17 / 33
酷く、惨めに、壊れて、それを愛だと言うならば
しおりを挟む
ホテルに戻る足取りは、自然と早歩きになる。
そして、部屋のドアを閉めた瞬間、自分が雌の顔になるのが嫌でも分かった。
乾いた喉に指をあて、俺は深く息を吐く。火照りが一生抜けない。熱の芯が体内にこもったままで、頬も耳も、きっと真っ赤だ。
なのに、部屋の中で待っていた颯は、真逆の空気を纏っていた。ベッドに腰かけ、脚を組み、スマホをいじるその姿は、どこまでも落ち着いていたから。
「……おかえり、侑成さん」
顔を上げた颯の声は、驚くほど穏やかだった。その目だけが、じっとこちらの様子を観察している。
「なんかスマホで操作できるみたいで、適当に触ってたんですけどどうでした?」
「……お前っ…」
呼吸を整えたいのに、身体が言うことを聞かない。自分のナカで息を潜めてるソレがいよいよ限界で……
「……てか塩野さん、部屋戻ってた」
「うん、聞こえてました。廊下で扉閉まる音、したから」
いつも通りの声。でもその瞳は、わずかに笑っていた。俺の“熱”に気づいていて、楽しんでいる。そんなふうに。
「なんか……ずっと変な感じで…暑い……」
俺は額に手をあて、逃げるように視線をそらす。向かいにいる颯が、あまりにも落ち着いているから、自分がどれだけ乱れているかが浮き彫りになるのが、恥ずかしいんだ。
「……俺だけ、変になってるみたいで」
「そうですよ?」
颯は言った。さらりと、当然のように。
その笑みが悪戯っぽくて、逆に俺を興奮させる。
颯がスマホをポケットに滑らせ、すっと立ち上がった。さっきまでの静けさから一転、まるでここからが本番だとでも言うような動作に喉仏が上下する。
「近くの薬局で買ってきました」
そう言って、手に持っていた小さな袋を乱雑にベッドへ放る。中から転がり出たのは……ペットシーツ。
「今日はあんまり汚せませんから」
無邪気なようでいて、ひどく現実的なその一言が、侑成の鼓動を一瞬止める。
「……だからって、そこまで」
「侑成さんが困らないようにって思っただけですよ」
何が“困らないように”だ。
困らせてる張本人はお前だろ……
これは逃げられない。それは分かっていた。分かっていたのに、颯の用意周到さが、改めて自分の立場を突きつけてくる。
颯はにこりと笑って、ベッドの縁に腰を下ろす。
「ねえ、こっち来てください」
すでにシナリオは、最初から颯の手の中だった。きっと今日ここに来た時からずっと。それが分かるからこそ、俺はほんの一瞬だけためらって、そして、静かに歩み寄るしかなかった。
「スーツ、脱いでください」
その声は穏やかだったが、命令のように聞こえて胸が高鳴る。
「……うん」
「汚れたら困りますからね」
妙に理にかなっているのが、また腹立たしい。
俺は、黙ってネクタイに手をかけた。
スルリとほどくその音すら、室内ではやけに大きく響く。
颯の視線が刺さる。どこか無邪気で、それでいて底が見えない。
ジャケットを脱ぎ、慎重に椅子の背に掛ける。
シャツのボタンに指をかけるたび、自分の仕草がゆっくりになっていくのが分かる。
見られている。全身を……まるで剥がされるように。
「……そんなに見んな」
「見ますよ、だって僕が脱がせてるようなもんだし」
肩までシャツを抜いた侑成は、思わず顔をそむける。
羞恥と、ほんの少しの高揚と。肌に触れる空気が妙に冷たく感じるのは、そのせいだった。
ベッドの上で片膝を立てた颯が、どこか満足そうに微笑む。
