ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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郊外の一軒家

しょじょがえり、はち

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手の甲と肘が触れ合う位置まで腕を後ろに回し、そこから腕が動かせないように麻縄で縛られる。

「縄はちゃんとなめしてあるから摩擦で肌が剥けちゃう心配はないよ」

二の腕ごと胸の上下に縄を通され、ぎゅっと締め付けられる。ある程度のものを持つ女なら乳房が強調されて淫猥な光景になるだろうが、男の俺ではいくら筋肉量が多くともさほど強調されることはない。

「上半身はこれでいいかな。どう? 久しぶりの緊縛は」

ほどよくくい込んだ縄が気持ちいい。

「ぁ……えっ、と」

しゅるしゅると縄の音。縄を操る雪兎の手が俺の身体に直接は触れず俺の身体の周りをすいすい移動する様子。腕と胸だけとはいえ久しぶりに縄に身体を締め付けられる感覚。
赤い麻縄を見るだけで発情するよう躾られた俺には、それらはあまりにも刺激が強く、早々に緊縛の快感に堕ちて頭がぼうっとしてしまっていた。雪兎の質問は聞こえていたけれど、頭の回転が遅くなっていて返事がすぐに出来なかった。

「なぁに? もうトリップしちゃった? ふふっ、可愛いなぁ……まだ吊ってないよ? お薬も入れてないのにこんなとろっとろしちゃって大丈夫?」

「……きもち、いいです」

雪兎は笑顔を浮かべ、天井のフックに縄を引っ掛けたりもしつつ俺に左足を上げさせた。左太腿の真ん中をぎゅっと縛られ、また縄が天井のフックに引っ掛けられる。

「えいっ……!」

片足だけのM字開脚もどきの中途半端な羞恥心に身を生焼けにされていると、雪兎が自身の両手に縄を巻き付けて綱引きをするように身体を倒しながら縄を引っ張った。

「ぅ、あっ……!?」

てこ、じゃなくて、滑車の原理? いや、滑車なんてどこにもない。無学な俺には分からないけれど、何らかの力が働いて雪兎の細腕で俺の身体が吊り上げられた。と言っても、右足の爪先がギリギリ床に届くかどうか……といった具合だが。

「ふぅっ……手、痛くなっちゃった」

吊られた身体では上手く振り向けないため、俺の背後に縄を引っ張っていった雪兎が縄をどうやったのかは分からないが、おそらくどこかに結んだのだろう、雪兎の手にはもう縄は握られていなかった。

「……我ながら上手く吊れたね」

フックも縄もしっかりしている。右足を曲げても身体が完全に吊り上がるだけで、度が過ぎる苦痛が起こったりバランスを崩して逆さ吊りになるなんてことはないだろう。分かっていても右足を床から離せない、地面から離れるのには本能的な恐怖がある。

「緊縛でちゃんと気持ちよくするなら亀甲縛りを変形させて吊る方が全身満遍なく締め付けられて気持ちいいよね? ごめんね、そういうのはまた今度ね」

「は……い。これ……じゅーぶん、気持ち、いい……です」

「そう? ならよかった。ただお尻拡げやすいように吊っただけなのに、そんなにとろっとろになられても困るってのはあるけど……可愛いからいいや。お注射するよ」

「……媚薬、ですか?」

確認しなくても吐息が熱いのが分かる。縄を着せられた快感で呼吸が浅くなっている。

「媚薬は後で塗るよ」

注射器で薬液を体内に入れられた。雪兎が刺してくれたからかどんな薬なのかよく分かっていないのに不安感はなく、玩具やローションを用意する雪兎を眺めながら薬が効いてくるのを待った。

「……? ユキ様? 身体……動かない、れす」

「そういうお薬だよ。筋肉を無理矢理脱力させるの。お尻、締められちゃったらやりにくいからね」

脱力してもしなくても俺の重たい身体を好き勝手にするのは雪兎には難しいだろう。だから吊るしたのだなと納得し、緊縛と投薬で身動きを封じられた身体を開発されることに改めて興奮した。
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