冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン

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ハーレム主が蚊帳の外 (水月+アキ・セイカ・ネザメ・ミフユ・ハル・カンナ・シュカ・歌見・レイ)

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紅葉家、いや、紅葉邸と呼ぶべきか。豪奢な家が立ち並ぶ高級住宅地の中でも群を抜いて立派な豪邸にやってきた。

「こんにちは、鳴雷です」

「ご機嫌よう。ネザメ様のご学友ですね、どうぞお入りください」

助手席の窓から顔を出して小柄な男に挨拶をすると、高い鉄柵門が開いた。

「車はこちらでお停めしておきます」
「ご案内致します。どうぞこちらへ」

車をしばらく走らせると道の真ん中に小柄な男が二人立っており、深々と頭を下げた。車を降りると男達のうち一人が運転席に乗り込み、残った男は邸内への扉を開いた。

「車ぁ……」

「駐車場か何かに停めてきてくれはるみたいやで、サービスええなぁ」

「ホテルみたいだな」

「ホテルてそうなん?」

「……らしいけど」

俺の知識はゲーム由来だ、聞き返されると現実と同じかどうか不安になる。

「水月くん! いらっしゃい」

案内された先の大部屋に入るとネザメに出迎えられた。どこかミフユに似た案内人に礼を言い、ネザメに挨拶をする。

「お招きいただいてありがとうございます、ネザメさん。アキ、ほら、ネザメさんだぞ。ご挨拶して」

「ねざめー?」

「……! 秋風くん、具合はどうだい? 君を傷付けるなんて、美術品にペンキをかけるが如き所業だ。そんな愚かな人間が居るなんて信じられなかった……まだ痛みはあるかい? 色んなケーキを用意したんだ、君はお肉が好きだからそれを振る舞いたかったのだけれど、昼食と夕食の間なのだからとミフユに止められてしまってね」

中央の長机に並んでいるのは様々なケーキだ。色とりどりのフルーツ、たっぷりのクリーム、もちろんチーズやチョコ系のケーキも散見される。

「ケーキだ、美味しそ~」

「ごきげんよう穂張さん。フタさんとお呼びしても? ご兄弟はあちらに……」

「あ、サンちゃん。ヒト兄ぃ。おーい!」

「……いらっしゃって、おや、ふふ、楽しい人だね」

その「楽しい」はもしかして「落ち着きがない」とか「騒がしい」とかそういう意味か?

「飯の近くで走るな!」

「りゅーくんの喧嘩相手シメてきた? おつかれ~。怪我ない?」

兄弟二人に迎えられるフタを微笑ましく眺めていると、他の彼氏達がアキの元に集っているのに気が付いた。こちらでも微笑ましい光景が見られそうだ。

「アキくん! 大丈夫~?」

「も、動い、て……いーの?」

「内臓に後遺症などはありませんか?」

「病院食って外傷でも薄不味いもん出されるんすか? まずはほろ苦系のケーキから食べるっすよ」

「いきなり甘いの行くと甘さ控えめのケーキの味が分かりにくくなるからなぁ……ってんなこと今どうでもいいだろ木芽。立ってるの辛くないかアキくん、椅子持ってこようか?」

四方八方から話しかけられ、肩や腕をさすられ、アキは初めは笑顔でいたが段々と困り顔に変わっていった。

「……セイカ、行かなくていいのか?」

車椅子の上で縮こまっているセイカを見つけ、声をかける。

「せっかく、囲まれてるんだ。水差すようなこと出来ねぇよ。ほとぼりが冷めたら、退院おめでとうくらいは言う……ほっといて」

自分が行けば盛り下げてしまうと勘違いしているようだ。アキが一番会いたがっていたのはきっと、セイカなのに……あっ違う、俺の次ね、俺の次。俺が一番。セイカは二番目。

「退院おめでとう。ミフユの父が腕によりをかけて作ったケーキだ、ぜひ堪能してくれ」

蹲るセイカの頭を撫でながらアキに視線を戻す。アキはキョロキョロと彼氏達を見回し、不安げに呟く。

「……すぇかーちか」

一番の大親友を、慣れない言葉を親しんだ母語に変えてくれる頼りになる男を、求める声だ。

「あっ、何言ってたか分かんなかった? ごめんね~、急いで話しかけちゃって」

「心、配……だった、から……」

「ゆっくり区切って話さないと日本語では分からないんでしたっけ?」

「ゆっくり言ったところで難しい言葉は使えないんすよねぇ」

「案外難しいんだよな、アキくんに伝わる言葉選びって」

「語彙を絞ってはこちらの気持ちも、秋風の気持ちも上手く通じ合わん。情けない話だがやはり頼るしか……む?」

彼氏達も辺りを見回し始めた。

「あれ、せーか居ないじゃん。せーか~?」

「……? ど、こ?」

「秋風さんが来れば一番に寄っていくと思っていましたが、来てませんね」

「おかしいっすねぇ」

「セイカくん車椅子だぞ、みんなで置いて行っといて来てないのおかしいはないだろ。まぁ……俺もアキくん見て色々吹っ飛んだから……他人のこと言えないけど」

「狭雲一年生は……あぁ居た、すまない狭雲一年生。置いて行ってしまい……む、鳴雷一年生と話していたのか?」

セイカは潤んだ目を丸く見開き、何度か大きく瞬きをした。

「せーかぁ~、翻訳お願~い。気ぃ済むまでイチャついた後でいいからさぁ、俺超心配してて、超会いたかった~って言って~」

「ぼく、も……だい、たい……一緒」

「後遺症の確認は先にして欲しいです」

「ケーキお預け辛いと思うんで、欲しいケーキも先に聞いて欲しいっす。俺取ってくるんで!」

「俺椅子取ってくるよ、セイカくんの隣に並べるんでいいよな?」

「歌見どの、そういったことはミフユがやりますので……」

彼氏達はアキにしたように、今度はセイカに次々に話しかける。セイカが鼻を啜って返事が出来ないでいると、白い影が勢いよくセイカに向かって飛び込んだ。

「すぇかーちか!」

「……っ、あ、秋風……?」

《会いたかったぜスェカーチカ! 兄貴はうるせぇからともかく、スェカーチカもナシで寝るのキツかったぁー……はぁ、これだよこの抱き心地。骨が色んなとこにくい込んでちょっと痛ぇ抱き心地……ちょっと痩せたか? 前よりくい込みが痛いぞ》

「…………退院おめでとう」

ハーレム主のはずなのになんだか蚊帳の外にされている気がするが、大変微笑ましい光景が見られたので良しとしよう。
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