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再会の美形兄弟 (水月+アキ・ミタマ・リュウ・フタ)
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四つほど溜まり場を回り、うち二つで不良達を締め上げた。
「……よし。これで全員だな」
「なんで全員か分かんのん? 俺も分からへんのに」
「荒凪くんが人数は教えてくれたから。ほら、俺がイラつくとその対象呪う? って聞いてくるから。いつもヒヤヒヤするけど、今回ばかりは人数分かって助かったよ」
「あー……やっぱ怖いわあの子」
「……コンちゃん、リュウが荒凪くんと会ったら目隠しお願い出来る?」
「今後ずっとか? 構わんが、あぶらげ増やすんじゃぞ」
「分かってるよ。あっフタさん、そこ、黄色い看板のとこ右です」
「ん~」
「次は青いコンビニを左でお願いします」
「……そういう言い方すればよかったんやなぁ、色かぁ……はぁー……なるほどなぁ」
不良のたまり場巡りが終わった後は俺が助手席に座り、ナビを行っている。行き先はアキが入院している病院だ。
病院に着いて、受付で手続き。諸々の費用は秘書が持ってくれているらしく請求されなかった。
「にーにぃ!」
鞄を肩に下げたアキが走ってくる。もうすっかり元気になったみたいだ。
「アキ、おかえり……!」
「ただいま、です! にぃに!」
順番待ちの患者達に超絶美形兄弟の感動の再会を見せつけ、病や怪我と戦う気力を与えてる。これも社会奉仕の一環、美形の義務だ。
《フタじゃん。リュウも居る。なんだ、俺の退院祝いに来たのか? ありがとよ。スェカーチカは?》
「……やばいセイカ居ないから何言ってるか分かんない。連れてくればよかった」
不良へのお礼参りなんてセイカには見せたくなかったから同行を避けたのだが、その後のことを考えていなかった。
「みつきそっくり~、可愛い」
「水月の弟のアキくんでっせ」
「あきくん」
「ふたー、脱ぐする、欲しいするです」
「……? 脱ぐ? 俺が? いいよぉ」
「あっちょっ、ダメ! ダメですフタさん。もう行きましょう。あんまり長く停めちゃ駐車場料金取られちゃいますよ」
「一時間は無料やから大丈夫やけどな」
「うるさい……ったく、アキ、なんでいきなり脱げなんて。セクハラなら俺にして欲しい」
「刺青見たいんとちゃう?」
「あぁ、そういや和彫り好きだったなアキ。たまにミーハー日本好き外国人みたいなとこ出してくるんだよなぁ」
そんな話をしながら病院を出る──寸前、フタが立ち止まった。フタの顔を見上げるよりも先に、背後から声がかかる。
「兄貴! お久しぶりです!」
「……誰ぇ?」
「ライカです。あなたの弟分なんですけど……」
「ふーん、なに?」
以前俺がこの病院の地下に迷い込んだ時に会った、小柄な東欧風の男。フタを兄貴分として素直に慕っているようなのに、フタは何を警戒しているのか俺達を背に庇うように腕を広げ、一歩前に出た。俺がフタの隣に並ぼうとすれば、斜め後ろに押し返すことから、彼に近付けたくないことが丸分かりだ。
「…………」
彼にもそれは伝わっているようで、微笑みながらも眉尻を下げている。
「なに? って聞いてんだけどぉ」
「……兄貴、記憶の方はどうですか? 入院の直前にかなり失ったと聞きましたが」
「記憶ぅ? 知らねぇよ」
「戻ってはないみたいですけど、スマホにたくさんメモとかあるので大丈夫だと思います」
「みつき! 話すな」
「え……な、なんで」
フタは昨日リュウにいきなり暴力を振るったことからも分かる通り、嫉妬深い。だから他所の男と話させたがらないだけかと思ったが、しかし、それにしては苛烈なような。
「相変わらず兄貴は俺のことが嫌いですね、記憶を失っても変わりませんか」
「別に嫌いじゃねぇけどぉ……好きにゃならねぇなぁ、絶対」
「……猫達が威嚇するから、ですか? ふふ、相変わらず警戒心は外付けなんですね」
「シャーはしてねぇけどイカ耳なんだよ、敵じゃねぇけどやな感じ。なんなのお前……もう行っていい?」
「…………あ、あの! フタさんの記憶、戻せないんですか?」