「やっぱりスーツ脱いでる侑成さん、色っぽいですね」
「何言ってんの……マジで…」
シャツを脱ぎ終え、ズボンのベルトを外して、下着一枚を残すのみとなった俺の手が止まった。
だが、その小さな迷いを打ち消すように、ベッドの上から颯の声が飛んだ。
「全部って言ってんじゃん」
トーンが変わっていた。ふだんは丁寧で、甘えるような声音のくせに。今は妙に乱暴で、押さえきれない欲が言葉の端に滲んでいた。
ああ、そういうとこが好きなんだよ……
腹の底でつぶやく。
そういうふうに、たまに口が悪くなって、言葉を投げてくる。理性も余裕もない、年相応の男らしい乱暴さ。
それが、嫌いじゃないどころか……むしろ……
少しだけ唇が綻んだ。見られていることも、命令されていることも、全部含めて。俺の中にある「恥ずかしい」が、「嫌」にはならなかった。
「分かってる……」
残った布一枚に指をかけた。その瞬間、空気の濃度が変わる。静かなのに、熱を孕んだ静寂。視線の先では、颯がごくりと喉を鳴らす気配がした。
猛獣めいた笑みが、俺に向けられて、そしてまた始まる……
硬めのマットレスの上……
俺だけが全裸にされて、四つん這いになって……
もう俺…どんどん颯に調教されていってる気がする……
「で?」
尻を撫でながら、一番肝心なトコは触らずに颯は続けた。
「どうでした?このローター」
「っ……やだ……もお…抜いて……」
颯はニコニコ笑って、俺からは見えない位置でそのスイッチをオンにした。
「ぁ゛⁉︎ぁあっ゛………ぃ゛あ゛♡♡♡ん゛ぅ゛……」
しーっ…と颯の指が俺の唇に当てられて、ぬるっと口内を愛撫する。
「塩野さんに、侑成さんのダメなトコロ見られてませんか?ちゃんと我慢できましたか?」
「っ゛…ふ……ぅ゛……」
「こんなに小さいのでグズグズになっちゃうなんて、侑成さんのココはほんっとに弱いよね」
「……う゛♡、、、ぁ゛…」
腹ん中に滞っていた異物感が少しずつなくなる…下を向く事は許されなくて、声が出ないように、颯の指が喉の奥をいつでも潰せるようそこにある…
「いきますよ、侑成さん、、、♡いっぱい我慢して偉かったから、一気に引っこ抜いてあげますね♡」
「ぁ゛、、あ゛…」
きゅっとナカが締まるのが自分でも分かる…
一気に引き抜かれたらって、そんなの絶対むり、
な、のに…
「……せーのっ♡」
「ん゛ーーーー…ッ♡、、、ん゛ッ♡~~~~ッ♡」
「あーあ、やっぱり、これ買ってきてよかったですね」
ボタボタッ…と精液が飛び散る。何枚も重ねられたペットシーツに、不甲斐ない射精をしてしまう俺に颯は笑った。そして俺の顔の横に、さっきまで俺のナカにいた小さな機械が転がってきた。
「麻痺しながらココひくひくさせてんの見ると、ゾクゾクしちゃうなぁ」
「…………ぅ゛っ♡、、、♡ッ…♡、、」
「小さいお尻突き上げて、雌穴見せてくださいよ、だめだめ、もっと奥まで、自分で広げて」
「ぁ…♡あ、はいっ……」
「そうそう…………」
「ひぁっ♡…はやっ、とぉ゛…だめ……そんな…」
「侑成さんの……雌穴……えっろい……♡♡舌突っ込んだら、ひくひくしてきましたね♡…」
こんなトコ舐められて……勃起とまんない俺って……
「も゛ッ…むり…っっ♡そんな、とこぉ゛……舐めんなっ…♡音もっ、だめっ…ぢゅるち゛ゅる…って、、、だ、め…♡」
無様過ぎる…今の俺……
「ケツ穴彼氏に舐められて恥ずかしくて泣いてんのかわいい…」
