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危なげない蹂躙 (水月+リュウ・フタ)
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まず一人、いきなりの顔面飛び膝蹴りで倒した。酷いなぁ。すごい鼻血出てるよ。
「……っ、クソがぁっ!」
「のヤロォっ!」
フタが着地するが早いか、すぐ傍に居た不良達がフタに殴り掛かる。逃げなかったのは仲間意識故か、この近さでは逃げられないと踏んだか。身長や刺青に怯んでいた不良達も彼らに釣られて戦闘態勢に入る。
「さ、流石に多勢に無勢ちゃう? 参加した方が……」
「下がってろって言われたろ、足引っ張るだけだ。第一お前怪我人だろうが」
「……っ、つぅ……」
軽くアザのある肩をつついただけでリュウは顔を歪める。そんな身体で何が「参加した方が……」だ。
(わたくしも今めっちゃケツ痛いし)
さっき滑り落ちた時に打った尻がとても痛い。ただでさえ喧嘩なんて経験がないのに、こんな尻では戦えない。
「痛っ……てめぇどこ狙ってんだよ!」
「えっ? あれっ? ご、ごめん!」
ここは河原だ、いくらでも石が転がっている。フタ目掛けて投げる者も出てきたが、いいコントロールをしていたその石はフタに当たる直前で軌道を急激に曲げて別の不良に当たった。猫だ、フタの死んだ飼い猫が石を弾いたんだ。猫パンチで弾き飛ばす姿が目に浮かぶようだ。
(どの猫ちゃんでしょう、戦う猫様見たいですな)
圧倒的な実力差。あまりにも危なげない戦いで、フタを心配する気が失せてしまった俺は蹂躙を他人事として鑑賞した。
「ぎゃっ!? いってぇ……なんだよクソっ!」
突然不良の顔に三本筋の傷が現れる。猫の引っ掻き傷そのもののそれは目を縦断しており、片目を閉じざるを得なくなった彼はフタの右フックを避けられず、沈んだ。
(アキきゅんは的確に顎を揺らすのですが、フタさんは……的確は的確なんですが、痛そうなとこばっか攻撃しますな)
正面に立てば鼻にストレート、斜めから狙おうものなら目を狙ったフック、胴のガードを緩めれば嘔吐確実の膝蹴り、うっかり足を開き過ぎようものなら金的……全部痛そう。
「あっ、危なっ……! あれ?」
金属バットを振り上げた不良が背後からフタを狙い、リュウが警告の大声を上げたが、不良は突然何かを痛がり初めて動きを止め、フタのノールック肘打ちにより真後ろにばたりと倒れた。
「手と目の周り、真っ赤……多分猫ちゃん達に引っ掻かれたり噛まれたりしまくったんだろうな」
「ほへぇ……猫……すごいなぁ」
後三人、後二人、後一人……あっ逃げた。胸ぐらを掴み頭突きで失神させた不良を投げ捨てながら、フタは逃げていく不良を指差す。
「金縛りぃ」
ピタリと動きを止めた不良を、焦ることなく歩いて追いかける。無防備な背中を蹴り、倒れうつ伏せになった背に乗り、髪を掴んで力いっぱい地面に叩き付ける。
「うわっ……下石だらけだぞここ。フタさん! フタさん! もういいです!」
フタは掴んでいた髪をパッと離し、俺達の元へ戻ってくる。肩の辺りにふよふよと手を漂わせているのは、肩に乗った猫の霊を撫でている……とかだろうか?
「みつきぃ……とぉ、えー…………ちょっと待って」
リュウの顔をじっと見つめたフタはスマホを取り出し、リュウをチラチラと見ながらスマホを操作する。
「…………りゅーくん! 覚えた覚えた……えーと、何? 何してたんだっけ。何か手ジーンってなってる」
「人よぉさん殴ったからちゃうか……ちょおやり過ぎな気ぃもするけど、ありがとうございますぅ。こんだけやったんや、もう俺に手ぇ出してけぇへんやろ」
「報復とかないかな?」
「モンモン入りのたった一人にボロ負けやで? ないやろ」
「もんもん……? あぁ、刺青のことだっけ。何でそんな言い方するんだろうな」
「紋様の紋やね。紋紋。倶利伽羅紋紋……は、サンちゃんだけやったっけ」
そんな話をしながら車へ戻った。俺はズボンが草と泥で汚れて、払っても落ち切らなかったので、汗拭き用に持ってきていたタオルを敷いて座った。
「ここどこ……? なんで俺ここ来たんだっけ、みつきとデートぉ……にしては、しょっぱい場所ぉ。なんか一人多いし」
「悪かったのぉ家の周りしょっぱくて」
「リュウが悪いヤツらにたくさん殴られたので、その仕返しに来たんですよ」
「え、りゅーくん殴られたの? 大丈夫~?」
昨日は記憶がよく保っていたのに、今日はいつも通りのフタだな。激しい運動をしたからだろうか。
「行ったたまり場一個じゃないよな、リュウ。どんどん回るぞ。ナビしろナビ」
「へぇーい……大丈夫でっせフタ兄さん」
「……? 俺の弟サンちゃんだけじゃなかったっけ」
「フタさん、車出してください。リュウ、案内。さっさと終わらせてアキ迎えに行こう」
「車出すの? えーと、こっちがアクセル……? あれ動かない、こっち? あれ……? 車壊れた?」