「一般的な記憶喪失とは違い、兄貴の場合は記憶の消費です。兄貴が忘れたものを思い出すことはありえませんよ」
「それは……何か、ちゃんと脳の検査とかをした上での結論……的なものですか?」
「はい。俺は拾われる前なので記録でしか知りませんが、ボスが調べたそうですよ」
「……そうですか」
フタは頻繁にメモや写真、動画を見返すことで俺に新鮮な恋心と愛情を持ってくれている。積み重なって深まることは、この先もないのか。
「みつきぃ、話すなって……」
「ごめんなさい、どうしてもフタさんのこと心配で」
「俺、忘れんの、やだ? 俺もやだけどさぁ、みつき……みつきが俺が忘れんの嫌なの、なんか、なんだろ、なんかさぁ」
「不安ですか? 忘れっぽいのを理由に俺がフタさんを嫌わないか」
「それ! かな……多分」
「ありえませんよ、大丈夫、大好きです。フタさん、俺はフタさんの記憶が戻って欲しいから聞いたんじゃなくて、そんなに記憶が飛んじゃうなんて、何か病気や怪我が原因だったりしないかなって心配したからなんです」
「長……え、なに、えっと……俺が病気なの心配してるの?」
「はい。病気かもって心配して聞いて、病気じゃないって分かって、安心しました」
「……そっかぁ」
病気じゃないかどうかなんて聞いていないし、安心もしていない。フタに分かりやすく言っただけで、ニュアンスは違う。過去にちゃんと調べてあることにはある程度の安心はあったが、それでもいや、むしろ、フタの記憶保持力の弱さを治す手立てはないのだと分かって落胆した。
「…………ライカさん、原因って分かってるんですか?」
「えぇ、まぁ……分かってはいますよ」
「……何ですか?」
「それは……ちょっと、俺の口からは」
「…………命に関わるものじゃないんですよね?」
「はい」
「……なら、いいや。行こ、フタさん」
障害なのかもしれないし、病気なのかもしれない、怪我の後遺症かも。原因を話さず口ごもったのは未成年には聞かせにくい内容だったのか、何の医療的知識もない俺に理解出来るような説明を思い付かなかっただけなのか。
どうでもいい、何だっていい、記憶力が変わらないし今までの記憶が戻らないという残念な現実は変わらない。
「……よし。これで全員だな」
「なんで全員か分かんのん? 俺も分からへんのに」
「荒凪くんが人数は教えてくれたから。ほら、俺がイラつくとその対象呪う? って聞いてくるから。いつもヒヤヒヤするけど、今回ばかりは人数分かって助かったよ」
「あー……やっぱ怖いわあの子」
「……コンちゃん、リュウが荒凪くんと会ったら目隠しお願い出来る?」
「今後ずっとか? 構わんが、あぶらげ増やすんじゃぞ」
「分かってるよ。あっフタさん、そこ、黄色い看板のとこ右です」
「ん~」
「次は青いコンビニを左でお願いします」
「……そういう言い方すればよかったんやなぁ、色かぁ……はぁー……なるほどなぁ」
不良のたまり場巡りが終わった後は俺が助手席に座り、ナビを行っている。行き先はアキが入院している病院だ。
病院に着いて、受付で手続き。諸々の費用は秘書が持ってくれているらしく請求されなかった。
「にーにぃ!」
鞄を肩に下げたアキが走ってくる。もうすっかり元気になったみたいだ。
「アキ、おかえり……!」
「ただいま、です! にぃに!」
順番待ちの患者達に超絶美形兄弟の感動の再会を見せつけ、病や怪我と戦う気力を与えてる。これも社会奉仕の一環、美形の義務だ。
《フタじゃん。リュウも居る。なんだ、俺の退院祝いに来たのか? ありがとよ。スェカーチカは?》
「……やばいセイカ居ないから何言ってるか分かんない。連れてくればよかった」
不良へのお礼参りなんてセイカには見せたくなかったから同行を避けたのだが、その後のことを考えていなかった。
「みつきそっくり~、可愛い」
「水月の弟のアキくんでっせ」
「あきくん」
「ふたー、脱ぐする、欲しいするです」
「……? 脱ぐ? 俺が? いいよぉ」
「あっちょっ、ダメ! ダメですフタさん。もう行きましょう。あんまり長く停めちゃ駐車場料金取られちゃいますよ」
「一時間は無料やから大丈夫やけどな」
