愛されすぎて、夜が足りない

ぴょす

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酷く、惨めに、壊れて、それを愛だと言うならば

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ホテルに戻る足取りは、自然と早歩きになる。

そして、部屋のドアを閉めた瞬間、自分が雌の顔になるのが嫌でも分かった。

乾いた喉に指をあて、俺は深く息を吐く。火照りが一生抜けない。熱の芯が体内にこもったままで、頬も耳も、きっと真っ赤だ。

なのに、部屋の中で待っていた颯は、真逆の空気を纏っていた。ベッドに腰かけ、脚を組み、スマホをいじるその姿は、どこまでも落ち着いていたから。

「……おかえり、侑成さん」

顔を上げた颯の声は、驚くほど穏やかだった。その目だけが、じっとこちらの様子を観察している。

「なんかスマホで操作できるみたいで、適当に触ってたんですけどどうでした?」

「……お前っ…」

呼吸を整えたいのに、身体が言うことを聞かない。自分のナカで息を潜めてるソレがいよいよ限界で……

「……てか塩野さん、部屋戻ってた」

「うん、聞こえてました。廊下で扉閉まる音、したから」

いつも通りの声。でもその瞳は、わずかに笑っていた。俺の“熱”に気づいていて、楽しんでいる。そんなふうに。

「なんか……ずっと変な感じで…暑い……」

俺は額に手をあて、逃げるように視線をそらす。向かいにいる颯が、あまりにも落ち着いているから、自分がどれだけ乱れているかが浮き彫りになるのが、恥ずかしいんだ。

「……俺だけ、変になってるみたいで」

「そうですよ?」

颯は言った。さらりと、当然のように。
その笑みが悪戯っぽくて、逆に俺を興奮させる。

颯がスマホをポケットに滑らせ、すっと立ち上がった。さっきまでの静けさから一転、まるでここからが本番だとでも言うような動作に喉仏が上下する。

「近くの薬局で買ってきました」

そう言って、手に持っていた小さな袋を乱雑にベッドへ放る。中から転がり出たのは……ペットシーツ。

「今日はあんまり汚せませんから」

無邪気なようでいて、ひどく現実的なその一言が、侑成の鼓動を一瞬止める。

「……だからって、そこまで」

「侑成さんが困らないようにって思っただけですよ」

何が“困らないように”だ。
困らせてる張本人はお前だろ……

これは逃げられない。それは分かっていた。分かっていたのに、颯の用意周到さが、改めて自分の立場を突きつけてくる。

颯はにこりと笑って、ベッドの縁に腰を下ろす。

「ねえ、こっち来てください」

すでにシナリオは、最初から颯の手の中だった。きっと今日ここに来た時からずっと。それが分かるからこそ、俺はほんの一瞬だけためらって、そして、静かに歩み寄るしかなかった。

