冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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荒凪画伯 (水月+カサネ・荒凪)

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昼食後、リビングのソファの上でまったりと過ごす。セイカはテディベアに俺の服を着せて、俺の膝の上に座り、幸せそうに目を伏せている。

「……カーペットの色変わってません?」

「え? 分かんねぇ……ぉ、正解だって。鳴雷くんすげぇ」

カサネは俺の隣で間違い探し系のゲームをしている。二枚の絵を見比べるタイプではなく、一枚の絵が少しずつ変化していくタイプだ。これが案外難しい。

「出かけてる間、セイカどんな調子でした?」

そのうちセイカが眠ったので、俺は聞いておきたかったことを口にした。

「初めの頃は今の鳴雷みたいにゲーム覗いてたよ、鳴雷の悪口言ってた。連れてってくれないなんてケチだとか。でも、じわじわ……その、連れてってもらえないのは自分のせいだって、身体……とか、心? 方面も……ディスり始めて」

「…………そうですか」

「泣き、出して……俺の声とか、全然届かない感じで……どうしようもなくなった」

「……すいません。お疲れ様でした」

「ぁ、そんな、全然……力になれなくて、悪ぃなって、思ってた」

カサネはゲーム画面から目を離し、セイカを見つめる。

「早苗ちゃんがこんな子だってのはショックだったなぁ……あっ、わ、悪い意味じゃねぇよ? ただ早苗ちゃん、俺みたいなクソ陰キャにも優しくてさ、俺の気持ち悪い語りニコニコ聞いてくれてさ……鳴雷くんのこと、紹介してくれてさぁ…………そういうの全部、嬉しくて、だからそんな……言わば、恩人みたいな早苗ちゃんがさ、こんな弱ってるとこ見て……衝撃が大きかったって意味の、ショックな」

「……分かります。セイカ、どんな話でも嬉しそうに聞いてくれるから……癒されるんですよね。キモオタでもこの世界に存在してていいんだって思えて」

「うん……全く同じ。だから、さ……生きてていいよって教えてくれた恩人がさ、こんなふうに苦しんでるの……どうにかしたいって、今度は俺がって思えて……なのに全然何も出来なかった」

「膝枕して寝かせてあげてくれたじゃないですか」

「……浮気だってキレたべ」

「現場を見ると冷静ではいられず……でも今になって考えると、カサネ先輩へのありがたさでいっぱいになります!」

「…………そ、か。あのさっ、今後もなんか……あったら、教えて。鳴雷くんと早苗ちゃんのためなら結構頑張れそう……へへ、こんな気持ち始めて」

カサネの緩んだ笑顔に胸がきゅっと締め付けられたような気分になった。

「え、な、なになにっ、なんで近寄ってきてんの」

「キス……」

「今!? な、なんで?」

「胸きゅんしたので」

「どこに……!?」

自分の魅力が分かっていないのか、いや、そうだよな、分かっているタイプじゃないし、そこがイイんだ。

「ホント変わってるよな、鳴雷くん」

「自分の可愛さ分かってないんですね……」

「いや可愛くねぇから……ちょっ、ちょちょっ、何肩に手ぇ回してんだ!」

「キス」

「しねぇよ!」

手を突っ張って俺の顔を押しのけようとするカサネの仕草はとても愛らしい。いつの間にかカサネとキスをすることよりも、カサネを困らせたり怒らせたりして仕草や表情を観察するのが目的となっていく。

「みつきー……」

遠慮がちな声かけに振り向けば、両手を後ろに回した荒凪が首を傾げて俺を見つめていた。

「荒凪くん、何?」

「今、いそがしい?」

「ううん、大丈夫。何か用事かな?」

「きゅっ、絵かいた! サン、僕達に教える、僕達かく! みつきに、見て欲しい」

「あぁ、レイに聞いたよ描いてるって。荒凪くんの絵見たかったんだ、もう完成してるの?」

大きく頷いた荒凪は背後に隠していた紙を俺の前に突き出した。

「近い近い……見えないよ、もう少し離して」

鼻先に触れ合う距離に近付けられた紙を離させ、荒凪が描いたという絵を見た。

「ん……?」

何が何だか分からない。荒凪を見上げると彼は自信ありげな、期待に満ちた顔をしていた。俺からの褒め言葉を待っている。

「えっと……すごい絵だね」

紙全体に乱雑に塗ったくられた青い絵の具、紙の中心に黒い絵の具で描かれた細長い何か。故意にやったのか事故なのか分からない、絵の各所に飛び散った白い絵の具。

「きゅ~、きゅふふっ」

もっと褒めてほしそうだ。どうする? そもそも何を描いたのか分からないから褒めようがない、何を描いたのか聞いていいのか?

(全盲抽象画家のサンさんに習ったのが間違いですぞ! サンさんをお手本に描けば抽象的で素人には意味分からんモノになるし、荒凪くんが何描いても見えないサンさんには何のアドバイスも出来ないでしょうし……! なんでレイたんの方に習わなかったんでそ!?)

というか、俺が出かける前は文字を習っていなかったか?

「よく描けてるよ……ねっ、ねぇ先輩、上手いですよね荒凪くん」

混乱し、困り果てた俺はカサネに話を振った。カサネはゲームを一時中断し、荒凪の絵をじっと見つめた。

「ホントだ、上手ぇな」

カサネも話を合わせてくれた。胸を撫で下ろしているとカサネは続けて口を開いた。

「泳いでる鳴雷か?」

「うん!」

「えっ」

泳いでいる俺? この細長くて黒い棒が?

「アラナギ、絵もいいが文字を覚えなければ。私達の外出中、レイ殿に習っていただろう。どのくらい覚えた?」

「きゅ……」

「……おいでアラナギ、また私が教えてやろうな」

「ぁ……荒凪くん、絵もう少し見たいから置いていってよ」

「きゅっ? みつき絵見たい? 嬉しい!」

絵を受け取り、改めて見る。荒凪はダイニングへ移動したが彼は地獄耳だ、聞かれてもいいように話さなければ。

「先輩、よく俺って分かりましたね」

「見て分かった訳じゃねぇよ、あの子が描くんならお前だろ」

「ぁー……泳いでるってのはどうして?」

「青色背景は空か水中だろ? 人魚なんだし、海とか描くかなって。黒いのがお前なら飛んでるのはおかしいし……白いの、雲にしちゃ水玉模様感があり過ぎだから、泡かなって」

「…………すこいですね、俺なんにも分かりませんでした」

「もうちょい読み解く努力しな~?」

漫画やゲームの考察ならよくやっているんだけどなぁ、と少し落ち込みながら荒凪の絵を眺めた。
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