冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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怪奇! 突如割れた電灯 (水月+スイ・サキヒコ・歌見)

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スイが興味深い話をしていたが、レジに呼び出されてしまった。呼び出しベルを鳴らした女性客二人の元へ向かい、セルフレジの操作を肩代わりする。

「ありがとうございます~、私達機械苦手でぇ……あの、店員さんってここで働いて長いんですか?」

「いえ……半年も経ってません」

「あ、そうなんですねー。すごく馴染んでるって言うかサマになってるって言うか」
「本好きなんですか? すっごくカッコイイからモデルでもすればいいのに」

「いえ、そんな……」

「高校生ですよね、私達もなんですー。どこ通ってるんですか?」

「男子校で……」

「へー! え、どこだろ。この辺の男子校って言ったら~……んー……」
「あ、だからなんかそんな女子と話すの慣れてないーって感じなんですか?」

まぁ、慣れてはいないな。そもそも女性には興味がないし、物心ついた時から嫌われてきた。なのに今更好かれても困惑するばかりだ、いや、超絶美形になってから老若男女問わず態度が柔らかくなったのは感じているけれど……女性は特に露骨というかなんというか。

「……彼女とか居ます?」
「絶対居ますよね~」

全く興味のない者から性愛の対象として扱われると気持ち悪い、身も蓋もない言い方をすればこうだろう。脈ナシだと気付けばすぐ去っていくようなのは良客だ、眺めてくる客もマシな方、ずっと話しかけてくるのはもうどうしたらいいか分からない。相手は客で、しかも女性、下手にあしらえば俺が加害者だ。

「えっと……」

「あっさっき話してた茶髪の人、彼女ですか?」
「なんか親しげ~って感じだった……あ、こっち見てる」

女性客の視線を追うと、瞬きもせずこちらをじっと見つめるスイが居た。彼の本当の目とは違う茶色く丸っこいタレ目を見開き、首をかっくりと真横に傾け、爪を齧っている。

「…………」

チカチカと照明が明滅する。レジの真上のそれに視線を移すと、今度はレジの表示がおかしくなった。タッチパネル式のセルフレジのため大きな液晶画面があるのだが、映し出された「清算開始」の文字にノイズが走っている。

「え、何? 故障?」
「……こわーい」

女性客二人のうち一人は困惑し、もう一人はレジに触れようとした俺の腕に抱きついた。

「えっ、ちょ」

穏便に引き剥がす方法を考える暇もなく、明滅していた照明が強く光り輝く。照明は最大の明るさに設定してあるはずだ、そう不審に思った直後パァンッと高い音を鳴らして照明が弾けた。一つだけではない、俺の真上の照明から順に次々に弾けていく。本屋の各所から悲鳴が上がる。

「スイ殿! 何をしている、落ち着け!」

スイの元へ走っていくサキヒコの背中が見えた。彼の大声が聞こえた。その直後照明の明滅と破裂は収まり、薄暗くなった店内に一瞬の静寂が訪れる。

「…………っ」

静寂を打ち破ったのはスイの足音だった。床に散らばった細かいガラス片を踏み砕きながら店外へと走り去ると、他の客達も店を出ていったり騒ぎ出したりし始めた。



騒ぐ客達を宥めつつ、裏で雑誌を見ながらヘアアレンジにチャレンジしていた店長を呼ぶ。幸い怪我人は居らず閉店が早まる程度で済んだ。

「照明いつ替えたっけ、保証効くかな~……何年以内とかあったよね?」

「買ったことないんで分かりません。ぁ、ヘッドホン買った時は二年保証付いてましたよ。でも、急に弾けたとかってそれ保証対象なんですかね」

ホウキとチリトリを使ってガラス片の回収をしながら店長と駄弁る。

「どう考えても不良品じゃない?」

「うーん……」

「監視カメラ確認するけど、鳴雷くんの言う通り急に弾けたんなら不良品確定! ほら、ハプニング動画とかでたまに見る……あのー、寒暖差? 振動? とかで割れるガラス戸……的な?」

「割れる前にめっちゃ明るくなったんですけど」

「……電圧? じゃあ文句言う相手これ買ったとこじゃないのかな。よく分かんないな~……唯乃、あっ、お母さんこういうこと分かる?」

そういえば店長、母とデキてたな……ただでさえ気まずいのに二股な上、義母の方が本命っぽいから超気まずい。バイト先変えようかな。

「えっうわ何暗い……ぁ、店長、配達終わりました。何があったんですか?」

「おかえり歌見くん。なんか電球割れちゃった、どこに文句言えば弁償してくれると思う?」

「えっ? 誰か何かしたんですか?」

「鳴雷くんが言うには急に明るくなって割れたんだって」

約半分の照明が壊れ、薄暗くなった店内で配達終わりで汗だくの歌見は訝しげな目を俺に向ける。

「先輩俺疑ってます……?」

「えっ? いやいや、違うよ。ただ急に割れたってどういうことなんだって……ん? お前近くで見てたのか!? 怪我は!?」

「なっ、ないです」

「よかった……」

降り注ぐガラスを浴び、エプロンのポケットに欠片が入ったりもしているのに無傷だなんて、なんて幸運なんだろう。ミタマのおかげだろうか。

「業者さんに見てもらうまでは新しいの付けない方がいいかな?」

「そうですね、原因分かるまでは……電圧とかかもしれないし」

「電圧上がったら割れるもんなのか?」

「知りませんよ……先輩そういうの分からないんですか? 大学行ってるのに」

「大学を何だと思ってんだ」

「よりによってレジ周りとはねー、他のとこならワンコーナーしばらく使えないくらいで済むんだけど……レジ光るから明かりなくてもいいかな?」

「いやいや暗い中明るい物操作するのはちょっと。目悪くなりますよ」

「みんなどうせ布団でスマホ弄ったりしてるくせにー……はぁ、二人とももう上がっていいよ。おっきい破片はだいたい回収したし後は掃除機でもかけとく。お疲れ様~」

「あ、はい。失礼します」

「お疲れ様でした」

歌見と共にバックヤードに戻った俺は、ミントスプレーをねだる歌見の言葉を遮って虚空に呼びかけた。

「サキヒコくん、居る?」

返事はない。

「あれ、戻ってない……? コンちゃん? も居ないか…………あ、すいませんパイセン、スプレーどうぞ」

「おう、悪いな。あの二人どっか行ってるのか?」

「みたいですね、出てきません。電球割れたの心霊現象かなって思ったんですけど」

「ははっ、だとしたらやった幽霊は外国人だな。そんな激しいポルターガイストは洋モノほらでしか見たことない」

サキヒコがスイに呼びかけた瞬間に異常現象が収まったこと、直後にスイが店を飛び出して行ったことが気にかかる。彼らをどう追ったものか、着替えの間に考えてしまわないとな。
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