「……っ、だって、こんな姿……」
「こんな姿だから僕にしか見せられないんでしょ」
ベットが沈む。
枕に突っ伏していた身体がぐるっと返されて、颯と目が合う。
「見せて、もっと、情けない姿、屈服して、僕に…」
「~~~~ッ♡♡♡♡、、、っ゛♡、、、挿入っ、て……♡♡♡」
「抱いても、抱いても、どんだけ抱き潰しても……侑成さんはいつも少し遠いから……もっと僕にだめな姿見せて…僕を安心させてくださいよ……」
「っ…あ゛♡、、、ふ♡っ、う゛♡」
伝わってくる。颯の不安が。独占欲が。腰を掴まれて上からの逃げ場のないピストンに狂ってくのをとめられない。
「もう、壊れちゃえばいいのに」
熱のこもったその言葉の後、俺は無理矢理に身体を起こされる。でも身体がついてこない。メンタルも崩壊した。泣き顔を晒して顔はぐちゃぐちゃ。颯の目には支配欲が滲んでいて、寝転ぶ俺に跨って、俺を壊す気で腰を振る。
「好き……侑成さんっ…大好きっ…ごめんね、いきなり帰るなんて意地悪して、塩野さんとの出張だなんて妬いちゃって、どーしていいか分かんなくて、あんな事………」
「あ゛っ♡あぁ゛っ♡、、、すっ♡きい゛っ♡、、、おれも♡颯すき、、、♡♡♡」
「でも僕、侑成さんの事が大好きだから、こんな無茶もしちゃうんです。会いに来るなんて思ってなかったでしょ、僕ね、侑成さんのためならなんだってできますよ」
「ぉ、おれ、だって……♡颯のためならなんでもす、る、う゛♡♡、、、すきっ♡すき♡ぃ゛♡♡♡…………」
「嬉しいです…」
「ぅん゛♡♡♡いい゛っ♡♡♡っ、は、あ゛♡♡颯の顔面の目の前で足をかっ開いて、ずぼずぼーって♡♡ちんこ打ちつけてもらうの♡これやばぁ……♡♡♡あっ、んっ、んっ、よっわい喘ぎ声で、腰へこらせて……ごめんなさっ♡♡♡だいすき♡颯♡大好きっ……♡♡♡」
「そんなこと……耳元で囁かないでくださいよ。我慢できなくなる……」
「~~~~‼︎♡♡♡♡♡」
「……出すね…………このまま…」
「ぁ…♡あ……♡♡…はやとの…♡せーし…♡」
「…………っ」
…………あ…やばい
何かがこぼれた感覚に、俺は身体を固くした。
全身を貫いた快楽の余韻が残る中、それとは別の“熱”が太ももを伝って広がっていく。
「……うそ…やだ…」
呟いた声がかすれて震える。
目を落とせば、水分を含んでいくペットシーツ。
まるで、寝ぼけた子どもがおねしょをしてしまった時のような情けなさに、頬が熱くなる。
颯は何も言わず、満足そうにそんな俺を見下ろしたまま、艶っぽい表情で見つめてる。
最悪だ
失禁……なんて……そんな…………
布団の中、俺は顔まで毛布を引っ被っていた。
息がまだ少し荒れているのは、快楽の余韻と、とんでもない恥ずかしさの波のせいだった。
死にたい。
それが今の正直な感想だった。
ペットシーツはすでに片付けられていて、どこにも「痕跡」は残っていないはずなのに、心の中のダメージはそう簡単に拭えない。
そんな地獄の中に、颯の能天気な声が飛び込んできた。
「まだ落ち込んでるんですか?」
「……喋りかけないでマジで今は」
布団の中から、俺の声が漏れる。情けないやら恥ずかしいやら、なのに颯はおかまいなしだ。
「僕とのえっち気持ち良過ぎて失禁しちゃうなんて、尊過ぎます。てか失禁なんて別に侑成さん、初めてじゃないですし」
「うるさい……黙れ……今は静かに弔わせて……俺の尊厳を……」
「でも出ちゃってる最中、侑成さん焦り散らかしてて可愛かったですよ」
