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郊外の一軒家
すりっぷ、はち
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本屋で乳首を弄る自慰に耽っていたことを咎められ、苛烈なお仕置きをされる妄想をして身悶えする。
「これ、車に乗せておいて。お願いね」
注文していたらしい本と、新しく見つけた本、それらを詰めた紙袋を使用人に渡すと、雪兎は俺の手を握った。
「ポチが読むのって漫画だけじゃないよね?」
「小説は好きですが、学術書などは読みませんよ。辞書や図鑑は読みますが……難しい本はどうも苦手で」
「……大学の講義とか、色んなニュースとか、学生同士の会話でもさ、昔の有名な文学引用すること多いんだよね。特にシェイクスピア作品とマザーグース……僕分かんなくてさ」
「それはそれは……ギリシャ語の本を読んでる気分になっちゃいますね」
手を繋いだまま街を歩く。電柱と電線のない景色はどこか不思議に感じる。雪兎との雑談も散歩も楽しいものだけれど、お仕置きをしてもらえると思い込んだ身体の熱を早く発散したくて、この時間を真に楽しめない。
「ポチ、教えてくれない? 本注文したから──」
「はぁ……では、リア王から」
「──帰ったら一緒に読……えっ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
俺が読んだのは日本語に訳されたものだがと前置きをし、少々の恥ずかしさを覚えつつ呟き始めるも、すぐに止められた。
「……? ハムレットにします? マクベス?」
「帰ったら一緒に読もうってば。どうせならあらすじとかじゃなくてちゃんと読みたいよ」
「暗記してますが……」
「…………あぁそう。でも一緒に読みたいから、今はいいよ」
「俺英語読めませんよ。あ、俺が読んだヤツとユキ様の翻訳の違いを比べてみましょうか!」
楽しそうな提案が出来たと手応えがあったのだが、雪兎には響かなかったようで反応は鈍かった。
雪兎は服屋やCDショップなどには興味を示さず、俺がカラオケやボーリング場などを見つけて「大学生はこういうところで遊ぶものでは?」と言っても「ふぅん……」と素っ気ない返事をした。
「だいたい一周したかな。他は住宅地だし……そろそろ帰ろっか! お散歩楽しかったね」
本屋にしか行かず、ただ歩いていただけなのに、本当に楽しかったのだろうか。俺はもっと雪兎を楽しませなければならなかったのではないだろうか。なんて悩みを抱えたまま俺はまた怯えながら車に揺られた。
「ふぅ……本読もうかなぁ、それとも……本屋で、それも僕のデート中に、一人でいけないことしてた変態犬の躾け直しをしようかなぁ」
ジリジリと迫ってくる雪兎の赤紫の瞳に射抜かれた俺は膝から崩れ落ち、震える声でワンと鳴いた。
「……同時進行、かな。ポチ、着物だけ脱いでこっち来て」
そう呟くと雪兎は拘束具や玩具などを取り出し、姿見の前に向かった。俺はすぐに帯をほどいて着流しを脱ぎ、畳み、女性用下着と首輪だけを身に付けて雪兎の元に向かった。
「ポチと読みたいのはストーリーのある本で、他の学術書とかは一人で読むから、ポチにはその間一人で楽しんでて欲しいんだ。本屋でもしてたんだから、いいよね?」
「……っ、は、はい」
雪兎の手にある雪兎の陰茎を模して作られたディルドを見つめ、下腹を疼かせながら答えた。
「ピストンにしたらポチ簡単にイっちゃうから、振動とスイングだけの設定にしておくね。はい、入れて」
「……はいっ」
ローションを活用し、ディルドを疼いている後孔へと入れていく。飢えた穴は簡単にディルドを飲み込み、快感に震えた。
「あっ、ぁああっ……! ユキ様の形……はぁっ、ぁあ……本物が、欲しいですっ」
「奥まで入った? 下着ちゃんと履いてる? OK、じゃあ拘束具付けるよ」
Tバックの下着なんてあってないようなものだ、脱がなくてもディルドを入れられる。雪兎に何も言われていないからと脱がずにいたのは正解だったようだ。
「正座して」
「はい……あの、ディルド固定しなくていいんですか?」
俺を正座させた雪兎は俺の右手首と右足首、左手首と左足首をそれぞれ縛り、手を動かすことと立ち上がることだけを禁止した。後孔の締め付けが緩んだり強まったりしてディルドが抜けることへの対策はなされていない。
「うん、今回は別に抜けてもいいかなって。ずっと気持ちいいのが欲しかったらポチが頑張ればいいだけだもん。足の親指とかで押さえられるでしょ?」
「……多分」
「ふふっ、じゃあタイマー……二時間でいいかな」
時間はスマホだとかで測るのだろうと思っていたが、予想外にも雪兎は姿見の横にあったらしいボタンを弄った。鏡に黄緑に光る数字が表示され、近未来的な光景に息を飲んだ。
「講義の集中度合いとかを測る目的で昔に開発された技術を応用してもらって、この鏡を作ってもらったんだ」
「はぁ……鏡にタイマー機能が必要とは思えませんが」
「この鏡のタイマーが減るのはポチが鏡を見ている間だけ。視線を感知するシステムがあるから、目逸らしたら二時間経っても二時間測れない。ポチ専用の鏡なんだ! すごいでしょ」
鞭打ちも緊縛も蝋燭も好きな俺が、唯一心の底から嫌な責め苦がこの「鏡で自分を見させられるプレイ」だ。この世で一番美しい雪兎の顔だけを見ていたいのに、少しも美しいと思えない自分の乱れる姿を見なければならないなんて、地獄だ。
