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アイドルとベタなシチュエーションを (〃)
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観覧車の頂点、この遊園地で最も高く最も景色のいい地点。そんな場所で俺は目を閉じ、唇に意識を集中していた。しっとりと吸い付く柔らかく弾力の強い感触、肌とは違う触れ心地に興奮が高まる。
「……っ、ん」
俺はゴンドラが頂点に着く少し前に立ち上がり、カミアの頬と顎を両手でそっと包むようにして持ち上げ、頂点に着くと同時に唇を重ねたのだ。
「…………」
舌を入れる時間はない。ただただ唇を押し付け合い、互いの体温と呼吸を教え合う。体感では数秒後、実際にはきっと唇を重ねてすぐに、カミアは俺の背に腕を回した。抱き締めるのではなく、服をきゅっと掴んでいる。カミアに似合う仕草だ。
「………………カミア」
観覧車が下がり始める。唇を離し、カミアのぽぅっとした表情を楽しむ。
「……カミア、大丈夫か?」
あんまりにもぽぅっとしたままだから、微笑み混じりに心配を声に滲ませて話しかけてみた。
「あっ、だ、大丈夫! 嬉しくて、ちょっと放心しちゃった。えへへっ……」
俺の表情と声色の選択は正解だった、カミアの顔がどんどん赤くなっていく。ときめかせて好感度を稼ぐことには成功しているが、観覧車を降りるまでに冷やしてやらないと周囲の人間に怪しまれるかもな。
「ひゃっ!? な、なに?」
ちょうど手の甲が冷えていたのでカミアの頬に当ててやった。
「みぃくん……?」
「顔熱そうだなって思って。どう? 俺の手気持ちいい?」
「うん、みぃくんの手きもちぃ……」
俺の手を片方握り、無邪気に微笑む。その笑顔と淫らな妄想を煽るセリフに俺の体温まで上がっていく。
「……? みぃくん? みぃくんも顔真っ赤じゃん」
「この観覧車ちょっと空調弱いんじゃないか」
「え~? 涼しいよぉ。ふふ……みぃくん彼氏いっぱい居るのに、全然そんな感じしなくて……みんなともっとすごいことしてるはずなのに、僕とも結構えっちなことしてるのに、いつもちょっとしたことで新鮮に照れてくれて……みぃくんのそういうとこ好き、楽しいよ」
「…………そうか。楽しんでくれてるのはいいんだけど、すぐ照れちゃうの俺は嫌なんだよな、もっと余裕ある感じのがカッコイイと思ってたんだけど」
「みぃくんそういうの合わないよ~。顔には合うけどさぁ。でも頑張って繕ってるのが可愛いってお兄ちゃんも言ってたし、色々気にしないで今のままがいいんじゃない?」
「か、可愛い……カンナが言ってたのか? マジか……」
いつも「みぃくんカッコイイ」と言ってくれているのに。そりゃそういう雰囲気になって、カンナがちょっとSっ気を出した時なんかは可愛がられている感じはするけれど、弟に話すほど俺を可愛いと思っていたなんて、ちょっとショックだ。
「もちろん普段カッコイイからこそたまの可愛いさが映えるんだよっ? ずっと可愛いなーって思ってる訳じゃないって」
「……カンナ、そうも言ってたのか?」
「ううん、でも僕達一卵性だもん」
双子なら思考が似ると? 今のギャップ萌えの話はカミアが俺に抱いている感想ということか。少しとぼけた彼には特に、カッコイイとだけ思われていたかったな。
「みぃくんはカッコよくって、なのに遊び慣れてない感じが可愛くって、何より優しくて、すごく愛してくれてるしそれがちゃんと伝わってきて……だから、だから僕達みぃくんが大好きで……ずっとずっと、こうしてたい」
俺の隣に腰を下ろしたカミアは俺の手をきゅっと握った。
「……ダメだなぁ。キスしても、どんな話しても、別れるの惜しいや。みぃくんに満足したって起こんないんだね、困ったなぁ」
「カミア……」