「今はやめろ……逆に死にたくなるから……」
颯はそんな俺の嘆きを、悪気なく真顔で見つめながら囁いた。
「でももっと絶叫させたかったんで、今度は侑成さん家でやりましょう」
「うっせえー!!!」
思わず布団をバッとめくって叫んでしまった俺に、颯は満面の笑みを浮かべていた。そして人差し指を唇に当てて、しーっと笑った。
「……てか、塩野さんに、聞かれてないよな?」
横の壁を見つめながら、まるで神に祈るような声音で俺は言う。
「いやー……さすがにこの厚さの壁なら大丈夫じゃないですか?反対側の部屋の音も聞こえないですし」
「え、でも結構……いや、やめよう。考えたら負けだ。考えないことにする」
「うん。正解です」
かすかに残る香りと体温。火照った肌にしみこむような、静かな心地よさ。
いつの間にか電気は消えていて、部屋はほとんど真っ暗だった。遠くでかすかに鳴る空調の音だけが、2人の会話の合間にふっと入り込む。
「ねえ」
不意に、颯がぽつりとつぶやいた。
「……早く、一緒に暮らしたいなって、思っちゃいました」
唐突のそれ。ただの願望を口にするような、それでも心からの本音だったと思う。俺は、頬をすり寄せたままその言葉の余韻を噛みしめた。
「……それ、勢いで言ってるとかじゃなくて?」
「え、違いますよ。本気で、ずっと思ってます。だってたったの一泊ですら、会えないの我慢できないんですよ僕」
今の関係を壊したいわけじゃない。だけど未来のことを語られると、どうしてこんなにも気持ちが揺れるのか。
俺はその不穏な気持ちを隠すように、手のひらで颯のほっぺを軽く叩く。
「一緒に暮らしたら、俺の身体もたないかも」
「それはそうかも」
ぴったりとくっついた布団の中、静かで穏やかな時間。でも、そんな空気を颯の声が少しだけ変える。
「……ねえ、侑成さん」
「ん?」
「今すぐ一緒に住むのはだめでも、合鍵くらいはもうくれてもいいでしょ?」
俺はほんの一瞬、息を止めた。
すぐには答えられなくて、視線は天井に逸れてしまう。
「本当は先の事なんて考えてないとか?」
「……考えてないわけじゃない。ちゃんと真剣に考えてる…」
「でも、”いつか”って便利な言葉じゃないですか。そう言えば逃げられるし、交わせるし」
颯の言葉にはとげはなかったけれど、明確な温度があった。ぬくもりの中に、確かに存在する「不安」の色だ。
「僕、今のままでも侑成さんといられるなら幸せだって思ってます。でも約束が欲しくなるんです。安心できる気がする……」
颯の頭を撫でれば、俺の返事に期待する颯を察してしまう。
「俺はずっと颯といたいから、颯のご両親にも良い印象を持ってもらいたいって思う」
「……」
「だからこそ、ちゃんと段取りつけて、流れ考えて、ちゃんと進めなきゃって思ってた。いきなり『今日から一緒に住むんだ』じゃなくて」
「……だから、それって、いつですか?」
まっすぐ見つめてくる颯の瞳を見て、俺は逃げることができなかった。
だから、目を見て、言った。
「……今年中には、行こう。ちゃんと、約束する」
「ほんとに?」
「ほんと。約束するよ」
すると颯は、急に俺の胸元に顔をうずめて、「良かった…」と弱々しく儚げにそう言った。
ぴったりと身体を寄せたまま、俺たちは布団の中で噛み締めるようにキスを繰り返す。
ずっと一緒にいたい、それだけでいいのに。
それだけのことが、こんなにも難しいなんて。
そんなのは分かっていたはずなんだけど。
