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一章 幽世へ
十六話 穂高
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城の中に入ると、翡翠は穂高に美桜を預け、
「美桜、部屋へは穂高が案内する。また後で」
と言って去って行った。取り残された美桜は、隣に立つ穂高に目を向けた。
「あ、あの……よろしくお願いします」
軽く会釈をしたら、穂高はちらりと美桜を見て、
「桜の間が空いている。そちらへ連れて行く」
と無愛想な様子で歩き出した。
(歓迎されていない……ような……)
全身から拒絶のオーラを出している穂高にそれ以上声をかけることができず、美桜はおとなしく穂高の後について行った。
赤い絨毯が敷かれた廊下を、無言のまま、歩く。途中で、真っ白の着物に赤い帯、前掛けをした少女と出会った。長い黒髪を背中で一つにくくった、大人っぽい雰囲気の少女だ。穂高に連れられた美桜を見て、きょとんとしている。
「穂高様、その方はどなたですか? このような時間にお客様ですか?」
少女が不思議そうに尋ねると、穂高は、
「現世から翡翠様が連れて来た婚約者だそうだ」
と答えた。
「えっ、婚約者?」
少女が口元に手をあて、驚きの声を上げる。美桜をじろじろと眺め、
「翡翠様の婚約者とは、どういうことなのですか?」
と、首を傾げた。
「俺にもさっぱり分からない。しかし、翡翠様には丁重に扱うように言われている。それから、軽食と風呂を用意するように、とも。早雪、厨房に伝えてくれ。それから、風呂の準備を頼む」
穂高の言葉に、早雪と呼ばれた少女は「かしこまりました」と頷いた。
「桜の間に通す」
「入浴の用意をしてから、お迎えに参ります。婚約者様」
早雪はにこりともしなかったが、丁寧に頭を下げた。
「あ……はい。すみません」
美桜も慌てて頭を下げる。
早雪が去って行くと、美桜は穂高に、
「あの、す、すみません。穂高、さん」
遠慮がちに声をかけた。穂高は一瞬、不機嫌そうに眉を上げたが、ぶっきらぼうに、
「何だ?」
と問いかけた。
「先程の方は……」
「ああ、早雪のことか? 翡翠様に仕えている女中だ」
「女中さん……」
このように広い城なのだから、女中ぐらいいても当然なのかもしれないと、美桜は納得をした。無愛想ながらも穂高が返事をしてくれたことにほっとして、
「で、では、穂高さんは?」
と、さらに尋ねてみると、
「俺は蒼天城の一切を取り仕切っている使用人頭だ」
との答えが返ってきて驚いた。
(穂高さん、偉い人だったんだ)
こんなに大きな城を管理しているなんて、大変な仕事に違いない。感心していると、穂高が足を止めてくるりと美桜を振り返り、
「正直に言っておく。俺は人間が嫌いだ」
と真顔で言った。あまりにもはっきりした物言いに、美桜は面食らった。
「人間は残酷で自分勝手だ。だが、翡翠様は、あなたを丁重に扱えとおっしゃった。翡翠様が、なぜ、あなたを婚約者扱いするのかは分からないが、翡翠様のご命令には従う」
言うだけ言うと、穂高は再び背を向け、歩き出した。突然向けられた敵意に美桜は呆然としていたが、穂高との距離が開いていくことに気がつき、慌てて、その後を追った。
「美桜、部屋へは穂高が案内する。また後で」
と言って去って行った。取り残された美桜は、隣に立つ穂高に目を向けた。
「あ、あの……よろしくお願いします」
軽く会釈をしたら、穂高はちらりと美桜を見て、
「桜の間が空いている。そちらへ連れて行く」
と無愛想な様子で歩き出した。
(歓迎されていない……ような……)
全身から拒絶のオーラを出している穂高にそれ以上声をかけることができず、美桜はおとなしく穂高の後について行った。
赤い絨毯が敷かれた廊下を、無言のまま、歩く。途中で、真っ白の着物に赤い帯、前掛けをした少女と出会った。長い黒髪を背中で一つにくくった、大人っぽい雰囲気の少女だ。穂高に連れられた美桜を見て、きょとんとしている。
「穂高様、その方はどなたですか? このような時間にお客様ですか?」
少女が不思議そうに尋ねると、穂高は、
「現世から翡翠様が連れて来た婚約者だそうだ」
と答えた。
「えっ、婚約者?」
少女が口元に手をあて、驚きの声を上げる。美桜をじろじろと眺め、
「翡翠様の婚約者とは、どういうことなのですか?」
と、首を傾げた。
「俺にもさっぱり分からない。しかし、翡翠様には丁重に扱うように言われている。それから、軽食と風呂を用意するように、とも。早雪、厨房に伝えてくれ。それから、風呂の準備を頼む」
穂高の言葉に、早雪と呼ばれた少女は「かしこまりました」と頷いた。
「桜の間に通す」
「入浴の用意をしてから、お迎えに参ります。婚約者様」
早雪はにこりともしなかったが、丁寧に頭を下げた。
「あ……はい。すみません」
美桜も慌てて頭を下げる。
早雪が去って行くと、美桜は穂高に、
「あの、す、すみません。穂高、さん」
遠慮がちに声をかけた。穂高は一瞬、不機嫌そうに眉を上げたが、ぶっきらぼうに、
「何だ?」
と問いかけた。
「先程の方は……」
「ああ、早雪のことか? 翡翠様に仕えている女中だ」
「女中さん……」
このように広い城なのだから、女中ぐらいいても当然なのかもしれないと、美桜は納得をした。無愛想ながらも穂高が返事をしてくれたことにほっとして、
「で、では、穂高さんは?」
と、さらに尋ねてみると、
「俺は蒼天城の一切を取り仕切っている使用人頭だ」
との答えが返ってきて驚いた。
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こんなに大きな城を管理しているなんて、大変な仕事に違いない。感心していると、穂高が足を止めてくるりと美桜を振り返り、
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と真顔で言った。あまりにもはっきりした物言いに、美桜は面食らった。
「人間は残酷で自分勝手だ。だが、翡翠様は、あなたを丁重に扱えとおっしゃった。翡翠様が、なぜ、あなたを婚約者扱いするのかは分からないが、翡翠様のご命令には従う」
言うだけ言うと、穂高は再び背を向け、歩き出した。突然向けられた敵意に美桜は呆然としていたが、穂高との距離が開いていくことに気がつき、慌てて、その後を追った。
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