13 / 22
第一章
第13話 友人はご乱心らしい
しおりを挟む教室に戻る途中、朝っぱらから見知らぬ男と変な応酬をしてやや脳の疲れを感じたが、それ以上に何やらダメージを負っていそうな旭に声を掛ける。
「なに辛気臭い顔してんの。思ってたより順位悪かったとか?」
「……4位だった」
「なら落ち込む要素なんてどこにあんのよ」
今までだって旭は4位以下をとったことはあるし、むしろ上位3位以内に入ることの方が稀だ。そんなときでもこのように気分を落とすことなくケロッとしていた。
なのに今回はどうしたというのか。4位なんて大健闘じゃないか。
順位表が貼られた掲示板から戻ってきて以降、溜め息と顰めっ面を繰り返すその意味がまったくわからない。
「……今回の手応え的にも4位あたりが妥当、ううん、思ってたよりも高かったくらい。だから別に順位に文句があるわけじゃないんだよ。ただ……ただね、ひとつだけ気に食わないことがあるっていうか…」
「気に食わないこと?」
「なんで…なんで雛鶴雫があたしより上位にいるんじゃボケェェェっ!! 無性に腹立つんだよクソが!!!」
なんだか知らんが旭がキャラ変した。
いや、趣味に関してテンションが爆上がりした時にこうして感情が爆発する場面は度々見かけたことはあったが、この修羅モードで感情が怒りの一色に染まるところは初めて見た。
本音を言うと正直めんどくさい。
めんどくさいがひとまず廊下は目立つので教室に引っ張り込む。
控えめに言っても旭を見るクラスメイトたちの視線がいろんな意味で痛いが、それらは今はまるっとスルーだ。
「……とりあえず落ち着けよ。ていうか雛鶴雫って誰?」
「今年から特進科に編入していきた女だよ。いいとこのお嬢様だか箱入り娘だか知らないけど脳内お花畑の世間知らず。おまけに暴走系自己中ときた。脳に生ゴミでも詰まってんのかってくらい発言はアホなのに勉強はできるとか解せんわっ!! あんな珍妙生物より順位が下とかありえないっつうの!!」
「ちょっと待って編入生の存在なんて初めて聞いたんだけど」
「まあクラス違うし? とにかく面倒でいけ好かない女だよ」
どうりで知らないわけだとひとり納得する。
昨年から同じ特進科棟でともに勉学に勤しんできた同級生ですら全員は把握していないのだから、今年からやってきてしかもクラスが違うとなれば知らないのも当然だ。
それよりも都としては、その雛鶴雫とやらが旭に相当毒づかれていることの方が気になる。
何をしたらここまで嫌悪されるのやら。
「その女のことめちゃくちゃ嫌うじゃん。そんなに嫌なヤツなわけ?」
「嫌なやつっていうか話通じなさすぎてだんだん腹立ってくる。どうせ同じ学科だしいつか話す機会があるかもしれないから気をつけなよ。たぶん都も苦手なタイプだと思うから」
「そいつのこと全く知らないのにすでに嫌いになりそうなんだけど」
旭の話を聞いた限りではその脳内お花畑の困ったちゃんはやんごとなき身分の人間らしい。できればお近づきにはなりたくない。
特進科にはそういった身分の生徒が複数人在籍しているが、都の知る限りでも面倒な人間しかいないのだ。
(そういうヤツらに限ってやたらと自尊心高いのが腹立つんだよ。権力振り翳してきても面倒だしな…)
旭は自堕落系頭のいい人間ではなく、地頭の良さにそれなりに日々勉強しているからこその頭の良さだ。多少なりとも勉学に関してはプライドを持っている。
だからこそ、珍妙生物とまで言わしめた人間に上にいかれるのが我慢ならないのだろう。
学力に対してプライドもクソもない都にとっては一生わからないことかもしれない。
(雛鶴雫か……自己防衛のためにも他の意見も参考にしたいところね。橘あたりに訊いてみるか。あいつも他人に興味ない人間だから大した収穫もないだろうけど)
回避したいからと言ってあまり探りすぎると遭遇フラグになりかねないのでほどほどにしておこう。
同学年、同学科の生徒と遭遇せずに済む確率が果たしてどのくらいあるのかは知らないが。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
俺が宝くじで10億円当選してから、幼馴染の様子がおかしい
沢尻夏芽
恋愛
自他共に認める陰キャ・真城健康(まき・けんこう)は、高校入学前に宝くじで10億円を当てた。
それを知る、陽キャ幼馴染の白駒綾菜(しらこま・あやな)はどうも最近……。
『様子がおかしい』
※誤字脱字、設定上のミス等があれば、ぜひ教えてください。
現時点で1話に繋がる話は全て書き切っています。
他サイトでも掲載中。
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
家から出ない女優の幼馴染を連れ出したら、いつの間にか伝説になっていた件。
Memu(メム)
恋愛
学校に行かない引きこもりの国民的女優――水宮小鞠。
女の子に間違われる地味男子――白雲凪。
俺に与えられた役目はひとつ。
彼女を、学校へ連れて行くこと。
騒動になれば退学。
体育祭までに通わせられなくても退学。
成功率ほぼゼロの無理ゲーだ。
距離は近い。
でも、心は遠い。
甘えてくるくせに、本音は隠す幼馴染。
それでも――
俺は彼女の手を引く。
退学リミット付き登校ミッションから始まる、
国民的スター幼馴染とのドタバタ青春ラブコメ、ここに開幕。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる