倒れた。本来のルールでも景品獲得だ。
「よし、もう一個……」
今の感じで行こう。片目を閉じてしっかりと狙う……外れたわ。
「はい景品、アニマルビスケット」
「ありがとうございます……」
バターの風味が美味しい、好きなお菓子ではある。後で食べよう。
「ノヴェムくん次やる?」
踏み台を用意してもらい、ノヴェムはその上に立って銃を構えた。結果は残念なことに五発全ハズレ、しゅんと落ち込んでしまっている。
「あ~、残念だったねノヴェムくん。一個でも当たったみっつんって意外とすごいのかも?」
「はは、どうだろ。次ハルやるか?」
「私にやらせてください。ノヴェム、お父さんが仇を取ってあげマス」
「仇ってネイさん大げさ~……ふふっ、がんば~!」
ハルが無邪気に手を叩く中、温和な笑顔を浮かべていたネイはノヴェムから銃を受け取った瞬間、表情を失くした。射抜くような冷たい眼差しに店員の男も戸惑ったように見える。
「失礼」
ネイは懐からタオルを取り出し、手のひらサイズに折り畳むと台の上に乗せ、浴衣を捲って台に足を乗せた。
「ちょっ……」
「ルール違反ですか?」
「いや……ルールは線越えないことだけですけど」
白い太腿が浴衣の裾から見えている。もう少し覗き込めば下着も見えるのでは? ネイの行儀の悪さに驚いた俺の心臓は興奮によりそのまま激しく脈打った。
「いいですかノヴェム、筋肉で銃を持ってはいけません。肉は収縮します。信用すべきは骨、骨の上に銃を乗せる。狙ってから撃つまではブレを殺すため呼吸を止め、集中が途切れないうちに素早くトリガーを──」
パンッ、と軽い音。パタリと倒れるお菓子の箱。
「──引く」
ネイの足癖の悪さにドン引きしていた彼氏達が沸き立つ。ネイはそのまま続け様に四発発射し、四発とも大きな景品に貼られた紙に描かれた円のド真ん中を撃ち抜いた。
「百円で五発。腕伸ばしていいのはこの線まで、当たっても倒れなきゃっ……!?」
店員、多分フタの弟分。交流はないけれど見覚えはある彼の説明を聞いていると、肩に重いものが乗った。
「水月ぃ、今何してるの?」
サンの頭だ。
「射的だよ、説明聞いてるの」
「射的? やりたいやりたい」
「あ、ゃ…………あっ、当たったらOK! 景品あげます!」
今、ルールが変更されたな。サンを見て変えたのか? コルク弾を飛ばすありがちな射的、この軽い弾では相当上手いところに当てるか同じく軽い物だけを狙うかしなければ、景品を得ることは出来ない。大きなぬいぐるみなんて絶対に落ちない。それが射的の稼ぎ方だからだ、それが当たればいいとルールが変更されれば大損になりそうなものだ、流石に罪悪感が……ないな! 当たったのに景品をくれない射的に苛立った経験くらい祭りにあまり馴染みのない俺にだってある、幼い日の鬱憤をここで晴らさせてもらおう。
「当たったらいいの? ふーん……赤字出したら兄貴に怒られない?」
「いやぁ……はは……でも、あなたのお友達に下手なことは出来ませんから」
「へぇ? ボク友達たくさん居るんだよね~。この子達みんなそう。いい?」
「…………は、い。あっ、でも、この辺の大きいのはっ、大きいので……ぁー、この丸に当てたらにします!」
男は台の下からB5サイズのノートを取り出し、ページを数枚破ってそれぞれにボールペンで小さな円を描き、セロハンテープで景品に貼り付けた。
「ふぅーん……何したのか知らないけど、つまり今なんかした景品はそもそも渡す気がないヤツってことだ」
「…………は、はは、まぁまぁ……そ、その辺にしてくださいよ、頼みますから」
「サン、虐めちゃダメだよ。もはやパワハラだよ」
「でも多分なんらかの法律に反してるよ~?」
「サンだって反したことあるでしょ」
「いっぱい」
辺りがパッと明るくなるような、いい笑顔だ。
「目を瞑ろうよ、こういうとこに法律持ち出しちゃお祭りの夜店なくなっちゃうよ」
「ふふ、目閉じても開いても同じ景色~」
反応に困るなぁ。でもサンの盲目ジョークは多分困らせたくて言っていることだから、困っていいんだよな? それがサンが見たい俺なんだよな?