「スーツ、脱いでください」

その声は穏やかだったが、命令のように聞こえて胸が高鳴る。

「……うん」

「汚れたら困りますからね」

妙に理にかなっているのが、また腹立たしい。
俺は、黙ってネクタイに手をかけた。
スルリとほどくその音すら、室内ではやけに大きく響く。

颯の視線が刺さる。どこか無邪気で、それでいて底が見えない。

ジャケットを脱ぎ、慎重に椅子の背に掛ける。
シャツのボタンに指をかけるたび、自分の仕草がゆっくりになっていくのが分かる。

見られている。全身を……まるで剥がされるように。

「……そんなに見んな」

「見ますよ、だって僕が脱がせてるようなもんだし」

肩までシャツを抜いた侑成は、思わず顔をそむける。
羞恥と、ほんの少しの高揚と。肌に触れる空気が妙に冷たく感じるのは、そのせいだった。

ベッドの上で片膝を立てた颯が、どこか満足そうに微笑む。

「やっぱりスーツ脱いでる侑成さん、色っぽいですね」

「何言ってんの……マジで…」

シャツを脱ぎ終え、ズボンのベルトを外して、下着一枚を残すのみとなった俺の手が止まった。

だが、その小さな迷いを打ち消すように、ベッドの上から颯の声が飛んだ。

「全部って言ってんじゃん」

トーンが変わっていた。ふだんは丁寧で、甘えるような声音のくせに。今は妙に乱暴で、押さえきれない欲が言葉の端に滲んでいた。

ああ、そういうとこが好きなんだよ……

腹の底でつぶやく。
そういうふうに、たまに口が悪くなって、言葉を投げてくる。理性も余裕もない、年相応の男らしい乱暴さ。

それが、嫌いじゃないどころか……むしろ……

少しだけ唇が綻んだ。見られていることも、命令されていることも、全部含めて。俺の中にある「恥ずかしい」が、「嫌」にはならなかった。

「分かってる……」

残った布一枚に指をかけた。その瞬間、空気の濃度が変わる。静かなのに、熱を孕んだ静寂。視線の先では、颯がごくりと喉を鳴らす気配がした。

猛獣めいた笑みが、俺に向けられて、そしてまた始まる……

硬めのマットレスの上……
俺だけが全裸にされて、四つん這いになって……
もう俺…どんどん颯に調教されていってる気がする……

「で?」

尻を撫でながら、一番肝心なトコは触らずに颯は続けた。

「どうでした?このローター」

「っ……やだ……もお…抜いて……」

颯はニコニコ笑って、俺からは見えない位置でそのスイッチをオンにした。

「ぁ゛⁉︎ぁあっ゛………ぃ゛あ゛♡♡♡ん゛ぅ゛……」

しーっ…と颯の指が俺の唇に当てられて、ぬるっと口内を愛撫する。

「塩野さんに、侑成さんのダメなトコロ見られてませんか?ちゃんと我慢できましたか?」

「っ゛…ふ……ぅ゛……」

「こんなに小さいのでグズグズになっちゃうなんて、侑成さんのココはほんっとに弱いよね」

「……う゛♡、、、ぁ゛…」

腹ん中に滞っていた異物感が少しずつなくなる…下を向く事は許されなくて、声が出ないように、颯の指が喉の奥をいつでも潰せるようそこにある…

「いきますよ、侑成さん、、、♡いっぱい我慢して偉かったから、一気に引っこ抜いてあげますね♡」

「ぁ゛、、あ゛…」

きゅっとナカが締まるのが自分でも分かる…
一気に引き抜かれたらって、そんなの絶対むり、

な、のに…

「……せーのっ♡」

「ん゛ーーーー…ッ♡、、、ん゛ッ♡~~~~ッ♡」

「あーあ、やっぱり、これ買ってきてよかったですね」

ボタボタッ…と精液が飛び散る。何枚も重ねられたペットシーツに、不甲斐ない射精をしてしまう俺に颯は笑った。そして俺の顔の横に、さっきまで俺のナカにいた小さな機械が転がってきた。

