ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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夏休み

にっぷるりんぐ、ろく

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尻の割れ目に沿ったデニムの縫い目が裂けたのは、俺が太ったせいではなく雪兎が細工をしたせい? 訳が分からない。

「え……? 細工……どうしてです? そんな……ぁ、俺に気を遣っていただかなくても結構ですよ?」

「気なんか遣ってないよ、本当に細工したの。それはポチの普段着にして欲しくて送ったお洋服じゃなくて、着たまま挿入するために作ったプレイ用コスチュームだから」

「着た、まま……ですか」

「そ。着衣プレイで服を切っちゃうのは僕邪道だと思ってるんだよね、まぁ邪道は邪道でいいものだけど。ズラして挿入も食傷気味だし、裂けさせちゃうのとか新鮮かなって」

本当に雪兎の仕業ということと、俺が太っていないことは理解した。羞恥心も罪悪感も、必要なかったのだ。

「細工をした甲斐があったよぉ、綺麗にここだけ破けるように、それも体勢を変えた時にって考えるのは結構大変だったんだよ? A4二枚分のメモになっちゃったんだから」

「……こんな一発ネタのために」

「その価値はあったよ。計算通りえっちに破れてくれたのはもちろん、想定外の嬉しさもあった……君の可愛い忠誠心のことだよ。なぁに? 服破ってごめんなさいって泣くって、何それぇ……可愛いよ可愛すぎるよポチぃ」

「ゃ、それは、だって……ユキ様にもらったものだから……」

泣いたことが恥ずかしくなり、雪兎から視線を逸らす──だが、あの時の俺の反応に雪兎が喜んでくれているのは理解したので、すぐに視線を戻した。

「ふふふっ……」

雪兎を見つめられるようになっても顔の熱は引かない、赤みが差しているだろう褐色肌を雪兎は撫で回して楽しんでいる。

「僕から渡されれば何でも嬉しいの?」

「はい、当然です。俺はユキ様の犬ですから」

「ふぅん……? あぁ、もうお尻突き出すポーズやめていいよ。ご飯食べよう、今日は食器使っていいよ、早く食べちゃって欲しいからね」

「はい」

尻の冷たさ涼しさを気にしつつ、席について夕飯を食べ始める。箸を持つ機会は少ない、持ち方はこれで合っていたっけ?

「……ユキ様?」

机に置かれていた除菌用のウェットティッシュを一枚落とし、素足で掴んで床を拭いている。雪兎は何をしているんだ?

「なぁに? ポチ」

「いえ……ご飯、美味しいです」

「そう、よかった」

その後特に会話はなく黙々と完食。ごちそうさまと一緒に呟き、席を立つ。

「……ユキ様、トマト残ってますよ」

「あぁ、ポチにあげるよ。僕からもらえば何でも嬉しいんだろ?」

皿に一つだけ残っていたプチトマト。雪兎はそのヘタをつまんで持ち上げる。

「ユキ様トマトお嫌いですか? いただけるのは嬉しいですけど、栄養バランスを考えて作ってくださっているでしょうから、ユキ様が食べた方がいいかと思います」

「……確認だけどポチ、本当にどんなものでも嬉しいんだよね?」

「え……? えぇ、俺はあなたの犬ですから」

「そう……ふふふっ、確かに僕はこれを自分で食べるべきだね。でもこれ……もう僕は食べたくない形になるから」

雪兎はわざとトマトを離し、床に落とした。

「ちょっとユキ様、それは流石に……」

注意しようとした瞬間、プチッとトマトが踏み潰される。赤い汁が雪兎の足の指の隙間から溢れた。

「僕はもう食べたくないから君にあげるよ。トマト、お食べ」

ウェットティッシュで拭いていたのはこのためだったのか。多少拭いた程度では、並の人間なら絶対に食べたりしないだろうけど。

「……いただきます」

俺はまた思考よりも先に身体が跪いており、俺の舌は自然と雪兎の足へと向かった。
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