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食に乗り気になれない (水月+カサネ・ミタマ・レイ・サン・セイカ)
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骨付きフライドチキンは俺達の分だけで、クンネ達の分は細切れに切られた鶏肉を揚げたものだ。まぁ、揚げている最中にくっついてしまったらしく、鶏肉のかき揚げのような仕上がりだが。
(でも骨付きチキンよりはずっと食べやすそうですよな)
細かな物がくっついて大きくなっているとちゃんと分かっているようで、クンネはかき揚げ状態のチキンを一欠片ずつちぎって妹に渡している。妹は両手でそれを持ち、少しずつ食べている。まるでリスだ。クンネ自身はちぎらずかぶりついているのもイイ、可愛い。
「ん……? 妹ちゃん動いてる!?」
見逃してしまっていた、クンネの妹の手が動いている。彼女は手足の腱が切られていたはずだ。
「……昼間リハビリしとったらちょっと動くようになったっちゅうとる。まだ歩けはせんようじゃが、簡単な動作や兄にしがみつくくらいなら出来るようじゃぞ」
「へぇ~、よかったねクンネ」
「リハビリってアレっすか? クンネくんがペケレちゃんの手握って、ふよふよさせてた……」
「多分そうじゃろ」
俺達のお祝いの言葉をミタマに翻訳してもらうと、クンネは立ち上がり小さな身体を大きく広げ、満面の笑顔で嬉しさを表現した。妹の方はというと、すまなさそうに微笑んで頭を深々と下げていた。性格の似ていない兄妹だな。
「あんなざっくり切れてたのに、完治に一週間かかりそうにないの本当にすごいね」
「妖怪ならそんなもんじゃ」
「いいなぁ……」
何をするにも邪魔なコルセットを見下ろしながら呟く。レイが野菜を俺の皿に移すのが見えた。
「レイ」
「うっ……だ、だって苦いんすもん、ピーマン……」
「ちゃんと野菜も食べないと身体に悪いぞ」
「他のは食べるっすからぁ」
「仕方ないなぁ……ほら、俺のニンジン代わりにやるよ」
レイが野菜を苦手なのは苦味や青臭さが原因だ。比較的それらが少なく食べやすいだろうニンジンを選んでやった。俺の考えは正解だったのか、レイは不満そうな顔はしたが突っ返しはしなかった。
「そういえば先輩って食事苦手とか言ってませんでした?」
「ん、まぁ……な。でも別に嫌いな食べもんはねぇぞ、美味いの食えば嬉しいとも思うし……」
「そういうもんですか」
「そういうもんよ」
「じゃあなんで壁みたいな味したカロリーバーばっか食べてるんです? 出来合いでもいいから普通のご飯食べた方がいいですよ」
「アレより栄養完璧な飯ねぇだろ。食わせてもらったもん美味けりゃ嬉しいけど、それをわざわざ自分でってのは、なぁ……そんな気にはなれねぇな」
少し前まで食が一番の娯楽だった俺にはカサネの感覚は分からない。いや、食のまま理解しようとするからいけないのか。他の概念としてなら、そうだ、運動とかどうだ? 他者に与えられる食事……授業でやらされる運動……痩せてからは身体が思うように動くようになり、スポーツの楽しみ方が分かった気がする。けどだからと言って休日にわざわざコートを借りて運動をするような者達の感覚は俺には理解出来ない、やろうと思えない。
「…………そういうことか。なるほど、分かりましたよ先輩」
カサネにとっての食は、俺にとってのスポーツ。俺が休日にスポーツをするとしたら、どんな時だ? 何があればそんな気になる? 簡単だ、彼氏に誘われればホイホイ着いていく。
「俺がお弁当を作ってあげます!」
「え」
「先輩は何食べるか考えるのも、買うのも、作るのも、カロリー計算するのも栄養の偏り気にするのも面倒臭いんですよね? 分かります」
コートを予約したり、着替えを用意したり、ルールを覚えたり、後日に響かないよう湯船の中でマッサージをしたり、面倒臭いことこの上ない。
「だからそういうのは俺がやります、先輩は食べるだけでいいんですよ」
予約時間を気にせず、着替えも用意してもらって、覚えなければならないような細かいルールなんてない単純なスポーツをプレイするだけなら俺もその気になれる。彼氏がマッサージしてくれるとなれば、張り切ってプレイする。
「いや楽そうだけどさ……」
「あれ、あんまり乗り気じゃありません?」
「せんぱいのお弁当美味しいっすよ、何回か作ってもらったんで分かるっす! ちゃんと冷めても美味しいの作ってくれるんすよ~。せんぱい気遣いの鬼なんで、言っとけば好みの味付けにしてくれるっすし苦い野菜も入れたりしないっすよ」
「いや、味とか気にしてる訳じゃなくて……そんなん、させんの……悪いし」
「気にしないでください」
「えぇ……いやぁ……」
「頼め、繰言」
流石に「気にするな」だけじゃ押し切れないか。何か理由が必要かな、と頭を回し始めた俺の肩越しにセイカが言った。
「繰言の弁当作るんなら俺の弁当もついでに鳴雷製になるかもしれない」
「えっ、えぇ……?」
「セイカ、俺の飯のがいいのか? 母さんの飯が美味いだろ」
「どっちも美味い、一定値超えた後の美味さの差は正直分かりにくい。鳴雷の好きなゲーム風に言ってやろうか、体力が100の敵にダメージ120与えても200与えても変わんないだろ」
セイカ、なんかテンション高くないか?
