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留学後の性活
さみしくて、おもいでをあさる
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──雪兎が留学して二日目、いや三日目だったか、俺は孤独に耐えられなくなった。雪風も仕事で家に居らず、本当に部屋に一人きりにされたのだ。元来寂しがりの俺には到底耐えられないものだった──
大きなベッドの真ん中で大の字で寝る。そうしていれば雪兎が飛び乗ってくれる気がして。
「…………ユキ様、重いですよー」
飛び乗ってきたらそう言って、しばらくベッドの上でイチャついて、セックスになだれ込むんだ。
「ユキ様……ユキ様ぁ……ひとり、やだぁ……」
自分で首輪をはめて、首輪の紐をベッドの柵に繋いだりして自分で行動を制限しても何も楽しくない。全然犬の自覚が湧いてこない。
「雪兎ぉ……」
雪兎が学校から帰るのを待っていた頃はよかった。朝、首輪をつけてもらったり、拘束されて放置されたり、玩具まみれにされて放置されたり……今の俺は雪兎からの愛情を形として受けられない。
「………………俺、なんで生きてるんだろ」
思考がまずいとこに入ったな。漫画でも読んで気分を変えよう。俺が養子になった時、共に引き取られた私物が放置されている物置部屋へ行こう。
ペットになる際、何もかも捨てようと思った。両親を失って絶望して、何も要らないと思い込んでいた。けれど精神が少し安定してきた頃、私物が保管されていたことに感激した。嬉しかった。俺は真尋を捨てきれなかった。
「俺の愛蔵書達……! 元気だったか?」
「相変わらずすごいオタク部屋ですね」
俺の私物倉庫こと物置部屋の鍵を持っているのは使用人なので、一緒に来てもらい開けてもらった。鍵を渡してどこかへ行ったりしないのは、一年経った今でも俺が信用されていない証拠だろうか? ま、雪兎と雪風以外にどう思われていようがどうでもいいけれど。
「俺そんなオタクじゃないですって。さ、何読もうかな~」
「いや、漫画にゲームにフィギュアにポスターに……どう見てもオタクですよ。しかもどれもアルビノ美少女? ってやつですか?」
「アルビノ美少女or美少年! 老人キャラ以外で髪が白ければ推しになります」
「はぁ……おや、これは漫画ではないようですが」
「そりゃ小説も学問書も辞典も読めるもんは何でも読みま……それはアルバムですよ」
使用人が持ったのは本棚の下段に置いてあったアルバムだ。小中の卒業アルバムなどの横にある、プライベートの物……両親も写っているからずっと見返してこなかった俺の人間としての記録。
「失礼しました」
「いえ、貸してください。たまには……アルバムもいいでしょう」
ご主人様が居なくて犬としての自分が保てないなら、雪風の恋人として完璧になるために人間の記録を漁ろうじゃないか。そろそろ父母を亡くした傷も塞がり始めただろうから、カサブタを剥がして偲ぶとしよう。
「わ……! すごい、赤ちゃんの頃から三白眼ってありえるんですね!」
「目付き悪ぅ……」
「おや、こちらは……細身のポチ様?」
「あぁ……父さんですよ。顔はそっくりなんですけど、父さんは筋肉なかったんです。逆に母さんが割と筋肉質で……」
まだ歳が一桁だった頃の写真をパラパラ捲る。次第に俺の背は伸び始める。
「お、今と変わらなくなってきましたね。いくつですか?」
「えーっと、五年生ですね。ほら、こっちの写真だとランドセル背負ってます」
「……女子みたいな成長期してたんですね」
なんで俺、使用人とアルバム見てるんだろ。こういうのはやっぱり雪兎か雪風と見たいな、予行演習とでも思おうか?
