ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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郊外の一軒家

すりっぷ、なな

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寂れた本屋の中、本棚を眺める雪兎を見つめる。知的好奇心に満ちた赤紫の瞳は質の悪い電灯の下でも美しく輝いている。

「あ、これ知らない……んー、内容古いなぁ」

本屋には他に客は居らず、店主はレジでお菓子の箱に載った内容物表を眺めているだけだ。今のところ雪兎に危険が及ぶ可能性はない。英語なんて読めない俺は退屈だ、雪兎を見ていても目と脳しか働かない。手足が暇だ。

「…………ん」

手慰みの物を探すも、周囲にあるのは本ばかり。開いても読めないし、読む以外で本に触れたくない。となれば触れるものは自分の身体くらいのもの──なんて言い訳をしながら胸を撫でた。

「あっ、これアレの参考文献……そういえば読んでなかったなぁ。読んでおかないと」

着流しとスリップ越しの胸は雪兎とは比べ物にならないほど厚い。雪兎が本に集中しているのを確認しつつ、着流しの中に手をそっと入れ、スリップの上から左胸を鷲掴みにした。

「んぁっ……!」

掴まれた──と言っても掴んだのは自分なのだが、胸にしてみれば掴まれた快感だ。掴まれた快感は声を上げるほどではなかったが、乳首を手のひらが擦った誤算の刺激が俺に声を出させた。

「ポチ?」

すぐに着流しから手を抜き、平静を装う。

「なんか言った?」

「い、いえ……何も」

「そう? なんかえっちな声聞こえた気がするんだけどなぁ……今日は何も玩具使ってないもんね?」

「はい……気のせい。ぁ、咳払いですかね? さっきしました、んんっ……これですよね」

「んー、それもえっちだけど、不本意えっちじゃなくて、本意えっちな声だった気が……まぁいいや」

咳払いや運動後の荒い呼吸など、性に直接関係はないが他者からは性的に感じてしまうのが「不本意えっち」なのか? 雪兎の造語かな。

「……………………んっ」

俺は雪兎に気付かれずに自慰未満の行為をするのにハマってしまったようで、その後も棚から棚へとゆっくりと移動していく雪兎を追いながら自分の胸を揉み続けた。

「はぁっ、ん……」

女性用下着を身に付けている変態、本屋で自慰に耽る変態、主人にバレないかというスリルを楽しむ変態、羞恥心を利用した興奮を悦ぶ自分を「変態め」と罵りながら、乳輪をくすぐる。

「ふぅっ、ふぅっ、ふぅうっ……!」

シースルーの薄く滑らかな生地の感触がまたイイ。肌が受ける刺激を増やしてくれる。レース部分はほんの少し裏面がザラついているのもイイ、ここが当たるように乳首をつまんだらどうなるのだろう? 声を上げてしまうだろうか、雪兎にバレてしまうだろうか、本屋から追い出されてしまうだろうか──あぁ、やるべきではないと分かっているのに、指が止まらない。

「……っ、くぅっ……!」

何とか声は小さく押さえられた。親指と人差し指で思い切りつまんだ乳首は気持ちいい、痛くて気持ちいい、快感が胸にビリビリと広がっていく。このまま乳首をこねたらもっと気持ちいいんじゃないか? 思い付いてしまったらもう止まらない。

「はぁっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

口を開けたまま荒く呼吸する俺の視線はいつしか自分の胸へと移っていて、ビンと尖った乳首が無骨な指に形が歪むほど強くつままれ、ねじられる痛そうな最後まで見た。電流が走るような快感に思わず目を閉じ、背を反らして上を向いた。

「………………ポチ?」

「……っ!?」

右乳首だけで絶頂を迎えた達成感と快楽の余韻に浸っていると、すぐ傍で雪兎の声が聞こえた。雪兎はいつの間にか俺の目と鼻の先に立っていた。

「へぇー、ポチったら僕とのデート中にそんなことするんだ、そんなに欲求不満だったんだぁ……」

「すっ、すいませんユキ様っ、俺、俺っ」

「本屋退屈だった? ポチ読書家だけど英語読めないもんね。買う本決まったし、注文してたのと一緒に袋入れてもらったし、もう出よっか」

「は、はい……」

怒られなかった? いや、後だ。この後きっとお仕置きされる。挟む部分がギザギザになったクリップを乳首に──いや、あえて胸は放置して陰茎を平手打ちとか──いやいや、ここはやはり尻に鞭を…………想像しているだけで絶頂してしまいそうだ。
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