そして、部屋のドアを閉めた瞬間、自分が雌の顔になるのが嫌でも分かった。
乾いた喉に指をあて、俺は深く息を吐く。火照りが一生抜けない。熱の芯が体内にこもったままで、頬も耳も、きっと真っ赤だ。
なのに、部屋の中で待っていた颯は、真逆の空気を纏っていた。ベッドに腰かけ、脚を組み、スマホをいじるその姿は、どこまでも落ち着いていたから。
「……おかえり、侑成さん」
顔を上げた颯の声は、驚くほど穏やかだった。その目だけが、じっとこちらの様子を観察している。
「なんかスマホで操作できるみたいで、適当に触ってたんですけどどうでした?」
「……お前っ…」
呼吸を整えたいのに、身体が言うことを聞かない。自分のナカで息を潜めてるソレがいよいよ限界で……
「……てか塩野さん、部屋戻ってた」
「うん、聞こえてました。廊下で扉閉まる音、したから」
いつも通りの声。でもその瞳は、わずかに笑っていた。俺の“熱”に気づいていて、楽しんでいる。そんなふうに。
「なんか……ずっと変な感じで…暑い……」
俺は額に手をあて、逃げるように視線をそらす。向かいにいる颯が、あまりにも落ち着いているから、自分がどれだけ乱れているかが浮き彫りになるのが、恥ずかしいんだ。
「……俺だけ、変になってるみたいで」
「そうですよ?」
颯は言った。さらりと、当然のように。
その笑みが悪戯っぽくて、逆に俺を興奮させる。
颯がスマホをポケットに滑らせ、すっと立ち上がった。さっきまでの静けさから一転、まるでここからが本番だとでも言うような動作に喉仏が上下する。
「近くの薬局で買ってきました」
そう言って、手に持っていた小さな袋を乱雑にベッドへ放る。中から転がり出たのは……ペットシーツ。
「今日はあんまり汚せませんから」
無邪気なようでいて、ひどく現実的なその一言が、侑成の鼓動を一瞬止める。
「……だからって、そこまで」
「侑成さんが困らないようにって思っただけですよ」
何が“困らないように”だ。
困らせてる張本人はお前だろ……
これは逃げられない。それは分かっていた。分かっていたのに、颯の用意周到さが、改めて自分の立場を突きつけてくる。
颯はにこりと笑って、ベッドの縁に腰を下ろす。
「ねえ、こっち来てください」
すでにシナリオは、最初から颯の手の中だった。きっと今日ここに来た時からずっと。それが分かるからこそ、俺はほんの一瞬だけためらって、そして、静かに歩み寄るしかなかった。
「スーツ、脱いでください」
その声は穏やかだったが、命令のように聞こえて胸が高鳴る。
「……うん」
「汚れたら困りますからね」
妙に理にかなっているのが、また腹立たしい。
俺は、黙ってネクタイに手をかけた。
スルリとほどくその音すら、室内ではやけに大きく響く。
颯の視線が刺さる。どこか無邪気で、それでいて底が見えない。
ジャケットを脱ぎ、慎重に椅子の背に掛ける。
シャツのボタンに指をかけるたび、自分の仕草がゆっくりになっていくのが分かる。
見られている。全身を……まるで剥がされるように。
「……そんなに見んな」
「見ますよ、だって僕が脱がせてるようなもんだし」
肩までシャツを抜いた侑成は、思わず顔をそむける。
羞恥と、ほんの少しの高揚と。肌に触れる空気が妙に冷たく感じるのは、そのせいだった。
ベッドの上で片膝を立てた颯が、どこか満足そうに微笑む。
「やっぱりスーツ脱いでる侑成さん、色っぽいですね」
「何言ってんの……マジで…」