「おや、こちらは集合写真……?」
「法事の時のですね。ひぃじいちゃんの何回忌とかだったと……そういえば、雪兎のひいおじいさんって」
「別棟にお住みですよ」
雪風は三十後半に入ったというのに肌になシミひとつなく、ハリツヤも最高……どうせその曾祖父も若々しいんだろうな。本当に人間か疑いたくなる一族だ。
「法事でも結構写真を撮っているんですね」
「まぁ、ただの親戚パーティになりますよね。葬式ならまだしも……何回忌か、なんて、形骸化しちゃって……俺のとこだけですかね」
「さぁ……? おや、こちらは幼稚園児の頃のものでは?」
使用人は色黒で三白眼の、俺と同じ特徴を持つ小さな男児を指す。俺はページを捲り、その男児と俺が一緒に写っている写真を指す。
「あれっ……? 弟さんですか?」
「俺の弟は死産ですよ。この子は國行、俺の叔父の息子……だから、いとこです」
「はぁー……似てらっしゃる」
俺は父母が死んだ後、親戚中をたらい回しにされた結果、最終的に工場を経営する叔父の元へ引き取られた。その叔父の息子が國行だ、親戚の中で唯一仲が良かった。
あぁ、だんだんと記憶が鮮明になってきたな──
大きなベッドの真ん中で大の字で寝る。そうしていれば雪兎が飛び乗ってくれる気がして。
「…………ユキ様、重いですよー」
飛び乗ってきたらそう言って、しばらくベッドの上でイチャついて、セックスになだれ込むんだ。
「ユキ様……ユキ様ぁ……ひとり、やだぁ……」
自分で首輪をはめて、首輪の紐をベッドの柵に繋いだりして自分で行動を制限しても何も楽しくない。全然犬の自覚が湧いてこない。
「雪兎ぉ……」
雪兎が学校から帰るのを待っていた頃はよかった。朝、首輪をつけてもらったり、拘束されて放置されたり、玩具まみれにされて放置されたり……今の俺は雪兎からの愛情を形として受けられない。
「………………俺、なんで生きてるんだろ」
思考がまずいとこに入ったな。漫画でも読んで気分を変えよう。俺が養子になった時、共に引き取られた私物が放置されている物置部屋へ行こう。
ペットになる際、何もかも捨てようと思った。両親を失って絶望して、何も要らないと思い込んでいた。けれど精神が少し安定してきた頃、私物が保管されていたことに感激した。嬉しかった。俺は真尋を捨てきれなかった。
「俺の愛蔵書達……! 元気だったか?」
「相変わらずすごいオタク部屋ですね」
俺の私物倉庫こと物置部屋の鍵を持っているのは使用人なので、一緒に来てもらい開けてもらった。鍵を渡してどこかへ行ったりしないのは、一年経った今でも俺が信用されていない証拠だろうか? ま、雪兎と雪風以外にどう思われていようがどうでもいいけれど。
「俺そんなオタクじゃないですって。さ、何読もうかな~」
「いや、漫画にゲームにフィギュアにポスターに……どう見てもオタクですよ。しかもどれもアルビノ美少女? ってやつですか?」
「アルビノ美少女or美少年! 老人キャラ以外で髪が白ければ推しになります」
「はぁ……おや、これは漫画ではないようですが」
「そりゃ小説も学問書も辞典も読めるもんは何でも読みま……それはアルバムですよ」
使用人が持ったのは本棚の下段に置いてあったアルバムだ。小中の卒業アルバムなどの横にある、プライベートの物……両親も写っているからずっと見返してこなかった俺の人間としての記録。
「失礼しました」
「いえ、貸してください。たまには……アルバムもいいでしょう」
ご主人様が居なくて犬としての自分が保てないなら、雪風の恋人として完璧になるために人間の記録を漁ろうじゃないか。そろそろ父母を亡くした傷も塞がり始めただろうから、カサブタを剥がして偲ぶとしよう。
「わ……! すごい、赤ちゃんの頃から三白眼ってありえるんですね!」
「目付き悪ぅ……」
「おや、こちらは……細身のポチ様?」
「あぁ……父さんですよ。顔はそっくりなんですけど、父さんは筋肉なかったんです。逆に母さんが割と筋肉質で……」
まだ歳が一桁だった頃の写真をパラパラ捲る。次第に俺の背は伸び始める。
「お、今と変わらなくなってきましたね。いくつですか?」
「えーっと、五年生ですね。ほら、こっちの写真だとランドセル背負ってます」
「……女子みたいな成長期してたんですね」
なんで俺、使用人とアルバム見てるんだろ。こういうのはやっぱり雪兎か雪風と見たいな、予行演習とでも思おうか?
「おや、こちらは集合写真……?」
「法事の時のですね。ひぃじいちゃんの何回忌とかだったと……そういえば、雪兎のひいおじいさんって」
「別棟にお住みですよ」
雪風は三十後半に入ったというのに肌になシミひとつなく、ハリツヤも最高……どうせその曾祖父も若々しいんだろうな。本当に人間か疑いたくなる一族だ。
「法事でも結構写真を撮っているんですね」
「まぁ、ただの親戚パーティになりますよね。葬式ならまだしも……何回忌か、なんて、形骸化しちゃって……俺のとこだけですかね」
「さぁ……? おや、こちらは幼稚園児の頃のものでは?」
使用人は色黒で三白眼の、俺と同じ特徴を持つ小さな男児を指す。俺はページを捲り、その男児と俺が一緒に写っている写真を指す。
「あれっ……? 弟さんですか?」
「俺の弟は死産ですよ。この子は國行、俺の叔父の息子……だから、いとこです」
「はぁー……似てらっしゃる」
俺は父母が死んだ後、親戚中をたらい回しにされた結果、最終的に工場を経営する叔父の元へ引き取られた。その叔父の息子が國行だ、親戚の中で唯一仲が良かった。
あぁ、だんだんと記憶が鮮明になってきたな──
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