誤解(ごかい)の上は六階!

しゃもん

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19.幕間_王宮

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「行っちゃったね 裕也ゆうやくん。」
「ああ。」
 がんばれよ克也かつや
  裕也ゆうや克也かつやの姿が見えなくなるまで見送ってから踵を返すと門を離れ魔術棟に向かった。
「待って 裕也ゆうやくん、歩くの早すぎ。」
 朱里あかりが慌てて先に歩く 裕也ゆうやに走り寄ると彼が着ている見習い兵士服の裾を掴んだ。
朱里あかり。」
  裕也ゆうやは歩調を緩めると服の裾を掴んでいる朱里あかりの手を握ると一緒に魔術棟まで歩き出した。
「ごめん。いつもなら克也かつやがいるし・・・。あいつがいないとなんだかちょっと調子が狂うんだ。」
 朱里あかりは珍しく弱音を口にする 裕也ゆうやに目を大きく見開いてから握られている手をギュッと握り返した。
朱里あかりが一緒にいるから二人でがんばろう。」
 そんな話をしながら二人はブラッドリイに呼び出された魔術棟に行くとすぐに新人が出て来て二人を魔術訓練場に案内してくれた。
 そこにはなんでかブラッドリイだけではなく魔術師団長マイク近衛師団長キャッチの三人が訓練場で待っていた。
「キャッチ団長。」
「おう、あのお調子者は無事出発したか?」
「はい。ですが何でここに?」
「儂が訓練の相手に呼んでおいた。こいつなら万が一があってもまあ大丈夫だろうからな。」
「ちょっ・・・万が一って何ですか。今の発言は危険があるってことですよね?」
「いや、万が一死んでもお主なら三男だし独身だし問題ないだろうとな。」
「はあぁー、今聞き捨てならないことを連続で呟きませんでしたか。俺が死んだら問題ありますからね。」
「いやまあぁーなぁ。大丈夫だ。念のため魔術師団長もいるし最悪儂もいる。なに心配いらん。」
「今の会話で不安しかなくなりました。」
「まあ考えるな。さあ訓練じゃ。まずは 裕也ゆうやから実力を見てみようかの。」
 ブラッドリイが合図するとキャッチ団長が剣を構えて前に出てきた。
  裕也ゆうやも腰に差していた聖剣を抜くと正眼に構えた。
「ほう、なかなかいい構えだ。では遠慮なくいかせてもらう。」
 キャッチ団長はそういうと無造作な構えから剣を 裕也ゆうやに振り下ろした。
 それからはお互い真剣に剣での斬り合いが始まった。
 お互い知らない型同士なので腹の探り合いのような打合いからだんだん熱くなっていった。
 程よい頃合いでブラッドリイから制止が入った。
「両者そこまでだ。」
 ブラッドリイは肩で荒い息を吐いて今にも倒れそうな二人を難しい顔で見ながら何か思案していた。
  裕也ゆうやとしては祖父に習っていた剣がここでも存分に役立ってくれてホッと一息吐いた。
 これなら魔物討伐も何とかなる。
 一方ブラッドリイの方は途方に暮れていた。
 何とも早。これはどうしたものか。
 ここまで真剣にやり合っても聖剣が発動せぬというのはなぜなんだ。
 どこが悪いのか。
 うむ。

「ブラッドリイ様。ブラッドリイ様。」
 魔術師団長が何度もブラッドリイに呼びかけていた。
「ああ、すまん。あっと次は朱里あかりだな。まずはそうだの・・・。よし魔術師団長マイクにどんな方法でも構わないので攻撃魔法を発動して見せてくれ。」
「こ・・・攻撃って、何もしてない人にそんなこと出来ません。」
 こっちはこっちできっぱり断られた。
 うーむ。
 これは違う意味で困ったのぅ。
 朱里あかりが持っている赤い杖は攻撃魔法を主体としたものなのに本人にその気がなくては術が発動することはない。
いやはやなんとも・・・。

「ブラッドリイ様。」
 魔術師団長マイクが防御魔法を展開しながらも相手が攻撃してこないのでそれを止めると逆の提案をして見た。
「攻撃できないなら防御もしくは反射魔法ならどうでしょうか。これなら敵の魔法から防御ができるので味方を守れますし反射魔法なら上手に相手に返せれば敵を倒すことにも使えます。」
「うむ。焦ってもどうしょうもないか。とりあえず今はそれを磨くのが早道かのぉー。」
 ブラッドリイはもう一度朱里あかりに向き直った。
「今から放つ攻撃魔法からここにいる人間を守り尚且つその魔法を相手に返すことでその人間を守って見せなさい。」
 やっと朱里あかりはこの説明に二つ返事で賛成した。

 初めての魔法ということで魔術師団長マイクが威力の弱い水魔法を彼女の隣にいるブラッドリイに放った。
 朱里あかりは慌ててそれに反応して魔術師団長マイクが放った水魔法を遮った。
 それを確認した魔術師団長マイクは次々に威力をあげた水魔法を放つ。
 最後は魔術師団長マイクが放った高出力の水魔法がブラッドリイ目がけ襲いかかるがこれはブラッドリイ本人があっさり魔法で消し去った。

 チェッ。
 魔術師団長マイクから舌打ちが漏れたがブラッドリイは彼にそのまま対象を 裕也ゆうやにしてキャッチ団長も一緒になってペア同士で練習するように言いつけると魔術訓練場を後にした。

 今日はこれ以上二人に何かを教えてもあまり意味がなさそうだ。
 さて明日以降どうやって彼らに聖魔道具の使い方を教えたらいいのか思案した。
 それにしてもシータといい持った途端に聖剣を体に収納出来た克也かつやといい、あいつらはほぼ何も教えていないのになんであんなにあっさり習得出来たのか不思議だ。

 うーん。
 これ以上考えてもいい案は浮かばんなぁー。
 さあてどうしたものか?

 それから数日後にシェルからあった連絡に出た克也かつやによりこの聖魔道具の使い方があっさり解決出来たことをこの時のブラッドリイには想像すら出来なかった。
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