ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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お盆

みっかめ、さん

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朝食の食器を部屋の外に出し、シャツとスラックス姿の雪風の腰を抱いてベッドになだれ込む。気を付けつつ乱暴を装って雪風の興奮を煽り、仰向けになった彼に裸体を見せつけるようにバスローブを脱ぎ捨てた。

「ま、真尋……」

「どうせならネクタイとジャケットも欲しかったな」

ぎし、とベッドが軋む。雪風に跨り、体重をかけないように膝立ちのまま彼の頬を指で撫でる。

「真尋ぉ、あのさ……雪兎は多分、俺がお前を責めまくんの想定して俺に任せたと思うんだよ。イラマしたり、乳首でイかせまくったりさ。いや、俺はこの展開すごく嬉しいんだけどさぁ、その……雪兎は嫌がるんじゃないかなーって……」

経験人数四桁を自称し自慢している癖に緊張して多弁になるなんて随分ウブな反応を見せてくれるじゃないか、貞操帯がなければ勃起していたぞ。金属に締められている陰茎がめちゃくちゃ痛いぞ。

「だからさぁ、今からでも俺が上になるっていうのは……わっ!?」

両手を勢いよく雪風の顔のすぐ隣についてやった。決してそういった感情はないのだが、雪風が喜びそうなので怒っているふうの無表情を作って顔を近付けた。

「雪兎雪兎って、息子大好きだな、いいことだ。俺も雪兎が大好きだ、気が合うな。でもな雪風、ここに雪兎は居ないんだよ」

「はい……真尋だけ見ますぅ……」

「ん、よろしい」

唇を重ね、念入りにキスをする。まず唇を唇ではむはむと噛み、侵入させた舌で口腔をぐるんと一撫で、上顎を舌先でくすぐり、歯茎の裏まで舐めていない部分をなくしてやり、舌を絡ませ合い、舌を吸ってやり、吸った舌を甘噛みして弄び──三十分以上の時間をかけて丹念に蕩かしてやった。

「んっ、ん……は、ぁっ…………真尋ぉ、マジかよお前……も、舌疲れた」

「鳴くだけなんだから舌いらねぇよ」

一つずつ丁寧にシャツのボタンを脱がし、肌着の上から身体を撫で回す。筋肉の付き方を確かめるように、いや、実際に確かめていく。

「そういうのいいからさっさと性感帯弄れよぉ」

「全身性感帯なんだろ?」

「うーん……まぁ……そうだけどさぁ」

臍の周りをぐるりと撫でて、軽く押して腹筋の反応を確かめて、腰の厚み骨盤の硬さを覚えて、胸へと上がったら肋骨の本数を数えてみる。

「……たとえば、俺が不慮の事故や雪兎のボディガードをしてる最中に目が潰れたとする」

「演技でもねぇこと言うなよ」

肋骨と腹の境目を探り、胸の中心を辿り、鎖骨へと至る。鎖骨をなぞって肩へと、肩から腋へと移り、胸の側面を撫で摩る。

「ついでに耳も聞こえなくなったとする。でも、手は……まぁ、片方だけでもいいけど、手は残ってるとする」

「傍で爆発でもあったのかって重症だな」

「そんな時……俺は雪風をどう判別する? 手探りしかないだろ。雪風が自分を教える手段を考える前に、俺は雪風を見つけ出す」

これまで撫で、確認し、記憶した胴の各所をもう一度順番に愛撫していく。

「雪風の脂肪の付き方はこうだった……雪風の筋肉はどう押すとどう反応した……雪風の骨格はこうだった……雪風の肌の触り心地はこうだった…………俺は雪風を見つけてみせる」

「何を想定してんだよぉ……」

「想定じゃない、気概だよ。俺は雪風の全てを知りたい」

指を絡ませる俗に言う恋人繋ぎをしてみる。ぎゅっと握った後、雪風に本気で握れと伝える。

「……雪風の握力も知った、覚えた」

「んなもん知ってどうすんだよ」

「好きな相手のことは何でも知りたい。指の長さ太さ手の厚み、握り方の癖もあるから同じ握力だって測定された男の手と区別も出来る」

「他の男と手繋ぐことねぇだろ」

随分とリアリストな思考じゃないか。そんな恋人を持った気はない、俺の長さ太さ硬さ熱さを教えて俺の考えを理解してもらう必要が──っと、貞操帯のせいで勃たないんだったな。
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