「あ、そろそろ着いちゃうね。観覧車って止まらずに乗り降りするのちょっとドキドキするよねっ」
好意をはっきりと言葉にしたのが後から恥ずかしくなったのか、カミアは焦ったように立ち上がって扉のすぐ前に移動した。
(……わたくしももっとカミアたんとの時間が欲しいでそ。っていうかカミアたんを働かせ過ぎですよな、事務所とジャーマネママは。芸能界って労働基準法守らなくていいんでしょうか)
そろそろ扉が開くな、俺も立たなければ。
「仕事……なくなっちゃえばいいのにな。ちょっとだけ、明日明後日の分だけでも」
「えぇ? ふふっ、そんなこと言っちゃダメだよみぃくん。でも、うん……僕もそう思うかも。ちょっとだけね、ちょっとだけ! お仕事あるのありがたいんだから」
ゴンドラの扉が開く。カミアが先に降り、俺に向かって手を差し出した。
「手引いてもらわなくても降りれるよ」
小さな子供じゃあるまいしなんて笑って、そう言いながらも俺はカミアの手を取り、久しぶりの地面に足をつけた。
「……やっぱり地に足がついてると落ち着くな」
「ちょっと怖かったりした?」
「そこまでじゃないけどさ……」
「どうかな~? 怪しいな~……ふふふ、そろそろお土産屋さん行こっか」
「…………あぁ」
お土産を買ったらこの楽しいデートは終わりだろうか、最後まで楽しみたいし楽しませたいのに寂しくなってしまう。
「カミア……? 何見てるんだ?」
カミアは店の前に貼られたポスターを見て足を止めた。彼越しにポスターを眺めてみると、それが夜に行われるパレードを宣伝するものと分かった。カミアの仕事の予定を聞くまで一緒に見て帰るものと俺が思い込んでいたパレードだ。
「……夏はホラーの時期でしょ? だから、普段よりちょっと力入ったパレードやるんだ。ハロウィンほどじゃないけど」
「へぇー……」
「…………見たかったなぁ。ね、みぃくん……また来年も一緒に来てくれる?」
「何年でも何回でも喜んで」
「えへへ……今年は我慢だね。来年は一日お休み取れるといいなぁ。あっ、ごめんね止まっちゃって、お店行こっか」
落ち込んだ顔を無理に笑顔に変えたカミアに、再び手を引かれた。
「……っ、ん」
俺はゴンドラが頂点に着く少し前に立ち上がり、カミアの頬と顎を両手でそっと包むようにして持ち上げ、頂点に着くと同時に唇を重ねたのだ。
「…………」
舌を入れる時間はない。ただただ唇を押し付け合い、互いの体温と呼吸を教え合う。体感では数秒後、実際にはきっと唇を重ねてすぐに、カミアは俺の背に腕を回した。抱き締めるのではなく、服をきゅっと掴んでいる。カミアに似合う仕草だ。
「………………カミア」
観覧車が下がり始める。唇を離し、カミアのぽぅっとした表情を楽しむ。
「……カミア、大丈夫か?」
あんまりにもぽぅっとしたままだから、微笑み混じりに心配を声に滲ませて話しかけてみた。
「あっ、だ、大丈夫! 嬉しくて、ちょっと放心しちゃった。えへへっ……」
俺の表情と声色の選択は正解だった、カミアの顔がどんどん赤くなっていく。ときめかせて好感度を稼ぐことには成功しているが、観覧車を降りるまでに冷やしてやらないと周囲の人間に怪しまれるかもな。
「ひゃっ!? な、なに?」
ちょうど手の甲が冷えていたのでカミアの頬に当ててやった。
「みぃくん……?」
「顔熱そうだなって思って。どう? 俺の手気持ちいい?」
「うん、みぃくんの手きもちぃ……」
俺の手を片方握り、無邪気に微笑む。その笑顔と淫らな妄想を煽るセリフに俺の体温まで上がっていく。
「……? みぃくん? みぃくんも顔真っ赤じゃん」
「この観覧車ちょっと空調弱いんじゃないか」
「え~? 涼しいよぉ。ふふ……みぃくん彼氏いっぱい居るのに、全然そんな感じしなくて……みんなともっとすごいことしてるはずなのに、僕とも結構えっちなことしてるのに、いつもちょっとしたことで新鮮に照れてくれて……みぃくんのそういうとこ好き、楽しいよ」
