ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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夏休み

かいがいでのおさんぽ、よん

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通行人や美容院の店員はもれなくサングラスをかけており、社員だろうとは予想していた。しかし、俺のことをペットではなく雪兎と仲良しの親戚だと知らされていたなんて予想だにしていなかった。

「切っていきますね。事前に跡継ぎ様から聞いている髪型でよろしいですか?」

「はい……」

犬耳カチューシャも紐付きの首輪もベルトにぶら下げた犬尻尾ストラップも、何もかも社員達は「面倒見のいい親戚のお兄ちゃんが犬の散歩ごっこに付き合ってやってる」というだけの認識。
そんな赤の他人の前で喘ぐわけにはいかない。貞操帯に固定された前立腺マッサージ器具からの快楽に勝たなければ。

「……呼吸が荒いですね」

「えっ? い、いえそんな……」

「跡継ぎ様より聞いております、軽度の先端恐怖症なのですよね」

「へ……?」

店員は鋏を持つ前にアイマスクを持った。

「目隠しをすれば大丈夫と聞いております。ご安心ください」

明るい美容院の景色が一変、アイマスクによって暗闇に鎖された。俺は先端恐怖症なんかじゃない、どれかと言えば暗所恐怖症だ。

「……っ!」

何も見えない。人の気配と首輪の感覚のおかげで事故の幻覚は見ないが、それでも鼓動は早くなった。

「ん……」

視覚を塞がれるとその他の感覚が鋭敏になる。事故のトラウマによる恐怖だけでなく、前立腺マッサージ器具の存在が俺の中で大きくなっての動揺もあった。

「……っ、く……」

上等な鋏の子気味いい金属音、俺の髪がケープに落ちるパラパラという音。切られた髪が鼻に乗るくすぐったさ。

「ふっ……ぅ……ん、んっ……」

トン、トンっ……と不規則に前立腺を叩かれる。俺自身が前立腺マッサージ器具を締め付けなければこれは動かないのに、俺の後孔は俺の意思に従ってくれない。自分勝手に快感を貪っている。

「んっ……!」

その快感で陰茎は勃起しようとしているが、貞操帯にギチギチと締め付けられて痛む。普通ならここで萎えるのだろうが、雪兎に調教された俺にとって痛みは興奮材料だ、むしろ勃つ。

「ねー、お兄ちゃんあとどれくらいで切れる?」

「あと二十分くらいですよ跡継ぎ様、もう少しお待ちいただけますか?」

「傍で見ててもいい?」

「刃物を使っておりますので、私の手の届かない程度の距離からなら」

雪兎の声が近くで聞こえる。無駄だと分かっているのにアイマスクの下で目を動かしてしまう。

「お兄ちゃんお兄ちゃん、前髪スッキリしたね」

可愛こぶった声だ。

「カッコいいよ、お兄ちゃん」

雪兎がたまに言ってくれる「お兄ちゃん」が俺はたまらなく好きだ。一言で幸せに満たされる。

「散髪終わったら色んなお店、一緒に行こうねお兄ちゃん」

こんなに連呼されたら脳が先に蕩けてしまう。多幸感が頭から全身に流れて下腹が熱く痺れ、射精も声もなく絶頂を迎えた。

「………………はい、イきっ、ましょうね……ユキ様」

呼吸を無理矢理落ち着けて返事をしながら、俺は絶頂の余韻である腸壁の痙攣で前立腺マッサージ器具を動かし、更なる快楽に襲われていた。
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