あの日の僕は誰?(「心の混沌を言語化する」プロジェクト)

ありを

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6.明るみに出ることのないある証明

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生活に「整理」ができている人はそれぞれに工夫を凝らしているようだ。

手帳や日記にきちんとこまめに記録をしたり、それが継続できるようにそれぞれの記載は簡略化してあったり、あるいはメモなどはとらない代わりに行動や日常に明快で単純なルールを作っていたり。

いわゆるの「整理」の悪い人は上のようなことをしない。

こまめは記録はもちろんしない。しなくても大丈夫と高を括っている。そして、案の定忘れる。

あるいは、「ルール化しているから」と言いながら、そのルールをしばしばその時の気分で変更する。おまけに、そのルールを忘れてしまう。

僕は明らかにこの「整理できない」方に入る。ただ、そろそろ改善しなくてはいけないとも思っている。取り返しのつかないことになる前に。日常のごくごく些細な笑い話で済んでいるうちに。


  ✿  ✿  ✿  ✿  ✿

  ✿  ✿  ✿  ✿  ✿


一昨年だったかその前だったかの夏

近所の銭湯がヘタなスパよりよほどいいことを知った

万事に熱しやすい僕はそうと知ると早速
夏の真っ盛り
家族とともに数日立て続けに行った

そうして、一、二週間を空けたある終末の連休
そろそろまたその銭湯に入りたくなった

「夜ご飯の後にまたあの銭湯に行こう」
家族と決めた日のその時間、僕は行く準備をしている


        ✿


タオルは持った
下着や靴下の替えもバックパックに入れた

石けん箱と小さなシャンプーボトルは
SサイズのZipLocに入れそのままにしてある

あとは…シェービングクリームと愛用の一枚刃剃刀だ

小分け容器のないクリームと剃刀は
ともにLサイズに入れたいのだが
さて前回使った袋はどこにやっただろう

捨てた記憶がない
捨てるわけもない
性格上どこかにとってある

それは間違いないはずだ
しかし石けんの入った袋のそばにはない


本の手前を雑貨の収納スペースとしている本棚の
よく使う三段くらいをざっと探すが見つからない

銭湯は23時まで
今は21時半だ

ぐずぐずしている暇はない
ケチる気持ちを抑えて
新しいLサイズをおろした



こんな風に出がけに少し慌てもしたが
その夜の銭湯もまたいい湯であった


        ✿


明けて翌日

前夜のうちに乾かしておいたLサイズのZipLocを
底の方から畳んでいき
空気を抜いて細長くし
最後は折り目が付かない程度に軽く半分に折った


これを今度はなくならないようにと本棚を見渡して…

分類の難しい細々したものを入れてある
径10センチほどのミニチュア手桶に目をつけた

「ここだな」

ここならなくならないだろう
そうピンと来た

あまり人には自慢しないが僕のこういう直感は当たる

だから今回も自信を持って
畳んだLサイズビニール差し込んだ

…すると中に何かあって奥まですっと入らない

差し込みかけたLサイズビニールを抜いて
ミニチュア手桶を本棚から出し上から覗き込むと中が見えた

その見えたものを引き出した


いま射し込もうとしたのと同じように

丁寧に折られたLサイズのZipLocがもうひとつ

昨日もここにありましたというように

綺麗な折り目をつけて出てきた


        ✿


さきの「直感」がまさしく証明された瞬間だった

だが僕は大変謙虚でもあるので
この「直感力」を家族に自慢するのは止めておくことにした

     –––✧✧✧–––– ❖ ––––✦✦✦–––
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