「麻痺しながらココひくひくさせてんの見ると、ゾクゾクしちゃうなぁ」

「…………ぅ゛っ♡、、、♡ッ…♡、、」

「小さいお尻突き上げて、雌穴見せてくださいよ、だめだめ、もっと奥まで、自分で広げて」

「ぁ…♡あ、はいっ……」

「そうそう…………」

「ひぁっ♡…はやっ、とぉ゛…だめ……そんな…」

「侑成さんの……雌穴……えっろい……♡♡舌突っ込んだら、ひくひくしてきましたね♡…」

こんなトコ舐められて……勃起とまんない俺って……

「も゛ッ…むり…っっ♡そんな、とこぉ゛……舐めんなっ…♡音もっ、だめっ…ぢゅるち゛ゅる…って、、、だ、め…♡」

無様過ぎる…今の俺……

「ケツ穴彼氏に舐められて恥ずかしくて泣いてんのかわいい…」

「……っ、だって、こんな姿……」

「こんな姿だから僕にしか見せられないんでしょ」

ベットが沈む。
枕に突っ伏していた身体がぐるっと返されて、颯と目が合う。

「見せて、もっと、情けない姿、屈服して、僕に…」

「~~~~ッ♡♡♡♡、、、っ゛♡、、、挿入っ、て……♡♡♡」

「抱いても、抱いても、どんだけ抱き潰しても……侑成さんはいつも少し遠いから……もっと僕にだめな姿見せて…僕を安心させてくださいよ……」

「っ…あ゛♡、、、ふ♡っ、う゛♡」

伝わってくる。颯の不安が。独占欲が。腰を掴まれて上からの逃げ場のないピストンに狂ってくのをとめられない。

「もう、壊れちゃえばいいのに」

熱のこもったその言葉の後、俺は無理矢理に身体を起こされる。でも身体がついてこない。メンタルも崩壊した。泣き顔を晒して顔はぐちゃぐちゃ。颯の目には支配欲が滲んでいて、寝転ぶ俺に跨って、俺を壊す気で腰を振る。

「好き……侑成さんっ…大好きっ…ごめんね、いきなり帰るなんて意地悪して、塩野さんとの出張だなんて妬いちゃって、どーしていいか分かんなくて、あんな事………」

「あ゛っ♡あぁ゛っ♡、、、すっ♡きい゛っ♡、、、おれも♡颯すき、、、♡♡♡」

「でも僕、侑成さんの事が大好きだから、こんな無茶もしちゃうんです。会いに来るなんて思ってなかったでしょ、僕ね、侑成さんのためならなんだってできますよ」

「ぉ、おれ、だって……♡颯のためならなんでもす、る、う゛♡♡、、、すきっ♡すき♡ぃ゛♡♡♡…………」

「嬉しいです…」

「ぅん゛♡♡♡いい゛っ♡♡♡っ、は、あ゛♡♡颯の顔面の目の前で足をかっ開いて、ずぼずぼーって♡♡ちんこ打ちつけてもらうの♡これやばぁ……♡♡♡あっ、んっ、んっ、よっわい喘ぎ声で、腰へこらせて……ごめんなさっ♡♡♡だいすき♡颯♡大好きっ……♡♡♡」

