冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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探偵さんに調べてもらおう (水月+荒凪・ミタマ・サキヒコ・アキ・スイ)

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何度かキャッチに掴まったが、フタの写真を見せればすぐに解放された。大切な思い出を利用することに心が痛んだが、無事に探偵事務所に辿り着いた。

「失礼しまーす……」

事務所に入る時の作法なんて知らない。看板を三度確認し、恐る恐る扉を開けた。

「……!」

部屋の奥の本棚の前に立っていた黒髪の人物の姿がぼんやりとした光に包まれ、大きくなり、茶髪の女の姿へと変わった。

「ごほっ、ごほん……んー、ぁ、あー……あ~…………いらっしゃい、ナルちゃん」

二メートル半はあろう異様な高身長と、優しげなタレ目が印象的な女性だ。

「お邪魔します。あれ、スイさん……髪切りました?」

「へっ? あぁ、うん。そんなとこ……」

「みっちゃん、此奴は実体化させた霊力で身体を覆っとるんじゃと以前言ったじゃろ。肉体と同じ見た目の霊体を実体化させるのとは訳が違う、作る度に作り直さねばならん。細かい差異は出て当然、言うてやるな」

「言わなくていいのはアンタの方よ!」

「ごめんなさいコンちゃん石で獣だからデリカシーないんです!」

「こんっ!? ひ、ひどいぞみっちゃん……なんちゅう言いようじゃ、ワシ泣いちゃう、およよ……」

「何その泣き方……いいからちょっと黙っててよ」

「とりあえず座って。オレンジジュースでいい? コーヒー飲んじゃう?」

「あ、お構いなく……ジュースください」

革張りのソファに腰掛ける。家にあるソファは革張りではないから、ぎゅむぎゅむとした感触や音が珍しいのか、荒凪は興味深そうに表面をさすっている。

「おまたせ~。新鮮果実をぎゅぎゅっと搾った美味しいオレンジジュースよ~」

オレンジジュースが注がれた透明なグラスが三つ、机に並ぶ。

「……ワシのは?」

「ほら、蛇口ひねりたて新鮮な水道水よ」

「ぬるい! せめて氷くらい入れて欲しいんじゃが!」

向かいのソファに腰を下ろしたスイはデニムの尻ポケットからスキットルを引っ張り出し、おそらく酒だろう中身をあおった。

「そこのおかっぱくんも座りなさい? アタシみんなのお話ゆっくり聞きたいわ」

「……! は、はい。失礼します」

俺の背後に立っていたらしいサキヒコがミタマの隣に腰を下ろす。姿を現していなかったサキヒコがしっかり視えている、ジュースも用意してくれている……やはり彼女……彼? 彼女? の霊能力は信頼出来る。

「さて……改めまして、如月探偵事務所所長、如月 睡です」

「あっ、鳴雷 水月です」

「……! 年積 沙季彦です」

「自己紹介の流れかの? 分野 魅魂じゃ」

「……? あらなぎ、です」

スイはくすくすと笑っている、俺達の自己紹介の必要はなかったのかもしれない。

「依頼内容を確認させてもらうわね。依頼人はナルちゃん、依頼内容は……荒凪と呼ばれる人魚らしき妖怪の詳細を調べて欲しい、だったわね」

「は、はい。霊視とか……で、何とか」

「霊視ね、メッセージで言った通り得意じゃないけど一応出来るわ。アタシよりそこの狐の方がそういうのは上手そうだけど」

「ワシが出来るの占いじゃもん」

「神霊の占いなんて超限定的な天眼通みたいなもんでしょ、霊視と違って対象に気取られる心配ないじゃない」

「……ワシ分霊じゃから霊力足りんのよ。あっちゃんの詳細を探るに必要な占いの出力は、ワシの容積を大きく上回る。この分霊を消す覚悟で挑んだとて、ろくなことは分からんよ」

「へぇ、コスパ悪いのね。流石にその辺は知らなかったわ。さて、そろそろ始めましょっか。人魚の彼、こっち向いて」

スイは温和なタレ目を更に優しく緩め、荒凪を見つめた。悪質なキャッチ達のせいで膨らんだ荒凪の警戒心が萎んでいくのを感じる。

「基本的な情報はナルちゃんからもらってるけど……さて、何から視ましょうか」

「人魚かどうか……本当の種族? を知りたいです」

「んー……養殖妖怪、なのよね。なんちゃらの会ってとこの」

日本神秘生類創成会だ。

「たとえばナルちゃんが自分のルーツを知りたい時、どう調べるか。親御さんとかおじいちゃんおばあちゃんに聞きに行ったり、あるなら家系図探したりするわよね?」

「へ……? まぁ、はい……祖父母の顔も名前も知りませんが」

「もしくは、自分の顔立ち体つき、その他諸々から推測する……DNAとか調べれば人種の判定は確実かもね」

「そうですね……?」

「霊視でも似たことをするわ。彼の足跡を追って、詳細を調べていくか……とにかく彼を観察するか。どっちがいいかしら」

「え、えっと……一つ目の方法なら、神秘の会の情報も手に入る感じですよね」

「そうね、親御さんの馴れ初めを聞くように、どうやって彼が生まれたのかも分かるわ」

「じゃあ、そっちで……!」

「でもこの方法だと気取られる可能性がある。妖怪を養殖するような霊能力者なら、アタシが視たことに気付く。逆にこっちを視てくるかも。それでもいい?」

「…………ちょっと、怖いですね、それ」

以前、セイカと話したバカバカしい考察。荒凪が口走った「物部」とは、昔ネットで有名になった怖い話に登場する恐ろしい人物のことなのでは、なんて妄想。アレを思い返してしまうと怖くなる。

(物部天獄が実在するなんて思ってません、あの話の中でも既に死んだ人物ですし……しかし妖怪を造ってるような人、マトモな訳ありませんし、虐待許さないマンな秘書さんとか警察のネイさんが敵対視してる相手ですからまぁまず悪いヤツでそ。こっちの情報渡すなんて絶対ダメですな)

そもそも、神秘の会の情報はネイが欲しがっているだけで、俺にとってはどうでもいいものだ。そりゃネイの好感度は稼ぎたいけれど……振り向いてくれない彼に利用され続けるのも癪だし、今回は俺の目的を優先しよう。荒凪と安全に生活していきたい、そのために荒凪の生態を知りたいという目的を。

「じゃあ、二個目で」

「彼がちょっと不快になるかもだけど、大丈夫?」

「え……不快って、嫌な質問とかするんですか?」

「んー、インフルエンザの検査とか鼻になんか突っ込まれたりするでしょ? 舌押えられて喉見られたり、血液検査なら痛いし……そういう不快感」

「あ、あぁ……観察による不快感。まぁ仕方ないですよそれくらい。我慢出来るよね、荒凪くん」

「うん」

スイの丸っこい瞳が見開かれ、荒凪を見つめる。荒凪もまた魚の目のような丸い瞳でスイを見つめ返す。

「……ぉお、すごい霊力じゃな」

「…………ええ」

ミタマとサキヒコは何かを感じ取っているようだが、俺には何も分からない。オレンジジュースを啜って霊視の終わりをただ待った。
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