冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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待ち合わせの店へ (水月+ミタマ・サキヒコ・ヒト・フタ・サン)

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罪悪感と嫌悪感にまみれたままエコバッグに頭を突っ込んでいると、頭を撫でられる感触があった。エコバッグ越しにではない、エコバッグを剥がされてもいないしエコバッグと頭の隙間に手を入れられてもいない。

「…………サキヒコくん?」

この小さな手はエコバッグをすり抜けて直接俺の頭を撫でているのだと気付いた。

「大丈夫か? ミツキ」

「……うん」

「ワシの言った通りじゃったな、みっちゃんは他人に敵意を向けるのに向いとらん。ちょっと蹴っただけでこれじゃ、一人反省大会開催……そういうところが好きなんじゃがな」

「私もそうです。ミツキ、そう自分を責めるな。復讐を遂げたんだ。私とミタマ殿で先程のミツキの剣幕を語れば、秋風の気も少し晴れるだろう」

「ちがう……あの人、ちがった……乗っ取られてた、だけで……あの人に、復讐するの……ちがったんだ」

「神秘の会の会員ではあった訳じゃし……ぐれぇな仕事をちょくちょく回しとると言っとったし、 あっちゃんの復讐としては筋違いじゃったかもしれんが悪いヤツには変わりないぞぃ」

アキの復讐としては筋違いなのが問題なんだ、俺は悪人相手ならいくら暴力を振るってもいいなんて思えるような人間じゃない。もし悪人への暴力を、その悪人の罪と何ら関わりのない者が振るうことを許せば、セイカへのイジメが正当なものになってしまう。

「…………ダメ、なんだ」

セイカが高校で受けたイジメは単なる犯罪なんだ。だから、俺が先程男に振るった暴力も、勘違いが由来の、愚かなものなんだ。

「ミツキ……ミツキ、上役殿やサン殿は彼の指を切り落とそうなどと話していた。それに比べればミツキが放った蹴りの方が、ずっとマシだ」

「そ、そうじゃそうじゃ! みっちゃんが蹴らんかったら指切られとったんじゃ」

「…………ダメか? この理論……気に入らないか?」

「ぅ~……ワシはみっちゃんに善良でいて欲しいとは思とるが、ここまで後悔しとるとこ見ると胸が痛むぞぃ」

ミタマとサキヒコはもちろん、ヒトとフタとサンにも心配をかけている。口にも行動にも出さないが、社員達も心配しているかもしれない。秘書は、どうだろう……何とも思ってなさそう。

「着きました!」

運転手の声で顔を上げる。どこかの駐車場みたいだ。全員降りるようなので、俺も降りた。どこなのかと聞く気にはなれず、ただ彼らに着いて行った。エレベーターになり、地下の駐車場から地上階へ上がって行く。

「予約した……はい、犬鳴塚です。先に来てる……ええ、お願いします」

飲食店のようだ。個室ばかりの高級店、なのかな? 秘書が店員に何か伝えると、店員は俺達を奥の大部屋に案内した。

「こんばんは」

「……こんばんは」

大部屋には絵本の挿絵で見たような金髪碧眼の美男と、ウサギの仮面を被った白スーツの青年が居た。

「お待たせしまして申し訳ございません、社長」

「大所帯だね。そいつらが君の犬?」

「はい。こちらは鳴雷専務の息子さんで、神霊に憑かれ人魚を惚れさせた有能な方です」

有能……有能、か。あぁ、ダメだ、頬が緩む。たった今まで落ち込んでいたくせになんだ、ちょっと褒められただけで浮かれるなんて。

「そう。座りなよ」

社長は最奥の席に座っており、秘書は当然のように彼の隣に腰を下ろした。俺はサンとフタに挟まれた席に着き、ヒトは秘書の隣を選んだ。三兄弟が全員座ったのを確認してから社員達は各々席に着いた。

「夕飯まだだろ、さっさと済ませて」

「はい」

ネイに話したいことがたくさんある。不機嫌そうな表情でずっと秘書を睨んでいるから、ノヴェムを使って脅したことを相当怒っているのだろう。アレは秘書が勝手にやったことで、俺は茶番劇の役者じゃないのだとちゃんと言っておきたい。まずはそれを話してから、荒凪のことを──あぁでも、社長……圧強いなぁ、彼が話している間は呼吸すら止めておかなければならない気がしてくる。

「お前ら、好きな物頼め。腹が減っては戦ができぬって言うだろ。ただし食い過ぎて動けなくなるような間抜けは許さない、分かったな」

穂張事務所の者達に向かってそう言うと、秘書はヒトに備え付けのタブレットを渡した。この店は注文をタブレットで行うのか、人見知りな俺としてはありがたい仕組みだ。

「反時計回りに回してけ」

「はい」

ヒトはサッと注文を済ませ、フタにタブレットを回した。

「何これ」

フタは渡されたタブレットを俺に見せてそう尋ねてきた。

「食べたい物を選ぶんですよ」

「なんで?」

「え? えっと……今日はここで晩ご飯食べるんです」

「……? まだアラーム鳴ってねぇよ?」

「えぇ……? えっと……」

「兄貴! 今日はこれからカチコミだから、スケジュールいつもと違うんだよ。早く食べたいの選んで」

「分かった」

流石弟、フタの扱いがよく分かっている。関心していると俺にタブレットが回ってきた。相変わらずフタは決めるのが早い。

(和食の店なんですな、ここ。全部美味しそ……えっ高、全部高っ! 単品でも四桁以上のもんしかねぇでそ、どうしよ)

払えなくはないが、払ってしまえば来月以降もしばらく節約しなければならない値段だ。奢ってくれるのだろうか、多分そうだ、でもだとしたら安いものを選んだ方が印象がいいだろうか。

「なんかカツカツ鳴ってるけど、タブレットか何か?」

タブレットはタッチペンで操作している。カツカツというのはペン先と画面がぶつかる音だろう。

「点字メニューないの? 読み上げ機能は? 不親切な店だね~」

「サン……俺が読み上げるよ。大まかなジャンルからいくね」

「ありがとう。流石水月、いい子いい子」

サンのためにメニューを読み上げていく。静かな部屋の中、俺の声だけが響いているのは酷く不安になる。雑談でもしてて欲しい、普段騒がしい穂張事務所の社員達まで黙っているのは社長の圧のせいか?

「決めた。ボクうな重、特上ね~」

「えっ……わ、分かった」

遠慮がないな。俺はどうしよう、このまま社長が放つ妙なプレッシャーが変わらないのなら、食べやすい麺類に……あ、天ぷら蕎麦にしよう。

「みっちゃん、ワシあぶらげ食べたい」

「うわぁっ!? きゅっ、急に現れないでよぉっ……き、きつねうどんでいい?」

「す、すまん……そないにたまげよるとは思わんで。うむ、きつねうどんで頼む」

「食べるなら席座りなよ……?」

突然背後に現れたミタマにいつも以上に驚いて情けない悲鳴を上げてしまったのも、社長が異様な雰囲気を出してプレッシャーをかけてくるからだ。
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