シャツを脱ぎ終え、ズボンのベルトを外して、下着一枚を残すのみとなった俺の手が止まった。
だが、その小さな迷いを打ち消すように、ベッドの上から颯の声が飛んだ。
「全部って言ってんじゃん」
トーンが変わっていた。ふだんは丁寧で、甘えるような声音のくせに。今は妙に乱暴で、押さえきれない欲が言葉の端に滲んでいた。
ああ、そういうとこが好きなんだよ……
腹の底でつぶやく。
そういうふうに、たまに口が悪くなって、言葉を投げてくる。理性も余裕もない、年相応の男らしい乱暴さ。
それが、嫌いじゃないどころか……むしろ……
少しだけ唇が綻んだ。見られていることも、命令されていることも、全部含めて。俺の中にある「恥ずかしい」が、「嫌」にはならなかった。
「分かってる……」
残った布一枚に指をかけた。その瞬間、空気の濃度が変わる。静かなのに、熱を孕んだ静寂。視線の先では、颯がごくりと喉を鳴らす気配がした。
猛獣めいた笑みが、俺に向けられて、そしてまた始まる……
硬めのマットレスの上……
俺だけが全裸にされて、四つん這いになって……
もう俺…どんどん颯に調教されていってる気がする……
「で?」
尻を撫でながら、一番肝心なトコは触らずに颯は続けた。
「どうでした?このローター」
「っ……やだ……もお…抜いて……」
颯はニコニコ笑って、俺からは見えない位置でそのスイッチをオンにした。
「ぁ゛⁉︎ぁあっ゛………ぃ゛あ゛♡♡♡ん゛ぅ゛……」
しーっ…と颯の指が俺の唇に当てられて、ぬるっと口内を愛撫する。
「塩野さんに、侑成さんのダメなトコロ見られてませんか?ちゃんと我慢できましたか?」
「っ゛…ふ……ぅ゛……」
「こんなに小さいのでグズグズになっちゃうなんて、侑成さんのココはほんっとに弱いよね」
「……う゛♡、、、ぁ゛…」
腹ん中に滞っていた異物感が少しずつなくなる…下を向く事は許されなくて、声が出ないように、颯の指が喉の奥をいつでも潰せるようそこにある…
「いきますよ、侑成さん、、、♡いっぱい我慢して偉かったから、一気に引っこ抜いてあげますね♡」
「ぁ゛、、あ゛…」
きゅっとナカが締まるのが自分でも分かる…
一気に引き抜かれたらって、そんなの絶対むり、
な、のに…
「……せーのっ♡」
「ん゛ーーーー…ッ♡、、、ん゛ッ♡~~~~ッ♡」
「あーあ、やっぱり、これ買ってきてよかったですね」
ボタボタッ…と精液が飛び散る。何枚も重ねられたペットシーツに、不甲斐ない射精をしてしまう俺に颯は笑った。そして俺の顔の横に、さっきまで俺のナカにいた小さな機械が転がってきた。
「麻痺しながらココひくひくさせてんの見ると、ゾクゾクしちゃうなぁ」
「…………ぅ゛っ♡、、、♡ッ…♡、、」
「小さいお尻突き上げて、雌穴見せてくださいよ、だめだめ、もっと奥まで、自分で広げて」
「ぁ…♡あ、はいっ……」
「そうそう…………」
「ひぁっ♡…はやっ、とぉ゛…だめ……そんな…」
「侑成さんの……雌穴……えっろい……♡♡舌突っ込んだら、ひくひくしてきましたね♡…」
こんなトコ舐められて……勃起とまんない俺って……
「も゛ッ…むり…っっ♡そんな、とこぉ゛……舐めんなっ…♡音もっ、だめっ…ぢゅるち゛ゅる…って、、、だ、め…♡」
無様過ぎる…今の俺……
「ケツ穴彼氏に舐められて恥ずかしくて泣いてんのかわいい…」
「……っ、だって、こんな姿……」
「こんな姿だから僕にしか見せられないんでしょ」
ベットが沈む。
枕に突っ伏していた身体がぐるっと返されて、颯と目が合う。
