冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

文字の大きさ
1,788 / 2,312

犠牲など出さない (水月+ミタマ・ノヴェム・アキ・セイカ)

しおりを挟む
ミタマの言う通り、彼が本当の意味で死んでしまうことがないのだとしても、彼が傷付くのは嫌だ。このことについて考えると、彼がフタに切りつけられた時のことを思い出す。ぐったりと横たわった金色の狐の姿を、溢れ出る血を……肉をかき分け縫うべき血管を探し手当の補助をしたアキに対し、何も出来なかった自分への嫌悪感を。

「みっちゃん……」

三角の耳がぺしょっと垂れる。先端は黒く、根元は金色、そんな狐の耳はミタマの感情を豊かに表現している。

「こんっ……!?」

まろ眉だから分かりにくいけれど、多分眉尻を下げた表情だった。心配そうに俺を見つめる彼を抱き締めると、驚いたらしく耳と尻尾がピンと立った。

「み、みっちゃん? そんな急に抱きつかれては…………のぅみっちゃん、この分霊が消滅するほどの損傷を受けると決まった訳ではない。そんな……そんな、今生の別れのような……強い抱擁せずとも、ワシは消えんよ」

「…………うん」

「分かったなら離せ、苦しいぞ」

「やだ……」

「みっちゃん、はぁ……しようのない旦那様じゃ」

ミタマの手が背に回る。背中の真ん中をぽんぽんと優しく叩かれ、目頭が熱くなる。どんな感情がこもっているのか自分でもよく分からない涙が後から後から溢れてきて、より強く彼を抱き締めてしまう。

「んっ……みっちゃん、苦しいと言うとろうに。あんまり強くするならすり抜けて逃げてしまうぞ? っと、今は禁句じゃったか。あぁこれこれ……爪を立てるでない、爪が傷むぞ」

逃がすものか。離すものか。俺は自然とミタマの背に爪を立ててしがみついていた。

《あぁーっ!?》

ミタマの身体を軋ませるほどの抱擁は、幼子の絶叫に驚いて緩んだ。

《なにしてるの! コンお兄ちゃん!》

ノヴェムはぷくっと頬を膨らませ、密着している俺とミタマの身体の間に無理矢理両手を突っ込むと、腕を広げて俺達を引き離そうとした。

《はぁーなぁーれぇーてっ! お兄ちゃんはぼくの、ぼくの……! こんやくしゃあーっ!》

「ノ、ノヴェムくん?」

抵抗も出来るが、それではノヴェムが泣き出すかもしれない。俺はミタマを抱き締めるのをやめ、ノヴェムの手に従ってミタマから離れた。

《もぉ! お兄ちゃんのおまぬけさん! うわきもの! なんでそうすぐにぼく以外のおとことイチャイチャしちゃうの!》

「ノヴェムくん? えと、ごめんね?」

ネイもミタマも翻訳してくれないからノヴェムが何に怒っているのか分からない。分からないまま謝った。

《ごめんですむならさいばんしょはそんざいしない! 水月お兄ちゃん、うわきゆるして欲しかったら、ぼくをだっこしなさい!》

「抱っこしとくれっちゅうとるぞ」

「抱っこ? あー、すぐ行くって言ったのにこっちで長々話し過ぎたかな。寂しかった? ごめんね、ノヴェムくん」

ぷりぷり怒っているノヴェムを抱き上げ、赤子をあやすように軽く揺する。

「一緒にゲームしようね」

《かっこいい…………はっ! もぉ! かっこいいお顔見せてごまかそうったってそうは…………あれ、お兄ちゃん……水月お兄ちゃん、泣いてたの?》

「ん……?」

ノヴェムを抱えてリビングへ移動する僅かな道中、彼は俺の目のすぐ下を指で拭った。親指をぺろりと舐め、またじっと俺を見上げる。

《お兄ちゃんなんで泣いてたの?》

「泣いてたのか、鳴雷。どうしたんだ?」

ノヴェムを抱えたままソファに腰を下ろすと、セイカが怪訝な顔で俺を見た。

「えっ? な、なんで?」

「……ノヴェムがそう言ってた」

「あー……バレちゃったかぁ。んー、なんて説明すればいいのかなぁ、コンちゃんがちょっと危ないことしようとしてて、心配で……ちょっと、ね。情けないよな……本当」

「……別に、いいんじゃないか。人のために泣けるのはお前のいいとこだよ」

目を逸らしながらそう言ったセイカは、テレビ画面を見つめたまま英語で何やら呟いた。ノヴェムに何か伝えているようだ。

《浮気じゃ……ないってこと?》

《知らねぇよ。分野が何か危ないことしようとしてたっつってるだけで……具体的なことは教えてくれねぇ》

《……浮気じゃないなら、ちゃんと言ってね、水月お兄ちゃん……早とちりして、怒って、ごめんなさい。コンお兄ちゃんなにしようとしてるの? コンお兄ちゃん、ぼくのことかわいいかわいいって、いつもすごく……なでたり、だっこしたり、してくれて……だから、コンお兄ちゃん危ないのぼくもやだ。ちゃんと止めてね、水月お兄ちゃん》

「分野のことちゃんと止めろってさ。ノヴェム、アイツに懐いてるみたいだな……俺も結構世話になってるからさ、あんま危ない真似はして欲しくない……俺からも、分野のこと頼む」

「…………あぁ」

ノヴェムもセイカもミタマを大切に思っている。きっとアキも、他の彼氏もそうだ。狙いも正体も分からないナニカに付け狙われている現状が危険なのは分かっている、けれどそれを解決するためにミタマを犠牲にするのはもちろん嫌だ。彼に体を張ってもらうことになったとしても、石像というセーブポイントを使うようなことには絶対にさせない、させたくない。
しおりを挟む
感想 532

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

処理中です...