「サイドかけっぱやないですか兄さん」
十数人相手の喧嘩だろうと、フタは見物の俺に不安を与えなかった。だが今はどうだ、発進する前から不安でいっぱいだ。
「……っ、クソがぁっ!」
「のヤロォっ!」
フタが着地するが早いか、すぐ傍に居た不良達がフタに殴り掛かる。逃げなかったのは仲間意識故か、この近さでは逃げられないと踏んだか。身長や刺青に怯んでいた不良達も彼らに釣られて戦闘態勢に入る。
「さ、流石に多勢に無勢ちゃう? 参加した方が……」
「下がってろって言われたろ、足引っ張るだけだ。第一お前怪我人だろうが」
「……っ、つぅ……」
軽くアザのある肩をつついただけでリュウは顔を歪める。そんな身体で何が「参加した方が……」だ。
(わたくしも今めっちゃケツ痛いし)
さっき滑り落ちた時に打った尻がとても痛い。ただでさえ喧嘩なんて経験がないのに、こんな尻では戦えない。
「痛っ……てめぇどこ狙ってんだよ!」
「えっ? あれっ? ご、ごめん!」
ここは河原だ、いくらでも石が転がっている。フタ目掛けて投げる者も出てきたが、いいコントロールをしていたその石はフタに当たる直前で軌道を急激に曲げて別の不良に当たった。猫だ、フタの死んだ飼い猫が石を弾いたんだ。猫パンチで弾き飛ばす姿が目に浮かぶようだ。
(どの猫ちゃんでしょう、戦う猫様見たいですな)
圧倒的な実力差。あまりにも危なげない戦いで、フタを心配する気が失せてしまった俺は蹂躙を他人事として鑑賞した。
「ぎゃっ!? いってぇ……なんだよクソっ!」
突然不良の顔に三本筋の傷が現れる。猫の引っ掻き傷そのもののそれは目を縦断しており、片目を閉じざるを得なくなった彼はフタの右フックを避けられず、沈んだ。
(アキきゅんは的確に顎を揺らすのですが、フタさんは……的確は的確なんですが、痛そうなとこばっか攻撃しますな)
正面に立てば鼻にストレート、斜めから狙おうものなら目を狙ったフック、胴のガードを緩めれば嘔吐確実の膝蹴り、うっかり足を開き過ぎようものなら金的……全部痛そう。
「あっ、危なっ……! あれ?」
金属バットを振り上げた不良が背後からフタを狙い、リュウが警告の大声を上げたが、不良は突然何かを痛がり初めて動きを止め、フタのノールック肘打ちにより真後ろにばたりと倒れた。
「手と目の周り、真っ赤……多分猫ちゃん達に引っ掻かれたり噛まれたりしまくったんだろうな」
「ほへぇ……猫……すごいなぁ」
後三人、後二人、後一人……あっ逃げた。胸ぐらを掴み頭突きで失神させた不良を投げ捨てながら、フタは逃げていく不良を指差す。
「金縛りぃ」
ピタリと動きを止めた不良を、焦ることなく歩いて追いかける。無防備な背中を蹴り、倒れうつ伏せになった背に乗り、髪を掴んで力いっぱい地面に叩き付ける。
「うわっ……下石だらけだぞここ。フタさん! フタさん! もういいです!」
フタは掴んでいた髪をパッと離し、俺達の元へ戻ってくる。肩の辺りにふよふよと手を漂わせているのは、肩に乗った猫の霊を撫でている……とかだろうか?
「みつきぃ……とぉ、えー…………ちょっと待って」
リュウの顔をじっと見つめたフタはスマホを取り出し、リュウをチラチラと見ながらスマホを操作する。
「…………りゅーくん! 覚えた覚えた……えーと、何? 何してたんだっけ。何か手ジーンってなってる」
「人よぉさん殴ったからちゃうか……ちょおやり過ぎな気ぃもするけど、ありがとうございますぅ。こんだけやったんや、もう俺に手ぇ出してけぇへんやろ」
「報復とかないかな?」
「モンモン入りのたった一人にボロ負けやで? ないやろ」
「もんもん……? あぁ、刺青のことだっけ。何でそんな言い方するんだろうな」
「紋様の紋やね。紋紋。倶利伽羅紋紋……は、サンちゃんだけやったっけ」
そんな話をしながら車へ戻った。俺はズボンが草と泥で汚れて、払っても落ち切らなかったので、汗拭き用に持ってきていたタオルを敷いて座った。
「ここどこ……? なんで俺ここ来たんだっけ、みつきとデートぉ……にしては、しょっぱい場所ぉ。なんか一人多いし」
「悪かったのぉ家の周りしょっぱくて」
「リュウが悪いヤツらにたくさん殴られたので、その仕返しに来たんですよ」
「え、りゅーくん殴られたの? 大丈夫~?」
昨日は記憶がよく保っていたのに、今日はいつも通りのフタだな。激しい運動をしたからだろうか。
「行ったたまり場一個じゃないよな、リュウ。どんどん回るぞ。ナビしろナビ」
「へぇーい……大丈夫でっせフタ兄さん」
「……? 俺の弟サンちゃんだけじゃなかったっけ」
「フタさん、車出してください。リュウ、案内。さっさと終わらせてアキ迎えに行こう」
「車出すの? えーと、こっちがアクセル……? あれ動かない、こっち? あれ……? 車壊れた?」
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