「どっちにしろオーバーキルってことっすね。分かるっすよ……安い肉からちょっと高い肉の味の上がり幅はすごいんすけど、高い肉から超高い肉って上がり幅そんなにないんすよね。こんなに金払う必要あったのか……? ってなるんす」
「食品の値段ってレア度で決まってるとこもあるからね。高い物はそれなりに美味しいと思うけど……高い金出した甲斐があったって思いたいなら蟹だね、蟹は金出せば出すほど美味い」
元ヤクザが言うと説得力あるなぁ。
「俺の好きなゲームじゃ万のフグより八十円のおでんが美味いって言ってたべ?」
「あ、知ってる。0で一番怖い人だ」
「知ってるの早苗ちゃん! 分かるなぁ、あの人怖い……俺も一番怖ぇって思ってた。へへ、気が合う」
「人によるよ~、フグ美味しいよねぇ水月。おでん八十円じゃ買えないし」
「ゲ、ゲームの舞台バブル期なんだよ……確か。物価違うの」
「水月おでんの具何が好き? 今暑いからなかなかおでんの気分にならないけどさ~」
「牛すじ。話戻すよ。先輩、どうですか? 俺のお弁当」
「頼めよ繰言」
「セイカ……便乗狙わなくても俺のがいいなら俺が作るよ?」
「気持ちは嬉しいけど、いいよ……俺、よく休むし」
「先輩休んだらシュカにあげるから大丈夫ですよ」
「……俺、あんまいい反応出来ねぇよ? それでも、いいなら……お願い、します」
「はい! アレルギー、好き嫌い、全部教えてくださいね」
「うん……」
俯いたまま小さく頷くカサネの耳がじわじわと赤く染まっていく様を目で楽しみ、か細い返事を耳で楽しむ。あぁ、なんて可愛い俺の先輩、早く抱きたい。
(でも骨付きチキンよりはずっと食べやすそうですよな)
細かな物がくっついて大きくなっているとちゃんと分かっているようで、クンネはかき揚げ状態のチキンを一欠片ずつちぎって妹に渡している。妹は両手でそれを持ち、少しずつ食べている。まるでリスだ。クンネ自身はちぎらずかぶりついているのもイイ、可愛い。
「ん……? 妹ちゃん動いてる!?」
見逃してしまっていた、クンネの妹の手が動いている。彼女は手足の腱が切られていたはずだ。
「……昼間リハビリしとったらちょっと動くようになったっちゅうとる。まだ歩けはせんようじゃが、簡単な動作や兄にしがみつくくらいなら出来るようじゃぞ」
「へぇ~、よかったねクンネ」
「リハビリってアレっすか? クンネくんがペケレちゃんの手握って、ふよふよさせてた……」
「多分そうじゃろ」
俺達のお祝いの言葉をミタマに翻訳してもらうと、クンネは立ち上がり小さな身体を大きく広げ、満面の笑顔で嬉しさを表現した。妹の方はというと、すまなさそうに微笑んで頭を深々と下げていた。性格の似ていない兄妹だな。
「あんなざっくり切れてたのに、完治に一週間かかりそうにないの本当にすごいね」
「妖怪ならそんなもんじゃ」
「いいなぁ……」
何をするにも邪魔なコルセットを見下ろしながら呟く。レイが野菜を俺の皿に移すのが見えた。
「レイ」
「うっ……だ、だって苦いんすもん、ピーマン……」
「ちゃんと野菜も食べないと身体に悪いぞ」
「他のは食べるっすからぁ」
「仕方ないなぁ……ほら、俺のニンジン代わりにやるよ」
レイが野菜を苦手なのは苦味や青臭さが原因だ。比較的それらが少なく食べやすいだろうニンジンを選んでやった。俺の考えは正解だったのか、レイは不満そうな顔はしたが突っ返しはしなかった。
「そういえば先輩って食事苦手とか言ってませんでした?」
「ん、まぁ……な。でも別に嫌いな食べもんはねぇぞ、美味いの食えば嬉しいとも思うし……」
「そういうもんですか」
「そういうもんよ」
「じゃあなんで壁みたいな味したカロリーバーばっか食べてるんです? 出来合いでもいいから普通のご飯食べた方がいいですよ」
「アレより栄養完璧な飯ねぇだろ。食わせてもらったもん美味けりゃ嬉しいけど、それをわざわざ自分でってのは、なぁ……そんな気にはなれねぇな」