「…………そうか。楽しんでくれてるのはいいんだけど、すぐ照れちゃうの俺は嫌なんだよな、もっと余裕ある感じのがカッコイイと思ってたんだけど」
「みぃくんそういうの合わないよ~。顔には合うけどさぁ。でも頑張って繕ってるのが可愛いってお兄ちゃんも言ってたし、色々気にしないで今のままがいいんじゃない?」
「か、可愛い……カンナが言ってたのか? マジか……」
いつも「みぃくんカッコイイ」と言ってくれているのに。そりゃそういう雰囲気になって、カンナがちょっとSっ気を出した時なんかは可愛がられている感じはするけれど、弟に話すほど俺を可愛いと思っていたなんて、ちょっとショックだ。
「もちろん普段カッコイイからこそたまの可愛いさが映えるんだよっ? ずっと可愛いなーって思ってる訳じゃないって」
「……カンナ、そうも言ってたのか?」
「ううん、でも僕達一卵性だもん」
双子なら思考が似ると? 今のギャップ萌えの話はカミアが俺に抱いている感想ということか。少しとぼけた彼には特に、カッコイイとだけ思われていたかったな。
「みぃくんはカッコよくって、なのに遊び慣れてない感じが可愛くって、何より優しくて、すごく愛してくれてるしそれがちゃんと伝わってきて……だから、だから僕達みぃくんが大好きで……ずっとずっと、こうしてたい」
俺の隣に腰を下ろしたカミアは俺の手をきゅっと握った。
「……ダメだなぁ。キスしても、どんな話しても、別れるの惜しいや。みぃくんに満足したって起こんないんだね、困ったなぁ」
「カミア……」
「あ、そろそろ着いちゃうね。観覧車って止まらずに乗り降りするのちょっとドキドキするよねっ」
好意をはっきりと言葉にしたのが後から恥ずかしくなったのか、カミアは焦ったように立ち上がって扉のすぐ前に移動した。
(……わたくしももっとカミアたんとの時間が欲しいでそ。っていうかカミアたんを働かせ過ぎですよな、事務所とジャーマネママは。芸能界って労働基準法守らなくていいんでしょうか)
そろそろ扉が開くな、俺も立たなければ。
「仕事……なくなっちゃえばいいのにな。ちょっとだけ、明日明後日の分だけでも」
「えぇ? ふふっ、そんなこと言っちゃダメだよみぃくん。でも、うん……僕もそう思うかも。ちょっとだけね、ちょっとだけ! お仕事あるのありがたいんだから」
ゴンドラの扉が開く。カミアが先に降り、俺に向かって手を差し出した。
「手引いてもらわなくても降りれるよ」
小さな子供じゃあるまいしなんて笑って、そう言いながらも俺はカミアの手を取り、久しぶりの地面に足をつけた。
「……やっぱり地に足がついてると落ち着くな」
「ちょっと怖かったりした?」
「そこまでじゃないけどさ……」
「どうかな~? 怪しいな~……ふふふ、そろそろお土産屋さん行こっか」
「…………あぁ」
お土産を買ったらこの楽しいデートは終わりだろうか、最後まで楽しみたいし楽しませたいのに寂しくなってしまう。
「カミア……? 何見てるんだ?」
カミアは店の前に貼られたポスターを見て足を止めた。彼越しにポスターを眺めてみると、それが夜に行われるパレードを宣伝するものと分かった。カミアの仕事の予定を聞くまで一緒に見て帰るものと俺が思い込んでいたパレードだ。
「……夏はホラーの時期でしょ? だから、普段よりちょっと力入ったパレードやるんだ。ハロウィンほどじゃないけど」
「へぇー……」
「…………見たかったなぁ。ね、みぃくん……また来年も一緒に来てくれる?」
「何年でも何回でも喜んで」
「えへへ……今年は我慢だね。来年は一日お休み取れるといいなぁ。あっ、ごめんね止まっちゃって、お店行こっか」
落ち込んだ顔を無理に笑顔に変えたカミアに、再び手を引かれた。
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