「見せて、もっと、情けない姿、屈服して、僕に…」
「~~~~ッ♡♡♡♡、、、っ゛♡、、、挿入っ、て……♡♡♡」
「抱いても、抱いても、どんだけ抱き潰しても……侑成さんはいつも少し遠いから……もっと僕にだめな姿見せて…僕を安心させてくださいよ……」
「っ…あ゛♡、、、ふ♡っ、う゛♡」
伝わってくる。颯の不安が。独占欲が。腰を掴まれて上からの逃げ場のないピストンに狂ってくのをとめられない。
「もう、壊れちゃえばいいのに」
熱のこもったその言葉の後、俺は無理矢理に身体を起こされる。でも身体がついてこない。メンタルも崩壊した。泣き顔を晒して顔はぐちゃぐちゃ。颯の目には支配欲が滲んでいて、寝転ぶ俺に跨って、俺を壊す気で腰を振る。
「好き……侑成さんっ…大好きっ…ごめんね、いきなり帰るなんて意地悪して、塩野さんとの出張だなんて妬いちゃって、どーしていいか分かんなくて、あんな事………」
「あ゛っ♡あぁ゛っ♡、、、すっ♡きい゛っ♡、、、おれも♡颯すき、、、♡♡♡」
「でも僕、侑成さんの事が大好きだから、こんな無茶もしちゃうんです。会いに来るなんて思ってなかったでしょ、僕ね、侑成さんのためならなんだってできますよ」
「ぉ、おれ、だって……♡颯のためならなんでもす、る、う゛♡♡、、、すきっ♡すき♡ぃ゛♡♡♡…………」
「嬉しいです…」
「ぅん゛♡♡♡いい゛っ♡♡♡っ、は、あ゛♡♡颯の顔面の目の前で足をかっ開いて、ずぼずぼーって♡♡ちんこ打ちつけてもらうの♡これやばぁ……♡♡♡あっ、んっ、んっ、よっわい喘ぎ声で、腰へこらせて……ごめんなさっ♡♡♡だいすき♡颯♡大好きっ……♡♡♡」
「そんなこと……耳元で囁かないでくださいよ。我慢できなくなる……」
「~~~~‼︎♡♡♡♡♡」
「……出すね…………このまま…」
「ぁ…♡あ……♡♡…はやとの…♡せーし…♡」
「…………っ」
…………あ…やばい
何かがこぼれた感覚に、俺は身体を固くした。
全身を貫いた快楽の余韻が残る中、それとは別の“熱”が太ももを伝って広がっていく。
「……うそ…やだ…」
呟いた声がかすれて震える。
目を落とせば、水分を含んでいくペットシーツ。
まるで、寝ぼけた子どもがおねしょをしてしまった時のような情けなさに、頬が熱くなる。
颯は何も言わず、満足そうにそんな俺を見下ろしたまま、艶っぽい表情で見つめてる。
最悪だ
失禁……なんて……そんな…………
布団の中、俺は顔まで毛布を引っ被っていた。
息がまだ少し荒れているのは、快楽の余韻と、とんでもない恥ずかしさの波のせいだった。
死にたい。
それが今の正直な感想だった。
ペットシーツはすでに片付けられていて、どこにも「痕跡」は残っていないはずなのに、心の中のダメージはそう簡単に拭えない。
そんな地獄の中に、颯の能天気な声が飛び込んできた。
「まだ落ち込んでるんですか?」
「……喋りかけないでマジで今は」
布団の中から、俺の声が漏れる。情けないやら恥ずかしいやら、なのに颯はおかまいなしだ。
「僕とのえっち気持ち良過ぎて失禁しちゃうなんて、尊過ぎます。てか失禁なんて別に侑成さん、初めてじゃないですし」
「うるさい……黙れ……今は静かに弔わせて……俺の尊厳を……」
「でも出ちゃってる最中、侑成さん焦り散らかしてて可愛かったですよ」
「今はやめろ……逆に死にたくなるから……」
颯はそんな俺の嘆きを、悪気なく真顔で見つめながら囁いた。
