冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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23、それはただの数字 (〃)

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夏休み、サキヒコに取り憑かれ始めた頃だったか。リュウは自分の祖父に俺の霊感を消してもらおうと、目を閉じようと提案してきたことがあった。俺はサキヒコ見たさにその提案を断ったが、アレをミタマがリュウに行おうとしているのだろう。

「それサキヒコくんとかコンちゃん見えなくならない?」

「ワシらは実体化しとるから大丈夫じゃ。元から霊体のワシらを捉えられるほどの目は持っとらんし、ワシらに関しては何も変わらん。りゅーちゃんの霊感自体はしょぼい、危機察知能力だけがズバ抜けとるんじゃ」

「へぇー……」

「……怖がらんで済むんやったら怖がらんでやりたい気持ちもあるんやけど、危機察知能力塞がれるとかヤバない? も、戻せるんやんな? それ」

「一時的と言うとろう。なんじゃ、ヌシは手足を縛る時いちいちぷれい中に地震が来たらとか火事が起きたらとか考えるんか? 考えんじゃろ」

「そういうもんやろか……せやったら、うん、お願いするわ」

「覚悟決めたところ申し訳ないけどさ、リュウ、決定権は俺にあるから。お前が嫌がろうと納得してなかろうと俺が頼めばやってもらうから」

「……勝手やなぁ、へへ……それでこそや」

調子が戻ってきたのか緩んだ笑顔を浮かべたリュウの目を、ミタマの両手が塞ぐ。

「へっ……? ぇ、ちょ、何?」

「…………よし。終わったぞぃ」

「もう? 呪文とかないの?」

「ないわそんなもん」

夢がないなぁ。と少し不満に思いつつ、パッと手を離されたリュウの様子を見る。瞬きをし、目を擦り、キョロキョロと辺りを見回している。

「リュウ? 見えなくなったとかじゃないよな」

「え、あぁ、うん、大丈夫やよ。全然何も変わっとらへん。ただコンちゃんが……なんや一流芸能人からそっくりさんに一気に格落ちした感じっちゅうか……なんやろなぁ」

そういえば威厳が感じられなくなるとか言ってたな。元からあんまりない気もするけど。

「りゅー、僕達怖くない?」

「……!? え……わ、分かっとったん?」

リュウはアレやあの子と言って明言を避けてきた。だが、地獄耳の荒凪は全てを聞き漏らさず拾えていただろうし、ちゃんと聞けば荒凪を指した言葉だと容易に分かる。荒凪は言葉が拙いだけで幼稚ではない、彼にはちゃんと分かっていた、リュウが自分に怯えていると。

「…………すまん。ええ子なんは分かっとってんけど」

「きゅ……今、怖くない?」

「ん……うん! すごいわコンちゃん、全然怖ない。怖かったから、まだその……覚え? があって、ちょおぎこちないかもしれんけど……すまんな荒凪くん」

「りゅー、仲間。怖くない嬉しい! きゅふふ」
「……改めて、よろしく」

「前から思とったんやけどその仲間て何なん?」

「俺が言ったんだ。まぁ、彼氏達のことだな。ノヴェムくんとかも入ってるから、俺の好きな人達って言った方がいいかな?」

「ほーん……」

リュウは荒凪の主腕に手を握られながら俺に視線を向けている。注視をやめるのは警戒心が解けた証、ミタマの目隠しが機能しているということだ。

「コンちゃん、ありがとう。今度必ず油揚げ買うよ」

「高級で頼む」

「うん……」

油揚げ、俺のバイト代の何割を占めているんだろう。

「さ、ベッド行くか」

「えっ」

「ヤる気だったろ?」

「ぇ、や、アレは元気出さそ思てムラムラしとった訳やなくて……せやけど、うん! ヤろヤろ。何でもしたるから機嫌直してな水月ぃ」

「荒凪くん、おいで。三人でえっちしよう」

「きゅ~! する!」

「3Pすか、勉強中だったのに……」

「レイも入るか?」

「んー……嬉しいお誘いっすけど、仕事ちょっと溜まってきてるんで……俺メインになれないならいいっす。ぁ、でもバチ切れせんぱい見たいんで撮影だけさせてもらっていいっすか?」

