ご先祖さまは中二病⁉

しゃもん

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2.ご先祖様の遺産ー叡智の書との出会い

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 イチカを包んだ真っ白い光は、かなりの時間彼女の体を覆うように白く輝き、やがて唐突に消えた。

「……なにがあったの?」

 イチカは我に返ると、手に持っていた本を持ち上げようとして、いつの間にかそれが短剣に変わっていたことに気がついた。

「なんで私……こんなものを持ってるの?」

「“こんなもの”呼ばわりはひどすぎるぞ。少し言葉を慎め、小娘。」

「えっ?」

 どこからか聞こえた声に、周囲を見回すが誰もいない。

「どこを見ている、小娘。」

 また声が聞こえた。

「ちょっと、誰よ。いったいどこにいるの?」

「ここにいる。」

 声のした方に視線を戻すと、本棚の前に、前世の映画の主人公のような筋骨隆々で、めちゃくちゃ顔のいい男が立っていた。

「ほれ、小娘。名前をつけるために、お前の好みのタイプの名前を挙げてみろ。」

「えっ、好みのタイプ? 急にそう言われても……えっと……」

「ほれ、そうだ。なんだったか……ドラマとか乙女ゲームとか……なんやらあるだろう。」

 なんともこの手の美形が発するとは思えない、しわがれた声に、むちゃくちゃ違和感を感じながらも、イチカは一生懸命考えた。

 前世ではドラマはあまり見たことがなかったし、乙女ゲームといわれるものもやったことがない。  
 唯一やったゲームといえば、画像がきれいだと評判で、自分でもその主人公が好きだった……えっと、名前なんだったかな……たしか……

「あっ、そう……たしか、ノクト……」

 イチカが言い終える前に、パァーッと白い光が弾けて、目の前にボンキュッボンの気の強そうな黒髪の美女が現れた。

 なんでここに急に黒髪の美女が現れるの?  
 私は黒髪の美女じゃなくて、同じ黒髪でも男の人の名前を考えたような気がするんだけど……?

「ふむふむ。こんな感じが“あやつ”の好みだったのか。」

「あやつ?」

 イチカの思考は、しわがれた声と目の前の熟女の姿のギャップに驚きすぎて、素直に疑問を口にしていた。

「ふむ。おぬしのご先祖だな。名前はたしか……令五郎れいごろう……いや、違うな。」

「「令一れいいち。」」

 えっ……ということは、初代様!

「そんな名前だったな。それで、お主の名は?」

「イチカです。」

「うむ、イチカか。わしの名はルールーじゃ。」

「ルールー……?」

「そうよ、ルールーっていうの。でも真名だから、ルーって呼んでね♡」

 “ルールー”とイチカが名前を呼んだ瞬間、声がしわがれた老人から若い女性の声に変わり、言葉遣いまで変わっていた。

「ふぅ。これでやっとまともに動けるようになったわ。それじゃあ、ここを出ましょ。イ・チ・カ♡」

「ここを出る?」

「そうよ。いつまでもここにいると、また毒を盛られちゃうからね。」

 ルールーはそう言うと、パンを食べるときに飲んでいたスープを指差した。

 ちょっと待って。

「それじゃあ、私は今まで……お兄さまに毒を盛られていたの!?」

「うーん。犯人まではさすがにわからないわ。でも、確実にわかることは――毒がそのスープに入っていたっていう事実だけね。」

 イチカは青ざめながらも、ルールーの言葉を反芻しつつ、現状を振り返った。

 確かに、犯人が実兄と断定するのは早すぎるかもしれない。  
 でも、ルールーが言う通り、ここにいればまた同じことが起こるのは間違いない。

「でも、“ここを出る”って言っても……どこに行けばいいの?」

 イチカは、いつの間にかさっきまで息苦しくて立ち上がることはおろか、声を出すことすらできなかったことを、すっかり忘れていた。

「それなら任せてちょうだい。私に、あてがあるから。」

 イチカは、自信たっぷりに断言するルールーに不安を覚えながらも、ついていくことにした。

「では、行きましょう。」

 二人は、まだ夜が明ける前に、別邸を抜け出した。
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