「うるさい……ったく、アキ、なんでいきなり脱げなんて。セクハラなら俺にして欲しい」
「刺青見たいんとちゃう?」
「あぁ、そういや和彫り好きだったなアキ。たまにミーハー日本好き外国人みたいなとこ出してくるんだよなぁ」
そんな話をしながら病院を出る──寸前、フタが立ち止まった。フタの顔を見上げるよりも先に、背後から声がかかる。
「兄貴! お久しぶりです!」
「……誰ぇ?」
「ライカです。あなたの弟分なんですけど……」
「ふーん、なに?」
以前俺がこの病院の地下に迷い込んだ時に会った、小柄な東欧風の男。フタを兄貴分として素直に慕っているようなのに、フタは何を警戒しているのか俺達を背に庇うように腕を広げ、一歩前に出た。俺がフタの隣に並ぼうとすれば、斜め後ろに押し返すことから、彼に近付けたくないことが丸分かりだ。
「…………」
彼にもそれは伝わっているようで、微笑みながらも眉尻を下げている。
「なに? って聞いてんだけどぉ」
「……兄貴、記憶の方はどうですか? 入院の直前にかなり失ったと聞きましたが」
「記憶ぅ? 知らねぇよ」
「戻ってはないみたいですけど、スマホにたくさんメモとかあるので大丈夫だと思います」
「みつき! 話すな」
「え……な、なんで」
フタは昨日リュウにいきなり暴力を振るったことからも分かる通り、嫉妬深い。だから他所の男と話させたがらないだけかと思ったが、しかし、それにしては苛烈なような。
「相変わらず兄貴は俺のことが嫌いですね、記憶を失っても変わりませんか」
「別に嫌いじゃねぇけどぉ……好きにゃならねぇなぁ、絶対」
「……猫達が威嚇するから、ですか? ふふ、相変わらず警戒心は外付けなんですね」
「シャーはしてねぇけどイカ耳なんだよ、敵じゃねぇけどやな感じ。なんなのお前……もう行っていい?」
「…………あ、あの! フタさんの記憶、戻せないんですか?」
「一般的な記憶喪失とは違い、兄貴の場合は記憶の消費です。兄貴が忘れたものを思い出すことはありえませんよ」
「それは……何か、ちゃんと脳の検査とかをした上での結論……的なものですか?」
「はい。俺は拾われる前なので記録でしか知りませんが、ボスが調べたそうですよ」
「……そうですか」
フタは頻繁にメモや写真、動画を見返すことで俺に新鮮な恋心と愛情を持ってくれている。積み重なって深まることは、この先もないのか。
「みつきぃ、話すなって……」
「ごめんなさい、どうしてもフタさんのこと心配で」
「俺、忘れんの、やだ? 俺もやだけどさぁ、みつき……みつきが俺が忘れんの嫌なの、なんか、なんだろ、なんかさぁ」
「不安ですか? 忘れっぽいのを理由に俺がフタさんを嫌わないか」
「それ! かな……多分」
「ありえませんよ、大丈夫、大好きです。フタさん、俺はフタさんの記憶が戻って欲しいから聞いたんじゃなくて、そんなに記憶が飛んじゃうなんて、何か病気や怪我が原因だったりしないかなって心配したからなんです」
「長……え、なに、えっと……俺が病気なの心配してるの?」
「はい。病気かもって心配して聞いて、病気じゃないって分かって、安心しました」
「……そっかぁ」
病気じゃないかどうかなんて聞いていないし、安心もしていない。フタに分かりやすく言っただけで、ニュアンスは違う。過去にちゃんと調べてあることにはある程度の安心はあったが、それでもいや、むしろ、フタの記憶保持力の弱さを治す手立てはないのだと分かって落胆した。
「…………ライカさん、原因って分かってるんですか?」
「えぇ、まぁ……分かってはいますよ」
「……何ですか?」
「それは……ちょっと、俺の口からは」
「…………命に関わるものじゃないんですよね?」
「はい」
「……なら、いいや。行こ、フタさん」
障害なのかもしれないし、病気なのかもしれない、怪我の後遺症かも。原因を話さず口ごもったのは未成年には聞かせにくい内容だったのか、何の医療的知識もない俺に理解出来るような説明を思い付かなかっただけなのか。
どうでもいい、何だっていい、記憶力が変わらないし今までの記憶が戻らないという残念な現実は変わらない。
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