「ノヴェムくんからやる?」
百円を支払い、ノヴェムに銃を渡そうとするとノヴェムは英語で何か言った。
「みっつんにお手本見せて欲しいってさ~」
上手く聞き取れず困惑しているとハルが翻訳してくれた。ありがたい。
「じゃあ俺からだな。よーし……」
大きい景品を当ててカッコイイところを見せたい。しかし大きな景品に貼られた紙に描かれた円は小さい、コルク弾より一回りか二回り大きいかなと言ったところだ。当てられるとは思えない、難易度の高いものは避けた方が無難か?
「……これ、あの円に当たったかどうか分かるんですか?」
ネイが店の男に尋ねた。
「コルク弾には水性インクつけてあるんで、跡つくはずですよ。渡す時に拭きます」
「なるほど……水月くん、頑張ってくださいね」
五発あるんだ、一発くらいいいだろう。俺は大きな徳用お菓子を狙って引き金を引いた。弾は紙の端を掠り、青いインクを僅かに残した。
「全然違うとこ当たった……クソ」
ちょっと大きめのお菓子くらいにしておこうかな。アレなら多分当たるだろう。当たんねぇわ。
「……俺下手なのかな」
「後三発! 後三発! 大丈夫だよみっつん!」
「だ、だよな。よし……」
三発目は棚に弾かれた。下を狙い過ぎたようだ、もう少し上か? さっきは左に逸れたから、もう少し右に……ここだ!
「当たったぁ!」
しかも倒れた。本来のルールでも景品獲得だ。
「よし、もう一個……」
今の感じで行こう。片目を閉じてしっかりと狙う……外れたわ。
「はい景品、アニマルビスケット」
「ありがとうございます……」
バターの風味が美味しい、好きなお菓子ではある。後で食べよう。
「ノヴェムくん次やる?」
踏み台を用意してもらい、ノヴェムはその上に立って銃を構えた。結果は残念なことに五発全ハズレ、しゅんと落ち込んでしまっている。
「あ~、残念だったねノヴェムくん。一個でも当たったみっつんって意外とすごいのかも?」
「はは、どうだろ。次ハルやるか?」
「私にやらせてください。ノヴェム、お父さんが仇を取ってあげマス」
「仇ってネイさん大げさ~……ふふっ、がんば~!」
ハルが無邪気に手を叩く中、温和な笑顔を浮かべていたネイはノヴェムから銃を受け取った瞬間、表情を失くした。射抜くような冷たい眼差しに店員の男も戸惑ったように見える。
「失礼」
ネイは懐からタオルを取り出し、手のひらサイズに折り畳むと台の上に乗せ、浴衣を捲って台に足を乗せた。
「ちょっ……」
「ルール違反ですか?」
「いや……ルールは線越えないことだけですけど」
白い太腿が浴衣の裾から見えている。もう少し覗き込めば下着も見えるのでは? ネイの行儀の悪さに驚いた俺の心臓は興奮によりそのまま激しく脈打った。
「いいですかノヴェム、筋肉で銃を持ってはいけません。肉は収縮します。信用すべきは骨、骨の上に銃を乗せる。狙ってから撃つまではブレを殺すため呼吸を止め、集中が途切れないうちに素早くトリガーを──」
パンッ、と軽い音。パタリと倒れるお菓子の箱。
「──引く」
ネイの足癖の悪さにドン引きしていた彼氏達が沸き立つ。ネイはそのまま続け様に四発発射し、四発とも大きな景品に貼られた紙に描かれた円のド真ん中を撃ち抜いた。
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