ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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郊外の一軒家

しょじょがえり、じゅういち

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頬に押し付けられている乗馬用の黒い鞭。よくしなるそれは人間とは皮膚の分厚さが違う丈夫な生物の尻を叩くために存在している……はずだ。

「大好きだよポチ……薬効いてくるまでいっぱい叩いてあげる。嬉しい?」

馬はこれで叩かれても傷にはならない、痛みは……どうなんだろう、馬じゃないから分からない。少なくとも、皮膚が裂けることもある人間ほどの痛みは感じないだろう。そう、裂けるのだ、人間の薄い皮膚は裂ける、雪兎の加減次第で俺はズタズタの血まみれに──!

「ぁうっ……!」

どぴゅ、と吹き出た白濁液が雪兎の服にかかる。

「…………は? えっ、なんで? 今なんで出たの? 僕……まだ叩いてないよ?」

「そ、想像……して、たら」

「想像だけで触ってもないのに出ちゃうの?」

「……はい」

「ふぅん……? ねぇ、どんな想像してたか僕に教えて?」

鞭の先端の平たい部分が頬から首へ、鎖骨へ胸へ、脇腹へ腰へ……足の付け根へ、陰茎の生え際へ。
射精したばかりの陰茎を叩かれたらどうしようと興奮が募り、またむくむくと起き上がる。

「そっ、その、鞭で叩いたら……人間の皮膚なんて、簡単に裂けるだろうなって……ユキ様に、血まみれにされたいって、俺の返り血浴びたユキ様の笑顔が見たいって……きっと、すごく綺麗です。ユキ様赤似合うから、それも俺で汚れてだなんて! あぁっ……ダメ、ダメ、またイきそぉ……!」

「……思ったより猟奇的で怖い。僕そんなことしないよ」

「分かってます、分かってますけどぉっ!」

「まぁ、ポチがそういう猟奇的な感じなのが好きなら今度やってあげる。血糊とか偽物のナイフとかも使おうか、どう? そういう偽物でいい?」

「幸せです!」

「返事が変だけど……肯定ってことだよね? OK、血糊注文しておく。ハロウィン近いから絶対売ってるよ」

それはそれとして服を汚したお仕置きをしなければ、と呟きながら雪兎は鞭を振り上げる。息を飲む間もなく太腿に激痛が走った。縛られて持ち上げさせられている方ではなく、床を踏んでいる方の足だ。痛みのあまり膝が曲がって身体を完全に浮かせてしまい、着せられた縄に体重がかかり、ギシッと身体が軋んだ。

「あっあぁああっ!? あっ、ゔっ! ふっ……ふぅっ、ぅううっ、ふぅーっ……!」

「ふふ、痛そ……全然息整わないね、痛いんだね、可愛いよ」

雪兎は恍惚とした笑みを浮かべ、叩いたばかりの皮膚を優しく撫でる。皮膚の深層、いや更に下の肉まで届いた衝撃は未だ新鮮に残っており、白い指先に触れられる度ズキズキと痛んだ。

「ポチの痛い顔大好きだよ。目、見開いてから叫んで、叫び終わったら目細めて、泣きながら口開けて息してるの……身体もビクビクしたりして、とっても可愛い」

「……っ、あ、ぁ、ゆきさま、ユキさまぁ……もっと、もっと」

にっこりと微笑んだ雪兎に脇腹を打たれ、悦びを多分に含んだ悲鳴を上げる。普段なら仰け反っていただろうに、今俺の筋肉は投薬によって脱力している。痛んだ箇所に力を込めて誤魔化すことも、そこを庇うように体重のかけ方を変えることも、ままならない。

「ひぁああああんっ! い、たっ、ぁあぁ……痛い、いた……ぁあ……きもち、ぃ……」

「イイ声……ゾクゾクしちゃう。痛いだけじゃなくて、気持ちよさそうな感じもあるよね、顔も声も。ソフトSの僕に優しい分かりやすくてありがたいよ」

ソフト……? ドSの間違いでは?

「痛いからってここ萎えさせないのも高ポイントだよ、ポチ」

鞭の先端がぺちっぺちっと亀頭を叩く。

「あっ、ぁんっ、ユキ様っ、そこ、そこ強くっ、もっと強く叩いてくださいぃっ!」

「んー……弱めだよ?」

言いながら雪兎は俺の精液を浴びない位置に移動し、鞭を下から上へと振って俺の陰嚢を叩き上げた。

「いっ……ぎゃぁああぁああああぁーっ!? ぁ、あっ? とっ、取れ……なっ……死……」

「取れてないし、なくなってないし、死なないよ。すごい声だったねぇ……シンプルに悲鳴だったよ、ふふ……可愛かった。精液もすっごく飛んだね、最高記録じゃない? いつも測っておけばよかったかも」

陰嚢を叩かれた瞬間に射精していたようで、かなり離れたところの床に白い液体が見えた。あんなところまで飛んだのか……

「加減は完璧なつもりだけど、どうしようねぇ子供作れなくなってたら」

「ち、がっ……ちが……ここ、じゃ……な……」

「ん? ここじゃない? あぁ、ポチが叩いて欲しかったのはこっちだっけ?」

鞭の先端が亀頭に触れる。

「そっ、そう、です……そこ、そこなのに……なんで」

「……ご主人様が犬の言うこと聞くの? 違うでしょ?」

猟奇的な妄想を叶える約束をしてくれたから無意識下で勘違いしてしまっていたようだ。それを正された俺は犬の本能が疼いたのか、気付けば「わん」と下手くそな鳴き真似をして媚びていた。
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