「僕が本読み終わるまでに二時間経たせてね、ポチ」
「……はい」
だが、雪兎によって地獄に落とされるのは、悪くない。
「これ、車に乗せておいて。お願いね」
注文していたらしい本と、新しく見つけた本、それらを詰めた紙袋を使用人に渡すと、雪兎は俺の手を握った。
「ポチが読むのって漫画だけじゃないよね?」
「小説は好きですが、学術書などは読みませんよ。辞書や図鑑は読みますが……難しい本はどうも苦手で」
「……大学の講義とか、色んなニュースとか、学生同士の会話でもさ、昔の有名な文学引用すること多いんだよね。特にシェイクスピア作品とマザーグース……僕分かんなくてさ」
「それはそれは……ギリシャ語の本を読んでる気分になっちゃいますね」
手を繋いだまま街を歩く。電柱と電線のない景色はどこか不思議に感じる。雪兎との雑談も散歩も楽しいものだけれど、お仕置きをしてもらえると思い込んだ身体の熱を早く発散したくて、この時間を真に楽しめない。
「ポチ、教えてくれない? 本注文したから──」
「はぁ……では、リア王から」
「──帰ったら一緒に読……えっ、ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
俺が読んだのは日本語に訳されたものだがと前置きをし、少々の恥ずかしさを覚えつつ呟き始めるも、すぐに止められた。
「……? ハムレットにします? マクベス?」
「帰ったら一緒に読もうってば。どうせならあらすじとかじゃなくてちゃんと読みたいよ」
「暗記してますが……」
「…………あぁそう。でも一緒に読みたいから、今はいいよ」
「俺英語読めませんよ。あ、俺が読んだヤツとユキ様の翻訳の違いを比べてみましょうか!」
楽しそうな提案が出来たと手応えがあったのだが、雪兎には響かなかったようで反応は鈍かった。
雪兎は服屋やCDショップなどには興味を示さず、俺がカラオケやボーリング場などを見つけて「大学生はこういうところで遊ぶものでは?」と言っても「ふぅん……」と素っ気ない返事をした。
「だいたい一周したかな。他は住宅地だし……そろそろ帰ろっか! お散歩楽しかったね」
本屋にしか行かず、ただ歩いていただけなのに、本当に楽しかったのだろうか。俺はもっと雪兎を楽しませなければならなかったのではないだろうか。なんて悩みを抱えたまま俺はまた怯えながら車に揺られた。
「ふぅ……本読もうかなぁ、それとも……本屋で、それも僕のデート中に、一人でいけないことしてた変態犬の躾け直しをしようかなぁ」
ジリジリと迫ってくる雪兎の赤紫の瞳に射抜かれた俺は膝から崩れ落ち、震える声でワンと鳴いた。
「……同時進行、かな。ポチ、着物だけ脱いでこっち来て」
そう呟くと雪兎は拘束具や玩具などを取り出し、姿見の前に向かった。俺はすぐに帯をほどいて着流しを脱ぎ、畳み、女性用下着と首輪だけを身に付けて雪兎の元に向かった。
「ポチと読みたいのはストーリーのある本で、他の学術書とかは一人で読むから、ポチにはその間一人で楽しんでて欲しいんだ。本屋でもしてたんだから、いいよね?」
「……っ、は、はい」
雪兎の手にある雪兎の陰茎を模して作られたディルドを見つめ、下腹を疼かせながら答えた。
「ピストンにしたらポチ簡単にイっちゃうから、振動とスイングだけの設定にしておくね。はい、入れて」
「……はいっ」
ローションを活用し、ディルドを疼いている後孔へと入れていく。飢えた穴は簡単にディルドを飲み込み、快感に震えた。
「あっ、ぁああっ……! ユキ様の形……はぁっ、ぁあ……本物が、欲しいですっ」
「奥まで入った? 下着ちゃんと履いてる? OK、じゃあ拘束具付けるよ」
Tバックの下着なんてあってないようなものだ、脱がなくてもディルドを入れられる。雪兎に何も言われていないからと脱がずにいたのは正解だったようだ。
「正座して」
「はい……あの、ディルド固定しなくていいんですか?」
俺を正座させた雪兎は俺の右手首と右足首、左手首と左足首をそれぞれ縛り、手を動かすことと立ち上がることだけを禁止した。後孔の締め付けが緩んだり強まったりしてディルドが抜けることへの対策はなされていない。
「うん、今回は別に抜けてもいいかなって。ずっと気持ちいいのが欲しかったらポチが頑張ればいいだけだもん。足の親指とかで押さえられるでしょ?」
「……多分」
「ふふっ、じゃあタイマー……二時間でいいかな」
時間はスマホだとかで測るのだろうと思っていたが、予想外にも雪兎は姿見の横にあったらしいボタンを弄った。鏡に黄緑に光る数字が表示され、近未来的な光景に息を飲んだ。
「講義の集中度合いとかを測る目的で昔に開発された技術を応用してもらって、この鏡を作ってもらったんだ」
「はぁ……鏡にタイマー機能が必要とは思えませんが」
「この鏡のタイマーが減るのはポチが鏡を見ている間だけ。視線を感知するシステムがあるから、目逸らしたら二時間経っても二時間測れない。ポチ専用の鏡なんだ! すごいでしょ」
鞭打ちも緊縛も蝋燭も好きな俺が、唯一心の底から嫌な責め苦がこの「鏡で自分を見させられるプレイ」だ。この世で一番美しい雪兎の顔だけを見ていたいのに、少しも美しいと思えない自分の乱れる姿を見なければならないなんて、地獄だ。
「僕が本読み終わるまでに二時間経たせてね、ポチ」
「……はい」
だが、雪兎によって地獄に落とされるのは、悪くない。
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