「そんなこと……耳元で囁かないでくださいよ。我慢できなくなる……」

「~~~~‼︎♡♡♡♡♡」

「……出すね…………このまま…」

「ぁ…♡あ……♡♡…はやとの…♡せーし…♡」

「…………っ」




…………あ…やばい

何かがこぼれた感覚に、俺は身体を固くした。
全身を貫いた快楽の余韻が残る中、それとは別の“熱”が太ももを伝って広がっていく。

「……うそ…やだ…」

呟いた声がかすれて震える。
目を落とせば、水分を含んでいくペットシーツ。
まるで、寝ぼけた子どもがおねしょをしてしまった時のような情けなさに、頬が熱くなる。

颯は何も言わず、満足そうにそんな俺を見下ろしたまま、艶っぽい表情で見つめてる。

最悪だ

失禁……なんて……そんな…………





布団の中、俺は顔まで毛布を引っ被っていた。

息がまだ少し荒れているのは、快楽の余韻と、とんでもない恥ずかしさの波のせいだった。

死にたい。

それが今の正直な感想だった。

ペットシーツはすでに片付けられていて、どこにも「痕跡」は残っていないはずなのに、心の中のダメージはそう簡単に拭えない。

そんな地獄の中に、颯の能天気な声が飛び込んできた。

「まだ落ち込んでるんですか?」

「……喋りかけないでマジで今は」

布団の中から、俺の声が漏れる。情けないやら恥ずかしいやら、なのに颯はおかまいなしだ。

「僕とのえっち気持ち良過ぎて失禁しちゃうなんて、尊過ぎます。てか失禁なんて別に侑成さん、初めてじゃないですし」

「うるさい……黙れ……今は静かに弔わせて……俺の尊厳を……」

「でも出ちゃってる最中、侑成さん焦り散らかしてて可愛かったですよ」

「今はやめろ……逆に死にたくなるから……」

颯はそんな俺の嘆きを、悪気なく真顔で見つめながら囁いた。

「でももっと絶叫させたかったんで、今度は侑成さん家でやりましょう」

「うっせえー!!!」

思わず布団をバッとめくって叫んでしまった俺に、颯は満面の笑みを浮かべていた。そして人差し指を唇に当てて、しーっと笑った。

「……てか、塩野さんに、聞かれてないよな?」

横の壁を見つめながら、まるで神に祈るような声音で俺は言う。

「いやー……さすがにこの厚さの壁なら大丈夫じゃないですか?反対側の部屋の音も聞こえないですし」

「え、でも結構……いや、やめよう。考えたら負けだ。考えないことにする」

「うん。正解です」

かすかに残る香りと体温。火照った肌にしみこむような、静かな心地よさ。

いつの間にか電気は消えていて、部屋はほとんど真っ暗だった。遠くでかすかに鳴る空調の音だけが、2人の会話の合間にふっと入り込む。

「ねえ」

不意に、颯がぽつりとつぶやいた。

「……早く、一緒に暮らしたいなって、思っちゃいました」

唐突のそれ。ただの願望を口にするような、それでも心からの本音だったと思う。俺は、頬をすり寄せたままその言葉の余韻を噛みしめた。

「……それ、勢いで言ってるとかじゃなくて?」

「え、違いますよ。本気で、ずっと思ってます。だってたったの一泊ですら、会えないの我慢できないんですよ僕」

今の関係を壊したいわけじゃない。だけど未来のことを語られると、どうしてこんなにも気持ちが揺れるのか。

俺はその不穏な気持ちを隠すように、手のひらで颯のほっぺを軽く叩く。

「一緒に暮らしたら、俺の身体もたないかも」

「それはそうかも」

ぴったりとくっついた布団の中、静かで穏やかな時間。でも、そんな空気を颯の声が少しだけ変える。

「……ねえ、侑成さん」

「ん?」

「今すぐ一緒に住むのはだめでも、合鍵くらいはもうくれてもいいでしょ?」

俺はほんの一瞬、息を止めた。
すぐには答えられなくて、視線は天井に逸れてしまう。 

「本当は先の事なんて考えてないとか?」

「……考えてないわけじゃない。ちゃんと真剣に考えてる…」

「でも、”いつか”って便利な言葉じゃないですか。そう言えば逃げられるし、交わせるし」

颯の言葉にはとげはなかったけれど、明確な温度があった。ぬくもりの中に、確かに存在する「不安」の色だ。

「僕、今のままでも侑成さんといられるなら幸せだって思ってます。でも約束が欲しくなるんです。安心できる気がする……」

颯の頭を撫でれば、俺の返事に期待する颯を察してしまう。

「俺はずっと颯といたいから、颯のご両親にも良い印象を持ってもらいたいって思う」

「……」

「だからこそ、ちゃんと段取りつけて、流れ考えて、ちゃんと進めなきゃって思ってた。いきなり『今日から一緒に住むんだ』じゃなくて」

「……だから、それって、いつですか?」

まっすぐ見つめてくる颯の瞳を見て、俺は逃げることができなかった。

だから、目を見て、言った。

「……今年中には、行こう。ちゃんと、約束する」

「ほんとに?」

「ほんと。約束するよ」

すると颯は、急に俺の胸元に顔をうずめて、「良かった…」と弱々しく儚げにそう言った。

ぴったりと身体を寄せたまま、俺たちは布団の中で噛み締めるようにキスを繰り返す。

ずっと一緒にいたい、それだけでいいのに。

それだけのことが、こんなにも難しいなんて。
そんなのは分かっていたはずなんだけど。
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