「…………フランクは可愛いなー」

まだキス程度しかしていないカサネは俺達の会話から逃げるように床に座り込み、パグ犬の口元をたふたふと弄び始めた。



三人で寝室へ入り、気まずそうに俺と荒凪くんを順に見るリュウを睨みつける。

「詳しく話せ、リュウ。いつどこで誰に何された」

「え、喧嘩の話? あんま正確には覚えとらへんねんけど……水月が学校休んだ日ぃから昨日までポツポツと何回か、だいたい家の近くやね」

「この町じゃないのか? 不良と言えばこの町だろ」

「俺もそう思て一回来て喧嘩売ってみたんやけど、とっ捕まってかーくんとこ運ばれただけやったんよ。ほいでかーくんに放流されておしまいや」

「形州……? アイツにも会ってたのかよクソが、浮気ポイント一点加算だな」

「助けてくれてんで!?」

「二点」

「アカン言うたら言うただけ増えてくわこれ……溜まったらどうなるんや。お仕置きやったらええけど愛想尽かされたら嫌や、あんま言わんとこ……」

「思考ダダ漏れだなお前。全部隠さず話せ。サキヒコくん、隠し事してそうだったらすぐ教えて」

「ズルいてそれぇ! はぁ……そない話すことないて、家の近所の不良たまり場何個か回って喧嘩売って、寄ってたかってボコボコや。服から出るとこには一切なし、ほぼ胴ってのがアイツらのいやらしいところやね。これなら隠し切れるわラッキー思とったんやけど……上手くいかんなぁ」

「……なるほど。誰か分かんないのか?」

「名前とか学校とかっちゅう話か? そんなん知らんわ」

「そうか……」

「それ知ってどないする気なん。やり返すとかやめてや? 水月に出来るわけないし」

「……分かってないな、リュウ。この町や十二薔薇の周りならまだしも、自宅付近の不良に喧嘩売ったんだろ? 今回だけで済むとは思えない。イキってるくせに弱っちぃお前はいいサンドバッグ、上手くいきゃ金ヅル。二度とお前に手を出せないようにしておかないと、不良ってヤツは面倒なんだよ」

「水月……大丈夫やて、考え過ぎや」

「お前が考えなさ過ぎだ。何回も喧嘩売って、集団リンチ何度も受けた? 踊れるレベルの傷でよかったよ本当。打ちどころ悪けりゃ死んでた。格闘技習ってる訳でもねぇド素人の暴力はタチが悪いんだ、アキが言ってたってセイカから前に聞いた。ド変態性欲満たすための浮気の回数だけお前は死にかけてたんだよ、そしてこれからも、もう一度二度来るそいつらにお前は死の運試しをさせられるって訳だ」

「……っ、だから浮気とちゃうて! アホなことしたんは分かっとる、分かっとるけど……! 俺が好きなんは水月だけやねん、浮気浮気言わんといて」

「お前は俺のものだ、勝手に死ぬなんて許せない。誰かに殺されるなんて以ての外。リスク抱えた浮気相手、放っとけないよな」

「……! 水月ぃ…………浮気や、ないねんってぇ……」

「荒凪くん。リュウに手を出したヤツ特定出来る? ぶっ殺……違うダメだそれじゃ荒凪くんが真尋さんに殺される。死なない、程度に……でもリュウに手を出せないよう、手を…………あぁそうだ手をもごう! 出来る? 荒凪くん、俺のリュウに触れた手潰せる!?」

「……っ、ミツキ! 何を考えている! やり過ぎだ、第一仕返しに荒凪を使うなど……! 絶対にやってはいけない、冷静になってよく考えるんだ!」

「考えたじゃん殺さないじゃん我慢したじゃん荒凪くんのために!」

「違っ……そんな程度の思考じゃなく! 私が言いたいのは!」

「水月」

ぞわ、と、背筋に悪寒が走る。

「23人。全員、やる? 全員、同じでいい?」

主腕がだらりと垂れ下がり、複腕だけが持ち上がっている。

「23本、引きちぎる?」

喉の奥から声を発する荒凪は左手で右腕を掴み、軽く引っ張ってみせた。
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