少し前まで食が一番の娯楽だった俺にはカサネの感覚は分からない。いや、食のまま理解しようとするからいけないのか。他の概念としてなら、そうだ、運動とかどうだ? 他者に与えられる食事……授業でやらされる運動……痩せてからは身体が思うように動くようになり、スポーツの楽しみ方が分かった気がする。けどだからと言って休日にわざわざコートを借りて運動をするような者達の感覚は俺には理解出来ない、やろうと思えない。
「…………そういうことか。なるほど、分かりましたよ先輩」
カサネにとっての食は、俺にとってのスポーツ。俺が休日にスポーツをするとしたら、どんな時だ? 何があればそんな気になる? 簡単だ、彼氏に誘われればホイホイ着いていく。
「俺がお弁当を作ってあげます!」
「え」
「先輩は何食べるか考えるのも、買うのも、作るのも、カロリー計算するのも栄養の偏り気にするのも面倒臭いんですよね? 分かります」
コートを予約したり、着替えを用意したり、ルールを覚えたり、後日に響かないよう湯船の中でマッサージをしたり、面倒臭いことこの上ない。
「だからそういうのは俺がやります、先輩は食べるだけでいいんですよ」
予約時間を気にせず、着替えも用意してもらって、覚えなければならないような細かいルールなんてない単純なスポーツをプレイするだけなら俺もその気になれる。彼氏がマッサージしてくれるとなれば、張り切ってプレイする。
「いや楽そうだけどさ……」
「あれ、あんまり乗り気じゃありません?」
「せんぱいのお弁当美味しいっすよ、何回か作ってもらったんで分かるっす! ちゃんと冷めても美味しいの作ってくれるんすよ~。せんぱい気遣いの鬼なんで、言っとけば好みの味付けにしてくれるっすし苦い野菜も入れたりしないっすよ」
「いや、味とか気にしてる訳じゃなくて……そんなん、させんの……悪いし」
「気にしないでください」
「えぇ……いやぁ……」
「頼め、繰言」
流石に「気にするな」だけじゃ押し切れないか。何か理由が必要かな、と頭を回し始めた俺の肩越しにセイカが言った。
「繰言の弁当作るんなら俺の弁当もついでに鳴雷製になるかもしれない」
「えっ、えぇ……?」
「セイカ、俺の飯のがいいのか? 母さんの飯が美味いだろ」
「どっちも美味い、一定値超えた後の美味さの差は正直分かりにくい。鳴雷の好きなゲーム風に言ってやろうか、体力が100の敵にダメージ120与えても200与えても変わんないだろ」
セイカ、なんかテンション高くないか?
「どっちにしろオーバーキルってことっすね。分かるっすよ……安い肉からちょっと高い肉の味の上がり幅はすごいんすけど、高い肉から超高い肉って上がり幅そんなにないんすよね。こんなに金払う必要あったのか……? ってなるんす」
「食品の値段ってレア度で決まってるとこもあるからね。高い物はそれなりに美味しいと思うけど……高い金出した甲斐があったって思いたいなら蟹だね、蟹は金出せば出すほど美味い」
元ヤクザが言うと説得力あるなぁ。
「俺の好きなゲームじゃ万のフグより八十円のおでんが美味いって言ってたべ?」
「あ、知ってる。0で一番怖い人だ」
「知ってるの早苗ちゃん! 分かるなぁ、あの人怖い……俺も一番怖ぇって思ってた。へへ、気が合う」
「人によるよ~、フグ美味しいよねぇ水月。おでん八十円じゃ買えないし」
「ゲ、ゲームの舞台バブル期なんだよ……確か。物価違うの」
「水月おでんの具何が好き? 今暑いからなかなかおでんの気分にならないけどさ~」
「牛すじ。話戻すよ。先輩、どうですか? 俺のお弁当」
「頼めよ繰言」
「セイカ……便乗狙わなくても俺のがいいなら俺が作るよ?」
「気持ちは嬉しいけど、いいよ……俺、よく休むし」
「先輩休んだらシュカにあげるから大丈夫ですよ」
「……俺、あんまいい反応出来ねぇよ? それでも、いいなら……お願い、します」
「はい! アレルギー、好き嫌い、全部教えてくださいね」
「うん……」
俯いたまま小さく頷くカサネの耳がじわじわと赤く染まっていく様を目で楽しみ、か細い返事を耳で楽しむ。あぁ、なんて可愛い俺の先輩、早く抱きたい。
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