冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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アイドルと観覧車に (〃)

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ステーキハウスを後にし、重たい腹を抱えて次のアトラクションへ向かう。

「しばらく激しく動くのは嫌だな」

「もちろん、僕もだよ。今から行くのはショーだよっ、二十分くらいかなぁ……ちょっとした演劇があるんだ」

「へぇ」

正直、あんまり興味ないな。観る前はそう思っていた。

「…………すっごかった」

「でしょ~」

「まさか場面転換で席が回転するとは……」

「舞台四つ使ってて、場面ごとに席がぐるぐる回るんだよ」

「音響もすごいし匂いもした……」

「みぃくんが気に入ってくれてよかったぁ☆」

未だ興奮冷めやらぬ、と言った具合だ。ふわふわとした高揚感がなかなか収まらない、素晴らしい観劇体験だった。

「……ねぇ、みぃくん。次観覧車行こっ」

「ん? あぁ……アレか」

遊園地のどこからでも見える巨大観覧車、とうとうアレに乗るのか。

「夜に乗った方が夜景とか見れて良さそうじゃないか? まぁ昼間でも眺め良さそうだけど」

「……夜までは居れない。明日地方でお仕事だから、早めに帰らないと」

「そう……か。半日休みって言ってたから、夜のパレードまで見て帰れると思ってたよ」

「ごめんね」

「カミアは悪くないよ。事務所はちょっと働かせ過ぎだと思うけど。でもまぁ、仕方ないよな……ギリギリまでめいっぱい楽しもう」

「うん! アイドルなんてそんな寿命長くないから、今のうちにいっぱい稼いで引退したらみぃくんとお兄ちゃんと暮らすんだ~。のどかなとこにお家買ってさ、三人暮らししよっ☆」

「悪くないけど俺には生涯を誓ってる彼氏がもう少し居るぞ?」

「あ、そっか。じゃあもっとでっかい家建てないとなぁ~……お金足りるかな」

プレミアムパスのおかげで観覧車の待ち時間も数分で済んだ。話の続きは観覧車内でだな。

「観覧車初めてだよ。結構揺れるんだな」

「手前に並んでたちっちゃい子がはしゃいでるみたい……ってみぃくん観覧車初めて!? えー、そうなんだぁ……フタさんとは?」

「そういえば乗ってないな……フタさんゆったりしてないアトラクションのが好きだったのかな?」

「そうなんだぁ……えへへっ、みぃくんの人生初もらっちゃった♡ 堪能しないとだ。どうしよ、二人きりだけどあんまりイチャつけないよね、前後のゴンドラはちょっと見えるし、向こうからも見えてるってことだよね。隣に座るくらいなら大丈夫かなぁ……うーん……やっぱりやめとこうかな。正面に座ってる方がみぃくん見れるし!」

立ち上がって前後左右の窓に張り付いて周りを見回していたカミアは、改めて俺の正面の席に座り直した。

「……なぁカミア、俺と将来一緒に暮らしてくれるつもりなんだよな?」

「ん? うん、もちろん! お仕事ばっかりの僕の青春は引退後、みぃくんとお兄ちゃんとの幸せ~な生活に待ってるんだよ! すごく楽しみ☆」

のどかなところに家を買うつもりでいるのなら、それは青春というより余生では? なんて冷めることは言わず、笑顔で頷いた。

「引退ねぇ……男性アイドルって四十五十でも活躍してる人結構居るイメージだけど、カミアはいつ引退する予定なんだ?」

「…………分かんない。僕が目指してるのはお兄ちゃんがなるはずだった完璧なアイドルだから……落ち目なんてあっちゃダメなんだ。人気絶頂で電撃引退、その後一切表舞台に出ない……とか、伝説になれそうじゃないかな? カミアの名前を……お兄ちゃんの、本当の名前を、永遠に残せるんだ」

どこまでもカンナのためなんだな。

「お母さんがそんなこと許してくれるとは思えないから、まずどっかのタイミングでお母さんから離れないとなんだけど。後はいつが人気絶頂なのかの見極めだよね、武道館は行ったしぃ……オリコンランキングも一位取ったことあるしぃ……全国ツアーも予定あるしなぁ」

「……カミアはアイドルやる上で目標とかないのか?」

「え? だから、お兄ちゃん。お兄ちゃんが怪我せず大きくなってたらやってたはずのアイドル……」

「それは……カンナが出来なくなったから代わりにやらなきゃって思ってること、だろ? 俺が聞きたいのは、カミア自身がやりたいことだよ」

「僕がやりたいことだよ? お兄ちゃんみたいなアイドルになりたい」

銀河を内包しているような、目を離せなくなる美しい瞳は真っ直ぐに俺を見つめている。じっと見ているとその深みに落ちてしまいそうだ。

「……やりたくてやってるんならいいんだけど」

「…………つまんなそうに見える?」

「いや……」

「みぃくんと居るともっとみぃくんと居たくなるから、普段が疎ましくなっちゃうのかも。僕がアイドルやりたくなさそうに見えるとしたら、みぃくんのせいだよ」

カミアの母親も性格が良くないから無理矢理働かされているのではと不安に思っていたが、そんなふうに言われては喜んでしまう。

「そっか、俺のせいか」

「そ。みぃくんのせいで幸せの基準が上がっちゃって、美味しいもの食べても前ほど嬉しくなくってさ~? 僕は大変なんだからそんなニヤニヤしないの!」

「ふふふ……ごめんごめん」

「反省してるんなら、次会う時まで夢見心地でいられるくらい今日楽しくしてよ」

「頑張りたいけど、お前との今日はもう終わりなんだろ?」

「……観覧車のてっぺんでキス、ベタだしちょっと古臭いかもだけどやっぱり憧れあるんだよね。その憧れのシチュ、今日出来たら……次会う時まで幸せかも?」

「分かりやすいヒント助かるよ。てっぺんか……もう少しだな」

俺達が乗るゴンドラが頂点に来た時なら何をしたって隣のゴンドラから覗かれることはない。頂点に居る僅かな時間を濃密なものにしようじゃないか。
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