「でももっと絶叫させたかったんで、今度は侑成さん家でやりましょう」
「うっせえー!!!」
思わず布団をバッとめくって叫んでしまった俺に、颯は満面の笑みを浮かべていた。そして人差し指を唇に当てて、しーっと笑った。
「……てか、塩野さんに、聞かれてないよな?」
横の壁を見つめながら、まるで神に祈るような声音で俺は言う。
「いやー……さすがにこの厚さの壁なら大丈夫じゃないですか?反対側の部屋の音も聞こえないですし」
「え、でも結構……いや、やめよう。考えたら負けだ。考えないことにする」
「うん。正解です」
かすかに残る香りと体温。火照った肌にしみこむような、静かな心地よさ。
いつの間にか電気は消えていて、部屋はほとんど真っ暗だった。遠くでかすかに鳴る空調の音だけが、2人の会話の合間にふっと入り込む。
「ねえ」
不意に、颯がぽつりとつぶやいた。
「……早く、一緒に暮らしたいなって、思っちゃいました」
唐突のそれ。ただの願望を口にするような、それでも心からの本音だったと思う。俺は、頬をすり寄せたままその言葉の余韻を噛みしめた。
「……それ、勢いで言ってるとかじゃなくて?」
「え、違いますよ。本気で、ずっと思ってます。だってたったの一泊ですら、会えないの我慢できないんですよ僕」
今の関係を壊したいわけじゃない。だけど未来のことを語られると、どうしてこんなにも気持ちが揺れるのか。
俺はその不穏な気持ちを隠すように、手のひらで颯のほっぺを軽く叩く。
「一緒に暮らしたら、俺の身体もたないかも」
「それはそうかも」
ぴったりとくっついた布団の中、静かで穏やかな時間。でも、そんな空気を颯の声が少しだけ変える。
「……ねえ、侑成さん」
「ん?」
「今すぐ一緒に住むのはだめでも、合鍵くらいはもうくれてもいいでしょ?」
俺はほんの一瞬、息を止めた。
すぐには答えられなくて、視線は天井に逸れてしまう。
「本当は先の事なんて考えてないとか?」
「……考えてないわけじゃない。ちゃんと真剣に考えてる…」
「でも、”いつか”って便利な言葉じゃないですか。そう言えば逃げられるし、交わせるし」
颯の言葉にはとげはなかったけれど、明確な温度があった。ぬくもりの中に、確かに存在する「不安」の色だ。
「僕、今のままでも侑成さんといられるなら幸せだって思ってます。でも約束が欲しくなるんです。安心できる気がする……」
颯の頭を撫でれば、俺の返事に期待する颯を察してしまう。
「俺はずっと颯といたいから、颯のご両親にも良い印象を持ってもらいたいって思う」
「……」
「だからこそ、ちゃんと段取りつけて、流れ考えて、ちゃんと進めなきゃって思ってた。いきなり『今日から一緒に住むんだ』じゃなくて」
「……だから、それって、いつですか?」
まっすぐ見つめてくる颯の瞳を見て、俺は逃げることができなかった。
だから、目を見て、言った。
「……今年中には、行こう。ちゃんと、約束する」
「ほんとに?」
「ほんと。約束するよ」
すると颯は、急に俺の胸元に顔をうずめて、「良かった…」と弱々しく儚げにそう言った。
ぴったりと身体を寄せたまま、俺たちは布団の中で噛み締めるようにキスを繰り返す。
ずっと一緒にいたい、それだけでいいのに。
それだけのことが、こんなにも難しいなんて。
そんなのは分かっていたはずなんだけど。
45
あなたにおすすめの小説
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる